13 / 59
本編
12話 ラフィン家と素敵な領民たち
しおりを挟む
それから、ラフィン家の統治する領地では自給自足を余儀なくされた。
けれど、僻地のまた、僻地の私たちの領土は有り余るほどあり、農業も商業も盛んなだったので、小規模にはなったけれど、うまく回っていた。
「ほーーーっ」
お父様が書状を見て、感心した顔をしている。
「どうされたんですか?お父様、そんなニヤけて」
私が質問をすると、お父様がこちらに体を向ける。
「うちと交易を再開したい旨の書状が届いたんだ」
パラパラとではあったけれど、お父様の机の上にはいくつかの書状があった。
「痛み分け・・・だと思ったが、今回のダイダム王国の号令は領主からも国民からも、他国からも不満が多いようだ」
「そうですか・・・」
「それに比べて、うちの領地はうまくいっている」
「みんな、頑張っているもの」
ここまでうまくいっているのは、今まで頑張ってきたみんなのおかげ。
「どこへ行くんだ、シャーロット?」
「みんなのお手伝いに行ってくるっ」
「日差しを浴びてシミでもできたら・・・って」
お父様の小言が始まりそうだったけれど、無視して私は急ぎ足で外へと向かった。
◇◇
「今日もお手伝いに来ました!皆さん、よろしくお願いします!」
私が深々と頭を下げるとみんな農作業を止めて私を見る。
「姫様、ようこそ・・・」
「だから、姫じゃないってばヨッシーおじいちゃん」
かなりご年配だけれども、腰も曲がらずにせっせっと働いているのは本当にすごい。
「だども、シャーロット様、嫁入り前なのにこんな日差しの強い中、働きゃぁ、オラたちは申し訳ねーって」
「ふふふっ、そんなこと気にしないの。なんなら、私ったら婚約破棄するくらいモテるんだから」
「ほうかい、じゃあ次のお相手も・・・」
「それは、いません・・・」
私の頭にクリスの顔がよぎったけれど、きっと彼が言った言葉は私がぐっすり眠れるようにする魔法で、私はこれ以上彼に期待してはダメなんだと思う。
(もしかしたら・・・あれは夢だったのかもしれないし・・・)
「なら、オイラがシャーロット様の旦那になるよっ」
お調子者のワグナーが笑顔で大声を出す。
「バカタレがっ。シャーロット様におめぇが見合うわけないだろうが」
ワグナーのお父さんがワグナーにゲンコツをする。
「いってーーっ」
あはははっ
「さぁ、始めましょっ」
「「「おうっ」」」
それから、私たちは畑を耕して苗を、種を植えた。
みんなで笑ってご飯が食べられるように。
けれど―――
「国王、大変ですっ」
兵士の一人が息も絶え絶えに扉を開け、王室に滑り込む。
「どうした?バッタの大群でも現れたか?」
「ダイダム家から・・・っ、宣戦布告です!!!」
私たち最大のピンチが訪れていることを私はまだ知らなかった。
けれど、僻地のまた、僻地の私たちの領土は有り余るほどあり、農業も商業も盛んなだったので、小規模にはなったけれど、うまく回っていた。
「ほーーーっ」
お父様が書状を見て、感心した顔をしている。
「どうされたんですか?お父様、そんなニヤけて」
私が質問をすると、お父様がこちらに体を向ける。
「うちと交易を再開したい旨の書状が届いたんだ」
パラパラとではあったけれど、お父様の机の上にはいくつかの書状があった。
「痛み分け・・・だと思ったが、今回のダイダム王国の号令は領主からも国民からも、他国からも不満が多いようだ」
「そうですか・・・」
「それに比べて、うちの領地はうまくいっている」
「みんな、頑張っているもの」
ここまでうまくいっているのは、今まで頑張ってきたみんなのおかげ。
「どこへ行くんだ、シャーロット?」
「みんなのお手伝いに行ってくるっ」
「日差しを浴びてシミでもできたら・・・って」
お父様の小言が始まりそうだったけれど、無視して私は急ぎ足で外へと向かった。
◇◇
「今日もお手伝いに来ました!皆さん、よろしくお願いします!」
私が深々と頭を下げるとみんな農作業を止めて私を見る。
「姫様、ようこそ・・・」
「だから、姫じゃないってばヨッシーおじいちゃん」
かなりご年配だけれども、腰も曲がらずにせっせっと働いているのは本当にすごい。
「だども、シャーロット様、嫁入り前なのにこんな日差しの強い中、働きゃぁ、オラたちは申し訳ねーって」
「ふふふっ、そんなこと気にしないの。なんなら、私ったら婚約破棄するくらいモテるんだから」
「ほうかい、じゃあ次のお相手も・・・」
「それは、いません・・・」
私の頭にクリスの顔がよぎったけれど、きっと彼が言った言葉は私がぐっすり眠れるようにする魔法で、私はこれ以上彼に期待してはダメなんだと思う。
(もしかしたら・・・あれは夢だったのかもしれないし・・・)
「なら、オイラがシャーロット様の旦那になるよっ」
お調子者のワグナーが笑顔で大声を出す。
「バカタレがっ。シャーロット様におめぇが見合うわけないだろうが」
ワグナーのお父さんがワグナーにゲンコツをする。
「いってーーっ」
あはははっ
「さぁ、始めましょっ」
「「「おうっ」」」
それから、私たちは畑を耕して苗を、種を植えた。
みんなで笑ってご飯が食べられるように。
けれど―――
「国王、大変ですっ」
