ママは乳がん二年生!

織緒こん

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きゅう。

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 夏休み、ママの体調が悪かったらババちゃん家に行くのはやめようって言ってたけど、ママは元気いっぱいだ。

「夜行のチケット、スズの林間学校が終わるのに合わせて取ってるから、怪我も病気もしないで帰っておいで」

 出発の日、ママはニコニコ笑って見送りに来てくれた。

「木村の母ちゃん、着物じゃないの?」

 クラス替えがなかったから、高橋もおんなじクラスだ。

「まだお仕事復帰してないんだ。九月からって言ってた」

 そう言えば、去年の林間学校の見送りは、シフトが入ってた日だったから、ママ、着物で来てたなぁ。多分、そのままお仕事に行ったんだよ。

「高橋が神様にお願いしてくれたからかなぁ。ママ、すっごい元気なの」

「おい、ちげぇよ。今、それ言うとこじゃないだろ」

「なんで?」

「おお、ユッキーが木村についに⋯⋯!」

「アンタは黙ってなさいよ!」

 大田とマナちゃんがキャンキャン言って、みんなが一斉にわらった。なんかバスの中がわちゃわちゃうるさくなって、スズも楽しくなって一緒に笑った。

 楽しく始まった林間学校はあっという間に終わって学校にバスがつくと、出発のときと同じように、保護者が校庭まで迎えに来てくれていた。

 決められたお小遣いのなかから、ババちゃん家に持っていくお土産も買った。ちーちゃんとちーちゃんのママと四人で一緒に帰る。ちーちゃんのママがちーちゃんの大きな荷物を持っているけど、スズはお土産の袋だけママに渡した。

 ママ、手術の後から両手の指がずっと痺れているから、重い荷物が持てないの。どんだけ痺れてるかって言うと、お料理していてたびたび包丁を落としちゃうくらい。

 ちーちゃんたちと、ちーちゃんの家の前で別れて、二分歩く。真っ直ぐ歩けば三十秒くらいだろうけど、畑の周りをぐるっと回るとそんくらい。

 荷物を置いて、手を洗ってうがいして。

「あのね、楽しいところ、ごめんね。大ババちゃんが亡くなったの」

「え?」

「スズが林間学校に出発した日」

「ママ、全然悲しそうじゃないよ」

「九十八歳。大往生。お疲れさまでしたって感じかなぁ」

 ママがしみじみ言った。お葬式はもう終わったんだって。ママの体調と、スズの林間学校をかんがえて、お盆に合わせて取ってる寝台列車の切符で帰ろうって、ババちゃんと相談したんだって。

「大ババちゃん、ママの病気も知らないまんま、よく食べてよく寝て、よく運動して、倒れて二日だって」

「運動って?」

「うん、徘徊。穏やかに、可愛く笑ったお顔だったんだって」

 毎年夏休みに、ちょっとだけ会う大ババちゃん。スズが、物心ついたときには認知症を患っていたから、ちゃんとお話ししたことない。

「順番だからねぇ。ママも大ババちゃんみたいに、『いい人生だったねぇ』って、みんなに笑って送ってもらえるまで、長生きしたいなぁ」

「大丈夫、オクさんには笑いの神様がついてるから。お空に行くときは笑い死にだよ」

「こらこら、ダーさん。せっかく綺麗にまとめたのに、イヤな死因にしないでよ。だいたい、みんなに笑って見送って欲しいのに、私が笑い転げてどうすんの。笑いすぎて窒息死じゃん」

 パパとママが、また漫才を始めた。

 木村家は通常運転だ。
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