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大奥篇 ~倫子、萬壽姫、千穂、そして種姫~ 7
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こうして種姫は萬壽姫の「遊び相手」を務めるようになり、それは萬壽姫が亡くなる直前の、安永2(1773)年の2月まで続いた。
ともあれ種姫が萬壽姫の「遊び相手」を務めるようになった背景にはこのような事情、さしずめ、
「ルート」
それが隠されており、そしてその「ルート」は家基と種姫との、
「縁談」
それにおいても活用された。
即ち、江戸城本丸大奥にて勤める御客会釈の向坂から、田安家サイドに、それも、
「公儀奥女使…」
として本丸大奥に出入りする、田安家の侍女の廣瀬へと伝わり、そして廣瀬から更に田安家の重臣である竹本要人と常見文左衛門へと…、その「ルート」で次期将軍であった家基と種姫との「縁談」が田安家サイドへと伝わったのだ。
いや、この時…、倫子に続いて萬壽姫までが亡くなった安永2(1773)年時点で既に、それまで常見文左衛門と共に番頭の御役にあった竹本要人は、
「御側御用人」
へと昇進を果たしていた。いや、
「一頭地を抜いた…」
と言った方が正確やも知れぬ。何しろ御三卿の御側御用人ともなると、従六位に相当する布衣役と、その点は番頭と同じだが、しかしその…、御側御用人の役料たるや千俵と、番頭のそれの5倍であった。
即ち、番頭の役料は200俵に過ぎなかった。
それが御側御用人の役料ともなると千俵であり、これは家老の役料の2千俵にも迫る。
その御側御用人に竹本要人が取り立てられたのはやはり、田安宗武の母堂…、実母の古牟の縁者だからであろう。
一方、田安家の謂わば譜代の臣である常見文左衛門は相変わらず番頭の地位に留め置かれたままであり、それが竹本要人が一人、
「一頭地を抜く…」
その格好で御側御用人に取り立てられたわけで、それは即ち、
「田安邸内における勢力均衡の変動…」
所謂、パワーバランスの変動が生じた。
そして廣瀬も「公儀奥女使」に選ばれるだけあって、聡い女であり、それゆえこの「パワーバランスの変動」も敏感に嗅ぎ取り、するとそれまで何をおいても真っ先に竹本要人と常見文左衛門の二人に報告していたのが、竹本要人が御側御用人に昇進を果たすや、つまりは、
「パワーバランスの変動」
それ以降は、廣瀬は真っ先に報告すべき相手を竹本要人一人に絞ったのであった。
それに対して竹本要人はと言うと、廣瀬のその、
「正確なる状況認識…」
要はこの田安邸内においては誰が一番、偉いのか、それを嗅ぎ取った廣瀬の「聡明さ」を誉めそやしつつ、そこは海千山千の男だけあって、
「されば廣瀬殿より、身共と常見殿に対して今一度、同じく報せを…」
そう提案してみせたのだ。
要は最初に己一人が報告を受けたことを常見文左衛門に悟られないためである。
廣瀬より真っ先に、例えばこの、家基と種姫の縁談の件ならば、大奥の御客会釈の向坂より家基と種姫との縁談の「オファー」を伝えられた廣瀬が田安邸へとその「オファー」を持ち帰ると、真っ先にその「オファー」を受けたことを報せた相手が御側御用人の竹本要人であるにもかかわらず、竹本要人としては廣瀬より真っ先にその「オファー」を受けたことを報されたことを常見文左衛門に悟られないために、廣瀬にはもう一度、今度は己…、竹本要人と常見文左衛門が「仲良く」居並ぶ前で、「オファー」を受けたことを伝えてもらい、その際、竹本要人は今、初めて聞いたような顔をしてみせたのであった。
それもこれも常見文左衛門の「おへそ」を曲げさせないための、竹本要人なりの、
「涙ぐましい配慮」
であったが、それなら今まで通り、廣瀬には竹本要人と常見文左衛門の二人に対して真っ先に報せれば済む話であったが、しかし、竹本要人としてはそこまで常見文左衛門に対して「配慮」するつもりはなかった。
竹本要人としては…、御側御用人へと昇進を果たした竹本要人は、
「御側御用人たる己の方が相変わらず番頭に過ぎぬ常見文左衛門よりも上である…」
その意識が芽生えたので、廣瀬のその判断…、真っ先に報告すべき相手を己…、竹本要人と常見文左衛門の二人から己一人…、竹本要人一人に絞った廣瀬のその判断を大いに「歓迎」していたからだ。
