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3章 希う大学生編
傍から見れば、ね
しおりを挟む帰路につき、僕たちは改めて朔と八千代のヤバさについて語り合う。
特に、八千代は本当に危ない。今まで野放しだった事を考えると、大きな事件を起こさなかった事に揃って安堵した。
流石に、人生を棒に振るような真似はしないと言っているが、聞けばバイクも無免許で乗っていたらしい。僕と付き合い始めてから、コソッと取りに行ったんだとか。
煙草にお酒、喧嘩や無免許運転と、沢山悪い事をしていたのだ。警察のお世話にならなかったのは、単に運が良かっただけなのだと重々咎めておいた。
「八千代分かった? ねぇ、聞いてるの?」
僕は、八千代の袖を引いて何度目かの確認をする。相当ウザそうな顔をされているが、言いたい事はまだ山のようにあるのだ。
「しつっけぇな。わーったって言ってんだろ。もうンなアホなこたぁしねぇよ。お前が居んだからな」
そう言って、腰を抱き寄せキスで黙らせる。本当に狡いや。
「んっ····もう、本当に気をつけてよね。八千代が捕まっちゃったら、僕の所為でもあるんだから」
「ぁんでお前の所為なんだよ」
「だって、知ってて止められなかったんなら僕の力不足でしょ? 八千代を改心させられなかったんだって、琴華さん達に謝りに行かなくちゃだよ····」
八千代を信用していないわけでない。けれど、前科があるのだから油断はできない。
僕は、八千代の服を握って不安を押し隠した。
「····はぁ、アホか。お前にンな事させっかよ」
八千代はまた腰を引き寄せ、今度は額にキスをした。僕を安心させる優しいキスだ。
冬真と猪瀬くんは、猛獣使いを見るような目で僕を見る。そして、声を揃えて『すげぇ』と言った。
八千代が、どうしてだか自慢気に『だろ?』と返す。僕の何が凄いのかは分からないが、八千代を飼い慣らしているという意味では、確かに猛獣使いみたいな気分になってきた。そう考えると、やはり僕の責任は重大だ。
僕が難しい顔をしていると、啓吾が肩を組んできて『俺も、結人程じゃないけど場野の扱い慣れたもんね~』と、同居していた時の武勇伝を語り始めた。なんだかんだ、八千代の傍若無人さに苦労していたらしい。
朔に『俺には手出せないらしいしな。反撃してこないゴリラなんか、余裕で押さえられるだろ』と言われる始末。ぐうの音も出ない八千代が、苦虫を噛み潰したような顔をしたのは面白かった。
こうして、夜道で騒ぎながら僕たちは、駅から歩いて帰宅した。食後の運動と言うには、いささかハードな距離だった。
帰宅するなり僕は、冬真と猪瀬くんを2階のお風呂へ誘う。2階はまだ見せていなかったから、設備を見たらきっと驚くだろうな。
2人の反応を楽しみに2階へ上がると、案の定トレーニングルームを見て言葉を失っていた。音楽スタジオなんて、存在している意味が全く理解できないって顔だ。
お風呂は、1階のを見た時の数倍は仰天している。あまりにも反応が良いから、今度テラスでバーベキューをする時には絶対呼ぼうと思った。
啓吾は客室を片すから、お風呂には後で入ると言っていた。啓吾以外の皆で入っても、余裕で寛げる大浴場。こんなのが、家にあるだなんて思わないよね。
「っはぁぁぁぁぁぁ····気持ち~。これもう温泉じゃん。なんで家に温泉あんのに温泉行ったの? バカなの? や~マジですげぇな。この家いくらしたん?」
お風呂に溶けてしまいそうなほど寛ぐ冬真。褒められているのか何なのか分からないが、気持ち良いならいいや。
それよりも、流れるようにお家の価格を聞き出そうとする。僕が知っていたら、ポロッと言ってしまいそうな雰囲気だった。
「ちょ、冬真、そういうの聞いちゃダメだろ」
「別に気にしねぇけど、悪いな。それだけは言えねぇんだ」
教えられない理由を、朔が説明する。2人は、納得したようなしていないような、複雑な表情でそれを聞いていた。
「なんかアレだな。結人に甘すぎねぇ? つか、甘やかす方向違くね? 蚊帳の外みたいじゃん」
「「····は?」」
