172 / 229
第一部
誤りを正して 5
しおりを挟む
「医癒官を宮へ呼んでおけ、戻り次第レフラを診せる」
「かしこまりました」
ラクーシュが一礼して下がったのを確認し、ギガイが壁際で唖然とした顔で見上げてくる男達のそばへ近付いた。
「ぐはっ!!」
腕の中のレフラへ震動が響かないように気をつけながら脚で思い切って蹴り上げれば、呆気なく男の巨体が反対の壁に激突する。
「ひっ!!」
もうひとりの男がその仲間の姿を見て怖じ気付いたのか、青い顔でギガイの方ーーいや、腕に抱えられたレフラの姿を見上げていた。
「これがレフラを傷付けたナイフか」
しゃがみ込んで床に落ちていたナイフを拾い上げる。
「あっ、いえ、ほ、本当に傷付けるつもりはなかったんです!ただそいつがムリに動いちまってーー」
「ほう、それならレフラが悪いと言うのか」
「そ、そんなつもりではーーぎゃああ!!」
腹立たしい目を向ける顔に向かってナイフを振るう。途端にうるさく上がった声がひどく耳障りだった。
だが腕の中で固まっている様子のレフラには、あまりに刺激が強かったのかもしれない。仕方ない、と手に持ったナイフを床へと投げ捨ててギガイが外へ向かって歩き出した。
「こいつらをいったん表へ出せ」
建物の外には近衛隊と警備隊の臣下が膝を付いて控えていた。それを遠巻きに民が見守っている。
その中に無理やり引きずり出され、跪かされる男が2人。すでにボロボロな様子にざわめき立っていた人の輪がシーンと静まり返っていく。
「とりあえずこいつらを殺せ」
「ギガイ様、待って下さい」
レフラがギガイの服をクンッと引いた。
「…まさかこんな奴らの命乞いか?」
「いえ、そうではございません。ただ、私怨でギガイ様の統治が乱れる事が心配です。それは私怨ではなく掟に従った処罰ですか?」
レフラの不安げな表情からギガイを心配している事が伝わってくる。そんなレフラの頭に大丈夫だ、とキスをしたギガイの耳に今度は不快な声が聞こえてきた。
「ギガイ様、私ども紫族の者が何か致しましたでしょうか?」
紫族の族長代理として祭りの為に最近常駐している男だった。
「その場合でも、基本的に他種族間での争いはその種族間での解決なはず。黒族長であるギガイ様の手を煩わすほどではありません」
この場を解けと暗に言ってくる男へギガイが凄絶に鋭く冷たい目を向ける。
「黒族の地で私の民を損なった場合、いかなる理由でも排除の権利は私が持つのが掟なはずだ」
「ですが、その腕の中の方は黒族の方にはお見受けできませんが」
「これは私に嫁いだ私の寵妃だ。それを私の民ではないと愚かにも告げるのか?」
「あっ、いえ、そんなつもりはございません」
「ならば、この者達の排除の権利は私が持つはずだ。それとも何だ。この者達の雇い主として、貴様がその責を負うというのか?」
「いえ、そんな者達は知りません!そのようなご理由でしたらどうぞギガイ様のご随意に」
概ねのところ、跳び族ごときとのいざこざで金を使ったはずの傭兵を失うことが納得いかなかったのだろう。そそくさと引き返すその背をギガイが冷たく見やる。
「私は戻る。こいつらの処理は任せる、結果だけを持ってこい。あと、あの男の解任の圧を紫族へ掛けておけ」
そばに居たリュクトワスへいつも通りに指示をして、ギガイが宮に向かって歩き始める。腕の中のレフラへ視線が集まっていた。その視線から隠すように、ギガイがレフラの布を引き上げた。
「かしこまりました」
ラクーシュが一礼して下がったのを確認し、ギガイが壁際で唖然とした顔で見上げてくる男達のそばへ近付いた。
「ぐはっ!!」
腕の中のレフラへ震動が響かないように気をつけながら脚で思い切って蹴り上げれば、呆気なく男の巨体が反対の壁に激突する。
「ひっ!!」
もうひとりの男がその仲間の姿を見て怖じ気付いたのか、青い顔でギガイの方ーーいや、腕に抱えられたレフラの姿を見上げていた。
「これがレフラを傷付けたナイフか」
しゃがみ込んで床に落ちていたナイフを拾い上げる。
「あっ、いえ、ほ、本当に傷付けるつもりはなかったんです!ただそいつがムリに動いちまってーー」
「ほう、それならレフラが悪いと言うのか」
「そ、そんなつもりではーーぎゃああ!!」
腹立たしい目を向ける顔に向かってナイフを振るう。途端にうるさく上がった声がひどく耳障りだった。
だが腕の中で固まっている様子のレフラには、あまりに刺激が強かったのかもしれない。仕方ない、と手に持ったナイフを床へと投げ捨ててギガイが外へ向かって歩き出した。
「こいつらをいったん表へ出せ」
