18 / 39
第一章2人の未来(みく)
10年目の真実 ーChiffonside
しおりを挟む
あの後、お義母様は戸田さんたちの名前を私が知っていたことを何も聞いてはこなかった。たぶん、あの後話題になってただろうに。
結婚して半年が過ぎたころ、妊娠していることが分かった。しかも、双子。
「双子を妊娠してるからって、3人分食べなくていいのよ。それより、早産になることが多いからくれぐれも無理しないようにね」
私が双子を妊娠していることを知って、清華のお兄ちゃんのお嫁さん、乃笑留さんが妊娠中の食生活のアドバイスをしてくれた。乃笑留さんは病院の管理栄養士をしている。
「ホントに今の若いお母さんって、何考えてるか分からない人、多いんだもん。あ、結城さんがそうだとは言わないのよ」
乃笑留さんだってまだまだ若いのに、ため息をつきながらそう言った。
「ちゃんと『朝ご飯食べたよ』って報告受けて、よく聞くとスナック菓子だったりね。そんなのがザラだから……」
いくら何でもお菓子を主食にはしないけど、私。でも、お世辞にも良い食生活だとは言えないかも。
「ま、悪阻で食嗜好が変わるのは事実だけど、自分の欲求に任せてケーキばかり食べてたりとかね。ホント、指導のし甲斐があるってものなのよ」
「そうなんですか」
「妊娠ってことの意味を知らないのかな。命を何だと思ってるんだって説教したくなるのをこらえるのに必死にならなきゃならないのよ」
小柄でお人形さんみたいな彼女のオバサンチックな発言に、私は笑いを堪えるのに必死だった……あの一言を聞くまでは。
「知らないうちに妊娠して、流産までしているケースまであるんだから。ウチみたいなのが特殊なんだとしてもよ、そこまで呑気になれるもんなのかしらね」
乃笑留さんのママはある病気を抱えていて、それこそ自分の命を引き替えにしてでもと彼女を産んだのだと、前に清華に聞いたことがある。
それにしても、流産してることに気づかない人もいる私はある1つの憶測が頭を過って固まってしまった。
「流産が分からない人がいるんですか?」
そう彼女に尋ねた声は震えていたかもしれない。
「ただ遅れた生理がかなり重いなとしか思わなかったとすればね……どうしたの? 結城さん」
急に考え込んでしまった私を、乃笑留さんは怪訝そうに見つめた。
本人が気づいていない内に流産していることがある。その一言で私が囚われてしまった1つの憶測…
向こうのママ(つまりはこっちのお義母様)ももしかしたら知らないうちに流産しているのではないだろうか。そして、その事実を私のように何らかの形で、龍太郎さん(つまりはお義父様)だけが後年知ってしまったとしたら……しかも、お互い別の相手と結婚して、その人と子供まで成した後で。
私たち子供には口が裂けても言わないんだけど、志穂さん(こっちではママ)は龍太郎さんとの結婚って最初は偽装だったみたい。親たちの手前でだけ結婚して、志穂さんは別の男性と付き合っていた。
だから、龍太郎さんは、秀一郎さんを自分の子供だと思ってなかったみたい。徐々に自分にそっくりになっていく秀一郎さんに戸惑いながらも、ムリにそれを否定していたという。
でも……秀一郎さんが自分と同じ病に冒されたことで、本当に自分の子供だと認めざるを得なくなって、ママと別れたことを後悔しての衝動死だったと彼女らは見ている様だ。
だけど、龍太郎さんは秀一郎さんが自分の血を分けた本当の子供だと、とっくに気付いていたのではないだろうか。それでも、それはあっちのママではなく、志穂さんだったから生まれて来たのだ。そう思っていたのだとしたら……
そう思って、新しい出会い・家族を大切にして生きてきた龍太郎さんはある時知ってしまったんだ。本当はあっちのママにもちゃんと子供が出来ていたってことを。
体調を崩したあっちのママをその時に病院にすぐ連れて行って流産だとはっきり診断されていれば、自分に原因があるかもしれないと検査もしなかっただろうし、龍太郎さんの性格なら、生まれてこれなかった命でもそのことの『責任』といいう形であっちのママとの結婚を進めることができたんじゃないだろうか。実際、こっちでは、梁原さんとの子供の秀一郎さんを自分の子として迎え入れている訳だし。
でなければ、龍太郎さんはあっちの秀一郎さんを本当に可愛がっていたみたいだから、秀一郎さんが11歳にもなって命を絶つのはおかしすぎる。
あっちのママにも子供ができていた。そう考えれば全ての辻褄が合うのだ。
だけど、この事実をお義母様に確認するのは気が引けた。妊娠中の今、何気ない様子でそういう話題を出すことは可能だけど…それに龍太郎さんが死んでいるのはあっちの世界での話だし。
