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いわゆる痴漢被害者の草壁忍への訊問 4
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「…それじゃあなにか?田島は…、警視総監公舎で浅井さんを嵌める計画を練ったってことか?この草壁忍と交えて」
俺は目の前の草壁忍に聞こえないよう、後ろを向いて志貴に囁いた。志貴もそこが…、田島がタクシー運転手に告げたという隼町が警視総監公舎のある場所だと俺に教えてくれた時にもそうして後ろを振り向き、俺もそれにつられて後ろに振り向いたところでそう囁かれたからだ。
「なに、男同士でヒソヒソやってんのよ。キモ…」
女に、それも元ヤンキー風情のクズみたいな女から「キモ」などと侮蔑的言辞を吐かれる覚えはなかったものの、それでも今の場合はこのクズ女もとい草壁忍に今の俺たちのヒソヒソ話はどうやら聞こえなかったらしいと、俺は安心感の方が嫌悪感よりも上回った。
「いや…、何でもない…、で、隼町にタクシーが着いて、その後はどうした?」
「勿論、タクシーから降りたわよ」
「そりゃそうだよな…、で、そのタクシーが停まった場所だが、こ…、建物の前だったか?それとも建物から離れた場所でタクシーを停車させて…、無論、田島が、という意味だが…、で、建物から離れた場所で降りて、そっから建物に向かったのか…」
「ああ。それならね、建物…、っつか屋敷から少し離れたところで田島さん、ここで良いって、運転手に言って、で、お金を払って降りたの…」
「そうか…」
益々もってその建物が警視総監公舎である可能性が高まった。
「で…、あんた達は…、あんたと田島はその建物の前まで来た…、当然、インターフォンを鳴らしたよな?」
「ええ。田島さんが、インターフォンの画面?そんなところに折りたたみ式のあの警察手帳をかざしたら、門扉だっけ?あれが自動的に開いたのよ…」
「なるほど…、それであんたはお屋敷だと思ったわけだな?」
「そう。それに門だけじゃなくって、家そのものも結構なたたずまい、だっけ?そんな感じ」
俺はもやは、その建物が警視総監公舎だと確信した。
「で…、その建物には勿論、建物の主がいたんだよな…、主があんた達を出迎えてくれたんだよな…、まさかそこが田島のお家じゃないだろうし…」
「そりゃそうよ…、あんなお屋敷に田島さんが住めるとも思えないもの…、第一、インターフォンの画面に警察手帳をかざしたのも訪問者ってことだろうし…」
「そうだよな…、なら当然、建物…、屋敷の主が別にいたわけで、その屋敷の主があんた達を…、門を潜ったあんた達を出迎えたわけだよな?玄関先で…」
「ああ。それがねぇ…」
「もしかして…、玄関は開いていた、とか?」
「そうなのよ。てっきり誰かが内側からドアを開けてくれるものだと思っていたら、田島さんがさも当然って感じでドアを開けたもんだから、勝手に開けて良いのかよ、って思ったほどだった…」
草壁忍はその時の情景を思い浮かべたらしい。
「なるほど…、それならあんたが驚くのも無理はないな…」
俺は草壁忍に調子を合わせた。
「それで…、田島はあんたが驚くのを尻目に、勝手にドアを開けて玄関から屋敷の中へと上った…、勿論、あんたも田島のあとに続いて屋敷の中に上ったわけだな?」
俺は確かめるように尋ねた。
「その通りよ」
「で、玄関から屋敷の中に上った田島とあんたはその後、どこに向かった?話し合いってことはリビングかどこかに向かったわけだよな?」
「そう。ソファのある部屋に行ったの」
「勿論、田島の案内で、だな?」
「勿論よ」
「それでそのソファのある、リビングらしき場所には誰かいたか?例えば部屋の主だとか…」
「二人の男がいたけれど、部屋の主って感じじゃないわね…」
「どうしてそう言い切れる?」
「何だか田島さん、その二人に対しては随分と偉そうに振舞っていたから…」
「つまり二人の男は田島の部下、ってことか?」
「恐らくはそう思う。だから…」