ともあれ廣瀬は大奥の御客会釈の向坂より、家基と種姫の縁談の「オファー」を受けたことを竹本要人と常見文左衛門の二人に打ち明けるや、二人は「驚く」と同時に、即座に賛同した。
何と言っても己が仕える、主家の姫君…、娘が次期将軍の嫁になれるという話である。反対すべき理由はどこにもなかった。養母の宝蓮院にしてもそうであろうし、何より当人とも言うべき種姫自身、次期将軍たる家基との縁談を嫌がる筈がなかった。
それでも廣瀬たちはやはり一応と言うべきか、
「御廣敷御附御用人」
宝蓮院附の用人を通じて宝蓮院にもこの旨…、縁談の「オファー」を伝え、それに対して宝蓮院は廣瀬たちが予期した通りの反応を示した。
即ち、即座に賛同してみせたのであった。
いや、無論、種姫当人の気持ちもあるだろうが、しかしそれについても宝蓮院が、
「この身が必ずや種姫を頷かせてみせましょうぞ…」
種姫にこの縁談を必ずや受けさせると、そう請け合ってくれたのであった。
宝蓮院はその上で廣瀬たちに対して、
「この儀、家老にも伝えられた方が宜しかろう…」
そうアドバイスをしたのであった。それは廣瀬たちがすっかり失念していたことで、如何に廣瀬たちが家老…、御三卿家老を軽視していたかの証左でもあった。
実際、先の種姫が萬壽姫の遊び相手を務める件につき、御三卿家老が…、田安家老の山木筑前守正信と大屋遠江守昌富の二人がそれを知ったのは当日のことであった。
即ち、廣瀬たちは家老の二人に報告するのをすっかり失念していたのだ。
いや、萬壽姫の遊び相手を務める件につき、種姫の諒承が得られた時点で廣瀬たちは家老の二人にも報告するつもりでいたのだが、それが萬壽姫が諒承してくれたことでホッとしたために、家老への報告をすっかり忘れてしまい、結果、宝蓮院が萬壽姫の手を引いて、初めて御城へと登城する段になって、家老の二人は宝蓮院より種姫が萬壽姫の遊び相手を務める件を知らされるという有様であった。
この時ばかりは流石に山木正信にしろ、大屋昌富にしろ不快気であり、廣瀬たちも家老の二人を舐め過ぎたと大いに反省したものである。
それが今回は縁談である。遊び相手を務める比ではない。今度もまた、家老の二人は、
「蚊帳の外…」
だったとなれば、山木正信も大屋昌富も大激怒に違いなかった。別段、山木正信や大屋昌富が大激怒したところで、廣瀬たちは少しも怖いとは思わなかったが…、精々、五月蠅いと思う程度に過ぎなかったが、それでも衝突を回避できるのであれば、回避するに越したことはない。
それゆえ今度は廣瀬たちは、
「忘れずに…」
家老の山木正信と大屋昌富の二人に対しても家基と種姫との縁談を…、その「オファー」が大奥の御客会釈…、将軍・家治に附属する御客会釈の向坂よりあったことを打ち明けたのであった。
それに対して家老の山木正信と大屋昌富は二人共、誇張ではなし、
「狂喜乱舞」
それをしたものである。御三卿家老というポストは、「附人」、即ち、御三卿の、
「お目付役」
として、ご公儀…、幕府より派された者であるが、それでも「お目付役」とは言え、己が家老として仕える、その御三卿より、娘が次期将軍に見初められたとあらば、嬉しくないわけがなかった。
そして肝心要の、当人である種姫の意向はと言うと、こちらもまた廣瀬たちが予期した通り、即座に快諾してみせたのであった。
こうして田安家サイドより、種姫が家基との縁談を、
「謹んで受け申し上げまする…」
その意向が「公儀奥女使」の廣瀬より大奥の御客会釈の向坂へと伝えられたのはその翌日…、萬壽姫が薨去してから丁度、一月後の3月20日のことであった。
種姫が家基との縁談を受け入れた…、そのことは直ちに将軍・家治にも向坂より年寄の松島と高岳の二人を介して伝えられた。
すると家治はそれを受けてもう一度、それも直ちに、相変わらず西之丸の大奥に居座り続ける側室の千穂と、千穂に仕える年寄の玉澤を始めとする奥女中たちに対して、家基と種姫との縁談を伝えた上で、
「されば種姫は将軍たる余が養女と定めし上で、家基が室として西之丸の大奥へと迎えるゆえ、余が内証に過ぎぬそなたよりも立場は上ぞ…」
