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2章 覚悟の高3編

至近距離って····バカじゃないの?

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 バカみたいな作戦を決行中。
 所構わず、皆が顔を近づけてくる。話しかけると覗き込んでくるし、話始めると鼻先が触れそうなほど近い。

 昼休み、理科準備室でお弁当を食べながら、流石の僕も怒った。

「ねぇ! 皆バカなの!? 慣れるとかって以前に、周りが引いてるからね? 近すぎるんだよ」

「至近距離作戦なんだから、仕方ないんじゃないのか?」

「TPOね!! 周りに人がいる時はダメ。特にりっくんね。腰抱きながらおデコくっつけて話聞くのやめて」

 無視をキメこんでくれているクラスの人達でさえも、流石にあれはスルーしきれていなかった。谷川さんの、僕を憐れむような目が忘れられない。

「俺はいつもあれくらいの距離でいたい」

「2人きりの時でもあんなに近くないでしょ!?」

「めちゃくちゃ我慢してるんだよ。ゆいぴがテレちゃうから」

「俺もあんくらいの距離感がいい。喋ってる時とかずーっと結人に触ってた~い」

「りっくんも啓吾も距離感バグってない?」

「正直、俺もあれくらいがいい。結人は嫌なのか?」

「朔まで····。嫌なわけじゃないけど、話が全く頭に入んないだもん····」

「だぁからよ、それって現状俺らの顔に慣れてねぇからだろ。あんくらいの距離で普通に話せるようになったら、充分慣れたって事なんじゃねぇの?」

 八千代の言うことも尤もかもしれないが、本当に人がいる時はやめてほしい。周囲からの視線に耐えられそうにない。

「わかったから、せめて人の居ないところでだけにしてよ。僕、頑張って早く慣れるから····」

 皆、僕の為に慣れさせようとしているんだ。自分の彼氏の顔に慣れるなんておかしな話だけども。
 一刻も早く皆の良すぎる顔面に慣れなければ、僕の心臓が先に爆ぜてしまう。

 そして、放課後。今日から、纏めた資料を元にしおりを作る。冬真と2人きりではないが、どうしても僕達が中心になる事が多い。
 それに伴い、あからさまに警戒心剥き出しのりっくんが寄ってくる。

「ねぇりっくん、近くない?」

「普通」

「ねぇ、機嫌悪くない?」

「普通」

「鬼頭さぁ、結人が困ってんじゃん。せめて離れて座れよ」

 そう、りっくんは今、僕が座っているパイプ椅子の3分の1を占領して座っている。それも、僕の腰を抱きながら。他の委員の人達も、反応に困って目を逸らすしかない。

「ならまず神谷が離れろよ。無駄に近いんだって」

 そう、冬真は僕の椅子にピッタリと自分の椅子をくっつけている。僕はバカな2人に挟まれ、時々周囲から痛い視線を向けられているのだ。朔は、我関せずと言った顔で黙々と作業を続けている。

「朔ぅ····」

「····はぁ。莉久も神谷もさっさと仕事しろ。あと、結人を困らせるな」

 朔の魂胆はわかっている。早く八千代の家に行き、僕とイチャつきたいのだろう。だって、至近距離作戦の次の番は朔なのだから。

 朔の気迫に負け、おずおず撤収したおバカ2人は、渋々作業に入り無事に今日のノルマを終わらせた。
 そして、八千代の家に行くと、玄関で朔が僕を後ろから抱き締めた。これでは顔が見えない。

「朔、どうしたの?」

「お前····神谷近すぎんだろ」

 朔は僕の肩に顔を乗せ、甘えるように呟いた。無関心をキメこんでいたように見えたが、ずっと静かに妬いていたんだ。

「ご、ごめんね? ねぇ朔、これじゃ顔見えないよ」

「そうだな。とりあえず風呂行こうか」

 朔に誘われ、お風呂で見つめ合いながら朔の良すぎる顔に慣れてゆく。しかし、シラフで慣れなければいけないはず。なのに、結局トロトロにされてしまった。こうなれば、ある程度は近くても平気だ。

「朔、ちゅぅしたい」

「ダメだ。ベッドに戻って落ち着いてから続きしような」

 シラフに戻すために、わざわざ時間を空けるんだ。今日も今日とて僕はベッドに運ばれ、八千代が入れてくれたココアをもらう。おかげで少し落ち着いてしまった。

「よし、そんじゃキスしてやるからな」

「んぇ、ちょっと待っ····んっ····ふぁっ」

「やっぱココア飲んだ後は甘ぇな」

 朔が舌なめずりをして言う。この、皆が時々する舌なめずりという仕草が、あまりにもえっちすぎて直視できない。
 両手で顔を叩くように目を覆い、まるでりっくんのような悶え方をしてしまった。

