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田沼意知の慟哭 ~次期将軍・徳川家基、遂に絶命す~
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昼四つ(午前10時頃)になり、小川子雍らの勤務が明け、千賀久頼らと交代した。
千賀久頼らが勤務に入ってから四半刻(約30分)程が経過した午前10時30分頃、御三家筆頭の尾張中納言宗睦と、それに水戸宰相治保、宗睦の嫡子で中将の治行が家基を見舞いに、家基が臥す西之丸御小座敷之間へと訪れた。老中の松平周防守康福と松平右京太夫輝高が宗睦らの案内役を務め、2人も御小座敷之間に姿を見せた。
それから宗睦らは下段に控え、上段にて臥せる家基に付添った。
そして20分程が経過した午前10時50分頃、家基が急に苦しみ出した。遂に河豚毒が無害化したことで、トリカブトの毒との拮抗が崩れ、トリカブトの毒が現出したのだ。
それを知るのは家基の枕頭に控える医師団、それも千賀久頼を除いた篠崎長正と中川義方、瑞照養親子に遊佐信庭の4人だけであった。
家基の容態が急変したことで千賀久頼は内心、動揺した。
だが御三家や老中の眼がある。彼等の内心の動揺を悟られては拙い。本丸奥医師としての己の評価にかかわる。
そうでなくとも千賀久頼は将軍・家治から低い評価を下されていた。
そこへ御三家や老中から家治へと、
「千賀久頼めは大納言様が苦しんでおられたというに、ただ手を拱くばかりであった…」
そう伝われば、愈々以て久頼の立場が、本丸奥医師としての立場がなくなる。否、完全に家治から見限られ、本丸奥医師としての立場を喪うことになる。
そこで千賀久頼はまずは平静さを保ち、何か適当な薬でも家基に服ませることで、その場をやり過ごそうとした。千賀久頼の頭の中にあるのは家基のことではなく、己のことであった。
それ故、篠崎長正が元・岳父の千賀久頼に対して、
「胃洗浄をした方が良いのでは…」
そう進言しても、久頼が耳を貸すことはなかった。
いや、篠崎長正もそれを期待して、敢えて正しい応急処置を進言したのであった。
己の娘を娶っておき乍、娘に先立たれるや、あっさりと西之丸奥医師の小川子雍の娘に乗換えた篠崎長正という男、節操とは無縁のこの男を千賀久頼は心の底から嫌悪しており、一方、篠崎長正もそれは重々、承知していたので、そこで敢えて胃洗浄という正しい応急処置を進言したのだ。そうすれば千賀久頼のことである、
「絶対に…」
意地でも胃洗浄は行わないであろうと、予期されたからだ。
家基暗殺を企む一橋治済、その走狗と成下がった篠崎長正としては千賀久頼には家基に正しい処置を施されては困るのだ。
そこで篠崎長正は更に、池原良誠の名を出すことで、愈々、千賀久頼を誤導させた。
千賀久頼は池原良誠を一方的にライバル視しており、それは篠崎長正も把握していたので、
「されば池原殿であらば間違いなく胃洗浄を施されるかと…」
まずは久頼にそう囁いた上で、
「如何でござろう…、池原殿に助けを求められては…」
その様にも付加えたのだ。
無論、千賀久頼がこれらの篠崎長正の進言にもやはり耳を貸すことはなかった。
ここで篠崎長正の進言に耳を貸して池原良誠の手を借り様ものなら、目の前にいる御三家や老中に医師として己に技量がないのを告白するのも同然だからだ。
一方、篠崎長正にとってはそれは「アリバイ」となる。
千賀久頼がこのまま意地を張り続け、池原良誠の手を借りず、胃洗浄すらも行わずに、瀕死の家基に対して、
「益体もない…」
薬を投与し続ければ家基は間違いなく死に到る。
