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「狭い」
「あぁ・・・悪い」
暗闇の中、楓のベットで一緒に寝ている楓と慎一。
慎一は少し端へ寄る。
「本当に・・・ごめんな」
「いつ死んだっていいじゃん。私、お兄ちゃんになら殺されていいし。これ以上惨めな姿晒すなら、殺してあげるよ」
「・・・」
黙る慎一。
楓も暗い天井をぼーっと見つめた。
(愛・・・か・・・)
楓は死の間際、感じた想いを反芻する。
「結婚生活・・・上手く行きそうなのっ?」
「・・・やってみせるさっ。いたっ」
かっこつけた慎一の足を蹴とばす楓。
やっぱり、我慢して幸せを掴もうとしている慎一に嫉妬と気持ち悪さが湧き上がってきた。
「キモッ」
「・・・お前と兄妹で良かったよ」
楓は見下している男にノーガードの心臓を鷲掴みされたように胸が痛くなった。
「・・・キモ」
楓は慎一に背中を向けた。その際もれなく掛け布団を引っ張った。
(あぁ、やっぱり殺したい、殺したい、殺したい、殺したい・・・)
楓にとって、手に入らないくせに近くにいる慎一は本当に目障りに感じた。
楓にとって今奪えるものは、その掛け布団と慎一の命くらいだ。
「あーーー、本当に殺したい」
命さえ奪ってしまえば、あとは誰にも奪われることがない。
独占欲が強い・・・というか、慎一ごときにヤキモキされるのが気に食わなかった。
(こんなクズ兄に・・・)
「ふふっ」
「ん?」
「まぁ、悪魔と結婚した方が幸せかもよ」
「えっ?」
察しろよ、と思って、楓は慎一のスネを蹴る。
「いてっ」
当然ながら、よくわからないと言った顔をしながら、慎一は首を傾げている。
「あんな、何考えているかわかんない女より、お兄ちゃんみたいなクズは私の方がいいってことよ・・・」
「楓・・・」
(言ってやった・・・)
楓は返事を待たず、布団にもぐった。
楓は鏡を慎一の前に提示した。
慎一がどんなに上辺を重ねても、自分と同じ穴のムジナであることを。
そして、楓は慎一の心に楔を打った。
決して自分からは逃げられないように・・・。
歪んだ愛情。
楓には殺す勇気も殺される勇気も本当はないかもしれない。
好き過ぎて全てを奪いたくて、でも、好きだから幸せになって欲しくて。
兄が好きなのに、好きでいる自分が好きなのかもしれなくて。本当はただの気まぐれかもしれなくて。
ただ、甥なのか、姪なのかわからないが、新たな命が宿ることに対して、末っ子の楓には恐怖でありつつも、大切にしなければならない人間としての良心も当然ある。慎一の愛が、結婚相手の早苗に奪われたのも癪であるが、新たな命のために身を引かなければならないことも、嫌で仕方ないが、楓は純粋であるがゆえに新たな命のために家族を壊したくもない。
純粋ではあるが、素直でない楓の最後の悪あがき。
ささやかな恋心。
慎一の心の深淵のもっとも弱い場所にだけ・・・自分の求めた。
それは、誰も得しないワーストかもしれないし、痛み分けのワースかもしれないし、折り合いがついたベストかもしれないし、手に入りやすいベターだったかもしれない。
もしかしたら、楓が大人になったら、赤色なのか黒色なのかはわからないが塗りつぶしたくなるような、黒歴史にかもしれないし、ずーっと続く恋心かもしれないし、もしかしたら、甥に手を出すかもしれないし、全く忘れて、純白の恋愛や結婚式を迎えるかもしれない。
ここが落としどころ。
大人がそう言えば、楓は癇癪を起したかもしれないが、楓自身が誰に言われるでもなくそれを決めた。
この恋心を殺してしまおうと。
「・・・ばいばい」
楓はそうつぶやいて、瞼を閉じた。
夜の闇を超えて、朝日を見るために。
おしまい。
