上 下
235 / 353
3章 希う大学生編

また一波乱

しおりを挟む

 りっくんと啓吾への愛おしさを感じながら、僕は快楽にまみれて眠った。起こされた時には身綺麗になっていて、帰る支度までバッチリだった。
 玄関で、啓吾にバイバイのキスをした。駐輪場に降りて、りっくんと朔にもバイバイのキスをする。これは僕からする日課。漸く、テレずにできるようになったのだ。
 けれど、『バイバイ』と言って手を振る寂しさには慣れない。こうして、帰る間際に寂しいと思うのもあと少しの辛抱だと、最近はずっと自分に言い聞かせている。

 
 八千代はバイクで僕を送り届けると、母さん達に挨拶をして帰った。皆のお泊まりが順に済んで、ようやく一息····と思っていたのだが、最後にとんでもないのが来た。
 
 僕は夕飯にがっつきながら、学校生活に慣れてきた事なんかを話した。皆に迷惑を掛けないようにと、父さんから口酸っぱく言われて少し憂鬱になった。そんなの、僕が一番思ってるよ。
 お風呂を済ませ、自室で皆に連絡をしようとスマホを開く。その瞬間、部屋の扉が静かに開かれた。侵入者の正体は真尋だ。僕は、驚きすぎて声も出ない。

 真尋は、ドアを閉めると同時に鍵を掛け、瞬く間に僕からスマホを取り上げる。そして、僕の両手首を持ってベッドに押し倒した。

「ひぁっ」

「結にぃ、こういうの好きなんだよね」

「あぅっ····す、好きじゃないもん! 離してよぉ!」

「しぃー··静かにしてね。おばさん達来ちゃうよ? ····あは♡ 好きじゃないのにちょっと勃ってるね。期待してるんでしょ? こうやって、このまま襲われるの」

 違う。期待なんかしていないもん。なのに、真尋が膝で刺激を与えるから、ムクムクと育ってしまう。
 首筋に這わせる唇が、少し震えているのは気の所為だろうか。耳元で囁かれるその声は、とても甘いが力強い。少し怒っている気がする。

「どうせ、今日も抱かれてきたんでしょ? ね、結にぃに挿れたい。俺の、結にぃで包んでよ····」

 部屋に押し入ってから、わずか数分でこれだ。あれよあれよにも程がある。

「ダメだってば! 真尋とはシな──んんっ」

 真尋が、騒ぐ僕の口を塞ぐ。熱を持った舌を、激しく絡めるおまけつきだ。
 僕は、必死に抵抗する。と言っても押さえ込まれているので、顔をそむける程度しかできない。

 まず、どうして真尋がここに居るのか、だ。僕は、なんとかキスを躱しながら聞く。
 真尋曰く、“部活で遅くなったから泊めて欲しい”と、母さんに電話を入れていたらしい。そうして、僕がお風呂を出た直後くらいに易々と、僕に気付かれないように上がり込んだのだ。
 そして、真尋の本性など知る由もない母さんが、あっさりと部屋に通してしまったのだろう。

 それはそうと、真尋は僕を襲う為に来たのだろうか。もしかすると、また情緒がぶっ壊れているのかもしれない。高校生になって周囲の環境が変わっただろうし、学校で何かあったのかもしれない。
 できれば、傷つけないように離れさせて、話を聞いてあげたいな。そうすれば、落ち着くかもしれない。
 そんな僕の優しさなど他所に、真尋は例のものをチラリと睨んで言った。

「ねぇ、部屋に入った時から気になってたんだけどさ、あれ何? 前に来た時、なかったよね」

 皆から言われた通りこれみよがしに、チェストの上に飾っていたピアスの事だ。皆で撮った写真の隣に、ケースに入れたまま蓋を開けて置いている。
 それを見た真尋の表情が、イラつきで歪む。股間に当てる膝をグッと押し込むから、小さな悲鳴をあげてしまった。
 抵抗虚しく、下半身をひん剥き指でお尻を弄る真尋。弄ってる間に言わなきゃ、おちんちんを挿れるだなんて脅してくる。隠すつもりなんてないのに。
 僕は嬌声を零しながら、ピアスについて説明する。


「ふーん。アイツらに穴空けさせるんだ。クソッ····アイツら、俺対策でそんな事までさせんの? マジでムカつく····」

 真尋は僕から指を抜くと、ケースの蓋を閉じに行った。そして、再び僕を押さえ込むと、僕の耳にそぅっと手を添えた。

「これ、こんなの着けちゃってさ。結にぃ、こんなのつけるタイプじゃなかったでしょ? なんか、どんどん変わってくね····」

 真尋はイヤーカフごと耳を握り、寂しそうな表情かおで言った。確かに、皆と居て変わった所は多いと思う。けれど、それだって僕なんだ。
 真尋もきっと、それを分かっているからそれ以上は何も言わない。だけど、その今にも泣き出しそうな表情だけで、嫌だと訴えているのが充分汲み取れる。

 そして、真尋は歯を食いしばり、先っちょを少し押し込んだ。

「真尋、おちんちん挿れないで。ちゃんと言ったでしょ。それとね、あのね、させられるんじゃないんだよ? 僕が空けたいって言ったからなんだ──ひぁっ、待って····ねぇ、ダメだよ。こんなの··う、浮気になっちゃう····」

