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1章 始まりの高2編
王子の真実
しおりを挟むどのくらい眠っていたのだろう。目を覚ますと八千代たちも居た。僕はまだ、朔に抱えられたままだった。
「結人、生きてるか? 大丈夫か? 朔にヤり殺されてねぇか心配だったんだぞ」
「殺すわけないだろ。俺をなんだと思ってるんだ」
「女殺しの巨チン」
啓吾がボソッと呟いた。僕たちは、聞き流せずに吹き出した。
「チンコで女殺したことなんかないぞ。と言うより、女を抱いた事すらねぇけどな」
「「「「えっ!!!?」」」」
思わず、全員が驚愕した。
「え、待って待って。それじゃ、ゆいぴ抱いた時、童貞だったってこと?」
「あぁ、そうだ。結人が初めてだ。だから、思うように加減ができなくて、悪かったと思ってる」
朔は恥ずかしげもなく、至って真面目な顔で言った。
「マジかー····結人、知らない間に筆下ろしちゃったんだ。ウケるー····」
啓吾の表情は、言葉とは裏腹にウケてなどいない。むしろ、若干引き気味だ。しかし、知らなかったとはいえ、人様の初めてを頂いたのかと思うと、途端に顔も身体も熱くなった。
「お前、彼女とか今までいなかったもんな。噂では色々言われてたみてぇだけど。どうせ、俺みてぇなもんだろ」
「おお、百人殺しの組長だな。それなら、俺も知ってるぞ」
「あ~、あるある。場野だって、隠し子が何人もいるって噂あったな。実際、そんなバケモンとかじゃねぇのにな。お前ら、普通に良い奴だもんなっ」
啓吾はニカッと笑い、朔と八千代の顔を見た。2人は、はにかんで笑ったが、八千代はどこか暗い表情を隠しているようだった。
「ね、そろそろ戻らない? 暑いし、かき氷食べたいな」
空気を変えようと思い提案したのだが、僕の身体に問題が起きていた。立てない。脚に力が入らず、生まれたての仔鹿のようにカクカクしてしまう。
「結人、どしたん? ····え? マジで立てねぇの?」
「あ、そうだった。奥、入っちまったんだった」
「はぁっ!? お前、マジか!? そこはゆっくり開発していこうと······莉久にもこないだ説教したのに······クソ童貞上がりがっ! ····じゃねぇ。結人、大丈夫か? どっか痛くねぇか?」
「あはは。八千代もやるつもりだったんだ····。どこも痛くないから大丈夫だよ。でも、ちょっと立てそうにないかな。イキすぎて、相当脚にキてるみたい」
りっくんはバツが悪そうだが、啓吾は呆れ顔で朔を見て、大きくて深い溜め息をついた。八千代はいつものように、僕をお姫様抱っこをしてくれた。朔は、申し訳なさそうに、しゅんとしている。しゅんとした仔犬っぽい朔は、どうにも放っておけない。
「朔、僕なら大丈夫だよ。あんまり凹まないで」
「おぉ。····お前、天使だったんだな」
「「ブッフォ」」
りっくんと啓吾が吹き出した。真顔で目を丸くして呟く天然王子には、まったく困ったものだ。
「ははっ。確かにこいつは天使だわ。しっかし、お前マジでぽやっとした事ばっか言ってっと、本気で馬鹿だと思われんぞ」
「ん? 俺は、天使だと思ったから言っただけだぞ。俺、何かおかしな事言ったか?」
「はははっ。マジかお前。そこまでボケた奴だったか?」
(八千代が本気で笑ってる。珍しいな。八千代が楽しそうだと、僕も嬉しくなるな。へへっ)
「お前、何ニヤけてんだよ」
八千代が、僕を覗き込むように見つめる。少し怒ったようでいて、その実照れたような顔に心臓が高鳴る。
「珍しく八千代が笑ってたからさ、なんか嬉しくなっただけだよ」
恥ずかしい事を言ってしまったと気づき、えへへと誤魔化し笑うと、擦り寄るようにキスをされた。八千代は少し塩気を帯びた唇を、首筋から頬へ、頬から僕の唇へと這わす。
