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1人にしない…絶対に…
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「結城先生お久しぶりです。奏です。」
「奏くん?あの大学受かったって聞いたよ。おめでとう。純平くんの事があってあの大学に?」
「ありがとうございます。純平の事、オメガの事知りたくて…」
「頑張ったんだね。でもこれからもっと頑張らないとね」
「…先生……教えてくださいっ……純平の番って俺ですか?俺なんでしょ?俺ですよね?」
「…えっ」
「今、純平に…会ったんです」
「嘘…どこ…でっ」
「俺が通ってる大学の近くのオメガの施設にいるんです」
「純平、ヒートが酷くて、薬も効かないらしくて、顔色も悪くて、かなり痩せてて、車椅子に乗ってて、自傷行為もあって先生…俺…っつ…純平死なせたくないんです」
「先生、純平…助けてください」
「お願いしますっ…先生」
「奏くん落ち着いて…」
「とりあえず純平くんは生きてるのね。あの頃…まだ中学生の奏くんに現実を言えなくて…純平くんには辛い思いをたくさんさせてしまったわねっ…そんな状態になってるなんて知らなくて……奏くんいい?…純平くんの頸を噛んで番成立をしたのは奏くんよ。多分、純平くんにとっても初めての発情で、奏くんはラットを起こした。でも興奮状態のまま倒れた時に頭を打ってしまって…その時の前後の記憶をなくしてたの…だからっ…」
「…っそんな…じゃあ俺は自分が噛んだ噛み跡を他人がつけたと思い込んで…純平に俺…酷いこと…言って…どうすれば…いいですか…先生…」
「とりあえず、これから行くわ。一緒に施設に行きましょう。わかった?」
「はいっ…待ってます…」
先生が来るまでの間、俺はあの日の事を思い出そうとした。目が覚めたら病室にいて、頭には包帯、腕には点滴の針が刺さっていた。何が起こったかわからなくて…その時の事を思い出そうとすると頭が痛くて俺の頭ん中は空っぽで、どんなに捻り出そうとしても何も思い出せなかった。
ただ…俺が純平を番にしたんだ…それなのに…何1つ幸せにしてあげる事もできずに純平のせいにして…俺は…純平をあんな目に合わせてしまった…純平の細くて、白くて綺麗だった腕をあんな風に…
トントン肩を叩かれてハッと顔をあげると結城先生、誠先生、郁人が立っていた。
「ずっとここにいたの?寮にいればよかったのに…寒かったでしょ」
「久しぶりだな奏…」
「先生俺っ…おれ…」
「とりあえず施設に行って話しよ。施設には電話して行くこと伝えてるから」
俺たち4人は純平がいるオメガ施設に向かった。
施設の門の前で柔らかい雰囲気の女性が待っていて声をかけてくれた。「初めまして。施設長の柊です。」
「先程、電話した結城です。こちらはベータの金沢医師です。」
「この2人は?」
「純平くんと同級生だった私の息子でオメガです。彼は…」俺は結城先生の言葉を遮り「俺が純平の番です」
そういうと施設長が「あなたが…何で?何でもっと早く…」と膝を付いて泣き出してしまった。
「すみませんっ…俺何も覚えてなくて…」
「純平くんはね。何度も自殺未遂をしてるの。生きていたくないって…番に捨てられたオメガはねっ薬が効けば普通に生活ができる。ほとんどのオメガがコントロールしてる。でも…でもねっ…純平くんは…色んな薬を試しても効きづらくて…自傷行為がどんどん悪化してる。目を離すことが難しくなったわ。」
「あなたは純平くんを幸せにできるの?一緒にいてあげれるの?途中でやっぱり無理だっ…てなったら、その時は…2度目はないのよ」
「わかってます。」
その時、施設のドアが開いてさっき見た青年が顔を出した。
「施設長…あっ…さっきの…」
「すみません。」
「まさか…お前が…純平の…番…なの?」
俺の前まで来た。震える手で俺の胸元を握り締めて