それは篠崎長正や、ひいては治済が望む結果であり、且つ、千賀久頼が篠崎長正の進言を斥けて家基に益体もない薬を投与し続け、その結果として家基が死に到ったとなれば、そのことは目の前にて篠崎長正と千賀久頼とのやり取りを聞いていた御三家や老中が証明してくれる。
つまりはこれで家基が死ねば、篠崎長正の進言を千賀久頼が素直に聞き容れていれば家基は助かったのではないか、更に論を進めれば、
「家基を殺したのは千賀久頼である…」
御三家や老中にそう印象付けられる。
そうなれば将軍・家治もその様な千賀久頼を池原良誠と共に本丸奥医師へと推挙した意次に猜疑の心を芽生えさせられることも期待出来た。
否、目の前に控える老中の中でも意次とは盟友の松平康福は千賀久頼のことを庇うやも知れぬ。
それに千賀久頼は三男の嘉織榮政を康福が家臣、木村帯刀政盛が養嗣子として送込んでいたのだ。
だがもう一人の老中、松平輝高は康福とは正反対に意次に反感を抱いており、御三家の意次に対する反感たるやそれ以上に違いない。
そこで老中の松平輝高や御三家が、
「千賀久頼が家基に適切な処置を施さなかった為に家基は死んだのだ…、斯かる医師としての技量がない千賀久頼を本丸奥医師へと推挙したのは外ならぬ田沼意次であり、意次が千賀久頼を使嗾して家基を殺させたのだ…」
方々でそう吹聴、噂してくれるに違いない。
尤も、松平康福もその危険性は認識していたので、
「久頼よ…、ここは面子に囚われずに池原良誠の手を借りた方が良いのではあるまいか…」
篠崎長正とは異なり、家基の身を案じて心底、そう進言に及んだ。
するとさしもの依怙地なる千賀久頼も康福からもそう進言されてはこれに耳を貸さざるを得なかった。
それは康福が老中ということもあるが、それ以上に大事な倅が康福の家臣の養嗣子に迎えられている、悪く言えば人質に取られているも同然であったからだ。
そこで千賀久頼はこの段になって漸くに池原良誠の手を借りることにし、「それなれば…」と康福が池原良誠を呼びに行くべき席を立った。池原良誠は不寝番を終えた後も下城せず、本丸中奥にある奥医師の詰所にて泊り込んでいた。
かくして康福が席を立ったところで、家基が「意知…」とうわ言を口にしたことから、康福は元・婿である意知をも呼ぶことにし、本丸へと急いだ。意知もまた、今は己の詰所である雁間に詰めていた。
そこで康福はまずは老中の詰所である上御用部屋へと足を運び、そこに詰めていた意次に仔細を打明け、池原良誠を呼びに行って貰った。
池原良誠が泊まり込む奥医師の詰所は中奥にあり、表向役人の身分しか持合わせていない康福では中奥へと足を踏み入れられず、池原良誠を呼びには行けなかった。
その点、意次は老中の中でも唯一、奥兼帯、中奥役人の身分をも持合わせており、中奥に立入ることが出来た。
それ故、康福は意次に池原良誠の「召喚」を頼んだのだ。ちなみにその場には首座の松平武元と板倉勝清の姿もあり、康福の説明、もとい家基が御不例、それも愈々、危ないとの説明に改めて衝撃を受けた。
さて意次は直ちに席を立つと、中奥へと急ぎ、康福は意次の背中を見送ると今度は雁間へと急ぎ、そこに詰めていた元・婿の意知を連出すと、上御用部屋とそれに若年寄の執務室である次御用部屋とを隔てる廊下へと引張り込み、そこで家基が意知の名をうわ言で口にしていたことを打明けたのだ。
するとそこへタイミング良く、意次もまた中奥から池原良誠を引張って来た。
否、池原良誠だけではない。側用人の水野忠友もである。
家治は気を利かせて水野忠友にも家基が御不例、それも愈々、危ないことを耳打ちしたのだ。
かくして康福は元・婿の意知とその父、意次、それに武元や勝清、忠友に池原良誠を率いて西之丸へと急いだ。
