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「け、結婚……ですか?」
私は呆然と呟いた。
目の前には、国の英雄と謳われる騎士団長ジェラルド・アイアンサイド。
熊をも素手で倒すと噂される屈強な男が、捨てられた子犬のような瞳で私を見上げている。
いや、子犬というよりは、餌を前にした大型肉食獣の目つきだ。
「そうだ! 結婚だ! 私は正気だぞ!」
ジェラルドは私の手を握りしめたまま、熱弁を振るう。
「以前から思っていたのだ。学園の中庭で、アラン殿下を叱責する君の姿……。あの凛とした立ち姿、微動だにしない体幹! まさに武人の鑑!」
「武人ではありませんが」
「そして今! 殿下に婚約破棄を突きつけられながらも、涙一つ見せず、毅然と受け入れるその精神力! 美しい……あまりにも強くて美しいぞ、リーフィー嬢!」
「はあ……」
褒められているのか、何なのか。
とにかく圧がすごい。
握られている手が痛い。
「お、おいジェラルド! 貴様、王族の前だぞ! 何を勝手なことを!」
ようやく再起動したアランが、顔を真っ赤にして怒鳴り声を上げた。
「リーフィーは俺の婚約者だった女だぞ! しかも、ミナをいじめた稀代の悪女だ! そんな女に求婚など、騎士団長としての品位を疑うぞ!」
アランの言葉に、ジェラルドはゆっくりと立ち上がった。
その巨体がアランを見下ろす。
身長差はおよそ頭一つ分。
歴戦の覇気を纏ったジェラルドに睨まれ、アランが「ひっ」と小さな悲鳴を上げて後ずさる。
「殿下。訂正していただきたい」
「な、何をだ……」
「『婚約者だった』。過去形ですね? 貴方は先程、高らかに宣言されたはずだ。『婚約は破棄する』と」
「そ、それはそうだが……」
「ならば、現在のリーフィー嬢は自由な身だ。誰が求婚しようと、貴方に止める権利はないはずですが?」
「ぐぬっ……」
ジェラルドの正論に、アランが言葉を詰まらせる。
「それに、『悪女』とおっしゃいましたが……私の目には、そうは映りませんな」
ジェラルドはチラリと私を見た。
その視線が、私の全身を舐めるように動く。
いやらしい目つきではない。
まるで名刀の品定めをするような、真剣そのものの眼差しだ。
「先程、彼女から放たれた光……あれは、高位の呪いが解けた際のエフェクトに見えましたが?」
「の、呪いだと?」
「ええ。何者かが彼女の魅力を封じ、周囲に悪印象を与える認識阻害をかけていたのでしょう。それが解けた今、ご覧なさい。この神々しさを!」
ジェラルドがバッと腕を広げ、私を指し示す。
会場中の視線が再び私に集中した。
「おお……確かに」
「先ほどまでとは別人のようだ」
「あんなに美しい方が、どうして今まで気づかなかったんだ?」
貴族たちの溜息が漏れる。
特に男性陣の視線が熱い。
呪いが解けた反動なのか、それとも元々のスペックが高すぎたのか、今の私はどうやら異常なほど人の目を惹きつけてしまうらしい。
アランもまた、私を凝視していた。
その瞳が揺れている。
「ま、待てよ……。よく見れば、確かに……いや、かなり……好み、かも……」
アランがボソボソと呟き、ふらふらと私に近づこうとする。
「リーフィー……。その、なんだ。さっきの発言は、少し感情的になりすぎたかもしれない。一度、冷静になって話し合わないか?」
「は?」
何を言っているんだ、この男は。
さっきまで「冷酷な悪女」と罵っていたくせに、見た目が変わった途端これだ。
呆れを通り越して感心するレベルの浅はかさである。
しかし、私が口を開く前に、ジェラルドが動いた。
ドンッ!
