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始まりの炎と、君との記憶
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夜。
王都の一室で、智也は静かに月を見上げていた。手には、ライガから届いた手紙。けれど視線は、遥か遠くの記憶に囚われていた。
胸の奥を締めつける痛み。
セリオスの言葉が、今もなお心に刺さって離れなかった。
かつて、ライガには人間の師がいた。だが、その人物は裏切られ命を落とした。
「あなたは、あの方に……似ている」
セリオスはそう言った。
まさか……俺が……?
智也の頭に浮かぶのは夢の中で何度も見た、あの光景。
金の瞳をした少年が、自分の前で倒れ込んでいた。灰に包まれた獣人の村。
庇った誰かが、代わりに死んだ……そんな記憶。
「……違う、俺は……!」
絞り出すような声が、夜の静寂に吸い込まれて消えていった。。
だが次の瞬間、意識が急激に引きずられるような感覚が、智也を襲った。
目の前に広がったのは、紅蓮の業火に包まれた過去の世界だった。
***
「逃げろ、ライガ!!」
焦燥に満ちた青年の声。それは、かつての自分だった。
目の前には、幼いライガが金色の瞳に涙を滲ませて、振り返った。
「先生……!一緒に逃げようよ……っ!」
「駄目だ、ここはもう持たない。お前だけでも、生きろ……!」
村は王都の軍によって焼き尽くされていた。賢者の弟子として、ライガを守ってきた自分。
だがそれは、「異端を育てた」として貴族たちに断罪され、討伐の対象となったのだ。
そして、もうひとつの影。
「……セリオス、お前が……!」
「ええ。あなたが彼を甘やかすからですよ、高貴なる賢者様」
セリオスの声は冷たく、嫉妬と嫌悪がにじんでいた。そして、その目が智也……いや、かつての賢者を真っ直ぐに射抜ていた。
そして、あの一言。
「あなたは獣人を守り、私たちを見捨てた。その時から、あなたは人間ではなくなったのですよ、先生」
その言葉は、呪いのように響いた。それでも、自分にはあの時ライガを見捨てる選択だけは、できなかった。
獣人の子どもが泣き叫ぶ声。焚きつけられた薪のような匂い。剣と剣がぶつかる音。すべてが、今この瞬間も胸の中で焼き付いているようだった。
崩れ落ちた梁。火の粉が舞う中、ライガを外に押し出す自分。最後に見たのは、泣き叫ぶ幼いライガの顔。そして……自分の胸に突き立つ、無数の剣。
***
「――っ!」
智也は、ベッドの上で飛び起きた。全身が汗で濡れて手が震えていた。
「思い出した……全部」
かつての罪と残した傷。
それでもライガは自分に優しく、そして「好きだ」とさえ言ってくれた。
「許されない過去を背負っても……もう逃げない。俺は……もう一度、あの人を守るために生きるんだ」
その瞬間、部屋の扉が乱暴に開かれた。
「智也っ!!」
その声に振り返ると、そこに立っていたのはライガだった。
「……夢じゃない。ライガが、本当にここに来てくれた。忘れないって、言ってくれたとおりに」
「お前の気配が、急に途切れた。……嫌な予感がして飛んできた」
智也は、胸に込み上げる感情に耐えきれず、ライガの胸に飛び込んだ。
「……ごめん。思い出したんだ。前の俺が……君を……」
「言うな」
ライガの声が、震えていた。
「過去がどうであろうと、今のお前がお前だ。……お前は俺を殺したんじゃない。お前は、俺を……守ってくれた」
智也の目から、再び涙がこぼれ落ちた。こんなにも、優しくて、強い人を……
「ありがとう、ライガ。俺……君を――」
そのとき。
窓の外で、轟音が響いた。炸裂音とともに、王城を囲む影。黒衣の刺客たちが、次々と姿を現す。
「……来たか。セリオスの狙いは、やっぱり……!」
「行こう、ライガ。今度こそ、俺たちで終わらせるんだ。過去も、今も、未来も――全部」
ふたりの手が強く、重なった。そこには、後悔ではなく、希望と決意があった。
過去を終わらせるのは、俺たちだ。愛して、失って、もう一度取り戻す――そのために、俺たちは立ち上がった。
王都の一室で、智也は静かに月を見上げていた。手には、ライガから届いた手紙。けれど視線は、遥か遠くの記憶に囚われていた。
胸の奥を締めつける痛み。
セリオスの言葉が、今もなお心に刺さって離れなかった。
かつて、ライガには人間の師がいた。だが、その人物は裏切られ命を落とした。
「あなたは、あの方に……似ている」
セリオスはそう言った。
まさか……俺が……?