「大丈夫だよ、結にぃ。俺、本気だから浮気じゃないよ」

「んぇ····? 浮気にならないの?」

「結にぃが俺のこと好きになればいいんだよ。んで、俺も一緒に暮らす。もうアイツらと一緒でもいい。恋人のうちの1人でも··いい····。俺、ずっと結にぃと居たい」

 真尋は、僕の顔を胸に埋めながら言う。力一杯抱き締めるから、息ができなくて頭がクラクラしてきた。

「んんっ、んーっ」

 僕がもがくと、それに気づいた真尋が腕をゆるめる。

「ぷはっ··ハァ··し、死ぬかと思った······」

「ごめん、結にぃ。····俺さ、やっぱ結にぃのこと諦められない。から、ちゃんとアイツらとも話そうと思ってるんだ。俺が子供だって言うんなら、頑張って早く大人になるから····だから、その前にさ、結にぃのホントの気持ち、聞かせて?」

 襲っておいてよく言えたものだ。けど、真尋なりに向き合おうとしているのは、どうやら嘘ではないらしい。今日はその為に来たのだろう。

「俺のこと、男として見れない?」

「····っ、男··として····」

 抱かれた時の事を思い出してしまう。一度抱かれてしまったのだ。もう、男として意識しないなんて無理に決まっているじゃないか。
 あれ以来、真尋をこれまで通り従兄弟として見れていない。弟として見ているだなんて、自分と皆への言い訳だ。

「真尋は····もう、僕の中では1人の男として意識しちゃうの。ずっと、可愛い弟だって思ってたはずなのに、もうそんな風に見れないよぉ」

 僕は堪らず、顔を覆って涙を溢れさせた。真尋への気持ちなんて、僕が誰よりも教えてほしい。
 今分かるのは、皆への想いとは違うけれど、真尋を手離したくない気持ちは確実にあるという事。それが、好きだとか愛だとか、そう言えるもなのか定かではない。
 皆と話さなきゃいけないのは、僕だって同じだ。

「ねぇ結にぃ、もう一回だけ流されてよ。結にぃは悪くないから。俺が、無理やりするんだよ。····ね?」

 そう言って、真尋は亀頭まで挿れてしまった。前よりも少し、大きくなったんじゃないかな。真尋が強引に作った曖昧な空気の中で、そんなくだらない事が頭をぎる。遠慮がちに入ってくるその圧迫感に、僕は軽くイッてしまった。
 その時、僕のスマホが鳴った。大音量に驚いて、加減を誤る真尋。グッと奥まで入り、今度は深くイッてしまった。

 真尋は抜かないまま、慌てて電話を切る。直後に再び鳴り響く。厄介なのは、八千代からの着信という事。
 出るべきか迷うが、出ないとずっと鳴りそうだもんな····。

「出、たほうが··いいと思うよ」

「んじゃ、結にぃ出てよ。俺が居るのは内緒ね」

 真尋は、人差し指を唇に当てて言う。高校生になったばかりだというのに、無駄に色っぽいんだから。
 けれど、今はそれどころではない。内緒だなんて、僕にできるわけがないじゃないか。

「なんで!?」

「話ややこしくなるでしょ」

「··んむぅぅ····。絶対動かないでよ」

 僕は頬を膨らませ、指をスマホに向ける。

「かわいっ!! 頑張るね~」

 絶対に頑張らないでしょ。そう言いかけたが、面倒なので言葉を呑んだ。
 僕は、意を決して電話に出る。

「も、もしもし····」

『ぁんで切ったんだよ』

「ご、ごめんね。操作間違えちゃって····」

『寝てた?』

「ううん、大丈夫だよ。八千代は、何してたの?」

 怪しまれないよう、普段通りに会話をする。真尋は、まだ大人しくしているが、できるだけ早く切らないと不安だ。

『飯食ってた。大畠が試作だつって寄越してきた坦々麺。美味かったから、今度お前にも作るって』

「辛くないの?」

『お前のは辛くないように作んだと』

「んへへ。楽しみだなぁ」

 僕が真尋を忘れ、へにゃっとした瞬間、真尋が小さくピストンした。本当にダメだって!

「ん、八千代····僕そろそろ寝る──」

『待て』

「んぇ?」

『お前、何シてんだ? ····1人か?』

「えっと····」

「はぁ······」

 真尋が、溜め息を吐いて僕からスマホを奪い取った。

「俺だよ。今、結にぃに挿れてる」

 なんって事を言っているんだ!
 慌ててスマホを取り返そうと手を伸ばすが、奥の扉までズンッと捩じ込まれた。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結】孕まないから離縁?喜んで!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:454pt お気に入り:3,273

隠れジョブ【自然の支配者】で脱ボッチな異世界生活

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:624pt お気に入り:4,044

『私に嫌われて見せてよ』~もしかして私、悪役令嬢?! ~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:142pt お気に入り:46

クラスごと異世界に召喚されたけど、私達自力で元の世界に帰ります

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,270pt お気に入り:6

『そうぞうしてごらん』っていうけどさ。どうしろっていうのさ!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:624pt お気に入り:94

ーDESPAIRー:それは希望

ホラー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

聖女を召喚したら、現れた美少女に食べられちゃった話

恋愛 / 完結 24h.ポイント:859pt お気に入り:13

処理中です...