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本編
第118 衆人の中 2
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「いてっ! 何で殴る? 俺は望みを持つ事の大切さをだなーーー」
「もう、お前は黙れ。レフラ様の護衛が、みな馬鹿だと思われたら堪らん」
凄むリランに、ラクーシュが唇を尖らせた。ハッキリと不満だと描いたような表情に、レフラはハラハラしてしまう。
「アハハハ」
それなのに、エルフィルはいつものように、横で笑うだけなのだ。
「エルフィル様も、そうやって笑ってばかりいないで、止めて下さい」
向けた表情が、だいぶ困り果てて見えたのかもしれない。目が合ったエルフィルが「おや?」といった表情を浮かべた。
「大丈夫ですよ。本気でマズそうな時は、ちゃんと止めますから、安心して下さい」
いつもの笑いを治めて、口元だけを緩めた真面目な顔に、レフラはコクッと頷いた。
いつもラクーシュと一緒に、リランに小言を言われる事の多いエルフィルだ。そんなエルフィルの見慣れない表情に、どことなく戸惑ってしまう。
「とは言っても、これはコイツらなりのじゃれ合いみたいなものなので、全然心配ないですけどね」
だけど次の瞬間、また笑い出したエルフィルだった。一瞬だけ呆気に取られながらも、レフラも釣られて笑ってしまう。
「なんか、お前は美味しいところだけ、持っていくよな」
「そうそう、チャッカリしやがって」
「お前らと違って、立ち回りが上手いからな」
ハンッとエルフィルが笑い飛ばしたところで、目的の店先に辿り着いた4人だった。
レフラは遠くから見かけた赤い物の正体に、また目を輝かせた。
「サラク飴ですね」
「まぁ、祭の定番だからな」
一口大のサラクという果実をいくつか串刺しにして、赤い飴で固めたお菓子だった。
「せっかくですから、購入しますか?」
レフラの様子に気が付いたリランが、クスッと笑って、ジャラジャラ鳴る革袋を取り出した。
「事前にギガイ様から、お預かりしてますから」
袋の中には、いったい幾らのお金が入っているのだろう。その袋の膨らみも、ギガイの準備の良さにも驚いてしまう。
「市場に出れば、間違いなく降りたがるはずだ、と仰ってましたよ」
「市場は現金取引ですからね、見越して準備をしていた、ってことですね」
ギガイにとっては、望まない事態なはずなのだ。それなのに、まさかこんな風に、準備をしてくれたなんて、少しも思っていなかった。
「じゃあ、これと、他にも欲しい物がありますか?」
リランが飴に手を伸ばした。
「他の物は要りません。ただ……サラク飴を何個か、お願いしても良いですか?」
「はい、大丈夫ですが、いくつ購入しますか?」
「……7個欲しいです」
「7個、ですか?」
少し驚いたように、リランがレフラの言葉を繰り返した。
「……レフラ様、甘い物だけでは大きく成れませんよ」
「いや、本当にお前は少し黙ってろ」
口を挟んできたラクーシュに、すかさずリランが突っ込んでくる。
「アハハハ、でもレフラ様、あまり日持ちしませんよ。一気に食べると、お腹も痛くなりますし」
エルフィルの注意もどこか子どもへ言い聞かせているような気がして、レフラは慌てて否定した。
「違います。1人で食べるんじゃなくて……あの、皆さんは、こういうお菓子は嫌いですか?」
「……私達、ですか?」
「はい……あの……村で2年に1度、お祭りがあって。子ども達が並んで食べているのを見ていて……」
「……」
「私もやってみたくて……でも、子どもっぽくて、ちょっと恥ずかしいですね」
少し申し訳なさそうに笑うレフラに、3人が顔を見合わせた。
「そんな事はないですよ。たまには楽しそうで、良いですね」
「アドフィル様にもお土産になりますしね」
「戻ったら、皆で頂きましょう」
口々にそう言ってくれる3人が、レフラに付き合ってくれているだけだと、分かっている。ギガイの執務室の雰囲気に、この安っぽいお菓子がそぐわないことも、きっと彼等の口に子ども向けのこのお菓子が合わないことも、分かっている。
