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第二章それぞれの未来(みらい)
似た者同士 -Chiffonside
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翌々日、子供たちを送り出した後病院に行った私は、病室の前で立ち尽くすお祖母様を見た。
「お祖母様、入られないんですか」
良く見るとお祖母様は泣いていた。
「涙が止まらないとあの子に気づかれると思うんだけど、なかなか止まらなくて……」
「じゃぁ、少しお話しません。」
私がそう言って誘うと、お祖母様はびっくりした顔をされたが、こくりと頷いた。
私とお祖母様は、病院内のコーヒーラウンジに出かけた。
「ねぇ未来さん、こんなことをあなたに聞くのは何なんだけど……私、反対した方が良かったのかしら」
「何がですか?」
「あの子の……夏海ちゃんの結婚」
お祖母様は苦悩の表情を浮かべながらそう言った。
「私、結城君があの子をもらいに来た時、一切反対しないでお嫁に行かせたの。でもね、私があの時あの結婚に異を唱えていたら、あの子は結城の家で苦労なんかせずに、こんなことにもならなかったんじゃないかと思ってしまうのよね」
事情を知るはずもない孫の嫁の私に、細かいことを言うこともできず、歯切れの悪い言い方でお祖母様は私にそう言った。
たぶん、お祖母様は秀一郎さんが本当はお義父様の子供ではなく、遭難して亡くなった梁原さんとの子供だということを、状況からなのかはたまた女性独特のカンでなのかはわからないけれど、悟っているんだと思う。そして、それが嫁としてどれだけのストレスとなっているのかと慮っているのだろう。そのストレスこそが病の要因だと思うと、あの時の自分の判断を責めずにはおられないといったところだろうか。
「でも、だったら秀一郎さんは生まれてませんし、そうなれば私も結城に嫁ぐこともありませんでしたわ」
私も何も知らないフリでそう答えた。私は、お義母様がお義父様と結ばれなかった世界も知っているけれど、彼女と私のどちらが本当に幸せなのかは、私には計れない。確かにあちらの私は苦労している。でも、それだけじゃない。それは、当のお義母様も同じなのではないかと思う。
「そ、そうね。あなたには失礼な話だったかしらね、ごめんなさい」
「いいえ、とんでもない」
「こんなだから、あの子にも嫌われるのよね」
そして、お祖母さまはため息を吐きながらそう言った。
「いいえ、お義母様はお祖母さまを嫌ってなんかおられませんよ」
「えっ?」
それに対して私がそう言うと、お祖母様は心底びっくりしたという表情をした。
「お義母様はお祖母様に甘えたいと思ってられますよ、きっと」
お義母様とお祖母様はご自分たちそうは思ってらっしゃらないみたいだけどよく似ているのだ。だから、お互い反発してしまう。だけど、本当は一番お互いを欲している。
「そうなのかしら」
首を傾げていうおばあさまに私は、
「絶対にそうですよ。私がお義母様なら一度でいいから、1日中甘えていたいと思いますよ。一度、思いっきり抱きしめて差し上げたらどうですか」
と、自分の倍以上の歳のお祖母様にそう言った。そう、そう出来るチャンスはあと少ししか残されていないのだから。今の内に歩み寄らないと、お祖母様はご自分が亡くなるまでずっと後悔されることになると思う。私の気持ちが通じたのだろうか、お祖母様は、私の言葉に頷いてこう言った。
「そ、そうね。じゃぁ、思い切って嫌がられてもそうしてしまおうかしら」
「はい、そうなさってください。でも、お義母様はたぶん嫌がられないと、私は思いますよ」
私は笑顔でそう答えた。
そうして、お祖母様は一足先にコーヒーラウンジを出た。私は、しばらくの間、病室には戻らず院内の売店で買うでもなく物を見続けた。
「お祖母様、入られないんですか」
良く見るとお祖母様は泣いていた。
「涙が止まらないとあの子に気づかれると思うんだけど、なかなか止まらなくて……」
「じゃぁ、少しお話しません。」
私がそう言って誘うと、お祖母様はびっくりした顔をされたが、こくりと頷いた。
私とお祖母様は、病院内のコーヒーラウンジに出かけた。
「ねぇ未来さん、こんなことをあなたに聞くのは何なんだけど……私、反対した方が良かったのかしら」
「何がですか?」
「あの子の……夏海ちゃんの結婚」
お祖母様は苦悩の表情を浮かべながらそう言った。
「私、結城君があの子をもらいに来た時、一切反対しないでお嫁に行かせたの。でもね、私があの時あの結婚に異を唱えていたら、あの子は結城の家で苦労なんかせずに、こんなことにもならなかったんじゃないかと思ってしまうのよね」
事情を知るはずもない孫の嫁の私に、細かいことを言うこともできず、歯切れの悪い言い方でお祖母様は私にそう言った。
たぶん、お祖母様は秀一郎さんが本当はお義父様の子供ではなく、遭難して亡くなった梁原さんとの子供だということを、状況からなのかはたまた女性独特のカンでなのかはわからないけれど、悟っているんだと思う。そして、それが嫁としてどれだけのストレスとなっているのかと慮っているのだろう。そのストレスこそが病の要因だと思うと、あの時の自分の判断を責めずにはおられないといったところだろうか。
「でも、だったら秀一郎さんは生まれてませんし、そうなれば私も結城に嫁ぐこともありませんでしたわ」
私も何も知らないフリでそう答えた。私は、お義母様がお義父様と結ばれなかった世界も知っているけれど、彼女と私のどちらが本当に幸せなのかは、私には計れない。確かにあちらの私は苦労している。でも、それだけじゃない。それは、当のお義母様も同じなのではないかと思う。
「そ、そうね。あなたには失礼な話だったかしらね、ごめんなさい」
「いいえ、とんでもない」
「こんなだから、あの子にも嫌われるのよね」
そして、お祖母さまはため息を吐きながらそう言った。
「いいえ、お義母様はお祖母さまを嫌ってなんかおられませんよ」
「えっ?」
それに対して私がそう言うと、お祖母様は心底びっくりしたという表情をした。
「お義母様はお祖母様に甘えたいと思ってられますよ、きっと」
お義母様とお祖母様はご自分たちそうは思ってらっしゃらないみたいだけどよく似ているのだ。だから、お互い反発してしまう。だけど、本当は一番お互いを欲している。
「そうなのかしら」
首を傾げていうおばあさまに私は、
「絶対にそうですよ。私がお義母様なら一度でいいから、1日中甘えていたいと思いますよ。一度、思いっきり抱きしめて差し上げたらどうですか」
と、自分の倍以上の歳のお祖母様にそう言った。そう、そう出来るチャンスはあと少ししか残されていないのだから。今の内に歩み寄らないと、お祖母様はご自分が亡くなるまでずっと後悔されることになると思う。私の気持ちが通じたのだろうか、お祖母様は、私の言葉に頷いてこう言った。
「そ、そうね。じゃぁ、思い切って嫌がられてもそうしてしまおうかしら」
「はい、そうなさってください。でも、お義母様はたぶん嫌がられないと、私は思いますよ」
私は笑顔でそう答えた。
そうして、お祖母様は一足先にコーヒーラウンジを出た。私は、しばらくの間、病室には戻らず院内の売店で買うでもなく物を見続けた。
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