折角のプロの栄養指導なのに、その日の乃笑留さんの話は、何も私の頭には残ってはいなかった。
結婚して半年が過ぎたころ、妊娠していることが分かった。しかも、双子。
「双子を妊娠してるからって、3人分食べなくていいのよ。それより、早産になることが多いからくれぐれも無理しないようにね」
私が双子を妊娠していることを知って、清華のお兄ちゃんのお嫁さん、乃笑留さんが妊娠中の食生活のアドバイスをしてくれた。乃笑留さんは病院の管理栄養士をしている。
「ホントに今の若いお母さんって、何考えてるか分からない人、多いんだもん。あ、結城さんがそうだとは言わないのよ」
乃笑留さんだってまだまだ若いのに、ため息をつきながらそう言った。
「ちゃんと『朝ご飯食べたよ』って報告受けて、よく聞くとスナック菓子だったりね。そんなのがザラだから……」
いくら何でもお菓子を主食にはしないけど、私。でも、お世辞にも良い食生活だとは言えないかも。
「ま、悪阻で食嗜好が変わるのは事実だけど、自分の欲求に任せてケーキばかり食べてたりとかね。ホント、指導のし甲斐があるってものなのよ」
「そうなんですか」
「妊娠ってことの意味を知らないのかな。命を何だと思ってるんだって説教したくなるのをこらえるのに必死にならなきゃならないのよ」
小柄でお人形さんみたいな彼女のオバサンチックな発言に、私は笑いを堪えるのに必死だった……あの一言を聞くまでは。
「知らないうちに妊娠して、流産までしているケースまであるんだから。ウチみたいなのが特殊なんだとしてもよ、そこまで呑気になれるもんなのかしらね」
乃笑留さんのママはある病気を抱えていて、それこそ自分の命を引き替えにしてでもと彼女を産んだのだと、前に清華に聞いたことがある。
それにしても、流産してることに気づかない人もいる私はある1つの憶測が頭を過って固まってしまった。
「流産が分からない人がいるんですか?」
そう彼女に尋ねた声は震えていたかもしれない。
「ただ遅れた生理がかなり重いなとしか思わなかったとすればね……どうしたの? 結城さん」
急に考え込んでしまった私を、乃笑留さんは怪訝そうに見つめた。
本人が気づいていない内に流産していることがある。その一言で私が囚われてしまった1つの憶測…
向こうのママ(つまりはこっちのお義母様)ももしかしたら知らないうちに流産しているのではないだろうか。そして、その事実を私のように何らかの形で、龍太郎さん(つまりはお義父様)だけが後年知ってしまったとしたら……しかも、お互い別の相手と結婚して、その人と子供まで成した後で。
私たち子供には口が裂けても言わないんだけど、志穂さん(こっちではママ)は龍太郎さんとの結婚って最初は偽装だったみたい。親たちの手前でだけ結婚して、志穂さんは別の男性と付き合っていた。
だから、龍太郎さんは、秀一郎さんを自分の子供だと思ってなかったみたい。徐々に自分にそっくりになっていく秀一郎さんに戸惑いながらも、ムリにそれを否定していたという。
でも……秀一郎さんが自分と同じ病に冒されたことで、本当に自分の子供だと認めざるを得なくなって、ママと別れたことを後悔しての衝動死だったと彼女らは見ている様だ。
だけど、龍太郎さんは秀一郎さんが自分の血を分けた本当の子供だと、とっくに気付いていたのではないだろうか。それでも、それはあっちのママではなく、志穂さんだったから生まれて来たのだ。そう思っていたのだとしたら……
そう思って、新しい出会い・家族を大切にして生きてきた龍太郎さんはある時知ってしまったんだ。本当はあっちのママにもちゃんと子供が出来ていたってことを。
体調を崩したあっちのママをその時に病院にすぐ連れて行って流産だとはっきり診断されていれば、自分に原因があるかもしれないと検査もしなかっただろうし、龍太郎さんの性格なら、生まれてこれなかった命でもそのことの『責任』といいう形であっちのママとの結婚を進めることができたんじゃないだろうか。実際、こっちでは、梁原さんとの子供の秀一郎さんを自分の子として迎え入れている訳だし。
でなければ、龍太郎さんはあっちの秀一郎さんを本当に可愛がっていたみたいだから、秀一郎さんが11歳にもなって命を絶つのはおかしすぎる。
あっちのママにも子供ができていた。そう考えれば全ての辻褄が合うのだ。
だけど、この事実をお義母様に確認するのは気が引けた。妊娠中の今、何気ない様子でそういう話題を出すことは可能だけど…それに龍太郎さんが死んでいるのはあっちの世界での話だし。
折角のプロの栄養指導なのに、その日の乃笑留さんの話は、何も私の頭には残ってはいなかった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる