【完結】好き過ぎて殺したい

西東友一

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 グスンッ、グスンッ

 楓の泣いている声が頭の上で聞こえる慎一は自業自得だが心が痛んだ。
 
「なぁ、楓・・・」

 未だ袖で涙を拭いている楓。それを見て、慎一は決心を固める。

「僕は楓になら殺されてもいいと思っている」

 楓はピタっと止まり、袖の向こうから慎一が本気なのか確認するが、慎一の顔は真剣そのままだった。

「もちろん、楓が手を汚す必要なんてない。必要があれば僕は自分で・・・」

「死んで逃げる気?」

 今度は、ピタッと慎一が止まる。
 その困った表情に楓の心は潤った。

(そうよ、それっ。私のことだけ考えてよ。ニシシッ)

「一緒に死のっか、おにーちゃん」

「!?」

「なんか色々めんどくさいし、お兄ちゃんが早苗さんとイチャイチャしているのを見るのも考えるのも面倒くさいし、一緒に地獄に落ちよ?」

 悪魔ほど、恐ろしい契約の時に無邪気に笑う。
 楓は慎一の首の頸動脈を見ながら、笑う。
 悪意など微塵も感じない楓の言葉に慎一は耳を疑った。
 そして、どうしようもなくて、泣いてしまう。

「うんうん、泣きたいよね。わかるわかる。だって、お兄ちゃんはどんなに頑張ってもお兄ちゃんだもん。でも、善人ぶってもだめだからね?お兄ちゃんは私と同じ、悪人側なんだから?私にしたことも、あの女にしたことも、あの女と自分の子を残して死んでも、死ななくても悪人だからね」

「ううううぅ・・・っ」

 優しいウィスパーボイスで耳元で囁く楓。
 怒ったような言い方であれば、一時の感情である可能性があったけれど、この言い方は本気であることを慎一に理解させた。

「ニシシシッ。だいじょーぶ。私はお兄ちゃんの弱い部分もだーい好きだから。ふふっ、この頸動脈、ぷくっとしてる。ちょいっちょいっ」

 慎一の血管を触って触感を楽しむ楓。

「うおおおおおおおおっ」

 慎一はその小さくも煽ってくる楓の肩を掴んで押し倒す。

「憎い?殺したい?でも、殺すならこれ使って」

 カッターを見せて、刃を出す楓。

(できる?できないよねぇ?)

 自分の胸にそのまま置いて、目を閉じる。
 抵抗する気がない楓を掴んでいた慎一の手の力が緩んでいく。
 片方の肩の手が外れて、胸にあったカッターを取られる。

「んっ」

 ちょっと、胸元のを触られてドキドキする楓。

(さぁ・・・どうするのかな。そのむき身の武器を出して、私に突き付けちゃうのかな)

 嫌悪感の次はスリルが楓の心に火をつける。本来ならストレスなのだろうが、今の楓には強い感情は全て快感に繋がる。楓はうっとりした顔で慎一を待った。
 


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