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僕だけの番
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「もういいかな?」
「えっ!」
鈍い音は、子供達が遊んでいたブランコの方から聞こえてきた。そして、同じところから姉さんの声も聞こえてきて。
ーーえっ?
公園に一つだけある街頭の下のブランコに、姉さんの姿が見える。
「姉さん……いつからそこにいたの?」
姉さんは今、もういいかなって言った。
普段から、気配を消す事が得意な姉さん。
もしかしたら……。そう思って聞いた。
「ん? ミックがベンチに座るところからよ」
ブランコを揺らしながら、姉さんは笑う。
……それって最初から見てたって事? 全部?
全然気が付かなかった、そんなに完璧に気配って隠せるの?
それよりも、ちょっと……うわぁ。
僕とカイルのあれこれを姉さんは見ていたんだよね?
鳥獣人は目がいいから、めちゃくちゃしっかり見てたよね?
見られていたなんて! 恥ずかしすぎるっ……。
突然の姉さんの登場に、カイルもサミアの手首を握ったまま唖然としている。
「えいっ」と声を出してブランコを飛び降りた姉さんは、腕を捕まれ泣いてるサミアの前に立った。
掴んでいるカイルの手を無言で外し、自分の服の袖でサミアの涙を拭った。
それからサミアの両手をとり、ぎゅっと握って。
その一連の動きを呆然と受け入れるサミア。
涙は驚きとともに止まったみたいだ。
サミアを見つめる姉さんは、満面の笑みを浮かべた。
嬉しそうで、愛おしそうな……。
その表情は……まさか?
「姉さん? どうしたの?」
僕にも覚えがある。
でも、どうして?
だってその顔は……。
「この前ね、ミックの番、カイルに会いに行った時、私の『番』の匂いを微かに感じたの。確信はなかったんだけど、やっぱりそうだった!」
えっ……番?
まさか、その相手って⁈
でも、番は……。
「姉さん、番に出会うのって稀じゃなかった? 奇跡のような事なんでしょう? それなのに姉弟揃って会えるなんて……」
しかも、その相手は。
「でも、会えたんだもの!」
姉さんは、サミアからひと時も目を離さずに喜び声を上げる。
サミアは何かを察したのか、震えながらイヤイヤと首を横に振り、姉さんから体を離そうとした。
そんな彼女の姿も愛しいといわんばかりの姉さんは、逃がさないようにしっかり手を握っている。
「いや……」
怯えるような目で姉さんを見上げるサミア。
その目には止まっていた涙が溢れ出す。
姉さんはそんな彼女を見つめながら、嬉しそうに笑った。
「もう泣かないで、私の『番』ちゃん。大丈夫、ミックの『番』なんてすぐに忘れちゃうぐらい、私が沢山愛してあげる。ズブズブに溺れさせてあげるわ」
ニッコリ笑った姉さんは、驚き固まって動けないサミアの頬をするりと撫でた。それから耳についていた星のピアスを外し、空高く放り投げた。
「コレはいらない。私があげるからね」
放物線を描きながら星のピアスは夜空に消えた。
背の高い姉さんは、そのままサミアの後頭部を抱え込み、キスを落とした。
「んーっ!」
ここで、まさか姉さんのキスを見る事になるとは。
サミアは抵抗しようと、姉さんの体を押している。
けれど……。
「………ん……んんっ……あ……」
姉さんにたくみに口を開かされたサミアは途端に抵抗をやめた。
何がおこっているのか分からないけど、重なる唇からめちゃくちゃいやらしい音が聞こえる。
キスしながらサミアの頭を優しく撫でる姉さん。
サミアは姉さんの服をギュッと握り、夢中になっているみたいにキスを受け入れている。
長い、長いキス。
僕とカイルは、なぜか二人から目を逸らせずにいた。
永遠に続くかと思われていた長い濃厚なキスは、ちゅぱんと音を立て終わった。
唇を離した姉さんが、頬を染め蕩けるような目をしたサミアを甘く見つめる。
「ああ『番』って最高ね! ねぇサミア、私とのキスは気持ちよかったでしょう? 元々、鳥獣人はキスが上手なんだけど、その中でも私は特別上手いのよ」
そう言って、姉さんはまたサミアにキスをした。
「へぇ、そうなのか? ミックはまだまだなのになぁ」
二人を見ていたカイルは視線を僕に移してクスッと笑う。
知らないよ!
鳥獣人はキスが上手なんて、今はじめて聞いたから!
キスを終えた姉さんは満足気な顔をして、酔いしれ体の力が抜けてしまったサミアを抱き抱えた。
「ミック、私はこれからサミアを連れて家に帰るわ。あなたはカイルの家に行ってちょうだい。少なくとも一週間は帰って来ないで!」
「えっ、ええっ!」
突然、そんな急に……?
