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1章 始まりの高2編

頑張れ、冬真くん

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 一度きりの、冬真くんとのえっちが始まる····。一瞬眠った所為か、頭がスッキリしてしまい凄く緊張している。
 だけど、冬真くんはそうでもないようだ。皆に見守られながらも、冬真くんは慣れた手つきでお尻を弄り始めている。

「んんっ····冬真くん、男同士でしたことあるの?」

「ないよ。なんで?」

「なんか、凄く慣れてるから····」

「だって武居のケツ、女の子のと変わんないよ? めっちゃ柔らかいし吸い付いてくるし、ヤバいくらいエロいもん」

「や、やだ····そんなこと言わないでよ····」

「····可愛いなぁ。これ、解す必要ねぇよな?」

「ん、もう挿れる?」

「ん~····いや、もうちょい弄る」

 悪巧みをしているような顔で、冬真くんは前立腺を刺激し始めた。

「んっ、ふぁっ····それぇ、コリコリしちゃらめ····」

「これ気持ちイイんだ。最初、場野にされてる時イッてたのこれだろ。ははっ。少ないけど、まだ出るなぁ」

「冬真くん、も、指いいから····おちんちんがいいよぉ」

「なぁ、アレやらせてもいい? 啓吾が言わせてたやつ」

「せっかくだからどーぞ」

 啓吾が投げやりに言った。アレって、お強請りの事だろうか。

「お強請りすりゅの? していいの?」

「せっかくだから、一生思い出に残るようなの言ってあげなよ。ゆいぴ以外の女の子抱けなくなるようにさ」

「僕、女の子じゃないのにぃ」

(って言われても、なんて言ったらいいんだろ····。んー····いつも通りでいっか)

「んぇっと····、僕のえっちなアナルにね、冬真くんの硬くておっきぃおちんちん、挿ぇてくだしゃい。ナカね、皆の精液でぐちょぐちょらけど、冬真くんのでもっとぐちょぐちょにして?」

 自らの手でお尻を開いて見せ、挿れてほしい気持ちを一生懸命伝える。くぱぁっと開くと、皆の精液が溢れ出てきた。
 僕のお強請りに応えて、冬真くんは僕の両足首を掴み、荒ぶる息を抑えながら言った。

「なんっなの? 溢れてくんのエロッ! つぅか涙目で何言ってんの!? これ、どこまでやっていいんだろ。結腸挿れてみていい? キスは?」

「神谷うるせぇ。キスはダメだ。万が一したら、舌引き抜いてやるからな」

 朔が不機嫌そうにこちらを見ている。少し怖いが、朔の冷ややかな目は雄っぽくてえっちだ。

「朔ぅ、かっこいぃ····」

「なぁ武居、今は俺の事だけ見てて。俺とのえっち、忘れらんないようにすっげぇ気持ち良くしてあげるから」

 甘い言葉を囁いて、冬真くんが僕のナカにゆっくり入ってきた。冬真くんのおちんちんも大きくて、亀頭が入った時の存在感が凄い。カリ高なのか、前立腺をゴリゴリと抉り潰しながら奥まで進む。

