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モフ耳少年と、初めてのパン作り
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「せんせー!これでいいの!?こねこねこねーっ!」
「ちょ、ミル!それ叩いてる!もっと優しく!生地が『やめてー!』って泣いてるよ!」
「えっ、生地って喋るの!?わあ、魔法のパン!」
「……喋らないけど、たぶん、気持ちは……伝わってくる。気がする!」
村の朝は、鳥のさえずりと土の匂いで始まる。
そして最近の俺はライガと一緒にパン作りをするようになった。そして今日はどういうわけか、村の小さな集会所で子ども向けの「パン教室」をすることになった。先生役は、なぜか俺。そして生徒第一号はライガの隣で尻尾をぶんぶん振っている、この小さなモフ耳少年。
「ねぇねぇ、ほんとに人間なの?耳、ないの?ないの?ないのおおお!?」
「ごめん、人間は横にあるのが普通で、しっぽも基本、生えてないの……!」
「えー、つまんなーい。ぼくライガ兄ちゃんのしっぽ大好きなのに」
「……かわいい」
「なんか言った?」
「なにも」
ミル。猫獣人の少年。まだ10歳前後らしいけど、表情がくるくる変わって、触れたくなるくらい柔らかそうな耳と尻尾をしている。村のマスコットらしく、みんなから可愛がられているのがよくわかる。
「せんせー、これでいい?こねるの、たのしい!」
「うん、バッチリ!……じゃあ次は発酵だね」
「はっこう?なにそれ、強そう!」
「強くはない!」
ライガに教えてもらったパン作りの手順を、今は俺が誰かに教えてる。なんだか不思議な気分だけど……
「せんせいって呼ばれるの、ちょっと……悪くないかも」
「……お前、よく笑うな」
ふと、ライガがぽつりと呟いた。その声は静かで、でも温かくて。
「え?ああ、うん。ミルが可愛くて……って、なに見てるの、ライガさん?」
「……お前の顔。好きだ」
「出たーーッ!また急な爆弾発言!!」
「爆弾……?」
「いや、例えです!比喩!心臓が跳ねるっていうか!!」
ライガは相変わらず無表情で真顔。でも、言葉の端々が、どうしようもなくずるい。静かな熱を、まっすぐ投げてくる。そしてたまに、ほんの少しだけ視線が優しい。
***
夕方、パンが焼けた頃にはミルは全身小麦粉だらけ。けれど満面の笑みを浮かべていた。
「せんせー!また明日も、つくっていい!?」
「もちろん。ただし……今日はお風呂、先に入ってね。温泉入っておいで」
「うんっ!」
子猫のように跳ねるように走っていくミルを見送って、ふと隣を見れば
「……ありがとな、ライガさん。今日は楽しかった」
「……お前が来てから、村がよく笑うようになった」
静かに、それだけを言って、また黙り込む彼。
本当にずるいな。なんでそんな一言で、こんなに胸があたたかくなるんだろう。
「あのさ、ライガさん」
「……ん」
「俺、この村、好きになってきたかも」
「……俺も。お前がいる村が、好きだ」
夕焼けに照らされた銀の髪が、ふわりと揺れた。パンの香りが残る空気の中で、俺は小さく笑った。
……本当に転生しちゃったんだな、俺。
でも今は、それを少しだけ、幸運だと思えている。
「ちょ、ミル!それ叩いてる!もっと優しく!生地が『やめてー!』って泣いてるよ!」
「えっ、生地って喋るの!?わあ、魔法のパン!」
「……喋らないけど、たぶん、気持ちは……伝わってくる。気がする!」
村の朝は、鳥のさえずりと土の匂いで始まる。
そして最近の俺はライガと一緒にパン作りをするようになった。そして今日はどういうわけか、村の小さな集会所で子ども向けの「パン教室」をすることになった。先生役は、なぜか俺。そして生徒第一号はライガの隣で尻尾をぶんぶん振っている、この小さなモフ耳少年。
「ねぇねぇ、ほんとに人間なの?耳、ないの?ないの?ないのおおお!?」
「ごめん、人間は横にあるのが普通で、しっぽも基本、生えてないの……!」
「えー、つまんなーい。ぼくライガ兄ちゃんのしっぽ大好きなのに」
「……かわいい」
「なんか言った?」
「なにも」
ミル。猫獣人の少年。まだ10歳前後らしいけど、表情がくるくる変わって、触れたくなるくらい柔らかそうな耳と尻尾をしている。村のマスコットらしく、みんなから可愛がられているのがよくわかる。
「せんせー、これでいい?こねるの、たのしい!」
「うん、バッチリ!……じゃあ次は発酵だね」
「はっこう?なにそれ、強そう!」
「強くはない!」
ライガに教えてもらったパン作りの手順を、今は俺が誰かに教えてる。なんだか不思議な気分だけど……
「せんせいって呼ばれるの、ちょっと……悪くないかも」
「……お前、よく笑うな」
ふと、ライガがぽつりと呟いた。その声は静かで、でも温かくて。
「え?ああ、うん。ミルが可愛くて……って、なに見てるの、ライガさん?」
「……お前の顔。好きだ」
「出たーーッ!また急な爆弾発言!!」
「爆弾……?」
「いや、例えです!比喩!心臓が跳ねるっていうか!!」
ライガは相変わらず無表情で真顔。でも、言葉の端々が、どうしようもなくずるい。静かな熱を、まっすぐ投げてくる。そしてたまに、ほんの少しだけ視線が優しい。
***
夕方、パンが焼けた頃にはミルは全身小麦粉だらけ。けれど満面の笑みを浮かべていた。
「せんせー!また明日も、つくっていい!?」
「もちろん。ただし……今日はお風呂、先に入ってね。温泉入っておいで」
「うんっ!」
子猫のように跳ねるように走っていくミルを見送って、ふと隣を見れば
「……ありがとな、ライガさん。今日は楽しかった」
「……お前が来てから、村がよく笑うようになった」
静かに、それだけを言って、また黙り込む彼。
本当にずるいな。なんでそんな一言で、こんなに胸があたたかくなるんだろう。
「あのさ、ライガさん」
「……ん」
「俺、この村、好きになってきたかも」
「……俺も。お前がいる村が、好きだ」
夕焼けに照らされた銀の髪が、ふわりと揺れた。パンの香りが残る空気の中で、俺は小さく笑った。
……本当に転生しちゃったんだな、俺。
でも今は、それを少しだけ、幸運だと思えている。
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