【完結】好き過ぎて殺したい

西東友一

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 披露宴は順調に進んでいく。

「お母さん、ちょっとお酌周りに行ってくるわね」

「うん」

 披露宴の一番後ろのテーブルにいた立ち上がる母親がビール瓶を持つ。それを座りながら楓がジュースを飲みながら見送る。そのまま会場全体を見渡すと、みんなお酒を飲んでほろよいで上機嫌だ。半分の席は兄である慎一の友人や会社の人らしい。楓には友達が少ない。それに、当然母親以外に気を許せるような人がいない。

「楓ちゃん・・・綺麗になったねぇ」

 だから、例え同じテーブルに座っている親族の叔父であっても話をしたくない。

「はぁ・・・」

 気のない返事をする楓。
 全員自分以外大人。
 大人のはずに適当に振る舞っている大人たちが再び楓を苛立たせた。

(こんな風になっているのもあいつのせいだ)

 クスッ

「楓ちゃん・・・?」

 楓は思わず、笑ってしまった。
 もう、楓の感情の回路のうち、慎一に対しての怒りの回路は快感の回路と歪に繋がってしまった。
 
(あぁ・・・どうやって復讐をしてあげよう、どうやって困らせてやろう。そうしたら、お兄ちゃんはどんな風に顔を歪ませてくれるのだろう・・・)

 ぞくっ

「どうしたの?慎一」

「ん?あっいや・・・」

 会場の主役席にいた慎一が急に震えるのを見て、心配する早苗。

「おっ、なんだなんだ?緊張してるのか? 間宮?」

 スーツ姿で慎一よりも少し年上の人たちがビールを持ってやってきた。

「先輩、今日は・・・」

「まぁまぁ、今日は主役なんだからどーんっと座ってくださいよ」

 立ち上がろうとする慎一に丁寧語で座り続けるように手ぶりをする慎一の先輩。

「いやぁ、本当におめでとう」

 お酌をしようとビールを差し出す先輩に慎一はコップを両手で持ってビールをいただいた。

「よしっ、写真を撮ろうぜ、写真」

 スタッフが慎一の会社の職員からカメラを受けとり、慎一と早苗の後ろに並ぶ。

(楓・・・)

 ふと、周りに目が行った慎一。
 楽しそうな雰囲気の中、異質なオーラを放っていた一番遠くの席の楓と目が合った。
 慎一としては、なかなか結婚のこと、楓に姪か甥ができることを告げることは勇気が必要だった。告げた後も元から不機嫌のだった楓の変化はあまり顕著ではなかったけれど、それでも兄である慎一はその微妙な変化に不安を感じていた。

 にやっ

(笑った・・・?)

 慎一は背筋が凍った。
 何をしでかすかわからない笑顔の楓。
 慎一は記憶を遡る。

(いつぶりだ・・・?)

 楓が自分に笑いかけたのはいつなのか振り返る。
 楓が受験に合格したのを褒めた時、修学旅行のお土産にお礼を言った時、中学の制服が似合っているなと褒めた時・・・

(もっと・・・もっと前だ・・・っ)

 慎一は記憶をもっと遡る。

「あっ・・・」


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