「んぁ゙っ····やっ、じぇんりちゅせん····ちゅぶしちゃ、らめぇ····」

「ここだよな? あ~っ、すっげぇ締まる。奥抜いていいんだよね? 俺ので届くかなぁ····。届くといいなぁ~」

 冬真くんはルンルンしながら奥の扉をごちゅごちゅ叩き、加減を覚えると遠慮なく貫いた。ぐぽぐぽすると、カリが凄く引っかかる。

「んっ、ぉ゙あ゙····ぐぽぐぽ、しゅごっ、カリ、引っかかる、の····だ、め····声、出ちゃ····」

 冬真くんは僕の口を塞ぐと、奥を抉るスピードを速めた。

「んぅ゙····ん゙ん゙ん゙ぅっ!!!」

「冬真、それ以上やったら吐く。奥、1回やめたげて」

「あぁ? あぁ····吐いたらマズイの?」

「片付けが大変なの。家じゃねぇんだからさ」

「あ、そっか。そうだね。····落ち着いたら、後でもっかいしてあげるね」

 冬真くんは、奥の部屋から出ると耳元で囁いた。耳が弱いと知っての悪戯だろうか。

「やっ、奥もっと····吐いてイキたい····冬真くん、奥、ぐぽぐぽしてぇ」

 僕が冬真くんにお強請りすると、朔がイラつきを隠さず強めの口調で言う。

「結人、吐くのはダメだ。····夕飯美味かっただろ? 勿体ねぇぞ」

「んっ····吐かない。晩ご飯、美味しかったねぇ」

「んぐぅ····。何これ、なんなの? 可愛い過ぎんだけど!!」

「冬真うるせぇ。ふわふわした結人はこんなんなの。飲ませたらもっとやべぇよ」

「飲ませたんかよ。あ~、それも見てぇ····。やっぱ、俺も仲間に入れてほしいなぁ····」

 冬真くんは寂しそうな目をして、僕を見つめて言った。冬真くんの本心がなかなか見えなくて、その言葉のひとつひとつに振り回される。

「冬真くん、寂しいの? ギュゥってしてあげぅ」

 僕は、冬真くんを抱き寄せた。首にしがみつくように抱き締めると、冬真くんが耳元で小さく呟いた。

「結人、また抱いていい? 何回も抱きたいな····。俺、結人の事マジで好きになっちゃったかも」

「んっ、ふぁぁ····」

「おい場野。アイツ今、結人に何か耳打ちしたぞ」

「したな。後で聞き出す」

「ったくもう····、イチャつくなって言ったのにぃ。結人から抱き締めてんなよな」

 甘い声とイケナイ言葉が腰にクる。それに、普通に名前で呼ばれている。モテる男はドキドキさせるのが上手すぎるよ····。
 なんだか、朔と八千代が何を言われたのか気にしているようだが、これは言って良いのだろうか。冬真くんの身が心配だ。

「冬真くん····だめぇ····」

 耳でイッてしまい、脳が焼き切れそうなほどジンジンしている。

「冬真でいいよ。なぁ、もっかい奥抜くよ?」

「んんっ····冬真····冬真ぁ····奥らめ····イッちゃうよぉ」

 僕は、力一杯抱き締めてイッた。イッている間も、冬真は構わずぐぽぐぽし続ける。

「武居? 俺とのえっち気持ちぃ?」

 そうか。皆に聞こえない時だけ結人って呼ぶんだ。なんというテクニックだ。まんまとドキドキしてしまった。

「気持ちぃ····いっぱいイッてぅ····も、イケな····なんにも出にゃいぃ····」

「そっか。あぁ~······イクの勿体ねぇなぁ。ずっと武居んナカに居たい」

「んんっ、冬真····僕のナカ、気持ちぃ?」

「気持ちイイ。アイツらがハマんのわかったわ。これ、マジでもう女抱けないかもしんない」

「んぇ? 冬真、僕しか抱けないの? えへへっ。僕だけの冬真だぁ」

「こいっつ、マジで何言ってんの? わかってて言ってんの?」

「わかってないよ。結人さ、気持ちくなっちゃうと殆どワケわかんなくなってるからね。こっちから言うまで忘れてるし」

「はぁぁぁぁ······。厄介すぎんだろぉ······」

「でしょ。そこが可愛いんだよ、俺らの嫁は」

「はぁぁ?? 惚気けてんじゃねぇよ。絶対また抱いてって言わせてやる」

「あはは。ムダムダ。そんな頑張んなくても、気持ちイイ事したら簡単に抱かせてくれるもん。だぁから俺らが必死こいて護ってんじゃん」

「お前らマジで狂ってんな。ハァ····こんなんハマんなっつぅほうが無理だろ······」

「冬真? 僕でイケない? 奥、ちゅぶしていいよ。めちゃくちゃにして? らからね、冬真もいっぱいイッてね?」

「んはぁっ······わかった。もう加減しないから、ちょっと口塞ぐよ? 苦しかったらごめんな?」

 冬真は僕の口を力強く押さえ込むと、カリを出し挿れしだした。入り口でカリが引っかかって、抜ける時の引っ張られる感じが堪らなく気持ち良い。
 そして、今度は奥でまた、大きなカリを引っ掛けてぐぽぐぽする。ひたすらイキ続けて、上手く息が出来なくなってきた。