それでも、受け入れてもらえる幸せに、レフラの胸の辺りが熱くなった。
「もう、お前は黙れ。レフラ様の護衛が、みな馬鹿だと思われたら堪らん」
凄むリランに、ラクーシュが唇を尖らせた。ハッキリと不満だと描いたような表情に、レフラはハラハラしてしまう。
「アハハハ」
それなのに、エルフィルはいつものように、横で笑うだけなのだ。
「エルフィル様も、そうやって笑ってばかりいないで、止めて下さい」
向けた表情が、だいぶ困り果てて見えたのかもしれない。目が合ったエルフィルが「おや?」といった表情を浮かべた。
「大丈夫ですよ。本気でマズそうな時は、ちゃんと止めますから、安心して下さい」
いつもの笑いを治めて、口元だけを緩めた真面目な顔に、レフラはコクッと頷いた。
いつもラクーシュと一緒に、リランに小言を言われる事の多いエルフィルだ。そんなエルフィルの見慣れない表情に、どことなく戸惑ってしまう。
「とは言っても、これはコイツらなりのじゃれ合いみたいなものなので、全然心配ないですけどね」
だけど次の瞬間、また笑い出したエルフィルだった。一瞬だけ呆気に取られながらも、レフラも釣られて笑ってしまう。
「なんか、お前は美味しいところだけ、持っていくよな」
「そうそう、チャッカリしやがって」
「お前らと違って、立ち回りが上手いからな」
ハンッとエルフィルが笑い飛ばしたところで、目的の店先に辿り着いた4人だった。
レフラは遠くから見かけた赤い物の正体に、また目を輝かせた。
「サラク飴ですね」
「まぁ、祭の定番だからな」
一口大のサラクという果実をいくつか串刺しにして、赤い飴で固めたお菓子だった。
「せっかくですから、購入しますか?」
レフラの様子に気が付いたリランが、クスッと笑って、ジャラジャラ鳴る革袋を取り出した。
「事前にギガイ様から、お預かりしてますから」
袋の中には、いったい幾らのお金が入っているのだろう。その袋の膨らみも、ギガイの準備の良さにも驚いてしまう。
「市場に出れば、間違いなく降りたがるはずだ、と仰ってましたよ」
「市場は現金取引ですからね、見越して準備をしていた、ってことですね」
ギガイにとっては、望まない事態なはずなのだ。それなのに、まさかこんな風に、準備をしてくれたなんて、少しも思っていなかった。
「じゃあ、これと、他にも欲しい物がありますか?」
リランが飴に手を伸ばした。
「他の物は要りません。ただ……サラク飴を何個か、お願いしても良いですか?」
「はい、大丈夫ですが、いくつ購入しますか?」
「……7個欲しいです」
「7個、ですか?」
少し驚いたように、リランがレフラの言葉を繰り返した。
「……レフラ様、甘い物だけでは大きく成れませんよ」
「いや、本当にお前は少し黙ってろ」
口を挟んできたラクーシュに、すかさずリランが突っ込んでくる。
「アハハハ、でもレフラ様、あまり日持ちしませんよ。一気に食べると、お腹も痛くなりますし」
エルフィルの注意もどこか子どもへ言い聞かせているような気がして、レフラは慌てて否定した。
「違います。1人で食べるんじゃなくて……あの、皆さんは、こういうお菓子は嫌いですか?」
「……私達、ですか?」
「はい……あの……村で2年に1度、お祭りがあって。子ども達が並んで食べているのを見ていて……」
「……」
「私もやってみたくて……でも、子どもっぽくて、ちょっと恥ずかしいですね」
少し申し訳なさそうに笑うレフラに、3人が顔を見合わせた。
「そんな事はないですよ。たまには楽しそうで、良いですね」
「アドフィル様にもお土産になりますしね」
「戻ったら、皆で頂きましょう」
口々にそう言ってくれる3人が、レフラに付き合ってくれているだけだと、分かっている。ギガイの執務室の雰囲気に、この安っぽいお菓子がそぐわないことも、きっと彼等の口に子ども向けのこのお菓子が合わないことも、分かっている。
それでも、受け入れてもらえる幸せに、レフラの胸の辺りが熱くなった。
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