「そうだな…、上司の田島ですら住めないようなそんな屋敷に部下が住めるはずがない…、よな」
「そっ、そっ」
俺の言葉に草壁忍は何度も頷いた。
「そしてその二人の男こそが、田島と共に浅井さんを取り押さえた…、ええっと…」
俺がまごついていると、すかさず志貴が「近野和也と杉山玄…」と耳打ちしてくれた。
「ああ、そうだった…、近野和也と杉山玄だったわけだな?」
俺は改めて尋ねると、草壁忍は目を丸くした。
「へぇ…、あの二人、こんのかずやとすぎやまはるか、って言うんだ…」
「あんた…、名前を知らなかったのか?」
「苗字は知ってたけど、名前までは…」
「フルネームは聞かなかったのか?」
「勿論、聞こうとしたけれど、その必要はないって…」
「二人のフルネームを聞き出そうとしたあんたを田島が制して、その代わりに田島は二人の苗字だけをあんたに教えた…、そんなところか?」
「そうなのっ!」
「で、そこでようやく、痴漢冤罪で嵌めることが話し合われたわけだな?」
「まぁ、いきなりじゃなかったけど…」
「ってことは前置きがあったと?」
「ええ」
「どんな前置きだ?」
「ええっと…、田島さんが言うには、田島さんの大切な人が今、とても困っているって…」
「それで?」
「こいつに脅されてるんだって…、写真を見せられたの…」
「写真…、そこには勿論、浅井さんが…、後にあんたが、いや、あんた達が嵌めた浅井さんが写っていたわけだな?」
「ええ」
「で?それに対してあんたはどう答えたんだ?」
「どうって?」
「だから、親しい人ってのは具体的には誰なのか、とか、脅されてるって話だが、脅しの内容は何なのか、とかそういったことを尋ねなかったのか?」
「そんなこと、一々、聞いていられないよ…」
草壁忍は実にあっけらかんとした口調で答え、これには俺の方が驚かされたものだった。
「それじゃあ…、あんたは一切の事情も聞かずに痴漢冤罪でこの写真の男、もとい浅井さんを嵌めることを了承したって言うのか?」
「だって、世話になってる田島さんの頼みじゃ仕方ないじゃない」
「それは…、そうかも知れんが…」
草壁忍は実に罪の意識の欠片もない様子であった。恐らくは遊びの延長線上で引き受けたのではないかと、そう思わせるほどであった。
ともあれ俺は先を続けた。
「それで…、話を田島から浅井さんの写真を見せられた場面に戻すが…、田島はそこで初めてあんたに痴漢冤罪を持ちかけたのか?浅井さんを痴漢冤罪で嵌めたいので協力して欲しいとか、何とか…」
「いや…、その前に写真の男を懲らしめてやりたいんだって…」
「田島にそう言われたわけだな?」
「そう」
「で、それからどうした?」
「で、懲らしめるってどういうこと?って私が尋ねて、それで…」
「初めて田島の口から痴漢冤罪が聞かれたわけだな?浅井さん…、この写真の男を痴漢冤罪で嵌めたいって…」
「そう。それで私、何だか面白そうで…」
やはりこの馬鹿女は遊び感覚で浅井事務官を嵌めたのであった。浅井事務官が聞いたならば間違いなくこの馬鹿女を絞め殺そうとしたに違いない。いや、殺していたに違いない。他人事ながら、俺も憤りを感じたほどだ。
ともあれ俺はそんな内心の憤りは押し隠して続けた。
「あんたは面白半分で痴漢冤罪を引き受けたわけだな?」
俺はそれでもつい詰問調となってしまったが、草壁忍はそうとは気付かずに、「そうなのよ」とこれまた罪の意識の欠片もない、実にあっけらかんとした様子で答えた。これには俺も憤りを通り越してただ、呆れるのみであった。
一方、草壁忍はそうとは気付かずに、「でも、引き受けるからには名前と仕事ぐらいは教えて欲しいってせがんだけどね」と付け加えた。
「それで田島は浅井さんの名と、それに検察事務官であることをあんたに教えたのか?」
「そう、もっとも名前に関しちゃ苗字だけだけどね」
つまり下の名前の光一は教えてくれなかったようだ。
「それで…、浅井さんのその苗字を田島があんたに教えた後はどうした?」
「具体的な段取りに入った」
