ちっこい僕は不良の場野くんのどストライクらしい

よつば 綴

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2章 覚悟の高3編

思った矢先に

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 もうすぐテストがあるので、そろそろ啓吾の勉強に本腰を入れて····なんて思っていた矢先。啓吾が風邪をひいた。
 僕たちは放課後、学校を休んだ啓吾を見舞う。

 
「け、啓吾····待って、うぁ····カッコよすぎるよぉ····」

 部屋を覗こうとそっとドアノブに手を掛けると、黒マスクをした啓吾が出てきた。とろんとした目元がえっちだ。あまりのカッコ良さに、僕は腰を抜かしてしまった。

「ぅおっ····大丈夫?」

 病人の啓吾に支えられてしまった。僕は、八千代に引き渡されながら啓吾に言う。

「ごめ····大丈夫。でも、だって··何それぇ····黒マスク··カッコ良すぎだよ····」

 直視できずに、両手で顔を覆って隙間から啓吾を見る。

「あんがと。もうあんましんどくないんだけど、まだ近くには来んなよ。ゲホッ····」

 夕べは、熱が38度を超えていたらしい。今は、喉の痛みと咳が少し出る程度だと言っている。
 寝ていれば治ると言って、病院には行かず解熱剤だけで何とかしようとしているのだ。そんなの、放っておけるわけがない。
 けれど、僕は部屋に入る事も許されず、移したくないからと看病もさせてもらえない。今日は看病をしに来たのに、来て早々に迷惑を掛けただけ。
 扉越しに咳き込んでいるのが聞こえる。こんなに近くに居るのに、背中もさすれないなんてもどかしい。

 僕が氷枕やプリン、スポドリを準備してキッチンから戻ると、啓吾の部屋から八千代が出てきた。僕は入室を拒まれたのに····。

「なんで八千代はいいの!? 僕も看病する!」

「お前に移ったらアイツがヘコむだろ。めんどくせぇから俺の部屋に居ろ」

「むぅー····」

「ゆいぴ、場野に任せてこっちおいで。ね?」

 僕は、渋りながら看病セットを八千代に託し、頬を膨らませて八千代の部屋に入る。暫くして、啓吾から『ごめんな』とメッセージが届いた。
 僕は、己の愚かさに嫌気がさす。なんて自分本位だったのだろう、と。

 僕にも何かできないかと考え、ある事を思い出した。早速準備に取り掛かる。
 こんなの、暇潰し程度にしかならないだろうけど。寂しがり屋の啓吾に僕ができる事なんて、きっとこれくらいしかない。
 僕は、りっくんとコンビニへ材料を買いに行く。そして、りっくんと朔に手伝ってもらい、ある物を完成させた。
 それを持って、啓吾の部屋を覗く。

 
「あのね、近くで喋れないから糸電話作ったの。子供の頃ね、父さんが風邪ひいた時に母さんが作ってくれたんだ」

「何それ、めっちゃほっこりすんだけど。つぅか、これってマジで聞こえんの?」

「聞こえるはずだよ。やってみよ」

 啓吾の部屋は八千代の部屋とほぼ向かい合っている。扉を開け放てば、ソファベッドで横になっている啓吾と繋がれるのだ。僕は八千代のベッドの上で、啓吾の声を待つ。

『····結人、聞こえる?』

「ひぁ····こ、これ凄いよ。耳元で囁かれてるみたい」

『マジで? んじゃ、耳でイかせてやろっか?』

「んぅ··だ、だめぇ····。そんな事してたら、しんどいの治んないよぉ」

 僕が紙コップを耳に悶えていると、りっくんにコソッと耳打ちをされた朔が、スッと紙コップを奪った。
 それを見ていた啓吾が、紙コップを耳に当てる。そして、朔がとびきり低い声で言った。