家治は千穂に対してそんな「脅し」とも取れる「メッセージ」を発したのであった。
いや、千穂からすれば、その「メッセージ」は立派な「脅し」そのものであった。
何しろ、西之丸の大奥に家基が御台所として、のみならず、将軍・家治の養女として迎えられる種姫に傅かねばならないと、そう脅されたも同然であるからだ。
いや、千穂が一介の側室に過ぎない「お内証様」から晴れて次期将軍の生母である「お部屋様」へと昇格を果たせばこの問題は解決する。即ち、種姫に傅く必要はないということだ。
だが家治からの脅し、もとい「メッセージ」からは家治が千穂を「お部屋様」へと昇格を果たさせるつもりがないことが読み取れた。
それゆえ家治のその「脅し」もとい「メッセージ」の効果たるや、千穂にとっては正に、
「覿面」
それであり、千穂は直ちに西之丸の大奥から本丸の大奥へと、
「避難」
しようとした。だがそれを年寄の玉澤が制したのであった。
「どうせ本丸の大奥へと、お戻りあそばされますのなら、この際、お内証様から、お部屋様への昇格を、上様に願い上げられましては如何でござりましょうや?」
玉澤のその提案は千穂の気持ちを大きく動かした。それと言うのも「お内証様」から「お部屋様」への昇格は千穂がずっと望んできたことであるからだ。
そこで千穂は玉澤のその「アドバイス」に従い、慌てて本丸の大奥へと「避難」することは取り止め、その代わり、玉澤が口にしたその「アドバイス」、もとい、
「本丸の大奥に戻る代わりに己をお内証様から、お部屋様へと昇格させて欲しい…」
その条件を将軍・家治への「メッセージ」として届けたのであった。
これに対して将軍・家治はと言うと、千穂がその条件を持ち出すであろうことは半ば予期していたことであったので、大して驚きもなく、
「本丸の大奥へと戻って来たならば、千穂が望む通り、お部屋様へと昇格させてやろうぞ…」
即座にそう、千穂に対して「メッセージ」を送ったのであった。
するとそれを受けた千穂は今度こそ、本丸の大奥へと戻ろうとしたものの、そんな千穂をやはり年寄の玉澤が制したのであった。
「お千穂の方様が本丸の大奥へとお戻りあそばされましたる途端、掌を返して、お部屋様への昇格の件を店晒しにせし魂胆やも知れませぬ…」
玉澤はその恐れを千穂に対して伝え、その上で、
「されば、本丸の大奥へと、お戻りあそばされまする前に、お部屋様へと昇格させて欲しいと、上様に願い上げられましては如何でござりましょうや…」
玉澤は千穂に対してそんな「アドバイス」までする始末であった。
すると千穂もまたしても玉澤のその「アドバイス」を尤もであると感じ、そこで玉澤のその「アドバイス」に従い、
「本丸の大奥へと戻る前に、お部屋様へと昇格させて欲しい…」
千穂は家治に対して更にそんな「メッセージ」を送ったのであった。
すると今度は家治が強い「拒否反応」を示す番であった。
それはそうだろう、何しろ千穂が望む通り、本丸の大奥に戻って来る前に千穂を「お内証様」から「お部屋様」へと昇格を果たさせてやったが最期、そのまま西之丸の大奥に今まで通り、居座る恐れがあり得たからだ。
勿論、家治は直ちにこれを拒否する返答をした。
それにしても千穂がここまで水際立った返答をよこすとは、千穂には申し訳ないが、到底、千穂の才覚とは思えなかった。それと言うのも千穂は生憎、そこまで頭が回るような女には少なくとも家治には見えなかったからだ。
「これは背後に千穂を唆す誰かがいるに相違あるまいて…」
家治はそう直感すると、その誰かが、
「年寄の玉澤に相違あるまい…」
すぐにそう、玉澤を連想したものである。
ともあれ事態は膠着するかに思われたが…、それどころか最悪、強制排除の可能性もあり得たが、これを打破したのは意外にも千穂、もとい玉澤であった。
玉澤は家治が察した通り、千穂を唆し、家治に新たな提案をさせたのだ。その提案たるや、
「西之丸の大奥から本丸の大奥へと戻るのは千穂一人」
「千穂に仕える年寄の玉澤を始めとする奥女中は皆、西之丸の大奥に残り、本丸の大奥へと一人戻った千穂がお部屋様へと昇格を果たしたのを見届けた後、玉澤たち奥女中も皆、西之丸の大奥から本丸の大奥へと戻る…」
