ママは乳がん二年生!

織緒こん

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はち。

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 病院から帰ってきたママは、病院で会ったときのはしゃいだ感じと違って、毎日ダルそうにしている。

「いやぁ、アレは謎の術後ハイだったみたいねぇ。ダルい、眠い、息切れする」

「腰は?」

「入院中に治ったよ。傷の痛み止めをもらえているうちに治ってよかったわぁ」

 ママはどっかズレてると思う。

 パパのインフルエンザも、誰にも感染すことなく治って、ババちゃんはママの退院後キッカリ一週間して帰っていった。

「もうちょっといてやぁといいけど、大ババの世話がえらくて大変で、あっちがギブアップしとるみたい」

 独身の伯父さんと叔父さん一家、総出で大ババちゃんを見ている。⋯⋯ハイカイっていうのをしちゃうので、昼間みんなが仕事や学校に行ってる間は、ご近所を巻き込んで大騒ぎなんだって。去年会ったとき、スズのことをママの名前で呼んで、ママのことをババちゃんの名前で呼んでた。確かにほっとけない。

「帰ってもオカンだけがせつい辛いねぇ。でも来てくれて助かったわぁ。一週間、ごろごろ休めた。ありがとう」

「ほんなら、あんたも、そろうそろうゆっくりやりなさいよ」

 バス停までスズとパパで送っていく。夜行で帰るから、夕方の暗い道を歩く。アスファルトにキャリーケースを引く音が、やけにうるさく聞こえた。ママはお留守番。

「ババちゃん、ありがとう」

「お義母さん、お世話になりました」

「なに言っとうかね。私の娘のことだわね。パパさんこそ、世話かけてごめんね」

「いやぁ、うちのオクさんですから。それより本当に、東京駅まで車で送らなくていいんですか?」

「その一時間で、インフルエンザもらうわね。パパさんも病み上がりだけん、大事にしとくだわ」

 バスがくるまで五分くらい、なんとなく三人でペコペコしてたら、おかしくなってきた。

「夏休みにはみんなで来るだわ。また、ババのご飯いっぱい食べてごさないけんよくれなきゃだめよ

 ババちゃんはバスに乗って最寄駅に向かっていった。

 それからママは月に何度かリハビリに行ったりして、三月から放射線とかいう治療を始めた。

「放射線酔いがキツい⋯⋯。プチ車酔いが延々と続く⋯⋯」

 ぶつぶつ言ってるけど、抗がん剤は使わなくてよくなったから、髪の毛は抜けないって。

 家にいる時間はキッチンに立つ以外はほとんどベッドの中で、スズはまた、ご飯とお味噌汁を作るようになった。おかずはママが午前中の体調の良いときに、休憩しながら作ってくれる。

 一ヶ月半、ママは平日は毎日放射線を浴びに行った。はじめはスズが学校に行ってる間だったけど、春休みになって毎日出かけるのを見送った。

 新学期、スズが六年生になったころ、ママの放射線治療が終わった。そしたらママはけろっと元気になった。

「酔ってないって、なんて幸せ! スズがお腹にいるときも、延々悪阻が酷かったけど、アレより地味にきつかったぁ」

 両方のリンパ線を切ったから、腕が上まで上がりにくいから、洗濯物を干すのが辛いんだって。でもそれ以外は、手術をする前のママだった。朝ごはんの後に、毎日薬は飲んでいるけどね。

 検査の結果も今のところなんともなくて、木村家に日常が帰ってきた。
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