「冬真、結人苦しそうだからそろそろ終わったげて。ナカでイッていいから」

「ナカでって、俺だけゴムつけてんじゃん!」

「当たり前だろうが。なんで生でヤれると思ってんだよ。馬鹿じゃねぇの?」

「くっそ····。武居、イクよ。奥でイクからね。もうちょっとだけ頑張って」

「んっ、ふぐぅっ····んぅ゙····イ゙ッん゙ん゙んっ」

 冬真はぐんぐん奥に押し込み、僕のお強請りに応えて沢山出した。そして、おちんちんを抜かないまま、僕の上に倒れ込んだ。

「んぅ····重い······」

「神谷、さっさと退け。結人が潰れてんだろ」

「へぁ~····やっべぇ······もう動けねぇ」

「ここで寝んなよ。部屋に帰れ」

「瀬古さぁ、俺の事嫌いなの? 当たりキツくねぇ?」

「好きでも嫌いでもねぇ。お前はこれっきりの奴だ。とにかく、約束は守れよ。んで、今すぐ帰れ」

「めっちゃ怒ってんじゃん····。わーかったよ。帰るよ。武居? 大丈夫?」

「らいじょーぶ····らいじょー··ぶ····」

「あのな、すげぇ気持ち良かったよ。ありがとな。これっきりってのはなんかヤだけど····。俺、部屋戻るね。おやすみ」

「冬真····? おやしゅみぃ······」

 冬真は服を整えると、そぅっと静かに部屋を出ていった。誰も見送ることはせず、僕と寝床の処理に追われている。

「ゆいぴ、神谷とのえっち気持ち良さそうだったね」

「うん、気持ち良かったぁ。でもね、やっぱりねぇ、皆とはなんか違うの。なんだろぉ····僕からの愛情の差、とかなのかなぁ」

 と、素で言ってしまい恥ずかしくなった。朔が僕を抱き締めて、首筋を嗅ぎながら沢山キスをしてくる。

「朔、どうしたの? んっ、擽ったいよぉ」

「お前、神谷のこと好きになってねぇか?」

「なってないよ。僕が好きなのはねぇ、朔と八千代とりっくんと啓吾だけだよ。えへへ、大丈夫らよ」

 僕は、朔を思いっきり抱き返した。朔は安心してくれたのか、首筋から顎へ、頬から口へとキスを繋ぐ。

「はぁっ····ん····」

 キスが気持ち良くて、僕はいつの間にか眠りに落ちていた。



 翌朝5時頃。まだ外は薄暗い。今日は八千代に抱きしめられながら、後ろ手にりっくんと手を繋いで眠っていた。
 2人の温もりが心地良くて、僕は再び瞼を閉じてしまった。


 6時になり、八千代に起こされる。瞼に優しくキスをして、トロけるような声で「おはよ」と囁かれた。

「んぁ····おはよう、八千代」

「ん、おはよ。俺、準備してくっから。他のヤツら起こせるか?」

「うん、起こせるぅ」

 昨夜の激しさが嘘のように、温かで穏やかな朝だ。

「りっくん起きて。手、離すよ?」

「····やだぁ」

 グズるりっくんに抱き締められ、離してくれない手を握り返した。

「りっくん、起きたらキスしてあげる」

「起きた。ん····」

 りっくんのキスを待つ顔は、寝起きにもかかわらず綺麗だ。そっと唇を重ね、こそばゆい目覚めの一時を共有する。

「今ね、八千代が支度してるよ。りっくんも先に準備してきて。僕、啓吾と朔起こしてくるね」

 僕達とは反対側の隅っこで、啓吾が朔のお腹に脚を乗せて寝ている。朔が寝苦しそうだ。

「啓吾、朔。6時だよ。起きてね」

「ん~····やだ。まだ寝る····」

「啓吾、おちんちんは起きてるのに····」

 なんだか可愛いなと思って、ズボン越しにおちんちんにキスをした。すると、啓吾が凄い勢いで起き上がり、寝ぼけ眼を見開いて驚いていた。

「え、結人····今何した?」

「先に起きてたおちんちんに、おはようのキスしたの」

「····しゃぶる?」

「食べたいけどダメ。時間ないよ。今はおちんちんよりね、朝ご飯食べたい」

