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2章 覚悟の高3編

やっぱり凜人さんはヤバい人

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 僕が照れて『カッコイイ』と言うと、プレゼントしたピアスを揺らしながら啓吾は僕のナカで暴れ回った。
 好きだ愛してると僕が呟く度、啓吾は雄剥き出しの顔で僕を貪り尽くした。僕を独り占めするように、朝まで何度も抱いたのだ。その所為で、他の3人からの苦情が凄かった。


「啓吾さぁ、いくら誕生日だからって調子乗りすぎ」

「ごーめんってぇ。けどさぁ、結人にあんなんされたら、お前らだって同じ事すんだろ?」

「「「する」」」

「だろ? あんな可愛いの反則だよな。結人から好きとか愛してるって言われんの、マ~ジでヤバい」

 啓吾はニコニコしながら、反省の色を見せないで言う。

「気持ちはわかるけどな、誕生日だからって結人を独占していいわけじゃねぇんだぞ。お前が離さねぇから、俺ら2回ずつくらいしかシてないんだからな」

 八千代の時と違い、冷静に窘めるような言い方をする朔。2回では到底満足できない、元気な彼氏たちには困ったものだ。

「結人、朝方ほとんど意識なかっただろ。んっとにヤリ過ぎなんだよ、アホが」

「まぁまぁ、みんな落ち着いてよ。啓吾の誕生日なんだから、あんまり怒っちゃ可哀想だよ」

 僕が目を覚ました時からずっと怒られているのだ。流石に可哀想に思い庇ってしまった。

「あとね、凜人さんの前で普通にそういう話するのやめてよ····」

 そう、今は朝食の真っ最中。凜人さんも一緒に食べている。いくら事情を知っているとはいえ、あけっぴろげに話し過ぎだ。

「結人様、気になさらないでください。皆様の情事······事情は存じておりますので、私は居ないものと思って、気楽にお過ごしください」

 凜人さんの気遣いが、少しズレている気がするのだが。皆はそれに甘んじて、微塵も隠そうとしない。

「凜人は今日、予定とかあんのか?」

「いえ、特にございません。コテージのウッドデッキで読書でもしようかと思っております」

 こっちに来てから凜人さんは、僕たちの世話と読書しかしていないじゃないか。一応の休暇だというのに、全然楽しめていない気がする。

「あの、凜人さん。僕たちの事はいいんで、凜人さんも休暇を楽しんでくださいね」

「お気遣いありがとうございます。しかし、ご安心ください。私は朔様のお傍に居られるだけで幸せですので、こうして旅行に同行させていただけただけで充分なのです」

「お前、恥ずかしい事言うなよ。気持ち悪いぞ」

「はうっ····。申し訳ございません」

 凜人さんは、朔に罵られて喜んでいるように見える。僕とは違うタイプのドMさんなのかもしれない。僕は、酷い事を言われるとすぐにヘコんでしまうのに、凜人さんはメンタルが強いんだろうな。

 今日は啓吾のリクエストで、一日中えっちをする予定なのだ。行きたい所と言っても特にないらしく、せっかくだからこの別荘の至る所でシたいと言い出したのだ。
 本当にバカだなぁなんて思ったのだけれど、皆も乗り気で快諾していた。僕の意見なんて聞く気はなかったようだ。まぁ、断ったりしないんだけどね。
 それよりも、僕には昨夜から気になっていることがある。

「ねぇ、八千代。腕大丈夫なの? 縫ったとこ····」

 釣りや僕の引き上げなど、あまりにも普段通りなので失念していたが、純平くんに切られた腕を縫ったところなのだ。 

「余裕だわ。たかだか5センチくらいだぞ。あれから何日経ったと思ってんだよ」

「1週間ちょっとだよ。まだでしょ?」

「昨日消毒したときゃ殆ど塞がってたぞ」

「「さっすが野生児ゴリラ······」」

 啓吾とりっくんがハモって、八千代に後ろからハタかれていた。けど、啓吾が頭を縫った時なんて、完治するまで3週間以上かかったのだ。生命力が桁違いなのだろうか。治りが早いに越したことはないが、正直僕も驚いている。


 凜人さんがコテージに戻る直前、僕にコソッと教えてくれた事がある。

「結人様、昨夜も可愛いお声が漏れておりましたので、少々お気をつけくださいませ。万が一誰かに聞かれてしまっては、朔様達が妬いてしまわれますよ。あんなに可愛いお姿を見せられては、私も野獣と化してしまうかもしれませんしね」

 と、唇に人差し指を当てて言われた。もう恥ずかしくて、僕は顔を赤らめたまま言葉を失った。
 て言うか、凜人さんが野獣になっちゃうって何?

