異世界転生モノの主人公に転生したけどせっかくだからBルートを選んでみる。

kaonohito

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第5話 授爵の儀────辺境貴族の末っ子、貴族になる。

Chapter-17

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 いや、完全に油断していた。

 油断していた理由は3つ。

 ひとつ目は、このあたりの原作の内容を忘れていたこと。
 この直後の皇宮でのイメージがでかすぎて、ここそのもので何があったかの印象が薄かったんだよな。
イベント整理した時も思い出せなくて困ったほどだ。

 ふたつ目は、俺が倒したのは下位種のドラゴンだということ。
 原作でマイケル・アルヴィンが倒すのは、以前も言った通りエンシェント・ドラゴンがノーブル上級アンデッド化したアンデッド・ドラゴン。
 普通の人間には、まず倒すのは無理ゲー。
 だからこそ授爵を、という話になった、と、思っていた。

 実際、も、授爵の推薦は受けたわけだが、だからと言って、原作通りのこんな騒ぎになるとは、思ってもみなかった。

「あのー……」

 俺は、向かい合わせに、姉弟子の隣りに座った、皇宮からの遣いという老紳士に、声をかけた。

「いかが、されましたかな?」
「いや、これは一体、何の騒ぎなのかなと、思いまして」

 俺は、老紳士に訊ねる。

「それはもちろん、みなさんが、この度ドラゴンを見事倒し、竜禍を未然に防いだ英雄であるからであります」

 老紳士は、当然、としつつも、俺達を褒めちぎるように、そう言った。

 俺は、困惑した表情で、やっぱり困ったような顔のキャロと、顔を見合わせる。

「俺達が倒したのは、フツーのドラゴン1体ですよ、それで、こんな騒ぎになってるんですか?」

 まったく、ホントに。なんでこんな大袈裟な話になってんの?

「普通の、下位種のドラゴンと言えど、簡単に倒せてしまえるような代物ではありません。その事は、誇ってよろしいかと」

 いや、まぁ、確かにそれは、そうなんだけどね。

 確かに、下位種のドラゴンには、鋼の武器だってまったく通用しないわけじゃない。けれど、物理的にそれが可能であるかどうかと、実際に実行するのとでは、全然ワケが違う。

「それに、ドラゴンが現れた場所が、問題だったのです」
「…………あ!」

 老紳士の言葉に、キャロが、気がついたように短く声を出した。

「そうよ、アルヴィン。もし、あのドラゴンを倒せていなかったら、ノール村が襲われていたかもしれないんだわ」
「それだけではありません」

 キャロは、納得したようにそう言ったが、老紳士は、さらに、それ続けるように、言う。

「一度人の味を覚えたドラゴンは、また、人を襲います。あのままであれば、ブリュサンメル上級伯領内や、その周辺で、大きな被害が出るであろうことは、想像に難くありません」
「確かに……それはそうですが……」

 俺は、そう言いかけて、ある想定に行き当たった。

「そうか……ノール村はブリュサムズシティからはそれほど離れていない、最悪、領都が襲われる可能性もあったのか!」

 息を呑むようにして、俺はそう言った。

「はい。左様でございます」

 俺達は、ヤツの動きが限定される洞窟の中で戦ったから、勝ち目もあったし、周囲に損害らしい損害も出さずに済んだ。
 だが、もし、俺達があそこで仕留めることもなく、人の集落を襲うようになっていたら、目も当てられないような被害が出ていたろう。

「その災禍を未然に防いだ功労者があなた方なのですよ」
「!」

 老紳士に言われて、俺はその事に気がついた。
 そう、もうひとつ、気にかかっていたこと。

「あなたといいますと、俺1人で戦ったわけじゃないということも?」
「はい、陛下も承知しておられます。ですから皆様方をお連れすることになりました」

 なるほどな。原作イベントとはまた違う展開になっている。

 原作では皇帝に謁見を許されるのはマイケル・アルヴィン1人の筈だ。それに保護者として姉弟子がついてくるぐらい。

 だが、今の俺達は、2台の馬車に分乗して、4人共皇宮へと向かっている。

 ちなみに、ジャックとエミが、もう1台の、後続の馬車に乗っていた。

 馬車は、空港へと繋がる道から、大通りを通って、皇宮の正面へと向かっていく。
 その、大通りのはるか先まで、沿道は、群衆でその左右が埋め尽くされていた。
 ものものしい行列だからなのか、それとも俺達、ドラゴン・スレイヤーをひと目見ようというのか。
 後者だとしたら、結構、伝わっている話には尾ひれ背びれが盛大にくっついている気もするが。

