ママは乳がん二年生!

織緒こん

文字の大きさ
12 / 12

おしまい。

しおりを挟む
 一月の終わり頃からなんかイヤなニュースが流れ出して、あっという間に日本を覆って行った。名前を言ってはいけないあのウィルスは世界中で猛威を奮って、ママは仕事がお休みになった。

「残念ながらお着物は、命に関わるお買い物じゃないのよね」

 ママはやれやれポーズで肩をすくめた。

 スズたち六年生は、小学校を有耶無耶のうちに卒業することになった。三月になって、学校は全国的にお休みで、卒業式の練習はママのスマホに届いた学校からのお知らせでやった。

 ステージの下でマスクをとって、ポケットに入れて、壇の上で証書をもらったら、降りて礼をしてからマスクをする。

『ご家庭で練習させてください』

「なんじゃそりゃあ」

 ママがスマホを見ながらずっこけた。

 余計なお金を使わないって決めて、お正月に着た着物で卒業式に行こうって言ってたけど、縮小版でするから和装禁止ってお知らせが来た。慌ててあいてるお店を探して行ったけど、スズが着られそうな女児向けスーツがあったのかなぁって棚は空だった。

 結局クラスでひとりだけ、中学校の制服で卒業式に出た。みんながいろんなスーツを着てたから、紛れてわからなかったから、まぁいいか。

 入学式も校門の前でクラス発表の紙と宿題だけもらって帰って、学校はずっとお休み。ママも相変わらずお店が休みで、もともと在宅でお仕事してたパパだけが、日常だった。

「復帰後、頑張りすぎてちょっと疲れてたから、ちょうどいい休養だわ。ママのがんも、スズの入卒ぶっ飛ばしも、十年経ったら笑い話よね」
 
 って、ママは笑った。

 ママは、毎日薬を飲んでいる。

 温泉行きたいなぁ、ってたびたび言う。

 パパと漫才めいたやりとりをして、笑っている。

 スズのママはとっても元気です。
しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

なぁ恋
2021.08.21 なぁ恋

笑いは癒し

本当に。

感動するやら泣けるやら

こんさんはこんさん自身がやっぱり素敵なんだなと。さらに思った。

2021.08.21 織緒こん

いろんな経験が糧になります。コレがあったから、『いつか死ぬなら好きなことしよう』と小説を書くのを再開しました(笑)。医師様からは老衰まで頑張れるよって言ってもらってるので、それまでにお空に逝くのなら、妄想しながら歩いてバナナの皮踏んで打ちどころ悪くコケる、とかだと思います(笑笑)。

解除
井幸ミキ
2021.03.13 井幸ミキ

はじめまして。いつも織緒さんの作品楽しみにしています。(カリスマ主婦~から拝読してます)
今日ようやくこちらの作品も読ませていただきました。
我が家には、腎臓癌10年生のパパさんと、名前を言ってはいけないウイルスで卒園&卒業式と入学式がもやもやになった姉妹と、その二人に挟まれつつ学校生活はあまり影響なかったぽやぽや男子くんがおりまして…
ぽやぽや男子くんがお腹にいる時にパパさん癌発見!、お腹から出てきてはわはわしている間に入院手術。実家から実母召喚!上の子の入園準備でわたわたしている頃に大地震!!関東だったから家の中のものがちょっと落ちてスーパーの棚からあれこれ減っちゃって買い物ちょっと大変だったなぁくらいの影響しかなかったのに、先日の黙祷の際は家族を亡くされた方がいたことを考えて涙が止まらなくなってしまってなんでだろ、と思ったり。
去年から今もずっと、あれこれすっとんでいく子供たちの行事や式典、日常が胸にせまったり。
スズちゃんのことばを読みながら、涙がじんわりで出てきました。
スズちゃんたちの手元に、何でもない、何の心配もない、普通の日々がいつの間に戻っていて、少し先の未来で、ちょっと大変だったりどきどきした時もあったよね、なんて時々思い出す日があるんだろうなぁ、な日常の予感が温かいです。
例のウイルスには多少振り回されつつ、我が家もそれなりにほわほわになってるみたいです。

2021.03.13 織緒こん

ご感想ありがとうございます。ご主人様、頑張られましたね。お子様がたとお母様、ご家族皆様で乗り越えられたこと、深く感服いたします。がん患者とその家族の物語は、ありそうでない物語でありながら、なさそうである物語になりました。免疫力を高めるためには、いっぱい笑うといいと聞ききました。miki様のご家族に、たくさんの笑顔があふれることをお祈りします。何気ない日常が一番の幸せであることを噛みしめながら、『ママは乳がん二年生!』を書きました。お読みくださって感謝いたします。

追伸・ほわほわなご家族素敵です!

解除

あなたにおすすめの小説

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

25匹の魚と猫と

ねこ沢ふたよ
児童書・童話
コメディです。 短編です。 暴虐無人の猫に一泡吹かせようと、水槽のメダカとグッピーが考えます。 何も考えずに笑って下さい ※クラムボンは笑いません 25周年おめでとうございます。 Copyright©︎

ホントのキモチ!

望月くらげ
児童書・童話
中学二年生の凜の学校には人気者の双子、樹と蒼がいる。 樹は女子に、蒼は男子に大人気。凜も樹に片思いをしていた。 けれど、大人しい凜は樹に挨拶すら自分からはできずにいた。 放課後の教室で一人きりでいる樹と出会った凜は勢いから告白してしまう。 樹からの返事は「俺も好きだった」というものだった。 けれど、凜が樹だと思って告白したのは、蒼だった……! 今さら間違いだったと言えず蒼と付き合うことになるが――。 ホントのキモチを伝えることができないふたり(さんにん?)の ドキドキもだもだ学園ラブストーリー。

【完結】真夜中、世界は10分間だけ停止する。

トト
児童書・童話
真夜中に人から出る煤を払って回る者たちがいる  ~カクヨム・アニバーサリー・チャンピオンシップ 2022~  お題「真夜中」より

この町ってなんなんだ!

朝山みどり
児童書・童話
山本航平は両親が仕事で海外へ行ってしまったので、義父の実家に預けられた。山間の古風な町、時代劇のセットのような家は航平はワクワクさせたが、航平はこの町の違和感の原因を探そうと調べ始める。

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

転生妃は後宮学園でのんびりしたい~冷徹皇帝の胃袋掴んだら、なぜか溺愛ルート始まりました!?~

旅する書斎(☆ほしい)
児童書・童話
平凡な女子高生だった私・茉莉(まり)は、交通事故に遭い、目覚めると中華風異世界・彩雲国の後宮に住む“嫌われ者の妃”・麗霞(れいか)に転生していた! 麗霞は毒婦だと噂され、冷徹非情で有名な若き皇帝・暁からは見向きもされない最悪の状況。面倒な権力争いを避け、前世の知識を活かして、後宮の学園で美味しいお菓子でも作りのんびり過ごしたい…そう思っていたのに、気まぐれに献上した「プリン」が、甘いものに興味がないはずの皇帝の胃袋を掴んでしまった! 「…面白い。明日もこれを作れ」 それをきっかけに、なぜか暁がわからの好感度が急上昇! 嫉妬する他の妃たちからの嫌がらせも、持ち前の雑草魂と現代知識で次々解決! 平穏なスローライフを目指す、転生妃の爽快成り上がり後宮ファンタジー!

ふしぎなリボン

こぐまじゅんこ
児童書・童話
ももちゃんは、クッキーをおばあちゃんにとどけようとおもいます。 はこにつめて、きいろいリボンをむすびました。 すると……。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。