その間、篠崎長正は内心、舌打ちした。このままではまたしても池原良誠に家基の暗殺、毒殺を阻止されるやも知れなかったからだ。
それは篠崎長正と共に家基の枕頭に控える、治済の息のかかった中川義方・瑞照養親子や遊佐信庭にしても同様であった。
そこで篠崎長正は乾坤一擲の大博打に打って出た。
篠崎長正は康福が席を立つや、直ぐにトリカブトの毒が包まれてあった薬包紙を千賀久頼に気付かれぬ様、久頼の薬箱の上に置き、それから久頼に対して、
「これで大納言様は池原殿に救われまするな…」
久頼を刺激してみせた。
久頼を刺激すれば、久頼は必ずや、池原良誠が到着する前に今一度、家基に薬を服ませようとするに違いないと、篠崎長正はそう読んでのことである。
案の定、千賀久頼は池原良誠への対抗心から今一度、家基に薬を服ませることにした。
薬は本来、薬箱の抽斗の中に仕舞われてあり、それ故、薬を取出そうと思えば畢竟、抽斗を開けなければならない。
それが今は薬箱の上に薬包紙があったので、久頼は何の疑いもなしにその薬包紙に手を伸ばした。
ちなみに家基が臥す上段だが、御三家や老中、今は輝高が一人、控える下段とは御簾で仕切られており、篠崎長正のこの一連の行動は御三家や輝高には御簾が障壁となり、気付かれない筈であった。少なくとも篠崎長正はそう信じて疑わなかった。
さて、篠崎長正が千賀久頼に手に取らせた薬包紙だが、それにはトリカブトの毒が包まれていた。
それも致死量を遥かに上回るトリカブトの毒であり、既にトリカブトの毒の回った家基の体内に更にその致死量を遥かに上回るトリカブトの毒が千賀久頼によって流し込まれたことから、家基は遂に絶命した。
それは康福が池原良誠と田沼意知とを連れて戻って来た寸前、即ち、巳の下刻、昼の四つ半(午前11頃)を過ぎた時分のことであった。
篠崎長正が「死亡宣告」をすると、池原良誠も念の為に家基を診、結果、死亡を宣告した。
その瞬間、意知は慟哭した。
千賀久頼らが勤務に入ってから四半刻(約30分)程が経過した午前10時30分頃、御三家筆頭の尾張中納言宗睦と、それに水戸宰相治保、宗睦の嫡子で中将の治行が家基を見舞いに、家基が臥す西之丸御小座敷之間へと訪れた。老中の松平周防守康福と松平右京太夫輝高が宗睦らの案内役を務め、2人も御小座敷之間に姿を見せた。
それから宗睦らは下段に控え、上段にて臥せる家基に付添った。
そして20分程が経過した午前10時50分頃、家基が急に苦しみ出した。遂に河豚毒が無害化したことで、トリカブトの毒との拮抗が崩れ、トリカブトの毒が現出したのだ。
それを知るのは家基の枕頭に控える医師団、それも千賀久頼を除いた篠崎長正と中川義方、瑞照養親子に遊佐信庭の4人だけであった。
家基の容態が急変したことで千賀久頼は内心、動揺した。
だが御三家や老中の眼がある。彼等の内心の動揺を悟られては拙い。本丸奥医師としての己の評価にかかわる。
そうでなくとも千賀久頼は将軍・家治から低い評価を下されていた。
そこへ御三家や老中から家治へと、
「千賀久頼めは大納言様が苦しんでおられたというに、ただ手を拱くばかりであった…」
そう伝われば、愈々以て久頼の立場が、本丸奥医師としての立場がなくなる。否、完全に家治から見限られ、本丸奥医師としての立場を喪うことになる。
そこで千賀久頼はまずは平静さを保ち、何か適当な薬でも家基に服ませることで、その場をやり過ごそうとした。千賀久頼の頭の中にあるのは家基のことではなく、己のことであった。
それ故、篠崎長正が元・岳父の千賀久頼に対して、
「胃洗浄をした方が良いのでは…」
そう進言しても、久頼が耳を貸すことはなかった。