 そして、大通りの終点、すなわち、アドラーシールム皇宮の正面へと、馬車は進んでいく。

「うぉ……でけぇ……」

 こんなでかい城は初めて見た。いや、前世の世界にもヨーロッパにはあったのかも知れないが、俺は海外に出たことがない。
 日本の城は見たことがあるが、基本的に戦城のそれとは異質なもののようにも見える。

「はぁ────」

 流石にここまで来ると、俺も緊張の度合いは高まってくる。キャロも、普段の態度はどこへやら、借りてきた猫のようだ。

 やはりそれらしく、皇宮の全周は堀で囲まれている。その堀を跳ね上げ橋の門を通って渡り、皇宮を取り囲む城壁の中へと進んでいく。

 皇宮本殿の前についたところで、馬車は止まった。そこからは、本殿の中から、赤い絨毯が伸びてきている。

 あんぐり。俺はただただその規模に圧倒されていた。

 ただ、建物の規模と言うだけなら、そりゃあ六本木ヒルズとか、東京都庁の方がでかいだろう。だが、そうした実用的な建物とは違う、とにかく、見た目に圧倒してくる迫力が、目の前の城にはあった。

「流石に……アルヴィンでもここまで来ると緊張するのね」
「あ、当たり前だろ」

 キャロのどこか不安そうな言葉に、俺も喉がカラカラになるような感覚を覚えながらそう答える。

 知識として知っていても、B6版の誌面で見るのと、実際に自分が体験するのとでは、ぜんぜん違う。
 しかも皇宮の雰囲気に圧倒されているのもそうだが、これから皇帝陛下に謁見するのだ。前世では天皇陛下と直にお会いする機会なんてなかったし、緊張するなと言われても無理だ。

「マイケル・アルヴィン・バックエショフ殿に敬礼、捧げー剣!」

 整列した近衛兵が、隊長の号令で俺に向かって剣を前に構えるポーズを取る。それだけで俺は少しビビってしまう。

 2台目の馬車からジャックとエミが降りてくる。ジャックはもう、完全に圧倒されてる感半端ない。エミですら、俺にも緊張しているのが解るほどにガチガチだ。

「さ、陛下がお待ちになられております、謁見の間へどうぞ」
「は、はい」

 俺は促されるままに、赤い絨毯の上を歩く。

 内部の雰囲気は、内装のイメージとしては、知っているところでは近いのは国会議事堂。だがスケールがぜんぜん違う。雰囲気もぜんぜん違う。

 首がキョロキョロとしそうになるが、それ以前にガチガチに緊張してて結局首が動かん。何だこの感覚は。

「もっと肩の力抜いていいぞ、と言っても無理だろうね」

 姉弟子が、どこか投げやりにそう言ってくる。ハイ、無理です。
 そうか、姉弟子は授爵してるから、少なくとも一度は経験あるんだな。

「姉弟子、やっぱりあれですか、顔を上げるのは2回言われてから、とか、最初は直接言葉をかわしてはいけないとか、あるんですか?」

 俺は緊張して前を向いたまま、姉弟子を突くようにして、小声で訊ねた。

「いや……今の陛下になられてからはそう言うのはなくなった。よく知ってるな、お前」

 いや、これは前世で、他の創作物から得られた、そういうこともあるという知識だったんだが、万一にも皇帝陛下に無礼があってはならないと、念のために訊いておいた。

 そのまま、真っすぐ歩いて正面の謁見の間に入る。広い。ここだけでちょっとした体育館ぐらいのスペースがあるんじゃないかと思ってしまう。

 左右には、儀式を担当する儀仗兵の列。そして、正面には、高座に存在する、皇帝の玉座。

 未だ、皇帝陛下は出てきていないと言うのに、俺は、その雰囲気に、飲み込まれ、翻弄されてしまっていた。
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