いつか愛してると言える日まで

なの

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記憶の行方

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「記憶を取り戻すって…そんな薬があるなら、あの時使ってるわっ…」

「そうですよね…すみません…とりあえず俺が倒れていた場所とか行ってみたいです。思い出せるかわからないけど…」

「奏、俺が一緒に行くよ。あの時の事、俺が知ってる事、教えてあげる」

「郁人…ありがとう」

誠先生の車に乗って病院に向かった。車の中で郁人が聞きづらそうに小声で「お前、まだ遊んでるの?」と聞いてきた。
郁人も知ってたのか、そうだよなっ…俺が荒れて、取っ替え引っ替えしてた事を知らない人なんていないだろう…

「あの大学に行こうと思って勉強する時にやめた。なんか純平の事考えると虚しくて…純平には内緒なっ…もう絶対にあんな事しないし、できるわけないだろっ」

「そっかぁーいやーまだやってるなら1発ぶん殴ろうと思ってた」そう言って笑ってた。


「ここだよ」郁人に連れて来られた場所は病院の中庭にあるベンチだった…

「あの日さぁーお母さんに純平の気持ち聞くからって言われて2人でこっそり聞いてたんだ。お前はずっとソワソワしてて。純平は奏の事好きって言ってた。でもさー俺と奏が付き合ってるって勘違いしてて、だから2人で話しろって…

きっと2人で話して勘違いだったってわかったんだろう。そしたらなんでかヒートが起きた…

病室に行こうと思ってたと思うけど、お前もオメガのヒートなんて初めてだったんだろう?我慢できなくて近くのリネン庫に入って…そのまま番になったみたいだな。

でもリネン庫にはその日たまたま退院した患者の床頭台しょうとうだいが置いてあって…運悪くお前はそこに頭を強く打ちつけたみたいで倒れてしまった。大きな物音に気づいた看護師さんが2人が倒れてるのを見つけたって、お前は頭から出血してて意識もなかった」

「それから気づいたお前はその日の事を何も覚えてなかったっ…純平にその事を打ち明けた時あいつは…お前の心配をしてた。でも番になってるのにお前が覚えてない。思い出さないかもしれない。それなのにヒートは来る。今後、大変な事とか聞かされて青ざめてた。だから俺が奏に聞こうとしたけど…お前、本当に何も覚えてなくてさ。あんなに好きって言ってたのに。好きな人と番になれたのにさっ…俺、辛くて…純平の所に行けなくなった…」

「俺もオメガだからさぁー、ヒートって怖いなって…でも俺は薬が効く体質だから抑制剤とかで抑えられるから、純平もそうだと思ってた。なのにあんなに壊れちゃうなんて…奏…っ…何とかしてやれよ。純平の事、好きなんだろっ…」

「あぁ…好きだよ。とてつもなく…だからあの時、最低だと思った。俺が番にしたかったのに…まだ中学生の俺たちが番なんて作るなんてって…最低だって…俺…お前なんかいなくなっちゃえって……」

「奏っ…ひっく…酷いよ」

「オレは最低だって思うよ。あんな風に純平をしたのはオレだ…なのにオレっ…自分ばっかりでさ…純平が苦しんでるのもわからなくて色んな奴と寝ててさぁーオレにも純平の苦しみ分けてほしかったよ」

「やっぱりオレ全然思い出せないけど、純平の事、好きだよ。オレの初恋だしな…毎日、会いに行く。それで毎日好きって伝える。いつわかってくれるかわからないけど…それでも純平の隣にいたいから。郁人色々ありがとうな…お前はやっぱいい友達だわっ…」

奏はそう言って純平がいる街に帰っていった。

それから毎日、朝大学に行く前、大学が終わった後、奏は純平に会いに行った。帰る時に必ず
「純平、また明日来るよ。待っててね。」と言い続けた。

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