といった内容であった。つまり、仮に本丸の大奥へと一人戻った千穂が約束通り、「お部屋様」へと昇格を果たせないようなら、西之丸に居座る、いや、篭城する玉澤たちが引き続き、その西之丸の大奥にて豪奢な生活を送ると、将軍・家治をそう脅していたのだ。
ともあれ、玉澤のその提案は家治・千穂の両者の顔が立つものであり、そこで家治はこの提案を了とする「メッセージ」を千穂、もとい玉澤に送ったのであった。
するとそれから間もなくして、本当に千穂が一人で西之丸の大奥から本丸の大奥へと戻って来たのであった。いや、一応、下女が一人、千穂に付き添っていたものの、事実上、一人であった。
それでも千穂がここ本丸の大奥へと戻って来たことに変わりはないので、家治も約束通り、千穂を「お内証様」から「お部屋様」へと昇格を果たさせたのであった。
これで玉澤たち奥女中も西之丸の大奥から本丸の大奥へと戻って来れば、
「万事丸く収まる…」
というものであったが、しかし、現実にはそう甘くはなかった。
それと言うのも将軍・家治は見事、玉澤に出し抜かれてしまったからだ。
どういうことかと言うと、千穂が晴れて、「お部屋様」へと昇格を果たしたにもかかわらず、玉澤たち奥女中は皆、西之丸の大奥より本丸の大奥へと戻って来ようとはしなかったからだ。
当然、家治は激怒した。それはそうだろう、何しろ年寄の玉澤を始めとする奥女中は、
「本丸の大奥へと一人戻った千穂がお部屋様へと昇格を果たしたのを見届けた後、玉澤たち奥女中も皆、西之丸の大奥から本丸の大奥へと戻る…」
家治に対してそう約束していたからだ。そうであれば、
「余は約束通り、千穂を部屋方に…、お部屋様へと昇格させてやったのだから、今度はそなたら奥女中が約束を守る番ぞ…」
家治は玉澤に対してそう「メッセージ」を…、直ちに西之丸の大奥から本丸の大奥へと戻って来いとの「メッセージ」を送ったのであった。
だがそれに対して玉澤はと言うと、
「確かに、千穂がお部屋様へと昇格を果たしたのを見届けた後…」
西之丸の大奥から本丸の大奥へと戻るとは言ったが、それがいつなのか…、つまりは見届けた後、直ちに戻るとは言ってないと、玉澤はそう嘯いてみせたのであった。
敵…、玉澤の方が家治よりも「役者」が一枚上であったと言うべきか、これにはさしもの家治も「お手上げ」であった。
一方、松島や高岳たち年寄はと言うと、将軍・家治附の年寄であるので、大っぴらには表に出せなかったものの、それでも内心、玉澤のその鮮やかなる手口…、将軍・家治をも出し抜いたその鮮やかなる手口に、
「舌を巻いた…」
ものであった。
そして出し抜かれた格好の家治はと言うと、玉澤は千穂の味方のようなフリをしながら、その実、本丸の大奥に比べて制約の少ない、つまりは、
「自由快適」
その西之丸の大奥にいつまでも居座りたいが為に、千穂の味方を…、さしずめ「参謀」を務めていたのだと、それに気付かされ、それから家治はそのような玉澤に対して怒りの感情が込み上げてきた。
家治は千穂を再び、「お内証様」から「お部屋様」へと降格させようかとも思ったが、しかし、それではみすみす、玉澤たち奥女中に対して、西之丸の大奥に居座り続ける格好の口実を与えることとなり、第一、玉澤に出し抜かれたからと言って、それで千穂を再び、「お内証様」から「お|部屋様」へと降格させるのは、
「八つ当たり…」
それ以外の何ものでもなく、それに何より、いったん「お部屋様」へと昇格させた千穂を再び、「お内証様」へと降格させるなど、元より不可能であった。
そこで家治は極力、怒りを抑えつつ、
「本丸の大奥にては、お部屋様となった千穂が、己に仕えし奥女中がおらぬので、大変、難儀をしておる。されば千穂のためにも、今すぐに本丸の大奥へと戻って参れ…」
玉澤に対してそう「メッセージ」を送ったのであった。あくまで玉澤の良心に訴えかけるものであった。
だがそれに対して玉澤はと言うと、そのような家治の配慮を踏みにじるかのような返答をよこした。即ち、
「上様附の奥女中がおられるではありませぬか…」
将軍・家治附の奥女中に面倒を見て貰えば良いではないかと、玉澤はそれそこ、
「木で鼻を括ったよう…」
そのような返答を寄越したものだから、事ここに至っては、家治は最早、
「強制排除も已む無し…」