「うわっと!?」
ジェラルドがさりげなく、しかし強固な壁のようにアランの前に立ちはだかったのだ。
「おっと、殿下。近づかないでいただきたい」
「ど、どけジェラルド! 俺はリーフィーと話がしたいんだ!」
「お断りします。貴方は彼女を捨てた。その事実は覆らない。捨てた宝石を、輝き出したからといって拾い直そうなど……男として、あまりにも見苦しい!」
「き、貴様ぁ……っ!」
「それに、今の彼女は私の求婚対象だ。手出しはさせん!」
ジェラルドが腰の剣に手をかける素振りを見せる。
会場がどよめいた。
騎士団長が、王族相手に本気で威圧している。
本来なら不敬罪ものだが、今の空気は完全にジェラルドと私に味方していた。
「す、素敵……」
「ジェラルド様、男らしいわ……」
「それに比べて殿下は……」
令嬢たちのささやき声が聞こえる。
アランの顔色が青から赤、そして土色へと変わっていく。
その横で、ミナが金切り声を上げた。
「ちょっと! アラン様! 何よあの女! 騙されちゃダメよ! きっと妖術か何かを使ってるのよ!」
ミナがアランの腕を引っ張るが、アランの視線は私に釘付けだ。
「うるさいなミナ! 少し黙っていろ!」
「えっ……? アラン様……?」
ミナがショックを受けた顔をする。
泥沼だ。
見ていて痛々しいほどの泥沼劇だ。
私は頭痛をこらえるようにこめかみを押さえた。
「あの、ジェラルド様」
「なんだ! 式の日取りか!? 私はいつでも構わんぞ! 明日でもいい!」
「違います。少し落ち着いてください」
私は努めて冷静に言葉を紡ぐ。
「突然の求婚、光栄ではありますが……私は今、婚約破棄されたばかりの身です。そのようなスキャンダルの渦中にある女を妻にすれば、騎士団長としての立場に傷がつきます」
我ながら完璧な断り文句だ。
相手の立場を慮った、大人の対応。
これで引き下がってくれれば御の字だが。
しかし、ジェラルドはニカッと白い歯を見せて笑った。
「ハッハッハ! 何を言うかと思えば! 私の立場など、君の価値に比べれば埃のようなものだ!」
「……はい?」
「それに、スキャンダル? 上等だ! 『捨てられた悲劇の令嬢を救った英雄』として、むしろ株が上がるというもの! 何も問題はない!」
「ポジティブですね……」
「さあ、この手を取ってくれ! 君を一生大切にする! 毎朝、君と剣の稽古をするのが私の夢なんだ!」
「稽古はしません」
会話が噛み合わない。
この人、筋肉で思考しているのではないだろうか。
私が困惑していると、不意に会場の空気が変わった。
肌が粟立つような、魔力の奔流を感じる。
「おやおや、随分と賑やかですねぇ」
ねっとりとした、しかし耳心地の良い声が響いた。
ジェラルドがピクリと眉を動かし、視線を鋭くする。
「……チッ。面倒な奴が来たな」
群衆が割れ、一人の男が優雅に歩み寄ってくる。
銀色の長い髪を緩く束ね、片眼鏡(モノクル)をかけた知的な美青年。
宮廷魔導師筆頭、サイラスだ。
彼は常に人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべている食えない男だが、その魔力は国一番と言われている。
サイラスは私の前で足を止めると、興味深そうに目を細めた。
「へぇ……。遠くから妙な魔力変動を感じて来てみれば。これはこれは」
彼は私の顔を覗き込み、そして足元に落ちている変色した指輪を拾い上げた。
「なるほど。『認識阻害』に『魅了反転』、さらには『思考誘導』まで組み込まれた複合呪装具ですか。こんなエゲつない代物を、よくもまあ長年身につけていられましたね」
サイラスは指輪を弄びながら、感心したように私を見た。
「普通なら精神が崩壊して廃人コースですよ。それを耐え抜いたばかりか、呪いが解けた瞬間に魔力を暴走させることもなく制御している」
「え、あの……」
「素晴らしい」
サイラスが、ジェラルドとは違う種類の熱を帯びた瞳で私を見る。
それは研究対象を見るマッドサイエンティストの目だ。
「リーフィー嬢、でしたか? 貴女、魔導師としての素質が異常に高いですよ。どうです? 脳筋の騎士団長より、知的な僕と一晩中『魔力のパス』を繋いでみませんか?」
「……は?」
「あ、誤解しないでくださいね。卑猥な意味ではなく、純粋な魔力の探求ですよ? まあ、結果的に気持ち良くなるかもしれませんが」
「貴様サイラス! リーフィー嬢に何を吹き込んでいる!」
ジェラルドが激昂する。
「おや、ジェラルド団長。独り占めはいけませんよ。これほどの逸材、国の財産として共有すべきだ」
「共有だと!? ふざけるな!」
「ふふ、怖い怖い」
騎士団長と宮廷魔導師。
国の二大巨頭が、私を挟んで睨み合う。
その後ろでは、まだアランが「俺のリーフィーだぞ!」と喚き、ミナが泣き叫んでいる。
周囲の貴族たちは、もはや面白がって事の成り行きを見守っている状態だ。
(帰りたい……)