「浅井さんをいかにして罠に…、痴漢冤罪で嵌めるか、その具体的な段取り…、それを打ち合せたというんだな?」
「そう」
「具体的には?」
「具体的ってどういう意味?」
「どんな打ち合わせをした?覚えている範囲で教えてくれ」
「ああ、そういこと…、ええとね…、その浅井って事務官は普段から東武東上線の急行列車の後部座席に乗って、それが浅井の定位置らしいんだけど…、それを利用することにしたのよね…」
「どう利用することにしたんだ?」
「私がまず浅井の真後ろに立ち、そして田島さんたち三人の刑事が私を取り囲むようにして立つ、って打ち合わせをしたのよ」
「あんたの周りを田島たち、三人の刑事に取り囲ませたのは他の乗客に目撃させないためだな?浅井さんが本当はあんたの尻なぞ触ってはいない、ということを目撃されないために」
「その通りよ」
草壁忍は投げ遣りに答えた。
「各駅停車ではなく急行列車を選んだ理由は?」
「さっきも言ったでしょ。浅井って事務官が急行列車の後部座席に乗るのが日課だからよ」
「だが急行列車、それも帰宅ラッシュの時を狙うとなるとそれだけ沢山の乗客が列車に乗り込むわけだから必ずしも浅井さんが自分の定位置に立てるわけじゃないだろう?新幹線の指定席じゃないんだから。他の乗客に立たれちまう恐れだってあるはずだろ?よしんば浅井さんが運良く後部座席のお気に入りの定位置に立てたとしてもだ、その浅井さんの真後ろにあんたが立てる、って保証はどこにもないだろう?誰か別の乗客に立たれちまう恐れだってあるはずだ。そうなれば浅井さんを痴漢で嵌めるって計画は破綻を来すんじゃないか?もっとも、あんた達の浅井さんを痴漢で嵌めるって姦計は一応…、俺たちがこうして冤罪だと暴くまでは成功したんだから計画はその時点ではどうやら破綻をきたさなかったようだがな…」
「それなら心配することでもないのよ」
「どうしてだ?」
「浅井は自分のそのお気に入りの定位置に立つべく急行列車をいつも遅らせるのよ」
「つまりホームの待合の列の最前列に並ぶ、ってことだな」
「そうよ」
「そしてあんたや田島たち三人の刑事は浅井さんを尾行して浅井さんの真後ろに立ち、そして入線してきた急行列車のドアが開いた瞬間、浅井さんの真後ろをあんたや田島たち三人の刑事で固めてそれこそ雪崩れ込むようにして列車に乗り込んで、そしてあんたは浅井さんの真後ろに立つことに見事成功し、そしてあんたの周りを田島たち三人の刑事で固めることにも成功したって寸法だな?」
「そう」
「下赤塚を通過してから声を張り上げた理由は?」
「最初の停車駅である成増駅が間近に迫っていたからよ」
「あんまり早くに声を張り上げると他の乗客が介入してきて、もっと言えば果たして浅井さんは本当にあんたの尻を触ったのか、疑問を持つ乗客が現れるかも知れず、そうなれば浅井さんを痴漢で嵌めるという姦計が破綻をきたしてしまうかもしれない。そうならないためにも最初の停車駅である成増駅の到着間近、下赤塚駅を通過した辺りで声を張り上げて、そして田島たち三人の刑事が有無をも言わさずに浅井さんに飛び掛り、そして成増駅で急行列車が到着し、ドアが開いた瞬間に他の乗客の群れを掻き分けるようにしてホームへと浅井さんを無理やり連れ出した…、そういうことだよな?」
俺はその時の記憶をたどりながら尋ねた。
「ええ。その通りよ」
「ところであんたは東武東上線に乗ったのはその時が初めてか?」
「その時って?」
「だから晴れて浅井さんを痴漢冤罪で嵌めたその日が初めてなのか…、つまりぶっつけ本番、初めての日に乗り込んだのか、って意味だよ」
「まさか…、そんなはずないじゃない」
「それじゃあ実地研修をしたわけだな」
「勿論」
「どれぐらい行った?」
「それならその翌日から…」
「つまり…、12日前から昨日までの11日間に渡ってってことだな?いや、昨日の本番日を除けば都合、10日間の実地研修というわけだな?」
「そうよ。もしかしたら不測の事態が起こるかも知れないからって…」
「田島がそう言ったのか?」
「ええ。それで不測の事態ってなにって、私が聞き返したら…、もしかしたら浅井が習慣を変えるかも知れないから、って…」