そう決断しようとした。今、西之丸の大奥に残っているのは千穂に仕える奥女中ばかりであり、千穂はその中には当然、含まれてはいなかったので、それゆえ「強制排除」の結果、怪我人が出ようとも、家治は一向に構わなかった。
ともあれ種姫が萬壽姫の「遊び相手」を務めるようになった背景にはこのような事情、さしずめ、
「ルート」
それが隠されており、そしてその「ルート」は家基と種姫との、
「縁談」
それにおいても活用された。
即ち、江戸城本丸大奥にて勤める御客会釈の向坂から、田安家サイドに、それも、
「公儀奥女使…」
として本丸大奥に出入りする、田安家の侍女の廣瀬へと伝わり、そして廣瀬から更に田安家の重臣である竹本要人と常見文左衛門へと…、その「ルート」で次期将軍であった家基と種姫との「縁談」が田安家サイドへと伝わったのだ。
いや、この時…、倫子に続いて萬壽姫までが亡くなった安永2(1773)年時点で既に、それまで常見文左衛門と共に番頭の御役にあった竹本要人は、
「御側御用人」
へと昇進を果たしていた。いや、
「一頭地を抜いた…」
と言った方が正確やも知れぬ。何しろ御三卿の御側御用人ともなると、従六位に相当する布衣役と、その点は番頭と同じだが、しかしその…、御側御用人の役料たるや千俵と、番頭のそれの5倍であった。
即ち、番頭の役料は200俵に過ぎなかった。
それが御側御用人の役料ともなると千俵であり、これは家老の役料の2千俵にも迫る。
その御側御用人に竹本要人が取り立てられたのはやはり、田安宗武の母堂…、実母の古牟の縁者だからであろう。
一方、田安家の謂わば譜代の臣である常見文左衛門は相変わらず番頭の地位に留め置かれたままであり、それが竹本要人が一人、
「一頭地を抜く…」
その格好で御側御用人に取り立てられたわけで、それは即ち、
「田安邸内における勢力均衡の変動…」
所謂、パワーバランスの変動が生じた。
そして廣瀬も「公儀奥女使」に選ばれるだけあって、聡い女であり、それゆえこの「パワーバランスの変動」も敏感に嗅ぎ取り、するとそれまで何をおいても真っ先に竹本要人と常見文左衛門の二人に報告していたのが、竹本要人が御側御用人に昇進を果たすや、つまりは、
「パワーバランスの変動」
それ以降は、廣瀬は真っ先に報告すべき相手を竹本要人一人に絞ったのであった。
それに対して竹本要人はと言うと、廣瀬のその、
「正確なる状況認識…」
要はこの田安邸内においては誰が一番、偉いのか、それを嗅ぎ取った廣瀬の「聡明さ」を誉めそやしつつ、そこは海千山千の男だけあって、
「されば廣瀬殿より、身共と常見殿に対して今一度、同じく報せを…」
そう提案してみせたのだ。
要は最初に己一人が報告を受けたことを常見文左衛門に悟られないためである。
廣瀬より真っ先に、例えばこの、家基と種姫の縁談の件ならば、大奥の御客会釈の向坂より家基と種姫との縁談の「オファー」を伝えられた廣瀬が田安邸へとその「オファー」を持ち帰ると、真っ先にその「オファー」を受けたことを報せた相手が御側御用人の竹本要人であるにもかかわらず、竹本要人としては廣瀬より真っ先にその「オファー」を受けたことを報されたことを常見文左衛門に悟られないために、廣瀬にはもう一度、今度は己…、竹本要人と常見文左衛門が「仲良く」居並ぶ前で、「オファー」を受けたことを伝えてもらい、その際、竹本要人は今、初めて聞いたような顔をしてみせたのであった。
それもこれも常見文左衛門の「おへそ」を曲げさせないための、竹本要人なりの、
「涙ぐましい配慮」
であったが、それなら今まで通り、廣瀬には竹本要人と常見文左衛門の二人に対して真っ先に報せれば済む話であったが、しかし、竹本要人としてはそこまで常見文左衛門に対して「配慮」するつもりはなかった。
竹本要人としては…、御側御用人へと昇進を果たした竹本要人は、
「御側御用人たる己の方が相変わらず番頭に過ぎぬ常見文左衛門よりも上である…」
その意識が芽生えたので、廣瀬のその判断…、真っ先に報告すべき相手を己…、竹本要人と常見文左衛門の二人から己一人…、竹本要人一人に絞った廣瀬のその判断を大いに「歓迎」していたからだ。
ともあれ廣瀬は大奥の御客会釈の向坂より、家基と種姫の縁談の「オファー」を受けたことを竹本要人と常見文左衛門の二人に打ち明けるや、二人は「驚く」と同時に、即座に賛同した。