「さっきの純平っっ…見たよな…どうにかしろよーっ…俺…おっれ…あんな純平…見たくないんだよ…助けてやって…くれよ…」
「健太くん、純平くん連れて来てくれる?とりあえずっ…部屋にはアルファの方は入れないので面会室にご案内します。」
面会室に案内された。白い無機質な壁にソファーとローテーブルだけの部屋だった。
車椅子に乗せられた無表情の純平が部屋に入ってきた。
結城先生は涙を浮かべ「もっと早くに見つけてあげられたらっ…」「ごめんねっ…純平…く…ん」
誠先生も「純平、ごめんなっ…辛かったな…」って…
先生たちの声は聞こえてるはずなのに純平は反応もなく、何も写してないような瞳をしていた。
「最近、反応が鈍くなってきて…」
そう言った施設長がトントンと肩を叩いて、青年が純平の腕をさすった「純平、水飲む時間だよ」と少しずつ水を飲ませた。ゆっくりと嚥下する様子を見ていた俺は居た堪れなくて純平に駆け寄った。
「純平…来るのが遅くなってごめんっ…本当にごめんっ…俺…っ何も知らなくて…」番なら触っても拒否反応は起こらないと聞いた事がある。それでも5年も前だ…もしかしたら…と不安で震える手で純平の手をそっと握り締めた。拒否反応はない。純平の温もりを感じた。まだ生きてる。純平を取り戻さないと…
施設長から「純平くんに毎日、会いにきて話かけてあげる事はできますか?」と声をかけられた。
「純平くんの心は壊れてしまったの。でも番の事は忘れたくても忘れる事はできないの。だから本当に純平くんの心を取り戻したいなら会いに来てくれますか?」
「はいっ…会いに来ますっ…必ず…純平にちゃんと謝らないと…」
俺は純平の頭を撫でながら「純平、また明日来るよ。待っててね。」そう言って俺は純平の手を両手で握りしめた。
大事な…大事な…大好きな俺の番…命を尽きさせないように…俺が絶対に守ってみせる。もう1人にはさせない。絶対に…そしてまたあの笑顔を取り戻す。そう決意した俺は…
「先生、俺の記憶、取り戻せる薬ないですか?」そう聞いていた。
「奏くん?あの大学受かったって聞いたよ。おめでとう。純平くんの事があってあの大学に?」
「ありがとうございます。純平の事、オメガの事知りたくて…」
「頑張ったんだね。でもこれからもっと頑張らないとね」
「…先生……教えてくださいっ……純平の番って俺ですか?俺なんでしょ?俺ですよね?」
「…えっ」
「今、純平に…会ったんです」
「嘘…どこ…でっ」
「俺が通ってる大学の近くのオメガの施設にいるんです」
「純平、ヒートが酷くて、薬も効かないらしくて、顔色も悪くて、かなり痩せてて、車椅子に乗ってて、自傷行為もあって先生…俺…っつ…純平死なせたくないんです」
「先生、純平…助けてください」
「お願いしますっ…先生」
「奏くん落ち着いて…」
「とりあえず純平くんは生きてるのね。あの頃…まだ中学生の奏くんに現実を言えなくて…純平くんには辛い思いをたくさんさせてしまったわねっ…そんな状態になってるなんて知らなくて……奏くんいい?…純平くんの頸を噛んで番成立をしたのは奏くんよ。多分、純平くんにとっても初めての発情で、奏くんはラットを起こした。でも興奮状態のまま倒れた時に頭を打ってしまって…その時の前後の記憶をなくしてたの…だからっ…」
「…っそんな…じゃあ俺は自分が噛んだ噛み跡を他人がつけたと思い込んで…純平に俺…酷いこと…言って…どうすれば…いいですか…先生…」
「とりあえず、これから行くわ。一緒に施設に行きましょう。わかった?」
「はいっ…待ってます…」
先生が来るまでの間、俺はあの日の事を思い出そうとした。目が覚めたら病室にいて、頭には包帯、腕には点滴の針が刺さっていた。何が起こったかわからなくて…その時の事を思い出そうとすると頭が痛くて俺の頭ん中は空っぽで、どんなに捻り出そうとしても何も思い出せなかった。
