10 / 12
きゅう。
しおりを挟む
夏休み、ママの体調が悪かったらババちゃん家に行くのはやめようって言ってたけど、ママは元気いっぱいだ。
「夜行のチケット、スズの林間学校が終わるのに合わせて取ってるから、怪我も病気もしないで帰っておいで」
出発の日、ママはニコニコ笑って見送りに来てくれた。
「木村の母ちゃん、着物じゃないの?」
クラス替えがなかったから、高橋もおんなじクラスだ。
「まだお仕事復帰してないんだ。九月からって言ってた」
そう言えば、去年の林間学校の見送りは、シフトが入ってた日だったから、ママ、着物で来てたなぁ。多分、そのままお仕事に行ったんだよ。
「高橋が神様にお願いしてくれたからかなぁ。ママ、すっごい元気なの」
「おい、ちげぇよ。今、それ言うとこじゃないだろ」
「なんで?」
「おお、ユッキーが木村についに⋯⋯!」
「アンタは黙ってなさいよ!」
大田とマナちゃんがキャンキャン言って、みんなが一斉にわらった。なんかバスの中がわちゃわちゃうるさくなって、スズも楽しくなって一緒に笑った。
楽しく始まった林間学校はあっという間に終わって学校にバスがつくと、出発のときと同じように、保護者が校庭まで迎えに来てくれていた。
決められたお小遣いのなかから、ババちゃん家に持っていくお土産も買った。ちーちゃんとちーちゃんのママと四人で一緒に帰る。ちーちゃんのママがちーちゃんの大きな荷物を持っているけど、スズはお土産の袋だけママに渡した。
ママ、手術の後から両手の指がずっと痺れているから、重い荷物が持てないの。どんだけ痺れてるかって言うと、お料理していてたびたび包丁を落としちゃうくらい。
ちーちゃんたちと、ちーちゃんの家の前で別れて、二分歩く。真っ直ぐ歩けば三十秒くらいだろうけど、畑の周りをぐるっと回るとそんくらい。
荷物を置いて、手を洗ってうがいして。
「あのね、楽しいところ、ごめんね。大ババちゃんが亡くなったの」
「え?」
「スズが林間学校に出発した日」
「ママ、全然悲しそうじゃないよ」
「九十八歳。大往生。お疲れさまでしたって感じかなぁ」
ママがしみじみ言った。お葬式はもう終わったんだって。ママの体調と、スズの林間学校をかんがえて、お盆に合わせて取ってる寝台列車の切符で帰ろうって、ババちゃんと相談したんだって。
「大ババちゃん、ママの病気も知らないまんま、よく食べてよく寝て、よく運動して、倒れて二日だって」
「運動って?」
「うん、徘徊。穏やかに、可愛く笑ったお顔だったんだって」
毎年夏休みに、ちょっとだけ会う大ババちゃん。スズが、物心ついたときには認知症を患っていたから、ちゃんとお話ししたことない。
「順番だからねぇ。ママも大ババちゃんみたいに、『いい人生だったねぇ』って、みんなに笑って送ってもらえるまで、長生きしたいなぁ」
「大丈夫、オクさんには笑いの神様がついてるから。お空に行くときは笑い死にだよ」
「こらこら、ダーさん。せっかく綺麗にまとめたのに、イヤな死因にしないでよ。だいたい、みんなに笑って見送って欲しいのに、私が笑い転げてどうすんの。笑いすぎて窒息死じゃん」
パパとママが、また漫才を始めた。
木村家は通常運転だ。
「夜行のチケット、スズの林間学校が終わるのに合わせて取ってるから、怪我も病気もしないで帰っておいで」
出発の日、ママはニコニコ笑って見送りに来てくれた。
「木村の母ちゃん、着物じゃないの?」
クラス替えがなかったから、高橋もおんなじクラスだ。
「まだお仕事復帰してないんだ。九月からって言ってた」
そう言えば、去年の林間学校の見送りは、シフトが入ってた日だったから、ママ、着物で来てたなぁ。多分、そのままお仕事に行ったんだよ。
「高橋が神様にお願いしてくれたからかなぁ。ママ、すっごい元気なの」
「おい、ちげぇよ。今、それ言うとこじゃないだろ」
「なんで?」
「おお、ユッキーが木村についに⋯⋯!」
「アンタは黙ってなさいよ!」
大田とマナちゃんがキャンキャン言って、みんなが一斉にわらった。なんかバスの中がわちゃわちゃうるさくなって、スズも楽しくなって一緒に笑った。
楽しく始まった林間学校はあっという間に終わって学校にバスがつくと、出発のときと同じように、保護者が校庭まで迎えに来てくれていた。
決められたお小遣いのなかから、ババちゃん家に持っていくお土産も買った。ちーちゃんとちーちゃんのママと四人で一緒に帰る。ちーちゃんのママがちーちゃんの大きな荷物を持っているけど、スズはお土産の袋だけママに渡した。
ママ、手術の後から両手の指がずっと痺れているから、重い荷物が持てないの。どんだけ痺れてるかって言うと、お料理していてたびたび包丁を落としちゃうくらい。