八千代と朔が、一瞬にして不機嫌を極める。
「こわ··。いやだってさ、結人の性格考えてみろよ。お前らに丸投げとか絶対嫌がんじゃん? 自分だけ一緒に頑張らせてもらえないのヤだ~とか言わなかった?」
「それ··は····、言ってた気がする。お? 俺ら、もしかして間違ってるのか?」
朔が慌てふためいている。
それはもう終わった話なのに。この期に及んで、気にしなくていいのに。皆の想いに甘えてしまったのは僕なのだから。
「間違ってはねぇだろ。そこは結人が俺らの気持ち汲んで折れたんだろうが。何今更焦ってんだよ、バーカ」
八千代は、悪態をつきながらも朔を落ち着かせる。ぶっきらぼうな優しさだ。
そして、りっくんが事の経緯をきちんと説明すると、冬真はまた複雑な顔をした。
「結人ってさ、すんっげぇ可愛いけど漢気はあんじゃん? そういうトコ大事にしてやんねぇの? マジで働かせねぇ気なん?」
「そうだな、結人はカッコイイよな。まぁ、外では··な。どうしても働きたいって言ったら、いずれは俺の会社で働いてもらうつもりだぞ」
朔にカッコイイと言われるだなんて、突然の褒め言葉に僕のほうが動揺してしまう。
「あれ? 武居って保育系の仕事したいんじゃなかったの? 今度実習行くとか言ってなかった?」
「え、うん。行くよ。行くし、資格は取りたいなって思うけど、それを仕事にするかは····まだ分かんない」
「そうなんだ。うーん····、俺も聞いてて思ったんだけどさ、もうちょっと武居に色々させてみたほうが良いんじゃないかな」
僕たちは、今の状態が安全だから安心で、ひたすらに不安因子を取り除いてゆけばいいのだと結論づけていた。けれど、傍から見ればおかしな状態だったのだろう。
それを理解したところで、りっくんは猪瀬くんの意見に真っ向から対立する。
「そんなの頭では分かってるよ。けど、それでゆいぴに何かあったんじゃ取り返しつかないんだって。お前らも海の帰りで分かっただろ? ゆいぴは俺らが傍に居ないと危なすぎんの」
「「····まぁ」」
冬真と猪瀬くんは、顔を見合わせて深く納得する。そうなのだ、僕たちが現状に落ち着いたのは、僕の危なっかしさが何よりの原因なのだ。
それを知っている2人だから、いくら疑問が残ろうと強くは否定できない。僕が、もう少し強くてしっかりしていれば、こんな風にはなっていないのだろう。ただただ申し訳ない。
少し重い空気が漂う中、啓吾が明るく元気にやって来た。
「おっ待たせ~····って、なに? どったの? ····え、マジで何、暗くない?」
啓吾は、冬真からクレームの如くここまでに至った経緯を叩き込まれる。それを聞いた啓吾は、間髪をいれずスパッと返した。
「ナルホドだけど嫁の安全第一だわ。俺らは後悔しないやり方探して、お互いに折衷案模索しながら出した今なんだよ。お前らが心配してくれんのはすっげありがたいけどさ、結人の安全に責任あんのは俺らだから。ま、結人の人生ぶち壊す気とかねぇし、任せとけって」
なんてカッコイイ事を言ってくれるのだろう。感動した僕は、隣に来て頭を撫でていた啓吾に抱きついた。
「おわっ♡ そんなにくっついたら勃つよ?」
「折角感動したのに、啓吾のばぁか。ホントにお猿さんみたい」
僕は、照れ隠しに意地悪を言う。
「俺お猿さんだから、このままベッド連れてくわ」
そう言うと、入って早々僕を抱えて出てしまった。カラスの行水とはまさに。
僕と啓吾に続いて、皆もお風呂から上がりヤリ部屋に集まる。
「なんで冬真と駿哉もこっち来んだよ。客室の方、イイ感じにベッドメイキングしたんだからそっち行けよ」
「だよね! ほら冬真、折角用意してくれたんだからさ。それに、俺らどう考えても邪魔だって」
「え~、一緒にヤッたほうが楽しくない?」
「んぁ~··まぁ、確かに」
「「楽しくないよ!」」
僕と猪瀬くんは声を揃え、懸命に抵抗を見せる。けれど、それも虚しく皆はやる気満々だそうで、僕と猪瀬くんはあっという間に身ぐるみを剥がれてしまった。
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