オメガの僕が運命の番と幸せを掴むまで

なの

文字の大きさ
28 / 30

29

しおりを挟む
「あさひ、これから言うことで、あさひが辛かったり苦しくなった時は俺に抱きついていいから…ね」

「わかりました」

「あさひが職場でイジメを受けていたのは調べて知ってたんだ…ごめん。ただ証拠がないと、あさひに痛い思いや、苦しい思いをさせてた奴らを制裁することはできないんだ。でも俺の警察官時代のバディが探してくれたから、これでそいつらを傷害罪として立件できるかもしれない。あさひの他にも、暴行をされていたオメガがいたようなんだ。そいつらを訴えるには、あさひの証言が必要なんだ。だいたいでいいから、どんな事をされたのか、それと…体に残ってるアザなどの写真も…協力してくれないか?…ってあさひ?」
見ると、あさひの顔は青ざめ、呼吸が浅くなっているのに気づいた。咄嗟にあさひを膝の上に抱え、向かい合わせに抱きしめた。

「辛いこと思い出させたな。ごめんな。辛いこと、苦しいことたくさんあったんだよな…もう大丈夫だから、そんな目には2度と合わせない。約束するから、俺があさひを守るから。ゆっくり呼吸しよう」
トントンと呼吸に合わせて叩いてやる。

「あさひくん、ちょっと人差し指貸してね」
達也がパルスオキシメーターという指にはさむ機械を使って、酸素飽和度を測定
していた。
春樹があさひの頭を撫でてくれた。
あさひは徐々に呼吸が穏やかになってきた。あさひの顔を覗くと目に涙を浮かべ
「幸樹…さん…ごめんなさい」と鼻を啜りながら言ってきた。

「大丈夫だ。俺こそ嫌なこと思い出させたな」

「違うんです…」

「違う?」
すると涙を溢しながら俺の顔を見上げてきた。
「僕の体、汚くて…」

「何言って…」

「僕の体、アザだらけで背中にも……残ってて。本当は見られるものじゃないのに…大事に優しくしてくれて…あの時はヒートだったから気にしてなかったけど…考えたら、僕の体なんか見たくなかったよなって…幸樹さん…優しくしてくれてありがとうございました。あの……僕……」
俺の膝から降りようとしたあさひをしっかりと抱きしめた。そして、頭や傷が残る背中をさすった。

「あさひの体は汚くない。綺麗だよ。だから俺から逃げようとしないでくれ。あさひが今まで辛い思いをしたのを全てわかってあげられないのは苦しいけど…これから先は俺と楽しい未来しかないんだ。ずっと一緒にいるって約束しただろ?あさひはこれから幸せになる権利があるんだ。それに…この傷は、あさひが頑張った証だよ。そして辛いだろうけど、この傷が残ってるからこそ映像だけじゃなく、いじめられていた、あさひ自身の証言も加われば、あいつらを罰することができる。だからあさひは自分の体のことを気にしなくていい。本当に大丈夫だから。もし俺があさひの身体が嫌だと思ったらいくら発情期に当てられたからって勃たないから。俺はあさひのことが本当に大好きなんだよ。わかった?」

あさひは泣きながら頷いてくれた。そんなに自分の身体のことを辛く思ってたのかと思うと、俺も涙がこぼれそうだった。

「落ち着いた?」

「はい」

「あさひの身体のアザ、証拠の写真撮ってもいいかな?俺が撮るから」

「はい。大丈夫です」

「達也、春樹悪いけど…」

「俺たちは部屋の外にいるから、何かあったら教えて?」

「悪いな」

あさひの背中に残るタバコの跡を指でなぞって俺は1つ1つにキスをした。

「幸樹…さん?」

「あぁ…悪い。嫌だったか?」

「嫌じゃないですけど…」

「あさひが痛い思いしたんだよな。もっと早く、あさひに会いたかったよ」
思わず後ろから抱きしめた。番の匂いがするうなじに顔を寄せるとくすぐったいのか首をすくめた。
思わずあさひの顎を掬い唇を重ねた。静かな診察室深く重なって、絡む水音が響いた。
「これ以上すると、抱きたくなるな」

「そんなわけっ…」

「本当は、まだ疑ってるんだろ?あさひとキスしただけでこんなだけど?」
あさひの手を取って俺の股間に当てた。俺の起立を触ってびっくりした顔をしていた。

「だから、嘘じゃない」

「嬉しいです」
そう言って抱きついてきた。その時、ドアがカチャと開いて達也たちが入ってきた。

「まだかよ~やりたいなら早く帰れ」

「あぁ…悪い」
俺は脱がしたあさひの服を着せながら答えた。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

人生はままならない

野埜乃のの
BL
「おまえとは番にならない」 結婚して迎えた初夜。彼はそう僕にそう告げた。 異世界オメガバース ツイノベです

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

契約結婚だけど大好きです!

泉あけの
BL
子爵令息のイヴ・ランヌは伯爵ベルナール・オルレイアンに恋をしている。 そんな中、子爵である父からオルレイアン伯爵から求婚書が届いていると言われた。 片思いをしていたイヴは憧れのベルナール様が求婚をしてくれたと大喜び。 しかしこの結婚は両家の利害が一致した契約結婚だった。 イヴは恋心が暴走してベルナール様に迷惑がかからないようにと距離を取ることに決めた。 ...... 「俺と一緒に散歩に行かないか、綺麗な花が庭園に咲いているんだ」  彼はそう言って僕に手を差し伸べてくれた。 「すみません。僕はこれから用事があるので」  本当はベルナール様の手を取ってしまいたい。でも我慢しなくちゃ。この想いに蓋をしなくては。  この結婚は契約だ。僕がどんなに彼を好きでも僕達が通じ合うことはないのだから。 ※小説家になろうにも掲載しております ※直接的な表現ではありませんが、「初夜」という単語がたびたび登場します

《一時完結》僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ

MITARASI_
BL
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。 「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。 揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。 不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。 すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。 切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。 続編執筆中

ジャスミン茶は、君のかおり

霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。 大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。 裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。 困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。 その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。

妹に奪われた婚約者は、外れの王子でした。婚約破棄された僕は真実の愛を見つけます

こたま
BL
侯爵家に産まれたオメガのミシェルは、王子と婚約していた。しかしオメガとわかった妹が、お兄様ずるいわと言って婚約者を奪ってしまう。家族にないがしろにされたことで悲嘆するミシェルであったが、辺境に匿われていたアルファの落胤王子と出会い真実の愛を育む。ハッピーエンドオメガバースです。

【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話

降魔 鬼灯
BL
 ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。  両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。  しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。  コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。  

僕たちの世界は、こんなにも眩しかったんだね

舞々
BL
「お前以外にも番がいるんだ」 Ωである花村蒼汰(はなむらそうた)は、よりにもよって二十歳の誕生日に恋人からそう告げられる。一人になることに強い不安を感じたものの、「αのたった一人の番」になりたいと願う蒼汰は、恋人との別れを決意した。 恋人を失った悲しみから、蒼汰はカーテンを閉め切り、自分の殻へと引き籠ってしまう。そんな彼の前に、ある日突然イケメンのαが押しかけてきた。彼の名前は神木怜音(かみきれお)。 蒼汰と怜音は幼い頃に「お互いが二十歳の誕生日を迎えたら番になろう」と約束をしていたのだった。 そんな怜音に溺愛され、少しずつ失恋から立ち直っていく蒼汰。いつからか、優しくて頼りになる怜音に惹かれていくが、引きこもり生活からはなかなか抜け出せないでいて…。

処理中です...