いつか愛してると言える日まで

なの

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失踪

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「結城先生、診察中すみません。」焦ったように1人の看護師が診察室にきた。ちょうど午後の診察が終わった時だった。

「どうかしたの?」

「純平くんがいなくて…」

「いないってどういう事?」

「さっき病室をのぞいたら、いなくて…みんなで手分けして探してるんですけど…先生の所にいないかな?って」

「朝は会ったけど、それ以来会ってないわよ。何か変わった事はあった?」

「実は…今日、奏くん退院で…退院の前に純平くんに会いに行くって言ってたみたいです。」

「…っじゃあ2人は?」

「会ったのかも知れません。」

「とりあえず、探してみて。奏くんに電話してみるから。」






◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆
 





「奏くん?郁人の母です。今日、純平くんと会ったかな?」

「はい。会いましたっ」

「純平くんと話した?」

「あんな最低なヤツ知りません。」

「最低…?」

「まだ俺たち中学生なのに番、作るなんて。あいつおかしいですよ。」

「もしかして…その事、純平くんに…」

「言いましたよ。最低だって。あのおじさん先生が純平の番なんだろ。あんなに歳も離れてるのに、おかしいよ。なんだかもう訳が分からなくて…結城先生すみません。オレ頭痛いんで…」

そう言って奏くんは電話を切ってしまった。
勘違いした奏くんだけど本当の事を言えない。でも誤解は解かないと。その前に…純平くんの居場所…早く見つけないと…


でも純平くんは見つけられなかった。どこにいるのか生きているのかさえわからなかった。




◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆


《side奏》

大好きだった。いつか番になろうと番にしたいと思ってたのに…

頭を打ったオレは1週間も入院してしまった。
久しぶりに純平の顔を見て言葉を失った。
今まで見たこともなかった噛み跡が純平の頸から見えた。
どうして?いつの間に?なんで?そればかりが浮かんだ。

それからのオレは荒れに荒れた。初めてはあいつがいい…あいつを抱くまでは…といくら誘われてもその誘いに乗ることはなかったけど、もうどうでも良くなった。誘われるたびに女も男も構わず抱いた。セックスしてる間だけは純平を忘れ、ただ快楽に身を任せた。でもオメガだけは手を出さなかった。というか抱けなかった。純平を思い出してしまう。もし万が一頸を噛んだら番になってしまう。誰でもいいわけじゃない。オレは…純平と番になりたかっただけなのに…

オレが純平に怒鳴ったあの日、純平はいなくなった。

しばらくして結城先生から純平の番は誠先生じゃない。誠先生はベータだからオメガと番にはなれないのよ。と…じゃあ相手は?そう言うと黙ってしまった。言えない相手なのかよ。何で教えてくれないんだ?
郁人から純平の名前が出るだけで怒鳴るようになった俺を怖がるようになって郁人も…離れていった。




◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆


あれから5年…俺はクズな生活をしていた。でもある日、結城先生からいつまでそんな事してるの?そんな生活してても純平くんは帰って来ないよ…と、わかってる。そんなの。
純平のことを忘れる為に、色んな人を抱いても忘れられなかった。
純平は生きてる?
そんな疑問が浮かんできた。
どんなにみんなが探しても見つからない。もしかしたら純平はもう生きてない?そんな不安が湧いてきていた。
オレが純平にいなくなればいいって言ったから…
謝らないと…純平が生きてさえいてくれたら…ちゃんと謝りたい。あの頃の俺は自分のことばかりで自分勝手に過ごしてただけじゃないのか?そんな自分勝手に生きてきたオレだけど頑張って勉強して、この海が見える大学を受験して合格できた。

選んだ理由は…オメガの生態を研究してる学部があるからだ。

オメガのヒートはどうして起こるのか、どうして番にしか反応しなくなるのか、番がいなくなったら?番の解消はできるのか?などたくさんの事を知ることができる。
あの時、純平は俺に何か言いたそうだったのに…俺はその言葉も聞かず飛び出した。あの時、純平は何を言いたかったのか、純平は誰と番になって、今生きてて幸せなのか…  



久しぶりに朝早く目が覚めた。
海が見たくなって海岸までやってきた。

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