【完結】好き過ぎて殺したい

西東友一

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「今日は楽しかったね・・・」

 バスローブ姿の早苗と慎一はホテルのダブルベットに座りながら、今日の結婚式の余韻に浸っていた。

「あぁ、そうだね。ワインでも飲む?」

「だから、妊娠してるんだって」

「あぁ、そっかっ。ごめんごめん」

「ふふっ、いーよ」

「じゃあ、オレンジジュースでいいかな?」

「うん」

 その笑顔を見て、慎一は立ち上がってグラスを2つ用意する。
 オレンジジュースを飲むのにコップよりもグラスの方がいいと思った、慎一。それを見て、微笑む早苗。
 その関係がお互い心地よかった。

 慎一は赤ワインを注いでいく最中、その暗みがある赤に心が落ち着くようで、心が飲み込まれる様な気持ちに少しなった。

「はい、早苗」

 けれど、自分で現実に戻ってくる慎一。

「うん、ありがと」

 笑顔で慎一が早苗にグラスを渡すと、嬉しそうに両手で受け取る早苗。
 慎一にも楓のように闇飲まれる要素はあるが、慎一は動物として怖いとちゃんと思えたし、隣に早苗がいるから深入りしないで済んでいた。しかし、楓は闇に魅かれてしまう部分があり、慎一も楓を見ていると・・・。

「・・・慎一?」

「んっ、あぁごめんごめん」

 慎一は気持ちをリセットさせるようにワインの香りを楽しみ、口に含む。

「大役ご苦労様」

 慎一の肩に寄りかかる早苗。
 今日の格好良かった慎一を思い出しながら、とても満足そうにしていた。
 そんな彼女を見ていたら慎一もやりがいと達成感にお酒の力も借りつつ、身を任せようと決めた。

「今日は・・・する?」

「何言ってんだよ」

 今度は慎一が笑いながら否定して、早苗のお腹をさする。

「おっ、今度はちゃんと覚えてましたか」

 冗談交じりで早苗が慎一をからかう。
 目の前に見えるキラキラした幸せ。
 結婚式が太陽のような眩しい輝きだとすれば、終わった後の静寂の夜のこうしたやり取りはほっとする夜空の星々のような輝きだろう。慎一はそれでいいと思った。

 目の前の早苗と居れば、そんな幸せが手に入る。
 優柔不断で道に迷っていた慎一が光の方に向かうのが必然。
 どこにあるかも、自分でも決められない最高の幸せよりも、目の前の今よりも幸せになれる光に手を伸ばすのは、慎一でなくても多くの人がそれを選ぶだろう。

「今日は寝れないかも」

「あぁ、僕も」

「じゃあ、語り明かそうか、慎一」

「うん」

 ちょっと奮発して泊まったホテル。
 オレンジ色の薄暗い灯りに照らされながら、二人は結婚式のことや、出会った日のこと、旅行した思い出や、家族や父親、友人、職場のことなど話し合った。
 
 深淵に沈む甘美な幸せなどに気づかずに。
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