痴漢冤罪に遭遇したニートな俺のダイハードな48時間

ご隠居

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東京高検検事長・藤川弘一郎は最高検の刑事部長、次長検事であった頃、調査活動費を私的に流用していた

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「藤川検事長は知ってるな?」

 押田部長は唐突にそう問いかけた。どうやら俺に尋ねているわけではなく、志貴に尋ねていた。志貴もそうと察して、

「はい。先週、着任されたばかりの藤川弘一郎東京高検検事長ですね?確か…、前は最高検の次長検事だったかと…」

 そう応じた。

「その通りだ」

「もっとも、俺のような一介の特捜検事にとっては雲の上の人ですが…」

「それは俺にも言えることだ」

「いえ、そんな…」

 志貴は頭を掻いてみせた。

「で…、押田部長が預かってるって言う、浅井さんからの告発状はそのふじかわ検事長と関係ありですか?」

 俺が口を挟むと、押田部長は頷いた。それを見て取った志貴は顔を強張らせた。

「藤川は最高検にいた折、調査活動費を横領していた…」

 押田部長は天井を仰ぎ見つつ、そう語った。藤川と呼び捨てになった。

「何ですってっ!?」

 志貴は素っ頓狂な声を上げた。それも当然と言えた。何しろ身内の犯罪だからだ。

「ちょうさかつどうひ?」

 俺は聞き慣れないその言葉に首をかしげつつ、復唱した。

「まぁ、検察の捜査費のようなものだな…」

「つまり捜査費を私的に流用…、横領していたと?」

「そうだ。そして横領した金でマンションを購入していた」

「横領した金で自宅マンションを購入したと?」

「いや、自宅ではない」

「えっ?」

「…分かるだろう?」

 押田部長がそう謎かけしたので、俺が先に答えた。

「まさか…、妾宅、ですか?」

「吉良君はまた随分と古風な言い方をするなぁ…」

 押田部長は苦笑しつつも、「まぁ、そういうことだ」と認めた。

「呆れた話だな…、で、横領金額は?」

 俺は身を乗り出して尋ねた。

「8000万円だ」

「妾宅を購入するために8000万もの金を横領したと言うんですか?」

 俺は眉をひそめて尋ねた。

「まぁ、妾宅の購入費だけじゃなく、その他の遊興費にも消えただろうが…」

「それにしても良く問題になりませんでしたねぇ…、いや、こうして浅井さんが押田部長に告発状を提出したわけだから…、ああ、浅井さんは自ら押田部長の元へと足を運んで?」

 告発状を届けたのかと、俺は示唆した。すると押田部長は頷いた。

「もっとも…、本来ならばもっと早くに問題になっていなければならなかったんだがな…」

「それは…、どういう意味ですか?」

 俺は首をかしげた。

「浅井事務官は実は去年の今頃、警視庁本部の捜査二課に告発状を提出していたんだよ。無論、告発人にはきちんと自らの名前をしたためてな…」

「それにしてもどうして押田部長がそんなことをご存知なので?浅井さんから直に聞かされたことですか?」

 俺が尋ねると、押田部長は頭を振った。

「それがそうじゃないんだよ…」

 警視庁本部の捜査二課に告発状を提出したなどと、そのようなことは告発人である浅井事務官を除いては知る人などいないように思われた。まさか浅井事務官がわざわざ藤川に教えてやったとも思えない。

「それが警視総監から聞かされたんだよ…」

 押田部長はやれやれといった顔付きでそう答えた。だがそれは俺や志貴には衝撃をもたらした。とりわけ志貴がそうであり、心底、驚いた表情を見せた。

「警視総監って、あの警視総監ですか?」

 俺は思わず聞き返したほどで、そんな俺がおかしかったのか、押田部長は苦笑しながら、「ああ、あの警視総監だよ」と律儀に答えてくれた。

「…警視総監が自ら、押田部長に連絡を…、電話でも?」

 志貴がそこでようやく衝撃から立ち直ったのか、そう尋ねた。

「ああ。警視総監から連絡があったんだよ…」

「それはやはり、去年の今頃ですか?」

 俺は押田部長が頷くものと予期しつつ、そう尋ねたわけだが、案に相違して、押田部長は頭を振った。

「それがそうじゃないんだな…」

「と言うと…」

「先々週なんだよ」

「先々週…、って言えば藤川なにがしが東京高検検事長に就任した前の週ってことですか?前の週に警視総監から押田部長に電話連絡があったと?浅井さんの告発状の件で…」

 俺が確かめるように尋ねると、「ああ…」と押田部長は答えた。

「そこで俺は警視総監から浅井事務官の告発状の詳しい中身についても教えられたんだ…」

 押田がそう切り出すと、「ああ、そうです…」と志貴は思い出したように声を上げた。

「そもそもどうして浅井事務官は藤川…、検事長の横領のことを知っていたんですか?」

 志貴も押田部長同様、藤川に対して検事長と敬称をつけてやることには抵抗感があったようだが、それでも押田部長のように仮にも「雲の上の人」である高検検事長ポストにある藤川を呼び捨てにすることはできず、それゆえ嫌々ながらも、「検事長」との敬称をつけたのがアリアリであった。