「大丈夫か? 添い寝してやろうか?」

 遠くから、啓吾の甘い声が小さく聞こえた。

「あっはは! 啓吾もさぁ、結構耳弱いよね。弱ってるし、今だったら耳で遊べんじゃない?」

 意地悪そうに薄ら笑いを浮かべたりっくんが言う。本当に悪い顔をしている。
 すると、啓吾は糸電話を床に叩きつけ、咳き込みながら怒鳴ってきた。

「お前らなぁ! ゴホッ····俺、耳弱くねぇし! ゲホッゲホッ··ゴホッ」

「啓吾、おっきい声出しちゃダメだよ。もう、りっくんと朔も揶揄わないの!」

 僕は堪らず啓吾に駆け寄った。啓吾は咳き込みながら『離れろ』と何度も言っているが、それなら僕が来た意味が無い。何度も言うけど、今日は啓吾の看病をしにきたのだから。
 今の所、迷惑しかかけていない。僕もマスクをすれば大丈夫だと言って、何とか看病する許可をもらった。ここから挽回したいところである。
 啓吾の背中をさすり、ベッドに寝かせて落ち着かせた。そして、汗を拭いて着替えさせる。腕を怪我した時みたいに、ドキドキしないよう気をつけながら。


「僕、今日泊まれるからね。何でもお世話するよ。遠慮なく言ってね」

「マジで? んじゃ、しゃぶって····もらわなくて大丈夫です」

 啓吾は、僕の後ろをチラッと見て言い改めた。八千代が仁王立ちしていたのだ。鋭い眼光で睨まれると、流石に少し怖い。
 それも、さっきまでしていなかったのに、今更マスクを着けているから余計に。目元だけだと表情が読めない。
 けれど、僕はそれどころじゃないのだ。

「ひゃっ····やち····なんっ····」

 黒マスクの超絶イケメンに挟まれ、僕は気絶してしまうかと思った。2人とも似合いすぎている。どうにかして保存したい。
 僕はそっとスマホを取り出そうとしたが、啓吾の体調を考慮してポケットに突っ込んだ手を引いた。

「あはは。撮っていいよ」

 おバカな僕の欲望を察して、啓吾が許可をくれた。けれど、撮るのは今じゃなくていい。

「今はいい。治ったら撮らせて。我慢するから、カッコイイポーズしてね。できたらツーショットも····」

「おっけ。つぅか、お前らが帰ってくる前に薬飲んだから、もうだいぶ楽ンなったよ」

「そうなの? そっか、良かったぁ」

 僕がホッと胸を撫で下ろすと、八千代が僕の頭を撫で回しながら余計な事を言う。

「コイツ、学校出てから超小走りだったんだぜ。『啓吾が死んじゃったらどうしよ~』とか半泣きでよぉ」

「なっ、なんで言うの!? 八千代が『アイツ、40度超えてたっぽくてよぉ。夜中うなされてたわ』とか言うから心配になったんでしょ!?」

「ぶはっ····結人、場野のマネ似てねぇ····」

「ひどっ····、八千代だって僕のマネ似てなかったよ!?」

 顔が熱い。醜態を晒されたのと、渾身のモノマネが似ていないと言われたのとで、僕の羞恥心が爆発した。

「お前ら、病人の周りで騒ぐな。大畠は寝てろ。薬切れたらまた熱上がるかもしれねぇんだぞ。無駄に体力使うな」

「そだよ~。テストも近いんだし。体調不良なんて言い訳にもなんないからね」

「あっ、ごめっ····。そうだ啓吾、何か食べたいものない? 夜ご飯、僕が作るよ」

「マジで!? じゃぁ、お粥食いてぇ。卵のやつ。と、作ってるとこ見たい」

 啓吾が素直に頼ってくれるのが嬉しくて、僕は張り切って卵粥を作った。後ろから啓吾に見られていると思ったら緊張した。
 けれど、時々振り向くと満面の笑みで僕を見ているんだもの。何も言えず、早く元気になってくれるよう祈りながら作った。
 とは言っても、大部分を八千代に手伝ってもらったのだが。それでも、僕からの愛情はたっぷり込めたつもりだ。