ただ…俺が純平を番にしたんだ…それなのに…何1つ幸せにしてあげる事もできずに純平のせいにして…俺は…純平をあんな目に合わせてしまった…純平の細くて、白くて綺麗だった腕をあんな風に…
トントン肩を叩かれてハッと顔をあげると結城先生、誠先生、郁人が立っていた。
「ずっとここにいたの?寮にいればよかったのに…寒かったでしょ」
「久しぶりだな奏…」
「先生俺っ…おれ…」
「とりあえず施設に行って話しよ。施設には電話して行くこと伝えてるから」
俺たち4人は純平がいるオメガ施設に向かった。
施設の門の前で柔らかい雰囲気の女性が待っていて声をかけてくれた。「初めまして。施設長の柊です。」
「先程、電話した結城です。こちらはベータの金沢医師です。」
「この2人は?」
「純平くんと同級生だった私の息子でオメガです。彼は…」俺は結城先生の言葉を遮り「俺が純平の番です」
そういうと施設長が「あなたが…何で?何でもっと早く…」と膝を付いて泣き出してしまった。
「すみませんっ…俺何も覚えてなくて…」
「純平くんはね。何度も自殺未遂をしてるの。生きていたくないって…番に捨てられたオメガはねっ薬が効けば普通に生活ができる。ほとんどのオメガがコントロールしてる。でも…でもねっ…純平くんは…色んな薬を試しても効きづらくて…自傷行為がどんどん悪化してる。目を離すことが難しくなったわ。」
「あなたは純平くんを幸せにできるの?一緒にいてあげれるの?途中でやっぱり無理だっ…てなったら、その時は…2度目はないのよ」
「わかってます。」
その時、施設のドアが開いてさっき見た青年が顔を出した。
「施設長…あっ…さっきの…」
「すみません。」
「まさか…お前が…純平の…番…なの?」
俺の前まで来た。震える手で俺の胸元を握り締めて
「さっきの純平っっ…見たよな…どうにかしろよーっ…俺…おっれ…あんな純平…見たくないんだよ…助けてやって…くれよ…」
「健太くん、純平くん連れて来てくれる?とりあえずっ…部屋にはアルファの方は入れないので面会室にご案内します。」
面会室に案内された。白い無機質な壁にソファーとローテーブルだけの部屋だった。
車椅子に乗せられた無表情の純平が部屋に入ってきた。
結城先生は涙を浮かべ「もっと早くに見つけてあげられたらっ…」「ごめんねっ…純平…く…ん」
誠先生も「純平、ごめんなっ…辛かったな…」って…
先生たちの声は聞こえてるはずなのに純平は反応もなく、何も写してないような瞳をしていた。
「最近、反応が鈍くなってきて…」
そう言った施設長がトントンと肩を叩いて、青年が純平の腕をさすった「純平、水飲む時間だよ」と少しずつ水を飲ませた。ゆっくりと嚥下する様子を見ていた俺は居た堪れなくて純平に駆け寄った。
「純平…来るのが遅くなってごめんっ…本当にごめんっ…俺…っ何も知らなくて…」番なら触っても拒否反応は起こらないと聞いた事がある。それでも5年も前だ…もしかしたら…と不安で震える手で純平の手をそっと握り締めた。拒否反応はない。純平の温もりを感じた。まだ生きてる。純平を取り戻さないと…
施設長から「純平くんに毎日、会いにきて話かけてあげる事はできますか?」と声をかけられた。
「純平くんの心は壊れてしまったの。でも番の事は忘れたくても忘れる事はできないの。だから本当に純平くんの心を取り戻したいなら会いに来てくれますか?」
「はいっ…会いに来ますっ…必ず…純平にちゃんと謝らないと…」
俺は純平の頭を撫でながら「純平、また明日来るよ。待っててね。」そう言って俺は純平の手を両手で握りしめた。
大事な…大事な…大好きな俺の番…命を尽きさせないように…俺が絶対に守ってみせる。もう1人にはさせない。絶対に…そしてまたあの笑顔を取り戻す。そう決意した俺は…
「先生、俺の記憶、取り戻せる薬ないですか?」そう聞いていた。
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