「んあっ、八千代、落ちちゃうよぉ」
「落とさねぇよ」
「はーい、そこイチャイチャしないで進んでくださーい」
りっくんが誘導を始める。それに続き、啓吾も「はいはーい、こちらでーす」と先導を切る。
そして案の定、ビーチに戻ると、良くも悪くも注目の的だった。当然だ。イケメンたちに包囲され、再びお姫様抱っこで現れたのだから。
チラッと聞こえたのだが、僕の性別を問う声があった。何処からどう見ても男だと思うのだが、それはもうイケメンマジックが起こさせた錯覚である。
「僕····男なのに····」
「はは。こんな可愛い男そうそう居ねぇわ。ま、俺らの姫なんは間違いじゃねぇしな」
「八千代がこんな抱え方するからでしょ····」
「結人よ、男でも女でも抱えられてたら注目されるのだよ」
「啓吾ウザい。けど正論だね。ゆいぴ可愛いし、注目されんのも仕方ないよ」
「何言ってんのさ····皆がイケメン過ぎるからでしょ!?」
「俺、この顔に生まれたこと、俺史上最高に感謝してる。ゆいぴが、俺の事イケメンと思ってくれてたなんて····」
感激のあまり涙目になっている、りっくんの情緒が心配だ。他はみんな、さも当然と言わん顔でしれっとしている。言われ慣れているのだろう。
「結人、降ろすぞ」
「あ、うん。ありがとう」
いつの間にか我らが陣に戻っていて、それはそれは慎重に丁寧に降ろされた。僕は、ボトルシップにでもなったのだろうか。些か、過保護過ぎるようにも思う。
「俺、かき氷買ってくる。結人の分は、さっきの詫びに奢らせてくれ。何味がいい?」
朔が、物凄く気を遣ってくれている。ここは、変に遠慮しない方がいいのだろうか。
「それじゃ、イチゴでお願いします」
「わかった」
「俺らは?」
「ん」
朔は手を出して、金を渡せと合図した。僕以外はお金を渡し、朔に注文をした。そこで、ハッと気づいた啓吾が名乗り出た。
「俺、一緒に行くわ! 持ちきれねぇだろ」
「ああ、そうだな。頼む」
啓吾のこういう気の利くところは、凄く素敵な長所だと思う。それに伴った行動力や発言力もある。啓吾の無邪気さ故とも言える魅力だ。
2人が買いに行って数分、八千代が立ち上がった。
「俺、飲みもん買ってくるわ。金集めんの面倒いから、後でいいわ。全員コーラでいいだろ。莉久、結人の事ちゃんと見とけよ。あと、消えんなよ」
ビシッと指を差して言った。その男前たるや····。
「お、おう。わかってるよ」
「僕、コーラ苦手なんだけど····」
「お前はカルピスだな。悪ぃ」
「なんで知ってんの····? 言った事ないよね?」
「ゆいぴ、もうそこは気にしない方がいいよ」
八千代は僕たちに構わず、さっさと行ってしまった。
「八千代の情報は、いつもドコからなんだろうね」
「俺も気になって聞いたことあるけど、はぐらかされたんだよね。まぁ、害はなさそうだし、スルーしとくのが得策だよ」
「あはは。だね。聞くだけ無駄そうだもんね」
僕も以前、聞いてみたが誤魔化されたのを思い出した。
「····ねぇ、ゆいぴ」
「ん? え、どうしたの? そんな深刻な顔して····」
「俺がゆいぴの事、初めて好きって言った時、俺の事気持ち悪いとか思わなかったの?」
何を言い出すのかと思えば、りっくんは僕に関わると途端に弱気になる。可愛いところでもあるし、放っておけないところでもある。
「····びっくりはしたけど、気持ち悪いだなんて思わなかったよ。あの時は、あまりの急展開についていけなかったけど、ちょっと嬉しかったくらいだよ」
「そうなの? 俺、てっきりちょっと嫌がられてるのかと思ってた」
「もう、そんな泣きそうな顔しないでよ。大丈夫だよ。僕が、りっくんにそんな事思うわけないでしょ」