 猫舌の啓吾に、フーフーしてお粥を食べさせてあげる。その間に、りっくんと朔は羨ましそうに啓吾を睨んで帰った。
 僕は、八千代の部屋で寝ろと連行された。けれど、後ろから八千代に抱き締められたまま、糸電話で啓吾と繋がっている。
 八千代は僕に放っておかれ、不貞腐れながら眠っていた。八千代を起こさないように、啓吾とコソコソ話す。

「啓吾、眠くないの?」

『昼間めっちゃ寝たから寝れねぇ』

「あはは。風邪あるあるだね」

『だねぇ。なぁ、今度おもろい事しよっかって場野と言ってたんだけど、聞いた?』

「ううん、聞いてない。何するの?」

 啓吾が言うには、“あてぼり”大会なるものが近日開催されるらしい。宿泊研修の時、啓吾が八千代にしちゃダメって言ってたやつだ。えっちの時にする事なのだろうけど、名前から察するに····。

「あてぼり····って何なの? 釣り堀みたいな?」

『あ~····そうなんのな。えっとねぇ····』

「お前のイイトコに当てっぱで、死ぬくらいイかせまくってやんだよ。楽しみにしてろ」

「イ··ぁ····へっ!!? ん? でもそれっていつもやられるのと······って八千代、起きてたの?」

「おっそ。うるせぇから目ぇ覚めたんだわ」

「あ··ごめんね」

「いい。けど、お前らもはよ寝ろ」

「うん。おやすみ。啓吾、寝れなかったらそっち行こうか?」

『ダーメ。俺も頑張って寝るわ。おやすみ』

「いつでも呼んでくれていいからね。おやすみ」

 “あてぼり”というのが、いつもされているのと何が違うのかは分からない。とにかく、凄く気持ち良くしてもらえるらしい。それなら楽しみだ。


 翌朝、熱も下がり全快した啓吾に『朝シャンしよ』と、コソッと呼ばれた。八千代を起こさないように、そうっと静かにベッドを抜け出す。そして、あれよあれよと犯された。
 病み上がりとは思えない激しさで、喘ぎ声を我慢できない。おかげで、余裕でバレてしまった。鬼の形相で、勢いよく扉を開けられるのはめちゃくちゃ怖い。
 脱衣場で正座させられ、八千代にしこたま怒られた。反省はしているけれど、啓吾が元気になったのが嬉しくて、実はあんまり聞いていなかったなんてのは秘密だ。
 
 
 これは余談だが。お見舞いに行った翌日から、全員黒マスクを着用していた。バカじゃないの? カッコ良すぎて心配になるじゃないか。
 風邪の予防だとか言ってたけど、間違いなく僕に見せる為だ。嬉しいし眼福だけれども、自分たちがどれほど注目されているのか自覚していないようで困る。
 女子がスマホを向けると、八千代と朔は顔を逸らす。けど、りっくんと啓吾は手で目元を隠すだけ。それはそれでえっちなのだと気づいてほしい。
 
 放課後、八千代の家に行くと、何故だか皆は新しいマスクに変える。そして、勉強の合間に抱かれた。
 僕のマスクは、顔が見えないのが嫌だからと言ってすぐにひっぺがされる。それは別に構わない。それよりも、鼻血が出そうなくらい皆がカッコ良すぎるから、いつもよりイキ安いのが難点だ。
 なのに皆の顔から目が離せず、鼓動が激しくギュンギュンして心臓が痛い。何より、唇が触れ合わないマスク越しのキスが、凄くえっちで堪らなかった。

 その所為かは分からないが、いつもよりいっぱい感じてしまったのは内緒だ。まぁどうせ、全部バレているのだろうけど。
 僕の心臓がもちそうにないから、もう二度と黒マスクの皆とはシないもんね。

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