9 / 12
はち。
しおりを挟む
病院から帰ってきたママは、病院で会ったときのはしゃいだ感じと違って、毎日ダルそうにしている。
「いやぁ、アレは謎の術後ハイだったみたいねぇ。ダルい、眠い、息切れする」
「腰は?」
「入院中に治ったよ。傷の痛み止めをもらえているうちに治ってよかったわぁ」
ママはどっかズレてると思う。
パパのインフルエンザも、誰にも感染すことなく治って、ババちゃんはママの退院後キッカリ一週間して帰っていった。
「もうちょっといてやぁといいけど、大ババの世話がえらくて、あっちがギブアップしとるみたい」
独身の伯父さんと叔父さん一家、総出で大ババちゃんを見ている。⋯⋯ハイカイっていうのをしちゃうので、昼間みんなが仕事や学校に行ってる間は、ご近所を巻き込んで大騒ぎなんだって。去年会ったとき、スズのことをママの名前で呼んで、ママのことをババちゃんの名前で呼んでた。確かにほっとけない。
「帰ってもオカンだけがせついねぇ。でも来てくれて助かったわぁ。一週間、ごろごろ休めた。ありがとう」
「ほんなら、あんたも、そろうそろうやりなさいよ」
バス停までスズとパパで送っていく。夜行で帰るから、夕方の暗い道を歩く。アスファルトにキャリーケースを引く音が、やけにうるさく聞こえた。ママはお留守番。
「ババちゃん、ありがとう」
「お義母さん、お世話になりました」
「なに言っとうかね。私の娘のことだわね。パパさんこそ、世話かけてごめんね」
「いやぁ、うちのオクさんですから。それより本当に、東京駅まで車で送らなくていいんですか?」
「その一時間で、インフルエンザもらうわね。パパさんも病み上がりだけん、大事にしとくだわ」
バスがくるまで五分くらい、なんとなく三人でペコペコしてたら、おかしくなってきた。
「夏休みにはみんなで来るだわ。また、ババのご飯いっぱい食べてごさないけんよ」
ババちゃんはバスに乗って最寄駅に向かっていった。
それからママは月に何度かリハビリに行ったりして、三月から放射線とかいう治療を始めた。
「放射線酔いがキツい⋯⋯。プチ車酔いが延々と続く⋯⋯」
ぶつぶつ言ってるけど、抗がん剤は使わなくてよくなったから、髪の毛は抜けないって。
家にいる時間はキッチンに立つ以外はほとんどベッドの中で、スズはまた、ご飯とお味噌汁を作るようになった。おかずはママが午前中の体調の良いときに、休憩しながら作ってくれる。
一ヶ月半、ママは平日は毎日放射線を浴びに行った。はじめはスズが学校に行ってる間だったけど、春休みになって毎日出かけるのを見送った。
新学期、スズが六年生になったころ、ママの放射線治療が終わった。そしたらママはけろっと元気になった。
「酔ってないって、なんて幸せ! スズがお腹にいるときも、延々悪阻が酷かったけど、アレより地味にきつかったぁ」
両方のリンパ線を切ったから、腕が上まで上がりにくいから、洗濯物を干すのが辛いんだって。でもそれ以外は、手術をする前のママだった。朝ごはんの後に、毎日薬は飲んでいるけどね。
検査の結果も今のところなんともなくて、木村家に日常が帰ってきた。
「いやぁ、アレは謎の術後ハイだったみたいねぇ。ダルい、眠い、息切れする」
「腰は?」
「入院中に治ったよ。傷の痛み止めをもらえているうちに治ってよかったわぁ」
ママはどっかズレてると思う。
パパのインフルエンザも、誰にも感染すことなく治って、ババちゃんはママの退院後キッカリ一週間して帰っていった。
「もうちょっといてやぁといいけど、大ババの世話がえらくて、あっちがギブアップしとるみたい」
独身の伯父さんと叔父さん一家、総出で大ババちゃんを見ている。⋯⋯ハイカイっていうのをしちゃうので、昼間みんなが仕事や学校に行ってる間は、ご近所を巻き込んで大騒ぎなんだって。去年会ったとき、スズのことをママの名前で呼んで、ママのことをババちゃんの名前で呼んでた。確かにほっとけない。
「帰ってもオカンだけがせついねぇ。でも来てくれて助かったわぁ。一週間、ごろごろ休めた。ありがとう」
「ほんなら、あんたも、そろうそろうやりなさいよ」
バス停までスズとパパで送っていく。夜行で帰るから、夕方の暗い道を歩く。アスファルトにキャリーケースを引く音が、やけにうるさく聞こえた。ママはお留守番。
「ババちゃん、ありがとう」
「お義母さん、お世話になりました」
「なに言っとうかね。私の娘のことだわね。パパさんこそ、世話かけてごめんね」
「いやぁ、うちのオクさんですから。それより本当に、東京駅まで車で送らなくていいんですか?」
「その一時間で、インフルエンザもらうわね。パパさんも病み上がりだけん、大事にしとくだわ」
バスがくるまで五分くらい、なんとなく三人でペコペコしてたら、おかしくなってきた。
「夏休みにはみんなで来るだわ。また、ババのご飯いっぱい食べてごさないけんよ」
ババちゃんはバスに乗って最寄駅に向かっていった。
それからママは月に何度かリハビリに行ったりして、三月から放射線とかいう治療を始めた。
「放射線酔いがキツい⋯⋯。プチ車酔いが延々と続く⋯⋯」
ぶつぶつ言ってるけど、抗がん剤は使わなくてよくなったから、髪の毛は抜けないって。
家にいる時間はキッチンに立つ以外はほとんどベッドの中で、スズはまた、ご飯とお味噌汁を作るようになった。おかずはママが午前中の体調の良いときに、休憩しながら作ってくれる。
一ヶ月半、ママは平日は毎日放射線を浴びに行った。はじめはスズが学校に行ってる間だったけど、春休みになって毎日出かけるのを見送った。
新学期、スズが六年生になったころ、ママの放射線治療が終わった。そしたらママはけろっと元気になった。
「酔ってないって、なんて幸せ! スズがお腹にいるときも、延々悪阻が酷かったけど、アレより地味にきつかったぁ」
両方のリンパ線を切ったから、腕が上まで上がりにくいから、洗濯物を干すのが辛いんだって。でもそれ以外は、手術をする前のママだった。朝ごはんの後に、毎日薬は飲んでいるけどね。
検査の結果も今のところなんともなくて、木村家に日常が帰ってきた。
0
あなたにおすすめの小説
お姫様の願い事
月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
ローズお姉さまのドレス
有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です*
最近のルイーゼは少しおかしい。
いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。
話し方もお姉さまそっくり。
わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。
表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
理想の王妃様
青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。
王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。
王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題!
で、そんな二人がどーなったか?
ざまぁ?ありです。
お気楽にお読みください。
悪女の死んだ国
神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。
悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか.........
2話完結 1/14に2話の内容を増やしました
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
かつて聖女は悪女と呼ばれていた
朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
「別に計算していたわけではないのよ」
この聖女、悪女よりもタチが悪い!?
悪魔の力で聖女に成り代わった悪女は、思い知ることになる。聖女がいかに優秀であったのかを――!!
聖女が華麗にざまぁします♪
※ エブリスタさんの妄コン『変身』にて、大賞をいただきました……!!✨
※ 悪女視点と聖女視点があります。
※ 表紙絵は親友の朝美智晴さまに描いていただきました♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる