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頭の隅にモヤがかかったような意識の中、日の光が眩しく感じてゆっくりと目を開けると白い天井が目に入ってきた。深呼吸をしてみると微かに消毒か何かの薬品が混ざったような匂いが鼻の奥を掠めた。
「びょう…いん…か?」
思ってたよりもかなり掠れた声が出た。起きあがろうと頭を上げた瞬間ズキッと頭痛がしてもう一度ベットに横たわった。その時に左手に何かが触れた感覚がした。見るとそれはベットのリクライニングのリモコンだった。しばらくすると頭痛も落ち着いたので俺は少しだけベットの背もたれを上げて周りを見てみた。少しだけ頭を動かして左を向くと点滴がぶら下がっている棒が見えた。右を向くと大きな窓からは日の光が差し込んでいた。そしてサイドテーブルの上には黒い鞄と財布と名刺入れのケース、画面が割れている携帯が並べて置かれていた。
そういえば……ふと思った俺は誰なんだ?何も思い出せない。どうしてここにいるのかさえも…頭の中は真っ白で自分が自分を思い出せなかった。
なんとなく重い右腕を持ち上げると腕に包帯が巻かれていた。その腕でサイドテーブルに手を伸ばして財布を取り開けてみた。氏名 小嶋 昴 平成9年9月9日と書いてある運転免許証が目に入った。それを引き抜くと冴えない顔をした少し茶髪でパーマなのか天パなのかわからないが見た目柔らかそうな髪の男が少し大きな目を開けてこっちを見ていた。誰だこれ?見覚えもない男の顔がそこにはあった。俺は名刺入れに手を伸ばして1枚名刺を取り出すと、そこには会社名とやはり小嶋 昴と書いてあった。そしてその下にはゲームプログラマーと肩書きが書かれていた。鞄の中には1冊のファイルがあって数字やら色んな文字が並んでいた。その時、部屋のドアが開いた。
「昴起きてたの?どこか痛い?あんたも気をつけなさいよ。本当に心配したんだからね。電話が来たときは本当にびっくりしたわよ。お父さんも翔もさっきまでいたんだけど2人とも仕事だから帰ったわよ。でもよかったわね。階段から落ちたのに怪我も大したことなくて骨は折れてないって打撲だって言われた。丈夫に産んだ甲斐があったわ。今までも骨なんか折ったことなかったもんね感謝してよね!念のため今日は入院になったけど、そういえばもうすぐで誕生日よね。何か欲しいものある?まぁ今年も康太くんと過ごすんでしょ?いいわねぇ~。そうそう康太くんもさっきまでいてくれてたんだけど職場に顔出してからまた来てくれるって凄く心配してたわよって…昴?あんた聞いてるの?」
機関銃のように捲し立てて喋ってくる女性に目を向けた。歳は50になるくらいだろうか?目が大きくて少しぽっちゃりとした体型をしていて、でもどことなくさっきの写真の男に似ている気がした。
「あの……一体だれ、ですか?」
「はぁ?あんた自分の母親の顔も忘れたの?薄情な子だねって、え?本当にわからないの?えっうそっ…」
そう言うとバタバタと派手な足音を立てて部屋を飛び出した。
あの人の子どもなのか…しかも誕生日って…そう考えていた時、母親?と言っていた女性と白衣を着た40代くらいの医師と思われる男性と看護師さんがやってきた。
「小嶋さん、目が覚めてよかったです。これから質問をするので答えてくださいね」
「はい」
「今日は何月何日で、どうしてここにいるのかわかりますか?」
「いえ…」
「じゃあ、ご自身の名前と生年月日は?」
「全く……あのさっき免許証をみたんですがわからなくて…」
「そうですか、CTを撮った限りは異常があるような箇所は見つからなかったのですが、念のためもう一度検査をしましょう。頭を打ったせいかもしれませんね。吐き気や何か変わったことがありましたらナースコールで教えてくださいね。検査の準備ができたら迎えにきますのでもう少しお待ちください」
そう言って2人は出て行ってしまった。
どんなに頭を捻っても俺の頭ん中は空っぽのままだった。
「あんたまさか記憶まで飛んじゃうなんて災難ね。康太くんもびっくりするわよ。そういえば…仕事なんて覚えてないんでしょ?家に帰ってくるしかない?康太くんにも迷惑だもんね」
「あの…さっきから康太くんって?」
「康太くんのことも忘れたの?酷いわね。あんなに親切でいい子はいないのに…って自分のことも覚えてないんだから仕方がないか…何から話そうか……」
そう言って母親は俺の家族について教えてくれた。
俺は4人家族、データ復旧のエンジニアをしているお父さんとスーパーで仕事をしているお母さん、それと翔という2個下の弟がいる。弟は銀行で営業の仕事をしていると……
「それとね康太くんって言って翔の同級生と……」
その時