 するとそうと察した押田部長は苦笑しながら、「藤川で良い…」と請け合ったので、それで志貴も安心して、「それでは藤川と呼びますが…」とようやく、ふんぎりがついた様子を見せると、

「浅井事務官は藤川の横領のことをどうして知っていたんですか?」

 志貴は改めてそう尋ねた。

「俺もそれは警視総監から聞かされて初めて知ったんだが…」

 押田部長はそう切り出すと、告発状の中身について、すなわち、浅井事務官が何ゆえ藤川の横領を知っていたのか、その理由を語り始めた。

「調査活動費の横領だが、藤川が自ら手を染めていたわけではないんだ…」

「もしかして…、浅井さんが藤川に命じられて、とか?」

 俺はそう勘を働かせた。

「ああ。浅井事務官は最高検事務局の会計課長でな、藤川がまだ最高検の次長検事に着任する前、刑事部長だった頃から既にそのポストに就いていたんだが、藤川は最高検の刑事部長として会計課長の浅井事務官に対して裏金作りを指示したんだよ…」

「藤川が浅井事務官に対して、ですか?」

 志貴は確かめるように尋ねた。細かい点を確かめるのは検事の習性だろう。

「正確には藤川が事務局次長に命じて、事務局次長から部下である会計課長の浅井事務官に対して、刑事部長からのご下命という格好で命令されたわけだが…」

「裏金作りに関しては事務局次長はノータッチ…、っつか実務を知らないので、実際には藤川が浅井さんに裏金作りを命じたも同じことだと?」

 俺が合いの手を入れると押田部長は頷いた。

「もっとも、裏金作りそのものはずっと前から行われていたことなんだが…」

 押田部長がそう言いかけると、俺は先回りして、「もしかして、藤川は裏金の更なる増額を要求したとか?」と尋ね、押田部長の目を丸くさせた。

「良く分かったな…」

「いえ…、ただ藤川が愛人との密会用のマンションやその他の遊興費に8000万もの大金を投じたと、さっき教えてもらったんで、それで裏金がこれまでと同じ額だったら、愛人との密会用のマンションの購入費には足りないんじゃないかと思って。それで…、と言っても最高検の裏金…、ずっと前から行われていたその最高検での裏金作りの額たるや、果たしていかほどのものなのか、それは俺にも分かりませんけど…」

「それよりも少ない、それも4分の1に相当する2000万だそうだ…」

「毎年、2000万もの裏金を作っていたと?」

「浅井事務官の告発状にはそう書いてあった。警視庁捜査二課宛ての告発状は勿論のこと、俺に宛てての告発状にもな…」

「そうですか…、それなら仮に今まで通りの、年間2000万の裏金ではマンションを買うのは不可能ですよね…、その上、その他の遊興費ともなると…、仮に6000万のマンションだとしてもせいぜい、毎年2000万を返済するって3年ローンでも組まない限りは…、いや、これも金利手数料を無視した話ですが…、ともあれそんなことをしたらそれこそ、最高検内部から大ブーイングでしょうね。何しろ裏金と言えば、個人が使うための金というよりは皆で使う金って感じですから、それを藤川が独り占めするようなことをしたら…」

 俺がそんな素人目線の感想を洩らすと、「その通りだよ」との押田部長の答えが返ってきた。

「だからこそ藤川は裏金のさらなる増額を求めたそうだ…」

「今まで通り、年間2000万の裏金については私的流用するわけにはいかないから、新たに8000万の裏金を作れと?」

「いや、さすがに8000万もの裏金を毎年作らせるのは不可能だろうから…、藤川もその程度のことは分かっていたらしく、その4分の1、つまりはそれまでの裏金と同額の2000万を新たに毎年作れと、藤川は事務局次長を通じて会計課長の浅井事務官に命じたそうだ…」