「あぁ・・・悪い」
暗闇の中、楓のベットで一緒に寝ている楓と慎一。
慎一は少し端へ寄る。
「本当に・・・ごめんな」
「いつ死んだっていいじゃん。私、お兄ちゃんになら殺されていいし。これ以上惨めな姿晒すなら、殺してあげるよ」
「・・・」
黙る慎一。
楓も暗い天井をぼーっと見つめた。
(愛・・・か・・・)
楓は死の間際、感じた想いを反芻する。
「結婚生活・・・上手く行きそうなのっ?」
「・・・やってみせるさっ。いたっ」
かっこつけた慎一の足を蹴とばす楓。
やっぱり、我慢して幸せを掴もうとしている慎一に嫉妬と気持ち悪さが湧き上がってきた。
「キモッ」
「・・・お前と兄妹で良かったよ」
楓は見下している男にノーガードの心臓を鷲掴みされたように胸が痛くなった。
「・・・キモ」
楓は慎一に背中を向けた。その際もれなく掛け布団を引っ張った。
(あぁ、やっぱり殺したい、殺したい、殺したい、殺したい・・・)
楓にとって、手に入らないくせに近くにいる慎一は本当に目障りに感じた。
楓にとって今奪えるものは、その掛け布団と慎一の命くらいだ。
「あーーー、本当に殺したい」
命さえ奪ってしまえば、あとは誰にも奪われることがない。
独占欲が強い・・・というか、慎一ごときにヤキモキされるのが気に食わなかった。
(こんなクズ兄に・・・)
「ふふっ」
「ん?」
「まぁ、悪魔と結婚した方が幸せかもよ」
「えっ?」
察しろよ、と思って、楓は慎一のスネを蹴る。
「いてっ」
当然ながら、よくわからないと言った顔をしながら、慎一は首を傾げている。
「あんな、何考えているかわかんない女より、お兄ちゃんみたいなクズは私の方がいいってことよ・・・」
「楓・・・」
(言ってやった・・・)
楓は返事を待たず、布団にもぐった。
楓は鏡を慎一の前に提示した。
慎一がどんなに上辺を重ねても、自分と同じ穴のムジナであることを。
そして、楓は慎一の心に楔を打った。
決して自分からは逃げられないように・・・。
歪んだ愛情。
楓には殺す勇気も殺される勇気も本当はないかもしれない。
好き過ぎて全てを奪いたくて、でも、好きだから幸せになって欲しくて。
兄が好きなのに、好きでいる自分が好きなのかもしれなくて。本当はただの気まぐれかもしれなくて。
ただ、甥なのか、姪なのかわからないが、新たな命が宿ることに対して、末っ子の楓には恐怖でありつつも、大切にしなければならない人間としての良心も当然ある。慎一の愛が、結婚相手の早苗に奪われたのも癪であるが、新たな命のために身を引かなければならないことも、嫌で仕方ないが、楓は純粋であるがゆえに新たな命のために家族を壊したくもない。
純粋ではあるが、素直でない楓の最後の悪あがき。
ささやかな恋心。
慎一の心の深淵のもっとも弱い場所にだけ・・・自分の求めた。
それは、誰も得しないワーストかもしれないし、痛み分けのワースかもしれないし、折り合いがついたベストかもしれないし、手に入りやすいベターだったかもしれない。
もしかしたら、楓が大人になったら、赤色なのか黒色なのかはわからないが塗りつぶしたくなるような、黒歴史にかもしれないし、ずーっと続く恋心かもしれないし、もしかしたら、甥に手を出すかもしれないし、全く忘れて、純白の恋愛や結婚式を迎えるかもしれない。
ここが落としどころ。
大人がそう言えば、楓は癇癪を起したかもしれないが、楓自身が誰に言われるでもなくそれを決めた。
この恋心を殺してしまおうと。
「・・・ばいばい」
楓はそうつぶやいて、瞼を閉じた。
夜の闇を超えて、朝日を見るために。
おしまい。
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