「それを見極めるべく10日間も実地研修に費やしたと?」
「そう…、ってか田島さんがそう決めて…」
草壁忍はようやく事態の重大性に気付いたのか、田島さんと、田島の名を強調し始めた。どうやら田島に罪をなすりつける腹積もりのようであった。確かに田島の罪は重いが、遊び半分で痴漢冤罪に加担した草壁忍の罪もそれに劣らず重いものであった。つまりは同罪である。少なくとも俺はそう確信していた。
「それで…、どの辺りで下赤塚駅が通過し、成増駅に近付くのか。実際に急行列車に乗ってみて実地教習を受けた、ということだな?」
「そうよ。と言ってもまさか、浅井の後にくっついて実地研修を受けるのはさすがに憚られたから、それで夕方頃になって…」
「実地研修を受けたわけあな?」
「そう。車窓を眺めながらそろそろ下赤塚駅を通過し、そして成増駅に到着するかもしれない、って場所を田島さんに教えてくれたのよ」
なるほど、田島からのレクチャーが必要であれば、目指すべき、それこそ敵とも言うべき相手の浅井事務官のすぐ傍で実地研修をするわけにもいかないだろう。
「そしてその場所こそあんたが声を張り上げる場所だ、ってことだな?」
「ええ」
「それでもあんたが痴漢に遭った、って騒ぎ立てたのは俺が覚えている限り、午後7時過ぎだ。つまり車窓はもう真っ暗だから夕方に受けた実地研修だと無意味だとは言わないが、それでも同じ条件じゃないわけだから声を張り上げるタイミングを逃すことも有り得るんじゃないのか?つまり、果たしてもう下赤塚を通過したのか、暗闇の車窓からは判断、できかねるんじゃないのか?」
「それなら別にそれほど心配することじゃないのよ」
「と言うと?」
「田島さんたち三人の刑事はいずれも何度も東武東上線に乗り慣れているらしくて、車窓が真っ暗でも大体の見当は付くらしいのよ」
「どの辺りで下赤塚駅を通過し、成増駅にそろそろ到着するかもしれない場所、即ち、あんたが声を上げるべき場所を、って意味だな?」
「そう。そしてその時に田島さんたち三人の刑事の誰かが私の腕を掴むのを合図として声を張り上げる、って計画だったのよ」
「それならわざわざ実地教習を受けるまでもなかったな。それも10日間も…」
「言ったでしょ。浅井がその間に習慣を変えるかも知れないって。それに、一応の感覚だけは掴んでおけ、って…」
「田島にそう言われたわけだ…」
「ええ」
「ところで、13日前の隼町にあるお屋敷での打ち合わせの後、つまりその翌日の12日前から早速、実地研修に移ったわけだが、その隼町にあるお屋敷にはもう二度と足を向けなかったのか?つまり13日前の打ち合わせが最初で最後ってことか?お屋敷に足を向けたのは…」
俺のその問いに対して草壁忍はどうしてそんなことをわざわざ聞くのかと、そう問いたげな様子を浮かべたものの、それでも素直に、「その通りよ」と答えた。それで俺はもはや、そこが警視総監公舎であると心の中で断言し、それは志貴にしても同じであるらしく、志貴へと視線を向けた俺に対して志貴は微かだが頷いてみせたのであった。
俺は目の前の草壁忍に聞こえないよう、後ろを向いて志貴に囁いた。志貴もそこが…、田島がタクシー運転手に告げたという隼町が警視総監公舎のある場所だと俺に教えてくれた時にもそうして後ろを振り向き、俺もそれにつられて後ろに振り向いたところでそう囁かれたからだ。
「なに、男同士でヒソヒソやってんのよ。キモ…」
女に、それも元ヤンキー風情のクズみたいな女から「キモ」などと侮蔑的言辞を吐かれる覚えはなかったものの、それでも今の場合はこのクズ女もとい草壁忍に今の俺たちのヒソヒソ話はどうやら聞こえなかったらしいと、俺は安心感の方が嫌悪感よりも上回った。
「いや…、何でもない…、で、隼町にタクシーが着いて、その後はどうした?」
「勿論、タクシーから降りたわよ」
「そりゃそうだよな…、で、そのタクシーが停まった場所だが、こ…、建物の前だったか?それとも建物から離れた場所でタクシーを停車させて…、無論、田島が、という意味だが…、で、建物から離れた場所で降りて、そっから建物に向かったのか…」