同様する僕の代わりに、カイルが姉さんに返事をした。
「いいよ、ミックは俺の家に連れて帰る」
「ありがとう、カイル。サミアは『人族』だから、コレからゆっくり『番』の良さを体に教え込まなくちゃ……ふふ」
コテンと頭を胸に預け、微笑んで抱かれているサミアは既に姉さんに落ちているように見えるけど。
キスだけで自分に溺れさせるなんて……姉さんはどんな凄いテクニックを持っているんだろう。
「じゃあね」
姉さんはウインクをして、サミアを抱き抱えたまま家へと帰った。
「じゃあ、俺たちも帰ろうか」
カイルは僕の手を取り、まるでお姫様にするみたいに口付けた。
「カイル」
僕だけのカイルになった?
さっきまでいた彼女は他の人と行ってしまったから。
「行こうか、ミック」
「うん」
嬉しくて、ギュッとカイルに抱きつくと、優しく抱き返してくれた。
それから、いつもみたいに悪戯な目で僕を見て「なに? もう待てないのか?」ってふざけて言う。
「そ、そんな事……」
恥ずかしくて唇をとがらせれば、カイルは満足そうに微笑んで僕の額にキスを落とした。
僕は……ずっと言いたかった言葉を口にした。
「カイル、僕だけの番」
「ああ、これからはお前だけの番だ」
それから僕はカイルの家に行った。
一人で暮らしているという彼の家はすごく大きくて、僕は何度も瞬きをした。
「もしかして、カイルってお金持ち?」
一人暮らしって、どんな仕事をすればこんな大きな家に暮らせるの?
「家のせいで金持ちって言われるけど、そうでもない。でもまぁ、お前一人ぐらいなら余裕で贅沢させてやれる程度かな」
カイルは家に入るとすぐに僕を抱き抱えた。
そのまま寝室へと向かい、中央に置いてある大きなベッドへと優しく下ろす。
ギッとスプリングの音を軋ませて、カイルは僕を組み敷いた。
その体勢で、シャツのボタンを外しはじめる。
あらわになった彼の体。彫刻みたいな鍛え上げられた体。
胸に輝いているのは僕と揃いのネックレス。
その首に腕を回した僕は顔を寄せ口づけた。
(あ、また…‥)
いろいろ話そうと思っていた。
まだカイルのすべてを知らないから。それに僕の事だって話してなくて。
知って欲しいと思うけど。
知りたい事は後で聞こう。
『番』の僕たちは、これからずっと一緒だから。
時間はたくさん。
だから今はーー。
二人だけの甘く蕩ける時間を過ごそう。
「もう一生離れない……」
互いにそう囁いて……。
「えっ!」
鈍い音は、子供達が遊んでいたブランコの方から聞こえてきた。そして、同じところから姉さんの声も聞こえてきて。
ーーえっ?
公園に一つだけある街頭の下のブランコに、姉さんの姿が見える。
「姉さん……いつからそこにいたの?」
姉さんは今、もういいかなって言った。
普段から、気配を消す事が得意な姉さん。
もしかしたら……。そう思って聞いた。
「ん? ミックがベンチに座るところからよ」
ブランコを揺らしながら、姉さんは笑う。
……それって最初から見てたって事? 全部?
全然気が付かなかった、そんなに完璧に気配って隠せるの?
それよりも、ちょっと……うわぁ。
僕とカイルのあれこれを姉さんは見ていたんだよね?
鳥獣人は目がいいから、めちゃくちゃしっかり見てたよね?
見られていたなんて! 恥ずかしすぎるっ……。
突然の姉さんの登場に、カイルもサミアの手首を握ったまま唖然としている。
「えいっ」と声を出してブランコを飛び降りた姉さんは、腕を捕まれ泣いてるサミアの前に立った。
掴んでいるカイルの手を無言で外し、自分の服の袖でサミアの涙を拭った。
それからサミアの両手をとり、ぎゅっと握って。
その一連の動きを呆然と受け入れるサミア。
涙は驚きとともに止まったみたいだ。
サミアを見つめる姉さんは、満面の笑みを浮かべた。
嬉しそうで、愛おしそうな……。
その表情は……まさか?
「姉さん? どうしたの?」
僕にも覚えがある。
でも、どうして?
だってその顔は……。
「この前ね、ミックの番、カイルに会いに行った時、私の『番』の匂いを微かに感じたの。確信はなかったんだけど、やっぱりそうだった!」
えっ……番?