建物の外には近衛隊と警備隊の臣下が膝を付いて控えていた。それを遠巻きに民が見守っている。
その中に無理やり引きずり出され、跪かされる男が2人。すでにボロボロな様子にざわめき立っていた人の輪がシーンと静まり返っていく。
「とりあえずこいつらを殺せ」
「ギガイ様、待って下さい」
レフラがギガイの服をクンッと引いた。
「…まさかこんな奴らの命乞いか?」
「いえ、そうではございません。ただ、私怨でギガイ様の統治が乱れる事が心配です。それは私怨ではなく掟に従った処罰ですか?」
レフラの不安げな表情からギガイを心配している事が伝わってくる。そんなレフラの頭に大丈夫だ、とキスをしたギガイの耳に今度は不快な声が聞こえてきた。
「ギガイ様、私ども紫族の者が何か致しましたでしょうか?」
紫族の族長代理として祭りの為に最近常駐している男だった。
「その場合でも、基本的に他種族間での争いはその種族間での解決なはず。黒族長であるギガイ様の手を煩わすほどではありません」
この場を解けと暗に言ってくる男へギガイが凄絶に鋭く冷たい目を向ける。
「黒族の地で私の民を損なった場合、いかなる理由でも排除の権利は私が持つのが掟なはずだ」
「ですが、その腕の中の方は黒族の方にはお見受けできませんが」
「これは私に嫁いだ私の寵妃だ。それを私の民ではないと愚かにも告げるのか?」
「あっ、いえ、そんなつもりはございません」
「ならば、この者達の排除の権利は私が持つはずだ。それとも何だ。この者達の雇い主として、貴様がその責を負うというのか?」
「いえ、そんな者達は知りません!そのようなご理由でしたらどうぞギガイ様のご随意に」
概ねのところ、跳び族ごときとのいざこざで金を使ったはずの傭兵を失うことが納得いかなかったのだろう。そそくさと引き返すその背をギガイが冷たく見やる。
「私は戻る。こいつらの処理は任せる、結果だけを持ってこい。あと、あの男の解任の圧を紫族へ掛けておけ」
そばに居たリュクトワスへいつも通りに指示をして、ギガイが宮に向かって歩き始める。腕の中のレフラへ視線が集まっていた。その視線から隠すように、ギガイがレフラの布を引き上げた。
16
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。
牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。
牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。
そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。
ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー
母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。
そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー
「え?僕のお乳が飲みたいの?」
「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」
「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」
そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー
昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」
*
総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。
いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><)
誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
「大人扱いしていい?」〜純情当主、執務室で策士な従兄の『相性確認』にハメられる〜
中山(ほ)
BL
「ルイン、少し口開けてみて」
仕事終わりの静かな執務室。
差し入れの食事と、ポーションの瓶。
信頼していた従兄のトロンに誘われるまま、
ルインは「大人の相性確認」を始めることになる。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる