桃太郎のエロ旅道中記

角野総和

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江五郎   「いやぁ~、桃太郎よ。前に見た時はこぉんな小さな赤ん坊だったのに、実に立派に育ったなぁ。うんうん」

桃太郎   「え?爺様の父様、あたしと会った事あるの?え~、覚えてない~」

江五郎   「ふははは。言うたじゃろ、赤ん坊だったと。記憶があったら怖いぞ。しかし、実に立派立派」

桃太郎   「え~。ありがとう。でもまだまだだよ~」


猿川    「あれ絶対おっぱい見てるよなぁ」

犬山    「馬鹿を言うな。蓮華様だぞ、しかも桃のお爺上だ。そのような不埒な事を考える筈がない」


江五郎  「いや~、梅香ちゃんには及ばんが、桃太郎のもなかなか。プリンプリンで形もいい」

桃太郎   「そっかなぁ~。えへへ。でも婆様のはこの位あるよ(おっぱい、よいしょ)」

江五郎   「おぉ~。そうじゃそうじゃ。梅香ちゃんのはその位じゃ。プリンプリンでなしにブルンブルンじゃからなあ」


猿川     「ほら、おっぱいじゃん」

犬山     「ぐぅぅぅ………拙者の憧れがぁぁぁ……」





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亀の甲より年の功とはよく言ったもので、江五郎は驚くべき素早さで場を治め、片づけてしまった。あるいはそれは高位貴族として生きて来た中で身に着いた采配の仕方かもしれないが。
江五郎のそれは、ある種上から押さえつける形で強引に始末をつけた部分もあったから。




「爺様の父様。この悪い奴を捕まえて下さいっ!」



桃太郎の叫びを受けた江五郎がすっと手をあげれば、控えていた蓮華家の従者たちが部屋の中に雪崩れ込んで幸四郎をはじめ、幸四郎の手下たちを捕縛した。

何をする、やめろ、離せ、と叫ぶ面々。幸四郎に至っては「いくら大貴族とはいえ、他家の内情に干渉するのは道義に反する」と怒鳴っている。

が、江五郎は飄々としたもので。


「確かにわしは七五三家に何の権限も持ち合わせん。だがの、家の繋がりではないのだ。わしと清信は長の友人よ。ここに来る前、清信にも会ってきた。その折、奴の口から孫を頼むと言われておるわ。それにの、清信は知っておったぞ。その方が清信を襲撃させた事を」
「なっ………」
「実行犯は辺境村に雇われたごろつきだったのだろうが、後ろにお前がいたのだろう?まだ実篤が家政に興味を示さんのをいい事に、清信を亡き者にし、七五三家の実権を握ろうと画策したのであろう?どうじゃ、何ぞ違ぉておるか?」

江五郎の言葉に驚いたのは幸四郎だけじゃない、実篤はもちろん桃太郎たちもびっくりだ。だって、清信襲撃は三太郎の指示だと思っていたのだ。まさかそれまで幸四郎の指示だとは。

勿論、幸四郎は身に覚えのない事だと、御当主様を襲ったのは金銭目的の強盗だ。一緒にいた自分も襲われて怪我をした。自分も被害者だ、と唾を飛ばしながら否定する。


「黙れ。最初は清信もお主を信用しておったさ。だがの、証言があるのじゃ。あの襲撃を始終見ておった者の証言がな。その者は、逃亡したならず者を追い、彼らが自慢気に会話する内容をすべて聞き覚えておった。その中で語られた黒幕、それが幸四郎、お前じゃよ」
「そっ、そんな…それはおかしい。もしもそのような人物がいたなら、襲撃時に助けを呼ぶとか追いかけたならず者たちのアジトを警備に届け出るとか、なにか動きがあったはずです。そんな、人としての義務を放棄しているような者の言い分を信じると言うのですか」

食って掛かる幸四郎の言い分は、確かに桃太郎たちも頷くもので。
だが、そう言われても江五郎の顔色は全く変わらない。それどころか、見苦しく身の潔白を叫ぶ幸四郎を侮蔑の目で見下ろしている。

「その方は知らぬだろうが、わしら高位貴族の当主には常に城の影がついておるんじゃ。今回証言したのは、その影じゃ。奴らの語る事はすべてが真実。何故なら、影と言う存在はお上の手足。己と言うものを持たぬよう訓練された人間じゃ。だが、それでも時に迷う事があろう。そんな万が一の場合に備えて、すべての影は自立する際に城の祈祷師により、真実のみを語るという誓約をしておるのだ。よって、影が偽りを語る事はない。そんな事をすれば誓約による罰則で己が命を失うのだからな」


今度こそ幸四郎は言葉を失った。だが、江五郎の言葉はまだ続く。

「お主が襲撃の犯人だと知った後も、清信はまだお主を信じておったぞ。誰ぞに騙され、利用されているだけじゃと。幼い時分から七五三家に忠誠を誓い、その身を捧げてきてくれた。その時間を信じておる、とな」