まさか、その相手って⁈
でも、番は……。
「姉さん、番に出会うのって稀じゃなかった? 奇跡のような事なんでしょう? それなのに姉弟揃って会えるなんて……」
しかも、その相手は。
「でも、会えたんだもの!」
姉さんは、サミアからひと時も目を離さずに喜び声を上げる。
サミアは何かを察したのか、震えながらイヤイヤと首を横に振り、姉さんから体を離そうとした。
そんな彼女の姿も愛しいといわんばかりの姉さんは、逃がさないようにしっかり手を握っている。
「いや……」
怯えるような目で姉さんを見上げるサミア。
その目には止まっていた涙が溢れ出す。
姉さんはそんな彼女を見つめながら、嬉しそうに笑った。
「もう泣かないで、私の『番』ちゃん。大丈夫、ミックの『番』なんてすぐに忘れちゃうぐらい、私が沢山愛してあげる。ズブズブに溺れさせてあげるわ」
ニッコリ笑った姉さんは、驚き固まって動けないサミアの頬をするりと撫でた。それから耳についていた星のピアスを外し、空高く放り投げた。
「コレはいらない。私があげるからね」
放物線を描きながら星のピアスは夜空に消えた。
背の高い姉さんは、そのままサミアの後頭部を抱え込み、キスを落とした。
「んーっ!」
ここで、まさか姉さんのキスを見る事になるとは。
サミアは抵抗しようと、姉さんの体を押している。
けれど……。
「………ん……んんっ……あ……」
姉さんにたくみに口を開かされたサミアは途端に抵抗をやめた。
何がおこっているのか分からないけど、重なる唇からめちゃくちゃいやらしい音が聞こえる。
キスしながらサミアの頭を優しく撫でる姉さん。
サミアは姉さんの服をギュッと握り、夢中になっているみたいにキスを受け入れている。
長い、長いキス。
僕とカイルは、なぜか二人から目を逸らせずにいた。
永遠に続くかと思われていた長い濃厚なキスは、ちゅぱんと音を立て終わった。
唇を離した姉さんが、頬を染め蕩けるような目をしたサミアを甘く見つめる。
「ああ『番』って最高ね! ねぇサミア、私とのキスは気持ちよかったでしょう? 元々、鳥獣人はキスが上手なんだけど、その中でも私は特別上手いのよ」
そう言って、姉さんはまたサミアにキスをした。
「へぇ、そうなのか? ミックはまだまだなのになぁ」
二人を見ていたカイルは視線を僕に移してクスッと笑う。
知らないよ!
鳥獣人はキスが上手なんて、今はじめて聞いたから!
キスを終えた姉さんは満足気な顔をして、酔いしれ体の力が抜けてしまったサミアを抱き抱えた。
「ミック、私はこれからサミアを連れて家に帰るわ。あなたはカイルの家に行ってちょうだい。少なくとも一週間は帰って来ないで!」
「えっ、ええっ!」
突然、そんな急に……?
同様する僕の代わりに、カイルが姉さんに返事をした。
「いいよ、ミックは俺の家に連れて帰る」
「ありがとう、カイル。サミアは『人族』だから、コレからゆっくり『番』の良さを体に教え込まなくちゃ……ふふ」
コテンと頭を胸に預け、微笑んで抱かれているサミアは既に姉さんに落ちているように見えるけど。
キスだけで自分に溺れさせるなんて……姉さんはどんな凄いテクニックを持っているんだろう。
「じゃあね」
姉さんはウインクをして、サミアを抱き抱えたまま家へと帰った。
「じゃあ、俺たちも帰ろうか」
カイルは僕の手を取り、まるでお姫様にするみたいに口付けた。
「カイル」
僕だけのカイルになった?
さっきまでいた彼女は他の人と行ってしまったから。
「行こうか、ミック」
「うん」
嬉しくて、ギュッとカイルに抱きつくと、優しく抱き返してくれた。
それから、いつもみたいに悪戯な目で僕を見て「なに? もう待てないのか?」ってふざけて言う。
「そ、そんな事……」
恥ずかしくて唇をとがらせれば、カイルは満足そうに微笑んで僕の額にキスを落とした。
僕は……ずっと言いたかった言葉を口にした。
「カイル、僕だけの番」
「ああ、これからはお前だけの番だ」
それから僕はカイルの家に行った。
一人で暮らしているという彼の家はすごく大きくて、僕は何度も瞬きをした。
「もしかして、カイルってお金持ち?」
一人暮らしって、どんな仕事をすればこんな大きな家に暮らせるの?
「家のせいで金持ちって言われるけど、そうでもない。でもまぁ、お前一人ぐらいなら余裕で贅沢させてやれる程度かな」
カイルは家に入るとすぐに僕を抱き抱えた。
そのまま寝室へと向かい、中央に置いてある大きなベッドへと優しく下ろす。
ギッとスプリングの音を軋ませて、カイルは僕を組み敷いた。
その体勢で、シャツのボタンを外しはじめる。
あらわになった彼の体。彫刻みたいな鍛え上げられた体。
胸に輝いているのは僕と揃いのネックレス。
その首に腕を回した僕は顔を寄せ口づけた。
(あ、また…‥)
いろいろ話そうと思っていた。
まだカイルのすべてを知らないから。それに僕の事だって話してなくて。
知って欲しいと思うけど。
知りたい事は後で聞こう。
『番』の僕たちは、これからずっと一緒だから。
時間はたくさん。
だから今はーー。
二人だけの甘く蕩ける時間を過ごそう。
「もう一生離れない……」
互いにそう囁いて……。
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