最強賢者のスローライフ 〜転生先は獣人だらけの辺境村でした〜

なの

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獣王の咆哮(ほうこう)

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王都・東の塔。
黒衣の刺客たちが魔法障壁を打ち破り、貴族の館を次々と焼き払っていく。

混乱の中、智也とライガは連携しながら民の避難誘導に奔走していた。

「このままだと、王都全体が火の海になる……!」

智也は、胸の奥に走る焦りを押し殺しながら魔法陣を展開する。

……だが。

「遅い。君らしいが、やはり甘いな」

響いた声は静かで、ぞっとするほど冷ややかだった。
屋根の上。月を背に黒衣の男が佇んでいた。

セリオス。
その目は、かつての憧れと、今は苦しみを孕んで智也を射抜いていた。

「なぜ、ライガばかりをを守るんだ?俺にも、同じだけの想いをくれればよかったのに……」

彼の声は、ほんの少しだけ震えていた。

「俺だって……あの時、先生に認められたくて、懸命に守ろうとした。だけど、君はいつもライガの味方で……」

ライガが獣のように低く唸った。でも智也は、一歩前に出てセリオスと対峙した。

「これが君の望みなのかセリオス。王都を焼き払うなんて、そんなことで何が変わるっていうんだ……!」

「君が何も変えられなかったからだよ」

冷笑と共に、セリオスの掌から放たれた黒炎が地を走り、ライガが咄嗟に飛び出して爪で斬り裂いた。

「智也を傷つけさせるか!」

「ほう……まだ愛ごっこに浸っていたのか、君は」

セリオスの目に浮かぶのは怒りだけではなかった。

「どれだけ君が抱いても、守ったつもりでいても、その賢者は……君の目の前で死んだじゃないか。俺は……ずっと、先生の気持ちを知りたかっただけだ」

その言葉に、ライガの瞳が揺らいだ。でも……それでも……

「たとえ過去の智也が、俺の前で死んだとしても。今の智也は、俺の隣にいる!」

「……!」

智也が、震える手でライガの腕を握った。

「ありがとう、ライガ……。今の言葉だけで、俺は……もう、十分だ」

「まだだよ、智也」

ライガの声が低く、獣の本能が滲むように、静かに燃える。

「……俺は、君を守るって決めたんだ。だから、俺の本当の姿を見せる」

智也が息を呑んだ。

「まさか……封印を……!」

「こいつを倒すには、もうそれしかない」

次の瞬間……
ライガの背に、蒼い炎が噴き上がった。その身体が変化し、黄金の獣のような真の姿を現した。

王獣……かつて賢者が救い、命を賭して庇った。この世界に唯一残る始祖の獣人。

その咆哮が夜空に響いた瞬間、黒衣の者たちは恐怖に沈黙した。

セリオスの顔からは、余裕の笑みが剥がれた。

「……なるほど。やっと、本気を見せたか」

智也が震える声で言った。

「ライガ……それが、君の本当の姿……」

「怖いか?」

「……ううん。綺麗だよ。ずっと、君に触れたいって思ってた。たとえ君が何者でも、俺は――」

その言葉に、ライガの鋭い瞳が、一瞬だけ優しく緩む。

「じゃあ、誓えよ、智也」

「え……?」

「俺がすべてを終わらせたら、今度は、お前が……俺を生涯守ってくれるって」

智也は一瞬戸惑ったが、すぐに頷いた。

「……誓うよ。生まれ変わっても、何度でも、君を愛して守る」

その瞬間、蒼い光が智也の胸から解き放たれた。過去と現在を繋ぐ賢者の力が目覚める。
セリオスの表情が、露骨に険しくなった。

「……ああ、やはり君たちは……本物か」

空が割れ、決戦の夜が始まる。

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