「遅くなりました。小嶋先輩、大丈夫ですか?」
大柄な体に目鼻立ちがはっきりしていてイケメンそうな男が入ってきた。
「びょう…いん…か?」
思ってたよりもかなり掠れた声が出た。起きあがろうと頭を上げた瞬間ズキッと頭痛がしてもう一度ベットに横たわった。その時に左手に何かが触れた感覚がした。見るとそれはベットのリクライニングのリモコンだった。しばらくすると頭痛も落ち着いたので俺は少しだけベットの背もたれを上げて周りを見てみた。少しだけ頭を動かして左を向くと点滴がぶら下がっている棒が見えた。右を向くと大きな窓からは日の光が差し込んでいた。そしてサイドテーブルの上には黒い鞄と財布と名刺入れのケース、画面が割れている携帯が並べて置かれていた。
そういえば……ふと思った俺は誰なんだ?何も思い出せない。どうしてここにいるのかさえも…頭の中は真っ白で自分が自分を思い出せなかった。
なんとなく重い右腕を持ち上げると腕に包帯が巻かれていた。その腕でサイドテーブルに手を伸ばして財布を取り開けてみた。氏名 小嶋 昴 平成9年9月9日と書いてある運転免許証が目に入った。それを引き抜くと冴えない顔をした少し茶髪でパーマなのか天パなのかわからないが見た目柔らかそうな髪の男が少し大きな目を開けてこっちを見ていた。誰だこれ?見覚えもない男の顔がそこにはあった。俺は名刺入れに手を伸ばして1枚名刺を取り出すと、そこには会社名とやはり小嶋 昴と書いてあった。そしてその下にはゲームプログラマーと肩書きが書かれていた。鞄の中には1冊のファイルがあって数字やら色んな文字が並んでいた。その時、部屋のドアが開いた。
「昴起きてたの?どこか痛い?あんたも気をつけなさいよ。本当に心配したんだからね。電話が来たときは本当にびっくりしたわよ。お父さんも翔もさっきまでいたんだけど2人とも仕事だから帰ったわよ。でもよかったわね。階段から落ちたのに怪我も大したことなくて骨は折れてないって打撲だって言われた。丈夫に産んだ甲斐があったわ。今までも骨なんか折ったことなかったもんね感謝してよね!念のため今日は入院になったけど、そういえばもうすぐで誕生日よね。何か欲しいものある?まぁ今年も康太くんと過ごすんでしょ?いいわねぇ~。そうそう康太くんもさっきまでいてくれてたんだけど職場に顔出してからまた来てくれるって凄く心配してたわよって…昴?あんた聞いてるの?」
機関銃のように捲し立てて喋ってくる女性に目を向けた。歳は50になるくらいだろうか?目が大きくて少しぽっちゃりとした体型をしていて、でもどことなくさっきの写真の男に似ている気がした。
「あの……一体だれ、ですか?」
「はぁ?あんた自分の母親の顔も忘れたの?薄情な子だねって、え?本当にわからないの?えっうそっ…」
そう言うとバタバタと派手な足音を立てて部屋を飛び出した。
あの人の子どもなのか…しかも誕生日って…そう考えていた時、母親?と言っていた女性と白衣を着た40代くらいの医師と思われる男性と看護師さんがやってきた。
「小嶋さん、目が覚めてよかったです。これから質問をするので答えてくださいね」
「はい」
「今日は何月何日で、どうしてここにいるのかわかりますか?」
「いえ…」
「じゃあ、ご自身の名前と生年月日は?」
「全く……あのさっき免許証をみたんですがわからなくて…」
「そうですか、CTを撮った限りは異常があるような箇所は見つからなかったのですが、念のためもう一度検査をしましょう。頭を打ったせいかもしれませんね。吐き気や何か変わったことがありましたらナースコールで教えてくださいね。検査の準備ができたら迎えにきますのでもう少しお待ちください」
そう言って2人は出て行ってしまった。
どんなに頭を捻っても俺の頭ん中は空っぽのままだった。
「あんたまさか記憶まで飛んじゃうなんて災難ね。康太くんもびっくりするわよ。そういえば…仕事なんて覚えてないんでしょ?家に帰ってくるしかない?康太くんにも迷惑だもんね」
「あの…さっきから康太くんって?」
「康太くんのことも忘れたの?酷いわね。あんなに親切でいい子はいないのに…って自分のことも覚えてないんだから仕方がないか…何から話そうか……」
そう言って母親は俺の家族について教えてくれた。
俺は4人家族、データ復旧のエンジニアをしているお父さんとスーパーで仕事をしているお母さん、それと翔という2個下の弟がいる。弟は銀行で営業の仕事をしていると……
「それとね康太くんって言って翔の同級生と……」
その時
「遅くなりました。小嶋先輩、大丈夫ですか?」
大柄な体に目鼻立ちがはっきりしていてイケメンそうな男が入ってきた。
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