智也の頭に浮かぶのは夢の中で何度も見た、あの光景。
金の瞳をした少年が、自分の前で倒れ込んでいた。灰に包まれた獣人の村。
庇った誰かが、代わりに死んだ……そんな記憶。
「……違う、俺は……!」
絞り出すような声が、夜の静寂に吸い込まれて消えていった。。
だが次の瞬間、意識が急激に引きずられるような感覚が、智也を襲った。
目の前に広がったのは、紅蓮の業火に包まれた過去の世界だった。
***
「逃げろ、ライガ!!」
焦燥に満ちた青年の声。それは、かつての自分だった。
目の前には、幼いライガが金色の瞳に涙を滲ませて、振り返った。
「先生……!一緒に逃げようよ……っ!」
「駄目だ、ここはもう持たない。お前だけでも、生きろ……!」
村は王都の軍によって焼き尽くされていた。賢者の弟子として、ライガを守ってきた自分。
だがそれは、「異端を育てた」として貴族たちに断罪され、討伐の対象となったのだ。
そして、もうひとつの影。
「……セリオス、お前が……!」
「ええ。あなたが彼を甘やかすからですよ、高貴なる賢者様」
セリオスの声は冷たく、嫉妬と嫌悪がにじんでいた。そして、その目が智也……いや、かつての賢者を真っ直ぐに射抜ていた。
そして、あの一言。
「あなたは獣人を守り、私たちを見捨てた。その時から、あなたは人間ではなくなったのですよ、先生」
その言葉は、呪いのように響いた。それでも、自分にはあの時ライガを見捨てる選択だけは、できなかった。
獣人の子どもが泣き叫ぶ声。焚きつけられた薪のような匂い。剣と剣がぶつかる音。すべてが、今この瞬間も胸の中で焼き付いているようだった。
崩れ落ちた梁。火の粉が舞う中、ライガを外に押し出す自分。最後に見たのは、泣き叫ぶ幼いライガの顔。そして……自分の胸に突き立つ、無数の剣。
***
「――っ!」
智也は、ベッドの上で飛び起きた。全身が汗で濡れて手が震えていた。
「思い出した……全部」
かつての罪と残した傷。
それでもライガは自分に優しく、そして「好きだ」とさえ言ってくれた。
「許されない過去を背負っても……もう逃げない。俺は……もう一度、あの人を守るために生きるんだ」
その瞬間、部屋の扉が乱暴に開かれた。
「智也っ!!」
その声に振り返ると、そこに立っていたのはライガだった。
「……夢じゃない。ライガが、本当にここに来てくれた。忘れないって、言ってくれたとおりに」
「お前の気配が、急に途切れた。……嫌な予感がして飛んできた」
智也は、胸に込み上げる感情に耐えきれず、ライガの胸に飛び込んだ。
「……ごめん。思い出したんだ。前の俺が……君を……」
「言うな」
ライガの声が、震えていた。
「過去がどうであろうと、今のお前がお前だ。……お前は俺を殺したんじゃない。お前は、俺を……守ってくれた」
智也の目から、再び涙がこぼれ落ちた。こんなにも、優しくて、強い人を……
「ありがとう、ライガ。俺……君を――」
そのとき。
窓の外で、轟音が響いた。炸裂音とともに、王城を囲む影。黒衣の刺客たちが、次々と姿を現す。
「……来たか。セリオスの狙いは、やっぱり……!」
「行こう、ライガ。今度こそ、俺たちで終わらせるんだ。過去も、今も、未来も――全部」
ふたりの手が強く、重なった。そこには、後悔ではなく、希望と決意があった。
過去を終わらせるのは、俺たちだ。愛して、失って、もう一度取り戻す――そのために、俺たちは立ち上がった。
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