何と言っても己が仕える、主家の姫君…、娘が次期将軍の嫁になれるという話である。反対すべき理由はどこにもなかった。養母の宝蓮院にしてもそうであろうし、何より当人とも言うべき種姫自身、次期将軍たる家基との縁談を嫌がる筈がなかった。
それでも廣瀬たちはやはり一応と言うべきか、
「御廣敷御附御用人」
宝蓮院附の用人を通じて宝蓮院にもこの旨…、縁談の「オファー」を伝え、それに対して宝蓮院は廣瀬たちが予期した通りの反応を示した。
即ち、即座に賛同してみせたのであった。
いや、無論、種姫当人の気持ちもあるだろうが、しかしそれについても宝蓮院が、
「この身が必ずや種姫を頷かせてみせましょうぞ…」
種姫にこの縁談を必ずや受けさせると、そう請け合ってくれたのであった。
宝蓮院はその上で廣瀬たちに対して、
「この儀、家老にも伝えられた方が宜しかろう…」
そうアドバイスをしたのであった。それは廣瀬たちがすっかり失念していたことで、如何に廣瀬たちが家老…、御三卿家老を軽視していたかの証左でもあった。
実際、先の種姫が萬壽姫の遊び相手を務める件につき、御三卿家老が…、田安家老の山木筑前守正信と大屋遠江守昌富の二人がそれを知ったのは当日のことであった。
即ち、廣瀬たちは家老の二人に報告するのをすっかり失念していたのだ。
いや、萬壽姫の遊び相手を務める件につき、種姫の諒承が得られた時点で廣瀬たちは家老の二人にも報告するつもりでいたのだが、それが萬壽姫が諒承してくれたことでホッとしたために、家老への報告をすっかり忘れてしまい、結果、宝蓮院が萬壽姫の手を引いて、初めて御城へと登城する段になって、家老の二人は宝蓮院より種姫が萬壽姫の遊び相手を務める件を知らされるという有様であった。
この時ばかりは流石に山木正信にしろ、大屋昌富にしろ不快気であり、廣瀬たちも家老の二人を舐め過ぎたと大いに反省したものである。
それが今回は縁談である。遊び相手を務める比ではない。今度もまた、家老の二人は、
「蚊帳の外…」
だったとなれば、山木正信も大屋昌富も大激怒に違いなかった。別段、山木正信や大屋昌富が大激怒したところで、廣瀬たちは少しも怖いとは思わなかったが…、精々、五月蠅いと思う程度に過ぎなかったが、それでも衝突を回避できるのであれば、回避するに越したことはない。
それゆえ今度は廣瀬たちは、
「忘れずに…」
家老の山木正信と大屋昌富の二人に対しても家基と種姫との縁談を…、その「オファー」が大奥の御客会釈…、将軍・家治に附属する御客会釈の向坂よりあったことを打ち明けたのであった。
それに対して家老の山木正信と大屋昌富は二人共、誇張ではなし、
「狂喜乱舞」
それをしたものである。御三卿家老というポストは、「附人」、即ち、御三卿の、
「お目付役」
として、ご公儀…、幕府より派された者であるが、それでも「お目付役」とは言え、己が家老として仕える、その御三卿より、娘が次期将軍に見初められたとあらば、嬉しくないわけがなかった。
そして肝心要の、当人である種姫の意向はと言うと、こちらもまた廣瀬たちが予期した通り、即座に快諾してみせたのであった。
こうして田安家サイドより、種姫が家基との縁談を、
「謹んで受け申し上げまする…」
その意向が「公儀奥女使」の廣瀬より大奥の御客会釈の向坂へと伝えられたのはその翌日…、萬壽姫が薨去してから丁度、一月後の3月20日のことであった。
種姫が家基との縁談を受け入れた…、そのことは直ちに将軍・家治にも向坂より年寄の松島と高岳の二人を介して伝えられた。
すると家治はそれを受けてもう一度、それも直ちに、相変わらず西之丸の大奥に居座り続ける側室の千穂と、千穂に仕える年寄の玉澤を始めとする奥女中たちに対して、家基と種姫との縁談を伝えた上で、
「されば種姫は将軍たる余が養女と定めし上で、家基が室として西之丸の大奥へと迎えるゆえ、余が内証に過ぎぬそなたよりも立場は上ぞ…」
家治は千穂に対してそんな「脅し」とも取れる「メッセージ」を発したのであった。
いや、千穂からすれば、その「メッセージ」は立派な「脅し」そのものであった。
何しろ、西之丸の大奥に家基が御台所として、のみならず、将軍・家治の養女として迎えられる種姫に傅かねばならないと、そう脅されたも同然であるからだ。