「つまり浅井さんは正規の…、といった表現がこの場合、相応しいのかは大いに疑問があるところですが、ともかく正規の2000万の裏金作りに加えて、藤川が遊ぶための裏金として新たに2000万もの裏金を作る羽目になった…、つまり浅井さんは年間4000万もの裏金作りにタッチせざるを得なくなったと?」

「そういうことだ」

「浅井さん、反発しなかったんですか?」

「当初は反発しなかったそうだ」

「当初は?」

 俺は首をかしげた。

「ああ。藤川は当初、事務局次長に対して…、それはつまりは会計課長の浅井事務官に対しては、と同義語なんだが、新たに2000万もの裏金作りを指示したことについて、あくまでこれは検察のため…、正規の予算に加えて、これまでの正規の裏金を加えたところで、検察はロクに捜査も行えないだろうから、さらに裏金を増額しろと…、そうして増額した裏金で末端の検事の捜査経費を補うと…、つまりはこれは検察のためであると…」

「藤川はそんなことを口にしたんですか?」

 俺は呆れた口調で尋ねた。

「ああ」

「それで浅井さんはその時はそれを…、藤川の嘘っぱちを真に受けて、何とか新たに2000万もの裏金作りに着手したと?」

「そういうことだ」

「それでも浅井さんはいつか気付いたわけですよね?話の流れから察するに…」

「ああ。藤川が次長検事に就いてから2年目…、藤川は最高検の刑事部長を2年務めた後、次長検事に就いて、その2年目の時…、それも2年目が間もなく終わろうとしていた時だった…」

「つまり藤川にはその時点で既に8000万もの裏金が…、浅井さんにしてみればよもや藤川個人に流れていたとはその時までは思っていなかったと…」

 俺が確かめるように尋ねると押田部長は、「ああ」と頷いた。

「その、藤川に8000万の裏金が行き渡った頃に浅井事務官の耳に良からぬ噂が届き始めたそうだ…」

 押田部長はやはり謎かけするようにそう告げたので、俺が答えることにした。

「もしかして…、藤川が分不相応な豪遊をしているとか…、例えば銀座のクラブとかで…、そんで水商売風の女を愛人として囲い、密会用のマンションまで買ってやったらしい…、とか?」

 俺があけすけに尋ねると、押田部長はやはり苦笑した。

「さすがに密会用のマンションうんぬんは言い過ぎだが、その通りだ」

「それで浅井さんは初めて自分は藤川に良いように利用されていたと気付いた?」

「まぁ、薄々だが、藤川の良からぬ噂は浅井事務官の耳にもそれとなく届いていたようだが、それでもまさか、との思いもあって…」

「それまで見過ごしてきたと?」

 俺が先回りして尋ねると押田部長は頷いた。

「それでも藤川が次長検事として2年目を終えようとした時、すなわち新たな裏金の増額分である8000万が藤川に行き渡った時点でこれはおかしいと、浅井さんはそう思われたわけですか?」

「そうだ。それに人事もあった」

「人事?」

「ああ。藤川が次長検事として2年目を終えようとしていた時、それはすなわち、去年のことだったんだよ…」

「去年、ってことは浅井さんが警視庁捜査二課に告発状を出した?」

「ああ、その年ということになる」

「でもそれが何か?」

「最高検の次長検事を2年も務めればそろそろ異動の季節を迎える。最高検の次長検事の異動先と言えば東京高検の検事長か大阪高検の検事長、若しくは広島高検の検事長辺りが相場なんだ…」

「なるほど…」

「で、藤川は東京高検の検事長に内定したんだが…」

「でも実際には藤川が東京高検の検事長に就いたのは先週だと…」

 俺は志貴の言葉を思い出して確かめるようにそう言った。

「その通りだ」

「ってことは警視庁捜査二課への告発状がネックになったとか?」

 俺はそう勘を働かせた。

「その通りだ。高検の検事長クラスの人事ともなると、当然、内閣人事局の案件だ。そして今の、そして藤川が捜査二課に告発された時も、内閣人事局の局長は元警察官僚の松田洋司だ。当然、警視庁筋から情報が入っただろう…」

「藤川が捜査二課に告発された…、警視庁筋からその情報を得たその松田なる元警察官僚の内閣人事局長は、果たしてそんな男を高検の、それも東京高検の検事長という枢要なポストに就けても良いものかと…、さしずめ官房長官にご注進に及んだと?」

「だろうな。内閣人事局を仕切っているのは内閣官房長官だからな」

「それで藤川の人事が1年間、塩漬けにされていたと?」

「結果的にはそうなるのかも知れんな…」

「結果的には?」

 首をかしげる俺に対して押田部長は「それを説明する前に浅井事務官のことに話を戻そう」と告げた。
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