いや、篠崎長正もそれを期待して、敢えて正しい応急処置を進言したのであった。
己の娘を娶っておき乍、娘に先立たれるや、あっさりと西之丸奥医師の小川子雍の娘に乗換えた篠崎長正という男、節操とは無縁のこの男を千賀久頼は心の底から嫌悪しており、一方、篠崎長正もそれは重々、承知していたので、そこで敢えて胃洗浄という正しい応急処置を進言したのだ。そうすれば千賀久頼のことである、
「絶対に…」
意地でも胃洗浄は行わないであろうと、予期されたからだ。
家基暗殺を企む一橋治済、その走狗と成下がった篠崎長正としては千賀久頼には家基に正しい処置を施されては困るのだ。
そこで篠崎長正は更に、池原良誠の名を出すことで、愈々、千賀久頼を誤導させた。
千賀久頼は池原良誠を一方的にライバル視しており、それは篠崎長正も把握していたので、
「されば池原殿であらば間違いなく胃洗浄を施されるかと…」
まずは久頼にそう囁いた上で、
「如何でござろう…、池原殿に助けを求められては…」
その様にも付加えたのだ。
無論、千賀久頼がこれらの篠崎長正の進言にもやはり耳を貸すことはなかった。
ここで篠崎長正の進言に耳を貸して池原良誠の手を借り様ものなら、目の前にいる御三家や老中に医師として己に技量がないのを告白するのも同然だからだ。
一方、篠崎長正にとってはそれは「アリバイ」となる。
千賀久頼がこのまま意地を張り続け、池原良誠の手を借りず、胃洗浄すらも行わずに、瀕死の家基に対して、
「益体もない…」
薬を投与し続ければ家基は間違いなく死に到る。
それは篠崎長正や、ひいては治済が望む結果であり、且つ、千賀久頼が篠崎長正の進言を斥けて家基に益体もない薬を投与し続け、その結果として家基が死に到ったとなれば、そのことは目の前にて篠崎長正と千賀久頼とのやり取りを聞いていた御三家や老中が証明してくれる。
つまりはこれで家基が死ねば、篠崎長正の進言を千賀久頼が素直に聞き容れていれば家基は助かったのではないか、更に論を進めれば、
「家基を殺したのは千賀久頼である…」
御三家や老中にそう印象付けられる。
そうなれば将軍・家治もその様な千賀久頼を池原良誠と共に本丸奥医師へと推挙した意次に猜疑の心を芽生えさせられることも期待出来た。
否、目の前に控える老中の中でも意次とは盟友の松平康福は千賀久頼のことを庇うやも知れぬ。
それに千賀久頼は三男の嘉織榮政を康福が家臣、木村帯刀政盛が養嗣子として送込んでいたのだ。
だがもう一人の老中、松平輝高は康福とは正反対に意次に反感を抱いており、御三家の意次に対する反感たるやそれ以上に違いない。
そこで老中の松平輝高や御三家が、
「千賀久頼が家基に適切な処置を施さなかった為に家基は死んだのだ…、斯かる医師としての技量がない千賀久頼を本丸奥医師へと推挙したのは外ならぬ田沼意次であり、意次が千賀久頼を使嗾して家基を殺させたのだ…」
方々でそう吹聴、噂してくれるに違いない。
尤も、松平康福もその危険性は認識していたので、
「久頼よ…、ここは面子に囚われずに池原良誠の手を借りた方が良いのではあるまいか…」
篠崎長正とは異なり、家基の身を案じて心底、そう進言に及んだ。
するとさしもの依怙地なる千賀久頼も康福からもそう進言されてはこれに耳を貸さざるを得なかった。
それは康福が老中ということもあるが、それ以上に大事な倅が康福の家臣の養嗣子に迎えられている、悪く言えば人質に取られているも同然であったからだ。
そこで千賀久頼はこの段になって漸くに池原良誠の手を借りることにし、「それなれば…」と康福が池原良誠を呼びに行くべき席を立った。池原良誠は不寝番を終えた後も下城せず、本丸中奥にある奥医師の詰所にて泊り込んでいた。