 僕のお腹の音が言葉を飾り立てる。

「あはは。腹減ってんのね」

「おちんちんはまたね」

「んじゃ、今はこっちだけな」

 そう言って、啓吾は啄むようなキスをして、支度をしに行った。残るは朔だ。

「朔、起きれる? んー、起きないなぁ····。そうだ!」

 美しくも凛々しい寝顔を晒している朔を写真におさめてから、瞼にキスをして耳元で「おはよう」と囁いた。
 僕は、八千代にされたまんまをしてみた。これでドキドキして起きるだろうと思ったのだ。しかし、予想外の展開に僕の心臓が跳ねてしまった。

「わぁっ」

「おはよう、結人。良い起こし方してくれるんだな」

 瞬く間に押し倒され、両手を顔の横で押さえつけて、馬乗りで組み敷かれてしまった。そして、耳を食みながら挨拶をしてくれた。瞬時に赤面したのが自分でわかるほど、顔も耳も熱を帯びている。

「朔さん、支度しないとダメですよ。離して····?」

「なんで敬語なんだ? ふはっ、顔真っ赤。朝からすげぇ可愛いもん見れたな」

 すぐに解放されて、朔はご機嫌で支度をしに行った。


 誰も、夕べの事について何も言わない。冬真とのあれは、リアルな夢だったのだろうかと思ってしまう。
 いや、本当にそうなのかもしれない。僕がみんな以外とえっちするのを許すなんて、夢でもなければ有り得ないだろう。

 僕の中では夢だったと結論づけて、皆で大広間へと向かう。りっくんはまた自分の班に戻り、4人で席に着く。
 今日は僕の隣に八千代が座る。例の如く、啓吾が不満そうだ。

「啓吾は帰りのバスで隣に座るでしょ? 時間的に1番長いんだから、不貞腐れないでよぉ」

「でもさ、途中の休憩で朔と変わるじゃんかぁ。まぁ、隣にいる間に色々するからいいけど」

「啓吾、バスの中では何もしないでよ? ホントにダメだよ」

「大畠、どうせやるんだったらバレないようにしろよ」

「わかってるよ~。もうヘマしないから☆」 

 そう言って、啓吾は軽くウインクを飛ばした。朔はそれを冷ややかな目で見て、大きな溜め息を吐いたのだった。

 冬真くんがいつの間に部屋に戻ったのか、啓吾とのえっちが終わってからの記憶が曖昧だ。けど、皆もいつも通りだし、昨夜の事も話題にあがらない。これは夢で確定かもしれない。
 あんな夢を見るなんて、皆に申し訳ないな。そう思っていたら、渦中の冬真くんが僕の隣に座った。

「おはよ」

「冬真くん、おはよう」

「あれ? 呼び方戻ったね。冬真のままでいいのに」

 戻った······? と言う事は、断片的に残る記憶で、冬真と呼んでいたアレは夢ではなかったのか。やはり昨夜、僕は冬真くんに····いや、冬真に抱かれたのだ。

「あ、えっと····夢じゃなかったんだ····」

「ふはっ····。何? 結人、夢だと思ってたの? そんでか。普通すぎると思った~」

 啓吾がケラケラ笑っている。朔と八千代は呆れ顔で溜め息を吐く。

「まぁ、武居ヘロヘロだったもんな。ってここで話したらマズイよな」

「ねぇ、冬真··は、僕たちの味方なの? 敵なの?」

「ざっくりしてんねぇ。んー····敵になるつもりはないよ。けどまぁ、味方かどうかは武居次第かな」

「お前、何か企んでんじゃねぇだろうな。結人に手ぇ出したら、ただじゃ済まねぇ事くらいわかってんだろ」

 八千代が冬真に凄む。けれど、冬真はそれを軽くいなす。

「お前らを敵に回すほど馬鹿じゃないよ。ただね、素直に応援したくなくなっただけ」

 応援したくなくなったという事は、僕が夕べのえっちで、何か粗相をしてしまったのだろうか。不安になり、お腹の辺りがドクドクした。僕は、思わず顔を伏せる。
 深呼吸をして顔を上げると、啓吾たちが冬真を睨んでいた。どうしたのだろうか。