ちーちゃんたちと、ちーちゃんの家の前で別れて、二分歩く。真っ直ぐ歩けば三十秒くらいだろうけど、畑の周りをぐるっと回るとそんくらい。
荷物を置いて、手を洗ってうがいして。
「あのね、楽しいところ、ごめんね。大ババちゃんが亡くなったの」
「え?」
「スズが林間学校に出発した日」
「ママ、全然悲しそうじゃないよ」
「九十八歳。大往生。お疲れさまでしたって感じかなぁ」
ママがしみじみ言った。お葬式はもう終わったんだって。ママの体調と、スズの林間学校をかんがえて、お盆に合わせて取ってる寝台列車の切符で帰ろうって、ババちゃんと相談したんだって。
「大ババちゃん、ママの病気も知らないまんま、よく食べてよく寝て、よく運動して、倒れて二日だって」
「運動って?」
「うん、徘徊。穏やかに、可愛く笑ったお顔だったんだって」
毎年夏休みに、ちょっとだけ会う大ババちゃん。スズが、物心ついたときには認知症を患っていたから、ちゃんとお話ししたことない。
「順番だからねぇ。ママも大ババちゃんみたいに、『いい人生だったねぇ』って、みんなに笑って送ってもらえるまで、長生きしたいなぁ」
「大丈夫、オクさんには笑いの神様がついてるから。お空に行くときは笑い死にだよ」
「こらこら、ダーさん。せっかく綺麗にまとめたのに、イヤな死因にしないでよ。だいたい、みんなに笑って見送って欲しいのに、私が笑い転げてどうすんの。笑いすぎて窒息死じゃん」
パパとママが、また漫才を始めた。
木村家は通常運転だ。
0
あなたにおすすめの小説
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
【完結】夫に穢された純愛が兄に止めを刺されるまで
猫都299
児童書・童話
タイムリープしたかもしれない。中学生に戻っている? 夫に愛されなかった惨めな人生をやり直せそうだ。彼を振り向かせたい。しかしタイムリープ前の夫には多くの愛人がいた。純愛信者で奥手で恋愛経験もほぼない喪女にはハードルが高過ぎる。まずは同じ土俵で向き合えるように修行しよう。この際、己の理想もかなぐり捨てる。逆ハーレムを作ってメンバーが集まったら告白する! 兄(血は繋がっていない)にも色々教えてもらおう。…………メンバーが夫しか集まらなかった。
※小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、Nolaノベル、Tales、ツギクルの6サイトに投稿しています。
※ノベルアップ+にて不定期に進捗状況を報告しています。
※文字数を調整した【応募版】は2026年1月3日より、Nolaノベル、ツギクル、ベリーズカフェ、野いちごに投稿中です。
※2026.1.5に完結しました! 修正中です。
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
理想の王妃様
青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。
王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。
王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題!
で、そんな二人がどーなったか?
ざまぁ?ありです。
お気楽にお読みください。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
グリモワールなメモワール、それはめくるめくメメントモリ
和本明子
児童書・童話
あの夏、ぼくたちは“本”の中にいた。
夏休みのある日。図書館で宿題をしていた「チハル」と「レン」は、『なんでも願いが叶う本』を探している少女「マリン」と出会う。
空想めいた話しに興味を抱いた二人は本探しを手伝うことに。
三人は図書館の立入禁止の先にある地下室で、光を放つ不思議な一冊の本を見つける。
手に取ろうとした瞬間、なんとその本の中に吸いこまれてしまう。
気がつくとそこは、幼い頃に読んだことがある児童文学作品の世界だった。
現実世界に戻る手がかりもないまま、チハルたちは作中の主人公のように物語を進める――ページをめくるように、様々な『物語の世界』をめぐることになる。
やがて、ある『未完の物語の世界』に辿り着き、そこでマリンが叶えたかった願いとは――
大切なものは物語の中で、ずっと待っていた。
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる