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3章 希う大学生編

決着だなんて

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 ピッタリと背中にくっつき、耳元で『おはよう』と囁いた啓吾。
 それに反応した僕のおバカな下半身は、ぷくっと先走りを滲ませる。バレないよう、咄嗟におちんちんを押さえて隠したが無駄だった。

「かーわい♡ 挿れるよ」

「やぁ··待ってぇ。お水飲みたいよぉ」

「結にぃ、俺があげる」

 いつの間に起きたのか、真尋が口移しで水を飲ませてくれる。零さないよう一生懸命飲み込んでいるのに、啓吾は待ってくれず挿れてきた。
 ずっぽり収まってからは動くのを待ってくれているが、喘げないし飲み込めないしで、パニクった僕は真尋の胸をペチペチとタップした。
 すると、僕の口内に残った水を吸い上げるようにして引き取ってくれたのだが、ドン引きだ。

「ぷはぁっ····なっ、何やってんの真尋!? 気持ち悪いよぉ」

「どうせ、こういうの変··莉久くんにされてるんでしょ? 俺にされるのは嫌なの?」

 呼び慣れないんだろうな。でも、それよりもだ。りっくんにされるからと言って、決して慣れているわけではない。

「りっくんにされるのも嫌だよ。気持ち悪いって言うよ?」

「こないだなんかさ、結人のおしっこ浴びてあはあは笑ってて全員ドン引きしたよな。そのあとガンギマリしてガン掘りしてギャン泣きさせてたし」

「あの時のゆいぴ、可愛かったね♡」

 思い出してうっとりと『可愛かったね♡』じゃない。りっくんの瞳孔がハートになった時は、何をされるか分かったものじゃないから怖いんだ。
 それに、本当に気持ち悪い。足先から肩まで、ゾワッとした悪寒が這い上がってくる感じ。何度されても慣れないや。

「あれ、キモすぎて泣いてたって後で結人から聞いてさぁ、俺ら爆笑しすぎて死にかけたたんだけど」

「本当に怖かったんだよ!? りっくんの目がイッてる時、本当に怖いの」

「え、俺どんだけ怖いの? なんにも怖くないよ?」

 それでも好きだと、愛おしいと思ってしまうのだから、あまり強くは言えないけれど。本当に、計り知れない恐怖が込み上げるんだよ。
 だって、いつだって予想以上に変態的な言動を見せてくれるんだもの。あれは、りっくんにしかできない責め方だと思う。

「テメェの場合、怖いんじゃなくてキメェんだろ」

 この一言で、八千代とりっくんがまた騒ぎ出した。
 そんな2人を横目に、啓吾が動き始める。当たり前の様に、真尋が僕のおっぱいを弄っているのだけど、放っておいていいのかな。
 しかし、僕に止める手段などなく、されるがまま沢山気持ち良くシてもらう。僕の体力を鑑みてなのか、とても甘いえっちだ。

「結人の本気の喘ぎ声も好きだけどねぇ、そうやってちっちゃく甘い声漏らしてんのも好きだよ。すんげぇ可愛い。腰止まんない」

 啓吾はいつも、思った事を素直に言葉にして伝えてくれる。
 それも、僕に分かる伝え方で、ひとつひとつ丁寧に言葉をくれるのだ。啓吾と正反対の八千代は、それをキザだとか鳥肌が立つだとか言うけれど、鈍感な僕にはとてもありがたい。
 それに、八千代だってデロデロに甘やかしてくれる時は、同じ様に優しい言葉で想いを零してくれるんだ。自覚はないみたいだけど。

 僕は、おっぱいにしゃぶりつく真尋の頭を抱え、恥ずかしさを押し殺して答える。

「あのね··僕のこと、めちゃくちゃにシてくれる啓吾も好きだけど、甘い啓吾もね、好きだよ」

 僕の告白で、啓吾はピストンを速めてしまった。あれほど甘かったえっちが、瞬く間に激しい欲情に駆られている。
 そんな中、真尋がまたワケの分からない事を言い出す。

「結にぃ、ちんちんしゃぶっていい?」

「····はぇ? や、らめぇ····」

 聞くからダメと言ったのに、無視してしゃぶり始めた。だったら聞かなくていいじゃないか。
 啓吾が奥を貫こうとするから、真尋を押し離そうと試みる。だが、ビクともしない。出るから離れるように言っても無駄で、抵抗虚しく飲まれてしまった。顔から火が出るほど恥ずかしい。
 皆は恥ずかしがるどころか、僕にごっくんさせると満足そうな顔で笑うのに。どうして僕は慣れないのだろう。

 いや、今はそんな事どうでもいいんだ。もっと大切な事を思い出した。途端にソワソワしてしまう。そんな僕に気づき、啓吾はラストスパートに入る。
 結局、奥には挿れないまま、奥の扉を少し開けてお腹に飲ませた。僕のお腹は、従順に全て飲み込む。
 ずるんと抜いたまま啓吾がウトウトしているから、りっくんが手際よく事後処理をしてくれた。僕はまだふわふわしてて、それでもしなければいけない話を持ち出す。

「あのね、真尋のこと····ちゃんと話していい?」

「え、お前今で大丈夫なのか? まだふわふわしてんだろ」

 朔が心配そうに聞いてくれたが、先延ばしにしたくはないので『頑張る』と言った。何をどう頑張ればいいのかは、ちょっとよく分からないけれど。

 僕はりっくんの胡座に収められてしまったが、改まって向かい合う。

「真尋は、僕のこと諦めないの?」

「うん。諦めんのは一生無理」

 あっけらかんと、面倒な宣言をかましてくれる。けれど、その顔は晴々としていて、失恋なんて微塵も感じさせない。
 そして、真尋は僕に誓う。

「でも、もう強引な事はしないよ。約束する」

 また一段と、真尋が逞しくなったように見える。これからは、正々堂々と口説きに来るらしい。えっちな事は極力しないと言ったが、極力ってどういう事なのだろう。

「キスとか普通にするよ。でも、えっちな事はしない。結にぃがダメって言った事は····ね」

「キスもダメだよ····」

 こんなにも僕を想って、僕の為に生きているかのような狂った従兄弟を、僕は完全に断ち切る事ができない。またこんな優柔不断な答えを抱えてしまって、皆になんて言えばいいのだろう。
 僕が返事に迷ってもじもじしていると、皆がそれぞれに言葉をくれた。

「いいんじゃないか。真尋に限らず、どうせ敵はこれからも現れるだろ。その時は誰であろうと蹴散らす。それとな、キスどころかハグだけでアウトだぞ」

「真尋はちょっと特殊だったけどね。赤の他人だったら基本的にはそうなんだよ? けどホント、真尋は俺らにとって1番めんどくさい相手だったねぇ。あと、ゆいぴに触ったら容赦なく処すからね」

「だなぁ。でもまぁ、俺らだって結人のこと諦めらんなかったから現状こうなわけだし。諦めねぇのは真尋の自由だもんな~。けどこれからは結人に手ぇ出したら容赦なく潰すけど」

「惚れさせれるもんなら惚れさせてみろや。受けてたったるわ。当然だけどよぉ、遺書書いてから手ぇ出せよ」

 八千代まで。なんだか怖い事も言ってるけれど、全然怒っている雰囲気ではない。

「皆、怒ってないの?」

「なーにが?」

 啓吾が、全て分かっているような顔で聞き返す。

「真尋が僕を諦めない事もだけど、僕が····僕が真尋を完全に拒絶しない事··とか」

「んなもん期待してねぇわ。お前、イケメンに弱すぎんもんな」

「それにさぁ、ゆいぴだって真尋のことめっちゃ好きだもんね。弟って意味でだけどぉ。そこはどうしようもないでしょ」

 何も言い返せない。そこまで分かっていて、僕に諦めるチャンスをくれたんだ。それなのに、結局ダメだったから皆に妥協させてしまった。

「嫌じゃ··ないの?」

「嫌だ」

 朔が食い気味で返す。それは、紛れもない本心なのだろうが、余裕の笑みを零して続ける。

「結人が俺ら以外を想ってんのは嫌だ。けど、お前が家族を大切にする良い子だってのも惚れた要素だからな。真尋を家族として大切にするなら、俺らにそれを阻む事はできない」

「そだよ~。まぁ、線引き難しいとこだけどさぁ、俺らがアウトって思ったら言うから。後は今まで通りでいいし、オトせるもんならオトしてみろよって感じだね」

「お前が好きなんは俺らだろうが。そこんとこ、もっと自信持てよ」

 皆の懐の広さには感服するしかない。僕が逆の立場だったら、間違いなく妬いて拗ねて怒って喚いているだろう。

「えぇ~····なんでこのタイミングで泣くの? ゆいぴ、俺らマジで怒ってないから大丈夫だよ?」

「そ、そうじゃないの。逆だったら、僕だったら絶対ヤだもん。皆もホントは嫌でしょ? なのに、僕の為に我慢して──」

「違ぇわ。お前の為じゃなくて、俺らの為、な。じゃねぇと、お前と一緒に居れねぇだろ。お前と一緒に生きるって決めた時点でなぁ、こういうのも全部覚悟できてんだよ。舐めんなアホ」

「ゆいぴにアホ言うな。けどゆいぴ、場野の言う通りなんだよね。俺らさ、ゆいぴのそういう優柔不断なとこですら可愛いと思っちゃうんだよ」

「そーそ。も~しょうがねぇな~って感じ?」

「そうだな。でも、堂々と妬くぞ。手放す気なんかねぇからな。まぁ、結人が俺たちを想ってるうちは絶対に、な」

「そんなの····一生だよぉ」

 僕はクッションを抱き締め、顔を隠して泣いた。

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