「え、どうしたの? なんで冬真のこと睨むの? 僕が何か失敗したんじゃないの?」

「いや、ミスったんは俺らだわ。まさか、冬真が本気になるはずねぇと思ってたから」

「えー? 俺、何事にも真剣に取り組むタイプだよ。軽いって思われがちなのが不思議なくらい」

「その軽口が原因なんじゃないか? ふざけてるようにしか聞こえねぇからな」

 朔まで喧嘩腰に話すし、八千代には席を代われと言われて移動させられた。なんだか、空気がピリピリしている。
 お膳が運ばれてきて、楽しみにしていた朝食を食べ始めた。が、空気が重くて食べていても楽しくない。

「ねぇ。なんで皆怒ってるの? 誰か説明してよ····」

「なんでわかんねぇんだよ。お前、いくらなんでも鈍感すぎんだろ」

「鈍感って、僕が? なにそれ。なんで僕、いきなり悪口言われてるの?」

「結人。ここじゃアレだから、部屋に戻ったら説明してやる」

「むぅー······んぅっ!?」

 納得がいかずに口を尖らせていたら、啓吾が僕の口に卵焼きを突っ込んできた。

「これ、めっちゃ美味いから1個あげる」

 そうやってまた、食べ物で機嫌をとろうとするんだ。その手には乗らない····と思ったが、お出汁がきいた優しい甘さの卵焼きが美味しすぎて、まんまと乗ってしまった。

「んんっ! 美味ひぃね」

「結人はどれが好き? 俺ねぇ、この煮物好き。めっちゃ美味いよ」

「僕はね、温泉卵が好き。····ん~っ、煮物も美味しね」


 啓吾のおかげで、楽しく美味しく朝食を頂けた。自分の単純さにほとほと呆れ、僕は部屋に戻ると猛省した。

「僕····単純過ぎると思うんだ」

「今更何言ってんだ、お前。んなもんとっくに知ってんだよ」

 八千代が、さも当たり前のように言う。薄々自覚はしていたが、人に言われると腹が立つものだ。

「単純じゃないもん····」

「ははっ。どっちだよ。んで、単純じゃない結人くんは、なんでご機嫌ナナメなのよ」

「さっきの冬真の話。僕だけわかってないのヤだ」

「あぁ~。んー······。冬真さ、結人のことマジで好きになったかもね」

 啓吾は帰る支度をしながら、さらっととんでもない事を言い出した。

「······えぇっ!?」

「素直に応援したくなくなったって言ってたじゃん。アレ、自分も好きになったからライバルねって事だろ」

「えぇ~····。僕、てっきり何か粗相でもしたのかと思ってた······」

 兎にも角にも、僕の所為で荷物の量がエグい。皆で手分けして片付けるが、冬真の話で僕の手が止まる。見かねた八千代が、僕がまとめていたタオル類を取り上げて片してくれた。

「お前、昨日アイツに抱きついた時、耳元で何か言われてただろ。何言われたんだ?」

「え? 何か言われたっけ····。て言うか、抱きついたっけ? んぇ~······覚えてないです」

「っざけんなよ····。お前から抱き締めてたじゃねぇか。何か言われた後、お前イッてたんだぞ。何か言われたはずだろ。思い出せ」

 と、八千代に言われたが、抱き締めた事すら覚えていないのだ。思い出せるわけがない。
 その後も、暫く思い出そうと試みたが断片的にしか思い出せず、恥ずかしさがぶり返すだけだった。


 身体の熱が冷めやらぬまま、帰りのバスに乗り込む。隣に座った啓吾は、冬真の話をしている時とは打って変わって機嫌が良さそうだ。
 何かを企んでいるのか、はたまた素直に僕の隣を喜んでくれているのか。どちらにしても、帰りのバスで安息というものを味わえそうにはないと、密かに心の準備をした。
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