いや、千穂が一介の側室に過ぎない「お内証様」から晴れて次期将軍の生母である「お部屋様」へと昇格を果たせばこの問題は解決する。即ち、種姫に傅く必要はないということだ。
だが家治からの脅し、もとい「メッセージ」からは家治が千穂を「お部屋様」へと昇格を果たさせるつもりがないことが読み取れた。
それゆえ家治のその「脅し」もとい「メッセージ」の効果たるや、千穂にとっては正に、
「覿面」
それであり、千穂は直ちに西之丸の大奥から本丸の大奥へと、
「避難」
しようとした。だがそれを年寄の玉澤が制したのであった。
「どうせ本丸の大奥へと、お戻りあそばされますのなら、この際、お内証様から、お部屋様への昇格を、上様に願い上げられましては如何でござりましょうや?」
玉澤のその提案は千穂の気持ちを大きく動かした。それと言うのも「お内証様」から「お部屋様」への昇格は千穂がずっと望んできたことであるからだ。
そこで千穂は玉澤のその「アドバイス」に従い、慌てて本丸の大奥へと「避難」することは取り止め、その代わり、玉澤が口にしたその「アドバイス」、もとい、
「本丸の大奥に戻る代わりに己をお内証様から、お部屋様へと昇格させて欲しい…」
その条件を将軍・家治への「メッセージ」として届けたのであった。
これに対して将軍・家治はと言うと、千穂がその条件を持ち出すであろうことは半ば予期していたことであったので、大して驚きもなく、
「本丸の大奥へと戻って来たならば、千穂が望む通り、お部屋様へと昇格させてやろうぞ…」
即座にそう、千穂に対して「メッセージ」を送ったのであった。
するとそれを受けた千穂は今度こそ、本丸の大奥へと戻ろうとしたものの、そんな千穂をやはり年寄の玉澤が制したのであった。
「お千穂の方様が本丸の大奥へとお戻りあそばされましたる途端、掌を返して、お部屋様への昇格の件を店晒しにせし魂胆やも知れませぬ…」
玉澤はその恐れを千穂に対して伝え、その上で、
「されば、本丸の大奥へと、お戻りあそばされまする前に、お部屋様へと昇格させて欲しいと、上様に願い上げられましては如何でござりましょうや…」
玉澤は千穂に対してそんな「アドバイス」までする始末であった。
すると千穂もまたしても玉澤のその「アドバイス」を尤もであると感じ、そこで玉澤のその「アドバイス」に従い、
「本丸の大奥へと戻る前に、お部屋様へと昇格させて欲しい…」
千穂は家治に対して更にそんな「メッセージ」を送ったのであった。
すると今度は家治が強い「拒否反応」を示す番であった。
それはそうだろう、何しろ千穂が望む通り、本丸の大奥に戻って来る前に千穂を「お内証様」から「お部屋様」へと昇格を果たさせてやったが最期、そのまま西之丸の大奥に今まで通り、居座る恐れがあり得たからだ。
勿論、家治は直ちにこれを拒否する返答をした。
それにしても千穂がここまで水際立った返答をよこすとは、千穂には申し訳ないが、到底、千穂の才覚とは思えなかった。それと言うのも千穂は生憎、そこまで頭が回るような女には少なくとも家治には見えなかったからだ。
「これは背後に千穂を唆す誰かがいるに相違あるまいて…」
家治はそう直感すると、その誰かが、
「年寄の玉澤に相違あるまい…」
すぐにそう、玉澤を連想したものである。
ともあれ事態は膠着するかに思われたが…、それどころか最悪、強制排除の可能性もあり得たが、これを打破したのは意外にも千穂、もとい玉澤であった。
玉澤は家治が察した通り、千穂を唆し、家治に新たな提案をさせたのだ。その提案たるや、
「西之丸の大奥から本丸の大奥へと戻るのは千穂一人」
「千穂に仕える年寄の玉澤を始めとする奥女中は皆、西之丸の大奥に残り、本丸の大奥へと一人戻った千穂がお部屋様へと昇格を果たしたのを見届けた後、玉澤たち奥女中も皆、西之丸の大奥から本丸の大奥へと戻る…」
といった内容であった。つまり、仮に本丸の大奥へと一人戻った千穂が約束通り、「お部屋様」へと昇格を果たせないようなら、西之丸に居座る、いや、篭城する玉澤たちが引き続き、その西之丸の大奥にて豪奢な生活を送ると、将軍・家治をそう脅していたのだ。
ともあれ、玉澤のその提案は家治・千穂の両者の顔が立つものであり、そこで家治はこの提案を了とする「メッセージ」を千穂、もとい玉澤に送ったのであった。