 凜人さんが別荘を出てすぐ、朔に綺麗にしてもらいながら聞かれた。

「お前さっき、凜人に何か言われてただろ。何言われた?」

 朔の圧に負けて、言われたまんま白状した。すると、手早く洗浄を終えた朔が八千代を呼んだ。

「場野、やべぇかもしんねぇ。悪い。えっと、凜人がやらかしてるかもしれねぇんだ」

「あ? 何だよ」

「とりあえず、結人裸にすんの待ってくれ。包んだままにして····あー····部屋で探すもんがある」

「······あ゙ぁ゙!? マジか」

 八千代は鬼の形相で僕をベッドに運び、しっかりと毛布に包んだまま何かを探し始めた。

「ん? 場野、どったん?」

「なに? めっちゃ怒ってない?」

「あんのクソ執事····。見つけたらぶっ殺してやる」

「ねぇ八千代、凜人さんが何かしたの?」

「結人はそこで大人しくしてろ。絶対動くな。お前ら、カメラ探せ」

 ······カメラ?
 どうにも話が見えない。ポカンとしている僕に、風呂から戻った朔が説明してくれた。
 凜人さんが言った『あんなに可愛いお姿を見せられては』というフレーズ。声だけなら漏れていても不思議ではないが、見ていなければ出ないフレーズだ。要は、凜人さんが僕のあられもない姿を見たという事。つまり、どこかにカメラが仕込まれていて、盗撮されていると言うのだ。

 まさかとは思ったが、捜索を始めて数分で部屋から3台のカメラが見つかった。死角ができないよう、絶妙な角度で設置されていたようだ。
 ベッドにガシャッと置かれたカメラを、皆は無表情で見つめていた。

「何なのコレ。凜人さんさ、見つかんのわかってて仕掛けてたでしょ」

「だなぁ。よく見りゃすぐ見つけれたもんな」

「アイツ、何がしたいんだ····」

「クソ執事の趣味なんざ知らねぇけどな。結人のエロ可愛いトコ見たんは許せねぇ。ブッ殺す」

「帰ったら部屋も探してみるか····」

「朔、大丈夫?」

「あぁ。初めてじゃねぇからな」

「「「えぇ····」」」

 啓吾とりっくん、僕は声を揃えて引いた。変な人だとは思っていたが、ここまでとは。

「アイツ、俺のこと全部知っときてぇらしくて、定期的に回収してんだ。やめろつってんだけどな。趣味だからとか言ってやめねぇんだよ。1回、マジで怒らねぇとダメだな」

 さも、日常の一部かの様に言う朔。八千代が後ろ頭を掻きながら、溜め息を吐いて言う。

「今まで怒ってねぇ事に吃驚だわ。俺なら1回目でキレてんぞ」

「普通キレるか引くかだろ。朔、凜人さんに甘すぎねぇ?」

「甘いとかって次元の話じゃないでしょ。で、どうすんの? 凜人さん呼び出す?」

「いいんじゃね? 別にあの人なら悪用しねぇだろうし、目的は朔かもしんねぇじゃん。けど、後でデータ欲しい」

「データは欲しいね。····ん? ねぇ、凜人さんって朔の事抱きたいのかな。ゆいぴにそれっぽい事言ってたんでしょ?」

「待て、俺は掘られんの嫌だぞ。有り得ねぇ──」

──ザザッ······結人様に挿入している朔様に挿れる事ができたなら、私は思い残す事はございません。が、朔様に挿れていただくのも至極。ふふっ、ですがご安心ください。私は愛欲にまみれた朔様を見ているだけで幸せですので、皆様のお邪魔は致しません。朔さまのお心が、私にとっては何よりも最優先事項ですので。ただ、少しばかり盗み見る事だけお許しいただければ······プツッ──

 僕たちは、暫く固まったまま言葉が出なかった。八千代ですら、キレもせずにただただ引いていた。そりゃそうだ。想像以上にヤバい大人だったのだ。ついて来てもらって良かったのかとさえ思えてくる。

「ど、どうするの? もう、えっちシない?」

「は? するよ。今日は1日抱くって言ったじゃん」

「で、でも····凜人さんが見てるんでしょ?」

「ここのカメラは撤去したから大丈夫だよ。結人は俺らに啼かされてたらいいから、な?」

「おい大畠、多分カメラは──」

「朔、啓吾バカだからわかっててヤル気なんだよ。見てみなよ、あの悪い顔」

「····あぁ。そういう事か。お前らはいいのか?」

「俺は後でデータが貰えるなら····多少は目を瞑れるかな。ゆいぴが嫌じゃなければだけど」

 僕に嫌と言う権利が与えられているかのような口振りだ。なんだかんだ、僕の意見なんて無視しちゃうくせに。
 て言うか、何の話をしているのかよく分からないんだけど。

「クソ執事の目当てが結人じゃねぇなら····もういいわ。相手にするほうがやべぇだろ。結人に手ぇ出したらブッ殺すけどな」

 八千代はカメラを見つめて言った。きっと、凜人さんに直接訴えたつもりなのだろう。
 そして、何が何だか訳が分からないまま、啓吾がお尻を弄り始める。こうして、啓吾の誕生日が本番を迎えたのだった。

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