兵士の一人が息も絶え絶えに扉を開け、王室に滑り込む。
「どうした?バッタの大群でも現れたか?」
「ダイダム家から・・・っ、宣戦布告です!!!」
私たち最大のピンチが訪れていることを私はまだ知らなかった。
0
あなたにおすすめの小説
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
訳あり冷徹社長はただの優男でした
あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた
いや、待て
育児放棄にも程があるでしょう
音信不通の姉
泣き出す子供
父親は誰だよ
怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳)
これはもう、人生詰んだと思った
**********
この作品は他のサイトにも掲載しています
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~
咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」
卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。
しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。
「これで好きな料理が作れる!」
ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。
冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!?
レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。
「君の料理なしでは生きられない」
「一生そばにいてくれ」
と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……?
一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです!
美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
継母の嫌がらせで冷酷な辺境伯の元に嫁がされましたが、噂と違って優しい彼から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるアーティアは、継母に冷酷無慈悲と噂されるフレイグ・メーカム辺境伯の元に嫁ぐように言い渡された。
継母は、アーティアが苦しい生活を送ると思い、そんな辺境伯の元に嫁がせることに決めたようだ。
しかし、そんな彼女の意図とは裏腹にアーティアは楽しい毎日を送っていた。辺境伯のフレイグは、噂のような人物ではなかったのである。
彼は、多少無口で不愛想な所はあるが優しい人物だった。そんな彼とアーティアは不思議と気が合い、やがてお互いに惹かれるようになっていく。
2022/03/04 改題しました。(旧題:不器用な辺境伯の不器用な愛し方 ~継母の嫌がらせで冷酷無慈悲な辺境伯の元に嫁がされましたが、溺愛されています~)
侯爵令嬢は追放され、他国の王子様に溺愛されるようです
あめり
恋愛
アーロン王国の侯爵令嬢に属しているジェーンは10歳の時に、隣国の王子であるミカエル・フォーマットに恋をした。知性に溢れる彼女は、当時から内政面での書類整理などを担っており、客人として呼ばれたミカエルとも親しい関係にあった。
それから7年の月日が流れ、相変わらず内政面を任せられている彼女は、我慢の限界に来ていた。
「民への重税……王族達いい加減な政治にはついて行けないわ」
彼女は現在の地位を捨てることを決意した。色々な計略を経て、王族との婚約を破断にさせ、国家追放の罪を被った。それも全て、彼女の計算の上だ。
ジェーンは隣国の王子のところへと向かい、寵愛を受けることになる。
婚約破棄された辺境伯令嬢ノアは、冷血と呼ばれた帝国大提督に一瞬で溺愛されました〜政略結婚のはずが、なぜか甘やかされまくってます!?〜
夜桜
恋愛
辺境の地を治めるクレメンタイン辺境伯家の令嬢ノアは、帝国元老院から突然の召喚を受ける。
帝都で待っていたのは、婚約者である若きエリート議員、マグヌス・ローレンス。――しかし彼は、帝国中枢の面前でノアとの婚約を一方的に破棄する。
「君のような“辺境育ち”では、帝国の未来にふさわしくない」
誰もがノアを笑い、見下し、軽んじる中、ひとりの男が静かに立ち上がった。
「その令嬢が不要なら、私がもらおう」
そう言ったのは、“冷血の大提督”と恐れられる帝国軍最高司令官――レックス・エヴァンス。
冷たく厳しい眼差しの奥に宿る、深い誠実さとあたたかさ。
彼の隣で、ノアは帝都の陰謀に立ち向かい、誇りと未来を取り戻していく。
これは、婚約破棄された辺境伯令嬢が、帝国最強の大提督に“一瞬で”溺愛され、
やがて帝国そのものを揺るがす人生逆転の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる