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王都からの使者と、静かに灯る決意
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朝霧がまだ地を這う静かな朝。
智也は小屋の縁側に腰掛けて、ぼんやりと空を見上げていた。
昨夜の出来事がまるで夢だったかのように、空は青く澄みわたり、村には穏やかな風が吹いていた。
けれど胸の内には、確かにひとつの灯火が生まれていた。
これからもライガと、生きていきたい。
ただ流されて生きていた頃にはなかった強い願い。それが胸の奥で静かに、しかし確かに燃えていた。
「……おはよう、智也」
背後から聞こえた声に振り向くと、ライガが木のバケツを片手に立っていた。寝起きのままの乱れた髪に、少し眠たげな目。それがなんだか妙に愛しくて、智也は思わず笑みをこぼす。
「おはよう。ちゃんと眠れた?」
「お前が隣にいたからな。……って、なんだその顔」
「別に。なんでもないよ」
微笑みとぬくもりが行き交う朝。ふたりだけの、平和な時間……そう思ったそのとき。
村の門のほうから、馬の蹄が大地を叩く音が響いた。
砂埃の中を駆けてくるのは、赤いマントを翻した騎士たち。金の装飾が施された馬車が、彼らの中央を進んでいる。
「……王都の紋章だ」
ライガの声が一段と低くなった。眉間には険しい皺が刻まれていた。
智也はその横顔を見つめ、胸の奥がざわつくのを感じた。
***
村の広場に集まった人々の前に、赤いマントを翻した騎士が重々しく歩み出た。銀の甲冑には王都の紋章が刻まれ、騎士団長と思しき男が鋭く周囲を睥睨する。その視線ひとつで、広場に緊張が走った。
「この地に転生賢者が現れたと聞き、王都より参上した」
低く、よく通る声が響いた。騎士のまなざしは、まるで罪人を見定めるかのように冷たかった。
「我が王は、その力を直ちに確認し、しかるべき地位に迎えるよう命じておられる。……拒否は許されない。これは命令であり、王命である」
静まり返った広場に、その言葉が重くのしかかった。ざわめく村人たちの視線が、一斉に智也へと注がれる。好奇、困惑、恐れ、そして……よそ者を見るような警戒。
智也は、知らぬうちに一歩後ずさっていた。身体の奥が冷たくこわばる。けれどそのとき、肩に温かな手が触れた。
「……行く必要はねぇ。王都なんかに連れて行かせねぇからな」
ライガの声が低く唸るようだった。けれど……。
「でも、俺……」
智也の目が揺れた。かつてなら、きっと逃げていた。すべてを拒み、誰にも心を開かず、ただここで生きていければそれでいいと……そう思っていた。
けれど、今は違う。
ライガと出会い、村のみんなと過ごして、生きる意味を知った。だからこそ、自分の意思で選びたかった。
「……俺、行くよ。王都に。……でも、それはあんたと一緒に生きる未来のため。ここで終わりにしないために必要だと思うから」
ライガが目を見開いた。
「……自分で、そう決めたのか?」
「うん。だけど、約束して」
智也はまっすぐに彼を見た。
「……どれだけ遠くに行っても迎えに来て。俺がどんな風に変わっても、俺を見つけて。……ライガだけは、絶対に俺を忘れないで」
その言葉に、ライガは短く息を飲み、そして、力強く頷いた。
「当たり前だ。何があっても、お前を見つける。……お前は、俺のもんだ」
その言葉に、智也の胸が熱くなった。それは、束縛ではない。信頼と絆の証。
こみ上げる涙を、智也はそっと拭った。悲しみではない。生まれて初めて、心の底から誰かと繋がれた気がした。
こうして智也は、自らの意志で王都へと向かうことを選んだ。
――過去を知り、未来を切り拓くために。
――そして、何より大切な「帰る場所」を守るために。
智也は小屋の縁側に腰掛けて、ぼんやりと空を見上げていた。
昨夜の出来事がまるで夢だったかのように、空は青く澄みわたり、村には穏やかな風が吹いていた。
けれど胸の内には、確かにひとつの灯火が生まれていた。
これからもライガと、生きていきたい。
ただ流されて生きていた頃にはなかった強い願い。それが胸の奥で静かに、しかし確かに燃えていた。
「……おはよう、智也」
背後から聞こえた声に振り向くと、ライガが木のバケツを片手に立っていた。寝起きのままの乱れた髪に、少し眠たげな目。それがなんだか妙に愛しくて、智也は思わず笑みをこぼす。
「おはよう。ちゃんと眠れた?」
「お前が隣にいたからな。……って、なんだその顔」
「別に。なんでもないよ」
微笑みとぬくもりが行き交う朝。ふたりだけの、平和な時間……そう思ったそのとき。
村の門のほうから、馬の蹄が大地を叩く音が響いた。
砂埃の中を駆けてくるのは、赤いマントを翻した騎士たち。金の装飾が施された馬車が、彼らの中央を進んでいる。
「……王都の紋章だ」
ライガの声が一段と低くなった。眉間には険しい皺が刻まれていた。
智也はその横顔を見つめ、胸の奥がざわつくのを感じた。
***
村の広場に集まった人々の前に、赤いマントを翻した騎士が重々しく歩み出た。銀の甲冑には王都の紋章が刻まれ、騎士団長と思しき男が鋭く周囲を睥睨する。その視線ひとつで、広場に緊張が走った。
「この地に転生賢者が現れたと聞き、王都より参上した」
低く、よく通る声が響いた。騎士のまなざしは、まるで罪人を見定めるかのように冷たかった。
「我が王は、その力を直ちに確認し、しかるべき地位に迎えるよう命じておられる。……拒否は許されない。これは命令であり、王命である」
静まり返った広場に、その言葉が重くのしかかった。ざわめく村人たちの視線が、一斉に智也へと注がれる。好奇、困惑、恐れ、そして……よそ者を見るような警戒。
智也は、知らぬうちに一歩後ずさっていた。身体の奥が冷たくこわばる。けれどそのとき、肩に温かな手が触れた。
「……行く必要はねぇ。王都なんかに連れて行かせねぇからな」
ライガの声が低く唸るようだった。けれど……。
「でも、俺……」
智也の目が揺れた。かつてなら、きっと逃げていた。すべてを拒み、誰にも心を開かず、ただここで生きていければそれでいいと……そう思っていた。
けれど、今は違う。
ライガと出会い、村のみんなと過ごして、生きる意味を知った。だからこそ、自分の意思で選びたかった。
「……俺、行くよ。王都に。……でも、それはあんたと一緒に生きる未来のため。ここで終わりにしないために必要だと思うから」
ライガが目を見開いた。
「……自分で、そう決めたのか?」
「うん。だけど、約束して」
智也はまっすぐに彼を見た。
「……どれだけ遠くに行っても迎えに来て。俺がどんな風に変わっても、俺を見つけて。……ライガだけは、絶対に俺を忘れないで」
その言葉に、ライガは短く息を飲み、そして、力強く頷いた。
「当たり前だ。何があっても、お前を見つける。……お前は、俺のもんだ」
その言葉に、智也の胸が熱くなった。それは、束縛ではない。信頼と絆の証。
こみ上げる涙を、智也はそっと拭った。悲しみではない。生まれて初めて、心の底から誰かと繋がれた気がした。
こうして智也は、自らの意志で王都へと向かうことを選んだ。
――過去を知り、未来を切り拓くために。
――そして、何より大切な「帰る場所」を守るために。
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