「ああ。それならね、建物…、っつか屋敷から少し離れたところで田島さん、ここで良いって、運転手に言って、で、お金を払って降りたの…」
「そうか…」
益々もってその建物が警視総監公舎である可能性が高まった。
「で…、あんた達は…、あんたと田島はその建物の前まで来た…、当然、インターフォンを鳴らしたよな?」
「ええ。田島さんが、インターフォンの画面?そんなところに折りたたみ式のあの警察手帳をかざしたら、門扉だっけ?あれが自動的に開いたのよ…」
「なるほど…、それであんたはお屋敷だと思ったわけだな?」
「そう。それに門だけじゃなくって、家そのものも結構なたたずまい、だっけ?そんな感じ」
俺はもやは、その建物が警視総監公舎だと確信した。
「で…、その建物には勿論、建物の主がいたんだよな…、主があんた達を出迎えてくれたんだよな…、まさかそこが田島のお家じゃないだろうし…」
「そりゃそうよ…、あんなお屋敷に田島さんが住めるとも思えないもの…、第一、インターフォンの画面に警察手帳をかざしたのも訪問者ってことだろうし…」
「そうだよな…、なら当然、建物…、屋敷の主が別にいたわけで、その屋敷の主があんた達を…、門を潜ったあんた達を出迎えたわけだよな?玄関先で…」
「ああ。それがねぇ…」
「もしかして…、玄関は開いていた、とか?」
「そうなのよ。てっきり誰かが内側からドアを開けてくれるものだと思っていたら、田島さんがさも当然って感じでドアを開けたもんだから、勝手に開けて良いのかよ、って思ったほどだった…」
草壁忍はその時の情景を思い浮かべたらしい。
「なるほど…、それならあんたが驚くのも無理はないな…」
俺は草壁忍に調子を合わせた。
「それで…、田島はあんたが驚くのを尻目に、勝手にドアを開けて玄関から屋敷の中へと上った…、勿論、あんたも田島のあとに続いて屋敷の中に上ったわけだな?」
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「勿論、田島の案内で、だな?」
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「それでそのソファのある、リビングらしき場所には誰かいたか?例えば部屋の主だとか…」
「二人の男がいたけれど、部屋の主って感じじゃないわね…」
「どうしてそう言い切れる?」
「何だか田島さん、その二人に対しては随分と偉そうに振舞っていたから…」
「つまり二人の男は田島の部下、ってことか?」
「恐らくはそう思う。だから…」
「そうだな…、上司の田島ですら住めないようなそんな屋敷に部下が住めるはずがない…、よな」
「そっ、そっ」
俺の言葉に草壁忍は何度も頷いた。
「そしてその二人の男こそが、田島と共に浅井さんを取り押さえた…、ええっと…」
俺がまごついていると、すかさず志貴が「近野和也と杉山玄…」と耳打ちしてくれた。
「ああ、そうだった…、近野和也と杉山玄だったわけだな?」
俺は改めて尋ねると、草壁忍は目を丸くした。
「へぇ…、あの二人、こんのかずやとすぎやまはるか、って言うんだ…」
「あんた…、名前を知らなかったのか?」
「苗字は知ってたけど、名前までは…」
「フルネームは聞かなかったのか?」
「勿論、聞こうとしたけれど、その必要はないって…」
「二人のフルネームを聞き出そうとしたあんたを田島が制して、その代わりに田島は二人の苗字だけをあんたに教えた…、そんなところか?」
「そうなのっ!」
「で、そこでようやく、痴漢冤罪で嵌めることが話し合われたわけだな?」
「まぁ、いきなりじゃなかったけど…」
「ってことは前置きがあったと?」
「ええ」
「どんな前置きだ?」
「ええっと…、田島さんが言うには、田島さんの大切な人が今、とても困っているって…」
「それで?」
「こいつに脅されてるんだって…、写真を見せられたの…」
「写真…、そこには勿論、浅井さんが…、後にあんたが、いや、あんた達が嵌めた浅井さんが写っていたわけだな?」
