いつか愛してると言える日まで

なの

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僕の居場所

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ここにはいたくない。いられない。そう思ったら気持ちがどんどん落ちてって…気づいたら奏と郁人と先生の声がした。

目を開けて天井を見ていたら、急に手が伸びてきた。思わず掛けてあった布団を頭からかぶって視界を遮った。

奏の心配そうな声が聞こえるけど、でも僕の心配なんかしなくていい。郁人の側にいればいい。
ドアが静かに閉まる音がした。
先生が「純平くん顔だせる?」と聞いてきた。
布団から少しだけ顔を出すと、笑顔の先生が見えた。

「純平くん、今は気持ちが落ちて辛いだろうけど話すると楽になれたりするんだよ。今思ってること、感じてる気持ち、なんでもいいから書いてみない?」

ノートと鉛筆を渡されたけど、受け取ることも出来なくて、天井をただ眺めていた。 

僕はこの先どうしたらいいのだろう…

先生はただ側にいてくれた。ずっと僕の手を握ってくれていた。その温もりに安心した僕は、そのまま眠ってしまった。


どのくらい寝てしまったのか、明るかった窓の外はもう真っ暗だった。気づいたら部屋の中には誰もいなくて僕はすごく不安になった。
息が苦しくて、心臓のドキドキが早くなって、息を吸っても吸っても空気が全然入ってこなくて…
「助けて」そう声に出したいのに声が出ない。生理的な涙が頬を伝う。
「苦しい」「助けて」そう声に出したいのに…
「はぁ、はぁ、はぁ」

「純平くん大丈夫よ。」
「ゆっくり深呼吸しようね。」
背中をリズムよくトン、トンと叩いてくれる。
もう片方の手で僕を抱きしめてくれる。
リズムにあわせているうちに、どんどん呼吸が落ち着いてきた。

「純平くん、落ち着いた?大丈夫かな?ちょっとだけ先生とお話しない?」
うん。首だけ動かした。

「奏くんと郁人とケンカでもしてる?」

首を横に振った。

「2人とはケンカはしてないけど会いたくない?」

うん。今度は縦に振った。

「純平くんさえ良ければ、少しの間、落ち着くまで病院に入院しようか?」

「……」不安で顔を上げると先生と目が合った。

「2人とは会えない状況なのに、ここにいるの辛いよね?」

「うん。」唇を動かすけど、やっぱり声は出ない。

「まだ夜中だから朝になったら病院に行こうか?お腹はすいてない?うどんでも食べようか?」

食欲なんてなかった。何も食べたくなかった僕は首を横に振ってベッドに横になった。
先生は頭をゆっくり撫でてくれた。その温もりが嬉しかった。
そのまま目を閉じた。

朝…結局、僕は自分の居場所を郁人の家じゃなく結城先生が働いている病院に入院することにした。
結城先生は子ども専門の心のお医者さん。心が元気になれるようにお手伝いさせてね。と言っていた。

4人部屋の窓側になった。この部屋には僕の他にもう1人いるようだけど、カーテンが閉まっていて中の様子は見えない。

僕は1人ぼっちになってしまった。親に捨てられて、施設に帰る場所もなく、でも僕は子どもだから働く事もできない。

奏と郁人が付き合うのなら、おめでとう幸せになってね。といつか言えるようになるのかな?
まだまだそんな事、言えない…
奏を取られると思うと胸がギュッと苦しくなる。
僕も奏の事ずっとずっと好きだったのに。告白もする前に振られちゃった。
淋しいよ。誰か助けて欲しい。
奏に会いたい。でももう会えない。

「純平くんちょっといいかな?」
結城先生が顔を出した。
「ちょっとだけ検査もしたいから車椅子、乗れる?」車椅子を持って来てくれた。

車椅子に乗って、のどの検査や他にも色んな検査をしたけど、体は少し細いだけで他には異常が見つからず、ただ声が今は出ないだけ。焦らないこと、そうすれば必ず声が出るようになること、そのためには自分の気持ちに向き合えるように、なんでもいいから文字を書いて心の負担を減らしてあげた方がいいんだって。
自分の心がわからなくて、何が1番辛いのか…わからなかった。
とりあえず入院して心が落ち着くように治療をすることになった。しばらく学校も休み。
奏にも郁人とも会わない。
そんな生活を送る事になった。







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