かくして康福が席を立ったところで、家基が「意知…」とうわ言を口にしたことから、康福は元・婿である意知をも呼ぶことにし、本丸へと急いだ。意知もまた、今は己の詰所である雁間に詰めていた。
そこで康福はまずは老中の詰所である上御用部屋へと足を運び、そこに詰めていた意次に仔細を打明け、池原良誠を呼びに行って貰った。
池原良誠が泊まり込む奥医師の詰所は中奥にあり、表向役人の身分しか持合わせていない康福では中奥へと足を踏み入れられず、池原良誠を呼びには行けなかった。
その点、意次は老中の中でも唯一、奥兼帯、中奥役人の身分をも持合わせており、中奥に立入ることが出来た。
それ故、康福は意次に池原良誠の「召喚」を頼んだのだ。ちなみにその場には首座の松平武元と板倉勝清の姿もあり、康福の説明、もとい家基が御不例、それも愈々、危ないとの説明に改めて衝撃を受けた。
さて意次は直ちに席を立つと、中奥へと急ぎ、康福は意次の背中を見送ると今度は雁間へと急ぎ、そこに詰めていた元・婿の意知を連出すと、上御用部屋とそれに若年寄の執務室である次御用部屋とを隔てる廊下へと引張り込み、そこで家基が意知の名をうわ言で口にしていたことを打明けたのだ。
するとそこへタイミング良く、意次もまた中奥から池原良誠を引張って来た。
否、池原良誠だけではない。側用人の水野忠友もである。
家治は気を利かせて水野忠友にも家基が御不例、それも愈々、危ないことを耳打ちしたのだ。
かくして康福は元・婿の意知とその父、意次、それに武元や勝清、忠友に池原良誠を率いて西之丸へと急いだ。
その間、篠崎長正は内心、舌打ちした。このままではまたしても池原良誠に家基の暗殺、毒殺を阻止されるやも知れなかったからだ。
それは篠崎長正と共に家基の枕頭に控える、治済の息のかかった中川義方・瑞照養親子や遊佐信庭にしても同様であった。
そこで篠崎長正は乾坤一擲の大博打に打って出た。
篠崎長正は康福が席を立つや、直ぐにトリカブトの毒が包まれてあった薬包紙を千賀久頼に気付かれぬ様、久頼の薬箱の上に置き、それから久頼に対して、
「これで大納言様は池原殿に救われまするな…」
久頼を刺激してみせた。
久頼を刺激すれば、久頼は必ずや、池原良誠が到着する前に今一度、家基に薬を服ませようとするに違いないと、篠崎長正はそう読んでのことである。
案の定、千賀久頼は池原良誠への対抗心から今一度、家基に薬を服ませることにした。
薬は本来、薬箱の抽斗の中に仕舞われてあり、それ故、薬を取出そうと思えば畢竟、抽斗を開けなければならない。
それが今は薬箱の上に薬包紙があったので、久頼は何の疑いもなしにその薬包紙に手を伸ばした。
ちなみに家基が臥す上段だが、御三家や老中、今は輝高が一人、控える下段とは御簾で仕切られており、篠崎長正のこの一連の行動は御三家や輝高には御簾が障壁となり、気付かれない筈であった。少なくとも篠崎長正はそう信じて疑わなかった。
さて、篠崎長正が千賀久頼に手に取らせた薬包紙だが、それにはトリカブトの毒が包まれていた。
それも致死量を遥かに上回るトリカブトの毒であり、既にトリカブトの毒の回った家基の体内に更にその致死量を遥かに上回るトリカブトの毒が千賀久頼によって流し込まれたことから、家基は遂に絶命した。
それは康福が池原良誠と田沼意知とを連れて戻って来た寸前、即ち、巳の下刻、昼の四つ半(午前11頃)を過ぎた時分のことであった。
篠崎長正が「死亡宣告」をすると、池原良誠も念の為に家基を診、結果、死亡を宣告した。
その瞬間、意知は慟哭した。
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