「ええ」
「で?それに対してあんたはどう答えたんだ?」
「どうって?」
「だから、親しい人ってのは具体的には誰なのか、とか、脅されてるって話だが、脅しの内容は何なのか、とかそういったことを尋ねなかったのか?」
「そんなこと、一々、聞いていられないよ…」
草壁忍は実にあっけらかんとした口調で答え、これには俺の方が驚かされたものだった。
「それじゃあ…、あんたは一切の事情も聞かずに痴漢冤罪でこの写真の男、もとい浅井さんを嵌めることを了承したって言うのか?」
「だって、世話になってる田島さんの頼みじゃ仕方ないじゃない」
「それは…、そうかも知れんが…」
草壁忍は実に罪の意識の欠片もない様子であった。恐らくは遊びの延長線上で引き受けたのではないかと、そう思わせるほどであった。
ともあれ俺は先を続けた。
「それで…、話を田島から浅井さんの写真を見せられた場面に戻すが…、田島はそこで初めてあんたに痴漢冤罪を持ちかけたのか?浅井さんを痴漢冤罪で嵌めたいので協力して欲しいとか、何とか…」
「いや…、その前に写真の男を懲らしめてやりたいんだって…」
「田島にそう言われたわけだな?」
「そう」
「で、それからどうした?」
「で、懲らしめるってどういうこと?って私が尋ねて、それで…」
「初めて田島の口から痴漢冤罪が聞かれたわけだな?浅井さん…、この写真の男を痴漢冤罪で嵌めたいって…」
「そう。それで私、何だか面白そうで…」
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「そう」
「具体的には?」
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「どう利用することにしたんだ?」
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「あんたの周りを田島たち、三人の刑事に取り囲ませたのは他の乗客に目撃させないためだな?浅井さんが本当はあんたの尻なぞ触ってはいない、ということを目撃されないために」
「その通りよ」
草壁忍は投げ遣りに答えた。
「各駅停車ではなく急行列車を選んだ理由は?」
「さっきも言ったでしょ。浅井って事務官が急行列車の後部座席に乗るのが日課だからよ」
「だが急行列車、それも帰宅ラッシュの時を狙うとなるとそれだけ沢山の乗客が列車に乗り込むわけだから必ずしも浅井さんが自分の定位置に立てるわけじゃないだろう?新幹線の指定席じゃないんだから。他の乗客に立たれちまう恐れだってあるはずだろ?よしんば浅井さんが運良く後部座席のお気に入りの定位置に立てたとしてもだ、その浅井さんの真後ろにあんたが立てる、って保証はどこにもないだろう?誰か別の乗客に立たれちまう恐れだってあるはずだ。そうなれば浅井さんを痴漢で嵌めるって計画は破綻を来すんじゃないか?もっとも、あんた達の浅井さんを痴漢で嵌めるって姦計は一応…、俺たちがこうして冤罪だと暴くまでは成功したんだから計画はその時点ではどうやら破綻をきたさなかったようだがな…」
「それなら心配することでもないのよ」
「どうしてだ?」
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「そうよ」
「そしてあんたや田島たち三人の刑事は浅井さんを尾行して浅井さんの真後ろに立ち、そして入線してきた急行列車のドアが開いた瞬間、浅井さんの真後ろをあんたや田島たち三人の刑事で固めてそれこそ雪崩れ込むようにして列車に乗り込んで、そしてあんたは浅井さんの真後ろに立つことに見事成功し、そしてあんたの周りを田島たち三人の刑事で固めることにも成功したって寸法だな?」
「そう」
「下赤塚を通過してから声を張り上げた理由は?」
「最初の停車駅である成増駅が間近に迫っていたからよ」