「ゆいぴ····」
りっくんに、こんな繊細な一面があるなんて、付き合うまで知らなかった。17年間も近くに居たのに、知らない事の方が多かった。
「僕、りっくんの事ホントに上辺しか知らなかったんだね」
「そりゃ、俺は必死に隠してカッコ良いトコだけ見せてたつもりだし? こんなカッコ悪いトコなんて、見せるつもり無かったんだけどな····」
「えへへ。僕はね、りっくんの知らなかったトコ見れて嬉しいよ。上辺だけじゃない、本当のりっくんだもんね」
「やば、俺泣きそう」
「僕の胸で泣く?」
「····そんな可愛い胸で泣けない。ムラッちゃう」
「ムラッちゃうって何? 初めて聞いたよ····」
「そういや俺まださ、ゆいぴと2人でヤッた事ないんだよね。場野と朔、狡いよねぇ」
「そんな事····言われても──」
僕がおどおどしていると、りっくんが頬を寄せ耳元で囁いた。周囲には聞こえないように、低くとびきり甘い声で····。
「今度、俺と2人きりでヤろうね、結人」
「ひあぅっ」
変な声が出てしまった。突然、“結人”だなんて、あまりにも卑怯だ。僕は、思わず囁かれた方の耳を手で覆い隠し、飛び退いてしまった。
「あははっ。ゆいぴ、耳弱すぎ」
そう言ったりっくんは、目を細めて薄らと笑い、見た事のないヤラシイ表情を見せた。それに僕の身体は素直に反応してしまう。
「あ、今ちょっとキュンてしたでしょ? お尻のア・ナ」
「し、してないっ!」
「ふーん····。ゆいぴ、さっきから顔真っ赤だよ。大丈夫?」
「誰の所為だと思ってんの!?」
「えー、誰の所為?」
「りっくんでしょ! もうっ」
「ゆいぴが俺で一喜一憂してくれんの、本気で嬉しいしヤバいんだけど。マジでクるわ····」
「本当にりっくんて変態じみてるよね。僕にはわかんない」
「それだけ、ゆいぴの事が好きなんだよ。ねっ?」
ニコッと優しい笑顔を見せてくれたりっくんは、いつもの甘さを取り戻していた。八千代は、りっくんが話せるように2人きりにしてくれたのだろう。ふと、そんな気がした。
僕には朔だけじゃなくて、他の3人だって王子に思えて仕方ない。いや、だからって僕は姫じゃないんだけどね。
思わぬ形でりっくんの胸の内を聞いて、啓吾の事も知りたいと思った。普段はお調子者だけど、まだ知らない一面があるんじゃないかと思う。一応、僕は恋人なのだから、もう少しみんなの事を深く知りたい。それは我侭な事だろうか。
なんて考えていたら、3人が一緒に帰ってきた。
「おまたせ~。これ食ったら、もうひと泳ぎして帰ろうぜ。さっきから場野が、結人の身体が心配だ~つってうるせぇの」
「てんめぇ、マジで余計な事ばっか言ってんじゃねぇよ!」
「痛ってぇ! 背中真っ赤になってない!?」
「お、綺麗な紅葉ができてるぞ。秋になったら紅葉狩りに行きてぇな」
「紅葉狩りなんかどうでもいいわ! 誰か、朔の天然と場野の暴力止めてぇ! 結人ぉ!」
「なんか僕ね、朔見てると和んじゃうんだよね」
「和んでないで助けて~」
「いつまでもうるっせぇな。さっさと食えよ」
「お前の所為だろぉ!?」
啓吾は僕らのムードメーカーだ。啓吾が居るだけで、どんなに深刻な状況でも明るくなる。少し煩いのが難点だけど。
この後、僕たちは啓吾の提案通り、ひと泳ぎして帰路についた。これ以上、八千代に心配をかけないためにも。なんて言うと、また怒られそうだ。
こうして友達と海に来るのは初めてだった。ハプニングも色々あったけれど、物凄く楽しい思い出ができた。
夏休みは残り少ないけど、もっと楽しい思い出ができれば嬉しいな。
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