するとそれから間もなくして、本当に千穂が一人で西之丸の大奥から本丸の大奥へと戻って来たのであった。いや、一応、下女が一人、千穂に付き添っていたものの、事実上、一人であった。
それでも千穂がここ本丸の大奥へと戻って来たことに変わりはないので、家治も約束通り、千穂を「お内証様」から「お部屋様」へと昇格を果たさせたのであった。
これで玉澤たち奥女中も西之丸の大奥から本丸の大奥へと戻って来れば、
「万事丸く収まる…」
というものであったが、しかし、現実にはそう甘くはなかった。
それと言うのも将軍・家治は見事、玉澤に出し抜かれてしまったからだ。
どういうことかと言うと、千穂が晴れて、「お部屋様」へと昇格を果たしたにもかかわらず、玉澤たち奥女中は皆、西之丸の大奥より本丸の大奥へと戻って来ようとはしなかったからだ。
当然、家治は激怒した。それはそうだろう、何しろ年寄の玉澤を始めとする奥女中は、
「本丸の大奥へと一人戻った千穂がお部屋様へと昇格を果たしたのを見届けた後、玉澤たち奥女中も皆、西之丸の大奥から本丸の大奥へと戻る…」
家治に対してそう約束していたからだ。そうであれば、
「余は約束通り、千穂を部屋方に…、お部屋様へと昇格させてやったのだから、今度はそなたら奥女中が約束を守る番ぞ…」
家治は玉澤に対してそう「メッセージ」を…、直ちに西之丸の大奥から本丸の大奥へと戻って来いとの「メッセージ」を送ったのであった。
だがそれに対して玉澤はと言うと、
「確かに、千穂がお部屋様へと昇格を果たしたのを見届けた後…」
西之丸の大奥から本丸の大奥へと戻るとは言ったが、それがいつなのか…、つまりは見届けた後、直ちに戻るとは言ってないと、玉澤はそう嘯いてみせたのであった。
敵…、玉澤の方が家治よりも「役者」が一枚上であったと言うべきか、これにはさしもの家治も「お手上げ」であった。
一方、松島や高岳たち年寄はと言うと、将軍・家治附の年寄であるので、大っぴらには表に出せなかったものの、それでも内心、玉澤のその鮮やかなる手口…、将軍・家治をも出し抜いたその鮮やかなる手口に、
「舌を巻いた…」
ものであった。
そして出し抜かれた格好の家治はと言うと、玉澤は千穂の味方のようなフリをしながら、その実、本丸の大奥に比べて制約の少ない、つまりは、
「自由快適」
その西之丸の大奥にいつまでも居座りたいが為に、千穂の味方を…、さしずめ「参謀」を務めていたのだと、それに気付かされ、それから家治はそのような玉澤に対して怒りの感情が込み上げてきた。
家治は千穂を再び、「お内証様」から「お部屋様」へと降格させようかとも思ったが、しかし、それではみすみす、玉澤たち奥女中に対して、西之丸の大奥に居座り続ける格好の口実を与えることとなり、第一、玉澤に出し抜かれたからと言って、それで千穂を再び、「お内証様」から「お|部屋様」へと降格させるのは、
「八つ当たり…」
それ以外の何ものでもなく、それに何より、いったん「お部屋様」へと昇格させた千穂を再び、「お内証様」へと降格させるなど、元より不可能であった。
そこで家治は極力、怒りを抑えつつ、
「本丸の大奥にては、お部屋様となった千穂が、己に仕えし奥女中がおらぬので、大変、難儀をしておる。されば千穂のためにも、今すぐに本丸の大奥へと戻って参れ…」
玉澤に対してそう「メッセージ」を送ったのであった。あくまで玉澤の良心に訴えかけるものであった。
だがそれに対して玉澤はと言うと、そのような家治の配慮を踏みにじるかのような返答をよこした。即ち、
「上様附の奥女中がおられるではありませぬか…」
将軍・家治附の奥女中に面倒を見て貰えば良いではないかと、玉澤はそれそこ、
「木で鼻を括ったよう…」
そのような返答を寄越したものだから、事ここに至っては、家治は最早、
「強制排除も已む無し…」
そう決断しようとした。今、西之丸の大奥に残っているのは千穂に仕える奥女中ばかりであり、千穂はその中には当然、含まれてはいなかったので、それゆえ「強制排除」の結果、怪我人が出ようとも、家治は一向に構わなかった。
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