「あんまり早くに声を張り上げると他の乗客が介入してきて、もっと言えば果たして浅井さんは本当にあんたの尻を触ったのか、疑問を持つ乗客が現れるかも知れず、そうなれば浅井さんを痴漢で嵌めるという姦計が破綻をきたしてしまうかもしれない。そうならないためにも最初の停車駅である成増駅の到着間近、下赤塚駅を通過した辺りで声を張り上げて、そして田島たち三人の刑事が有無をも言わさずに浅井さんに飛び掛り、そして成増駅で急行列車が到着し、ドアが開いた瞬間に他の乗客の群れを掻き分けるようにしてホームへと浅井さんを無理やり連れ出した…、そういうことだよな?」
俺はその時の記憶をたどりながら尋ねた。
「ええ。その通りよ」
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「田島がそう言ったのか?」
「ええ。それで不測の事態ってなにって、私が聞き返したら…、もしかしたら浅井が習慣を変えるかも知れないから、って…」
「それを見極めるべく10日間も実地研修に費やしたと?」
「そう…、ってか田島さんがそう決めて…」
草壁忍はようやく事態の重大性に気付いたのか、田島さんと、田島の名を強調し始めた。どうやら田島に罪をなすりつける腹積もりのようであった。確かに田島の罪は重いが、遊び半分で痴漢冤罪に加担した草壁忍の罪もそれに劣らず重いものであった。つまりは同罪である。少なくとも俺はそう確信していた。
「それで…、どの辺りで下赤塚駅が通過し、成増駅に近付くのか。実際に急行列車に乗ってみて実地教習を受けた、ということだな?」
「そうよ。と言ってもまさか、浅井の後にくっついて実地研修を受けるのはさすがに憚られたから、それで夕方頃になって…」
「実地研修を受けたわけあな?」
「そう。車窓を眺めながらそろそろ下赤塚駅を通過し、そして成増駅に到着するかもしれない、って場所を田島さんに教えてくれたのよ」
なるほど、田島からのレクチャーが必要であれば、目指すべき、それこそ敵とも言うべき相手の浅井事務官のすぐ傍で実地研修をするわけにもいかないだろう。
「そしてその場所こそあんたが声を張り上げる場所だ、ってことだな?」
「ええ」
「それでもあんたが痴漢に遭った、って騒ぎ立てたのは俺が覚えている限り、午後7時過ぎだ。つまり車窓はもう真っ暗だから夕方に受けた実地研修だと無意味だとは言わないが、それでも同じ条件じゃないわけだから声を張り上げるタイミングを逃すことも有り得るんじゃないのか?つまり、果たしてもう下赤塚を通過したのか、暗闇の車窓からは判断、できかねるんじゃないのか?」
「それなら別にそれほど心配することじゃないのよ」
「と言うと?」
「田島さんたち三人の刑事はいずれも何度も東武東上線に乗り慣れているらしくて、車窓が真っ暗でも大体の見当は付くらしいのよ」
「どの辺りで下赤塚駅を通過し、成増駅にそろそろ到着するかもしれない場所、即ち、あんたが声を上げるべき場所を、って意味だな?」
「そう。そしてその時に田島さんたち三人の刑事の誰かが私の腕を掴むのを合図として声を張り上げる、って計画だったのよ」
「それならわざわざ実地教習を受けるまでもなかったな。それも10日間も…」
「言ったでしょ。浅井がその間に習慣を変えるかも知れないって。それに、一応の感覚だけは掴んでおけ、って…」
「田島にそう言われたわけだ…」
「ええ」
「ところで、13日前の隼町にあるお屋敷での打ち合わせの後、つまりその翌日の12日前から早速、実地研修に移ったわけだが、その隼町にあるお屋敷にはもう二度と足を向けなかったのか?つまり13日前の打ち合わせが最初で最後ってことか?お屋敷に足を向けたのは…」
俺のその問いに対して草壁忍はどうしてそんなことをわざわざ聞くのかと、そう問いたげな様子を浮かべたものの、それでも素直に、「その通りよ」と答えた。それで俺はもはや、そこが警視総監公舎であると心の中で断言し、それは志貴にしても同じであるらしく、志貴へと視線を向けた俺に対して志貴は微かだが頷いてみせたのであった。
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