幸四郎は俯き、肩を震わせたまま畳を掻きむしるように掌を握り込んだ。


江五郎の指示で、捕縛された一同が引っ立てられた。後に残ったのは、実篤と桃太郎たちとアシニレラ姉弟だったが。
もちろんこちらの面々にも江五郎からきついお小言が降ってきた。



まず、実篤。

自身の年齢と清信の年齢を考えみれば、とうに次期当主としての自覚を持ち、行動せねばならない身だ。なのに、実篤はただただ己の欲求に従い鍛錬や他流試合に明け暮れて、家政を指示する所か学ぼうともしていない。

そんな実篤の姿勢が、今回の謀反を引き起こしたと言っても過言じゃない。

清信にしても、今回寝込んでいるのは襲撃のせいだが、もう年だ。いつ病に倒れるか、いつ事故に巻き込まれるかわからない。そうなった時、跡取りが何一つ知らないでは話にならない。

何も知らないまま家政を取り仕切れば破滅は目に見えている。そうなった時、身を墜とすのは実篤一人じゃない。七五三家に仕える数百人の家臣、その家族も含めればもっと多くの人の生き方を狂わせる。その責任をとれるのか、と言われて実篤は目を見開き、声すら出せない様子だった。



そして桃太郎と仲間たちにも、無茶をすると小言が落ちた。


他にも聞きたい事、言いたい事は多々あるが、ともかく事件は一段落したらしい。
これ以上は桃太郎たちの預かり知らぬこととなるのだろう。
貴族の事は貴族の間で片付けるのだろうから。
勿論、巻き込まれて捕縛された太之助立ちには事情説明があるだろう。だが、それもまた大人の事情。
桃太郎にとったら、この騒動の中、誰一人損なわれず終わった事が何よりだから。




「後はぜ~んぶ、爺様の父様に押し付けちゃえばいいんだよ。きっとね」

魔法の杖を振るように、すべてを綺麗に片付けてくれる筈だから。








そんなこんなで事件から早3日。

逮捕された事で仕事が溜まっていた太之助も、浦島家に何ら疚しい事が無い事を近所に説明して回っていた乙も、警備隊にごちゃごちゃに荒らされた研究室を必死に片付けていた鯉子も、ようやく一段落したようで、今は皆揃って居間で茶を飲んでいた。



「はぁ~~~~、疲れたわぁ~。でもよかったわね。何もかもが無事に終わって」

乙が言えば、同感だとばかりに太之助が頷く。

「そう言えば、例のお見合い。結局蜘蛛の巣谷のアシニレラちゃんが実篤様に見初められたって事で落ち着いたようね。お似合い………かな?」
「そうね。ちょっと意外だったけど、でもよかったじゃない。鯉子が見初められなくて。桃ちゃんのスペシャルエステで綺麗になったから、ひょっとしてなんて心配だったのよ。あんたに貴族の奥様は似合わないもんね」

乙が茶化せば、鯉子も顔をしかめて応戦する。

「何よ、それ。そもそも似合う似合わないって言う前に、お母さんもお父さんも娘を見初めてもらいたいなんて露ほども思ってなかったでしょ」
「まぁね。だって貴族様よ。無理でしょう?余計な争い事は背負いたくないものね」


人の欲は際限がない。ふとしたきっかけで目覚め、大きくなっていく。

今回の幸四郎がいい例だ。

元々下級貴族の4男だった幸四郎だ。七五三家に引き取られなかったら?実篤がもっとしっかりと次期様の自覚を持つ男だったら?一緒に引き取られた兄の三太郎が、もっとしっかりしていたら?
そうすれば、幸四郎があんな野望を持つ事など無かったかもしれないのに。



「そう言えば、本当に幸四郎様は三太郎様を殺めていたの?桃ちゃんの勘違いじゃなくて?」

思い出したように乙が問えば、苦々しい顔で太之助が頷いた。


捕まった後、幸四郎はつきものが落ちたようにペラペラと全てを自白した。その罪は多岐にわたっており、これからの七五三家は大改革が必要になるだろうと思われる程だったとか。


「ああ。そうらしい。最初は否定していたらしいが、取り調べで自白したらしいよ。元々兄が目障りだったらしい。血がつながった兄ながら、馬鹿で女好きで、何でもかんでも力で解決しようとする三太郎は、事をなす間はいい手駒になるが、いざ権力を握った後は邪魔になるからな。ただ、あそこで殺す気はなかったそうだ」


太之助が聞いたのは大まかな流れだけ。詳しい事は聞いてないし聞きたくない。


権力、金。そんなものはどうでもいい。

太之助たち庶民が望むのは平和な日々が続く事だけなのだから。



そんな太之助の心情が伝わったのか、3乙も鯉子もしんみりしたムードのまま無言で茶をすすった。




まるでホガースの絵画のような平和な光景。
しかし続いたのは束の間。湯のみの茶がなくなる前に、屋敷の奥から耳をつんざく悲鳴が聞こえてきた。


























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