いつか愛してると言える日まで

なの

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誕生日会5

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《side 奏》
 
 郁人から誕生日会は純平と2人しか誘わないと聞いた時、何があるんだろうと思っていた。
 それが何かわからないまま当日の朝。郁人の家に行った。
 
 純平は相変わらずまだ来ていなくて、本当に来るのか不安だった。
 
 郁人が玄関から出てきた。
「お誕生日おめでとう。」
 
「ありがとう。奏聞いてよー純平のことで重大発表があります。」
 
「…純平に…何かあったのか?」
 
「奏、焦りすぎ。」
 
「……いや心配で……」
 
「わかってるよ。奏の気持ちは……でも今回はそういうんじゃなくて、めちゃくちゃ嬉しいことなの?」
 
「嬉しい事?」 
 
「うん。僕も朝、お父さんとお母さんに言われて嬉しくてびっくりしちゃったんだけど……」
 
「なに?」 
 
「純平がね。なんと……僕のお家に一緒に住むことになったの?」
 
「?どういうこと?」 
 
「僕もびっくりしちゃったんだけど、純平がいる施設、全員他の所に行くんだって。でもお母さんが純平だけは、この家で暮らすようにしたいって言ってた。」

「だから今、お父さんとお母さんで純平迎えに行ってるの。いいでしょー純平と一緒にいられるんだよ。羨ましいでしょ?」

郁人は嬉しさのあまり奏に抱きついて背中をバンバン叩いた。かなり痛い。でもめちゃくちゃ嬉しいんだろうってわかる。

俺もアイツが施設でいじめられたりしてるんじゃないかって思ってる。たまにほっぺが腫れたり、腕にアザがあったりのを見ているからだ。これでアイツが辛い思いをする事がないと思うと嬉しいけど、郁人に取られてしまうんじゃないかと淋しい気持ちも半分。

郁人に抱きつかれて2人で抱き合ってじゃれてるうちに車の音がした。すると純平が乗った車だった。思わず駆け寄ってドアを開けたけど、純平の様子がいつもと違って見えた。
話そうとしてるけど、声が出てない。?どうした?
ちょっとおかしいのかも?と思ったら郁人のお母さんが純平を連れて玄関に入ってしまった。

「どうしたんだろう純平?」
「わからないけど、いつもと様子が違く見えた。」

2人で首を傾げてると郁人のお父さんが車から降りて
「とりあえず家に入ろう」と声をかけてくれた。

リビングには、たくさんの料理が並んでいた。
早く純平も食べに来ないかな?
心配で郁人が声をかけたけどダメだった。

すると急に部屋のドアが開いた。
おばさんが焦った様子で
「純平くん倒れてしまって意識がないの。呼吸は大丈夫なんだけど、声かけてくれない」…と

俺たちは純平に声をかけた。
「純平、起きろよ」
「純平、起きて」
「純平くん、大丈夫だよ。早く目を開けて」

すると…純平が目を開けた…でも僕たちの方に目を向けず、天井を見ていた。
肩を叩こうと俺が手を上げたら、純平は頭から布団をかぶってしまった。

「純平ごめん。こっち向いて欲しかっただけだから。」

「……」

純平の声が聞こえなかった。

「とりあえず純平くんが目を覚ましたから診察するね。2人は向こうの部屋でご飯食べてて。」と言われてしまい。僕たちは何も言えずに部屋に戻った。

おじさんが「とりあえず誕生日会しようか。」と言ってくれたけど、俺はどうしていいのかわからなかった。

「純平、大丈夫かな?」郁人も心配そうにしてる。

何が起こった?
施設で嫌なことでもあった?
郁人の家が嫌なの?
聞きたいことは山ほどあるのに、何も聞けない。

おばさんから話があるといいな。純平が元気になってくれたらいいな。そう思う事にした。

今日は郁人の誕生日なんだから純平の代わりにいっぱいお祝いしようと思って、たくさん話をしてハッピーバースデー歌をおじさん、おばあちゃんとお手伝いのおばさんと一緒に歌ってあげた。

俺が帰る時になっても、おばさんも純平も部屋から出て来てくれなくて、でも帰らなきゃいけないから、また明日来ると郁人に言って家に帰った。

純平の声が出て、また話をしてくれたらいいな。この時の俺は純平が心に深い傷を負ったとは思ってもみなかった。
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