「全然ダメじゃん。ぶっちゃけさぁ、俺らイケメンとか言われてるけど、朔以外そこそこじゃねぇ?」

「は····はぁ!? 何言ってんの!? 皆すっごくカッコイイもん! りっくんはカッコ可愛いし、啓吾は綺麗な猫みたいだし、八千代は大人っぽくて綺麗なの! 朔は美人さんだし国宝級かもしれないけど、皆も同じくらいカッコイイも゙ぉ゙っ、ンン゙ッ!!? ん゙あ゙ぁぁ!!」

 僕は本人を目の前に、乏しい語彙力を振り絞って顔の良さを熱弁した。すると、朔は結腸を抜かないように加減をしながらも、勢い良く奥まで突き挿れてきた。急な衝撃に、潮かおしっこか分からないけれど漏らしてしまった。

「んぉ゙····ぁ····かはっ····らめ、朔、待っへ····動··いちゃ、らめ····」

「バカみたいに煽るお前が悪い」

 朔が動く度にイッてしまう。朔はそんなの当然わかっていて、止まる気などサラサラなく突き続ける。そして、奥を少し解すと容赦なく貫いた。早くも溢れ出してくる潮が止まらない。
 まだ馴染みきってはいないが、身体の力が抜ければ多少の痛みなんてすぐさま快感へと変わる。いつもそうだ。朔の、もとい皆の余裕の無い顔が、僕の思考回路をバカにしてしまう。

「結人、俺の顔好きか?」

「しゅき····僕ね、みんにゃの顔、しゅき♡ んあぁっ!! 奥゙っ、ちゅぉいぃ!!」

「俺らがもしイケメンじゃなかったら、好きにならなかったのか?」

「ううん····たぶん、ね、しゅきになってたよ」

「ふはっ、多分かよ。本当にイケメン好きだな。ほら、しっかり俺の顔見ろ。どうだ? 慣れそうか?」

「ひぁぁ····慣れないぃ······かっこよ過ぎて、僕のしんぞ····爆発ばくはちゅしゅるぅ」

 僕は、再び両手で顔を覆って視界を遮った。いくらふわふわしていても、王子スマイルを近距離では見ていられない。

「ブハッ····この作戦全然ダメじゃん! 結人さぁ、慣れる気ねぇだろ。アホらし~」

「ゆいぴには無謀だったかもねぇ。未だにさ、俺らにすら慣れてない時点で気づくべきだったね」

「だねぇ。いっそ、イケメン恐怖症にしてみんのは?」

「なにそれ。それって、俺らも怖がられない?」

「あ~····だな。あっはは。結人に耐性つけさせんの難易度高ぇ」

「結局、なんにしても俺らが守り固めるしかねぇのな。つぅかお前らよぉ、自分の事よくイケメンだなんだって言えるよな。自意識過剰すぎんじゃねぇの?」

「え、場野は思わねぇの? つぅかあっちこちで言われんだろ」

「言われても自分では思わねぇよ」

「ね····皆、イケメンらって、言ってぅれしょ? 僕がイケメンらって言ったらイケメンなの!」

「ンだそれ。じゃぁ神谷はどうなんだよ。お前ン中でイケメンなんか」

「冬真はねぇ····イケメンらよ」

「じゃあ、結人が好きになる可能性があるって事だな。そうならねぇように、しっかり調教しとかねぇとな」

「調きょ····ぅあ゙ぁ゙っ!! 胸っ、噛んっ、ん゙ん゙ん゙っ····いだいっ、朔痛゙い゙ぃっ!! ンゔぅ゙ぅ····」 

「アレさ、調教っつぅかお仕置きじゃねぇの?」

「あ~····。朔、委員会の時すっごいイラついてたからね」

 朔は黙々と作業をしていたし、なんならその後の事で頭がいっぱいなんだと思っていた。苛ついていただなんて、全然気づかなかった。

 この後、ヤキモチを解放した朔に、時間ギリギリまで犯された。あとの3人から文句言われても、意に返さない朔は知らんぷりをしていた。
僕を抱き潰して満足した朔は、どこか可愛くてじっくりと眺めていられた。


 めげる事を知らない冬真は、あんな事の後でも僕にちょっかいを出しては皆を煽ってくれる。おかげで皆、妬くわ犯すわ無駄に甘やかしてくるわと情緒が大変だ。僕の話なんて全く聞かない。 
 ああだこうだ言いながら、宿泊研修の日までこの調子なのだろう。つくづく先が思いやられる。
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