切実にそう思った。
しかし、私のモテ期(?)による受難は、まだ始まったばかりだったのだ。
私は呆然と呟いた。
目の前には、国の英雄と謳われる騎士団長ジェラルド・アイアンサイド。
熊をも素手で倒すと噂される屈強な男が、捨てられた子犬のような瞳で私を見上げている。
いや、子犬というよりは、餌を前にした大型肉食獣の目つきだ。
「そうだ! 結婚だ! 私は正気だぞ!」
ジェラルドは私の手を握りしめたまま、熱弁を振るう。
「以前から思っていたのだ。学園の中庭で、アラン殿下を叱責する君の姿……。あの凛とした立ち姿、微動だにしない体幹! まさに武人の鑑!」
「武人ではありませんが」
「そして今! 殿下に婚約破棄を突きつけられながらも、涙一つ見せず、毅然と受け入れるその精神力! 美しい……あまりにも強くて美しいぞ、リーフィー嬢!」
「はあ……」
褒められているのか、何なのか。
とにかく圧がすごい。
握られている手が痛い。
「お、おいジェラルド! 貴様、王族の前だぞ! 何を勝手なことを!」
ようやく再起動したアランが、顔を真っ赤にして怒鳴り声を上げた。
「リーフィーは俺の婚約者だった女だぞ! しかも、ミナをいじめた稀代の悪女だ! そんな女に求婚など、騎士団長としての品位を疑うぞ!」
アランの言葉に、ジェラルドはゆっくりと立ち上がった。
その巨体がアランを見下ろす。
身長差はおよそ頭一つ分。
歴戦の覇気を纏ったジェラルドに睨まれ、アランが「ひっ」と小さな悲鳴を上げて後ずさる。
「殿下。訂正していただきたい」
「な、何をだ……」
「『婚約者だった』。過去形ですね? 貴方は先程、高らかに宣言されたはずだ。『婚約は破棄する』と」
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「ならば、現在のリーフィー嬢は自由な身だ。誰が求婚しようと、貴方に止める権利はないはずですが?」
「ぐぬっ……」
ジェラルドの正論に、アランが言葉を詰まらせる。
「それに、『悪女』とおっしゃいましたが……私の目には、そうは映りませんな」
ジェラルドはチラリと私を見た。
その視線が、私の全身を舐めるように動く。
いやらしい目つきではない。
まるで名刀の品定めをするような、真剣そのものの眼差しだ。
「先程、彼女から放たれた光……あれは、高位の呪いが解けた際のエフェクトに見えましたが?」
「の、呪いだと?」
「ええ。何者かが彼女の魅力を封じ、周囲に悪印象を与える認識阻害をかけていたのでしょう。それが解けた今、ご覧なさい。この神々しさを!」
ジェラルドがバッと腕を広げ、私を指し示す。
会場中の視線が再び私に集中した。
「おお……確かに」
「先ほどまでとは別人のようだ」
「あんなに美しい方が、どうして今まで気づかなかったんだ?」
貴族たちの溜息が漏れる。
特に男性陣の視線が熱い。
呪いが解けた反動なのか、それとも元々のスペックが高すぎたのか、今の私はどうやら異常なほど人の目を惹きつけてしまうらしい。
アランもまた、私を凝視していた。
その瞳が揺れている。
「ま、待てよ……。よく見れば、確かに……いや、かなり……好み、かも……」
アランがボソボソと呟き、ふらふらと私に近づこうとする。
「リーフィー……。その、なんだ。さっきの発言は、少し感情的になりすぎたかもしれない。一度、冷静になって話し合わないか?」
「は?」
何を言っているんだ、この男は。
さっきまで「冷酷な悪女」と罵っていたくせに、見た目が変わった途端これだ。
呆れを通り越して感心するレベルの浅はかさである。
しかし、私が口を開く前に、ジェラルドが動いた。
ドンッ!
「うわっと!?」
ジェラルドがさりげなく、しかし強固な壁のようにアランの前に立ちはだかったのだ。
「おっと、殿下。近づかないでいただきたい」
「ど、どけジェラルド! 俺はリーフィーと話がしたいんだ!」
「お断りします。貴方は彼女を捨てた。その事実は覆らない。捨てた宝石を、輝き出したからといって拾い直そうなど……男として、あまりにも見苦しい!」
「き、貴様ぁ……っ!」
「それに、今の彼女は私の求婚対象だ。手出しはさせん!」
ジェラルドが腰の剣に手をかける素振りを見せる。
会場がどよめいた。
騎士団長が、王族相手に本気で威圧している。
本来なら不敬罪ものだが、今の空気は完全にジェラルドと私に味方していた。
「す、素敵……」
「ジェラルド様、男らしいわ……」
「それに比べて殿下は……」
令嬢たちのささやき声が聞こえる。
アランの顔色が青から赤、そして土色へと変わっていく。
その横で、ミナが金切り声を上げた。
「ちょっと! アラン様! 何よあの女! 騙されちゃダメよ! きっと妖術か何かを使ってるのよ!」
ミナがアランの腕を引っ張るが、アランの視線は私に釘付けだ。
「うるさいなミナ! 少し黙っていろ!」
「えっ……? アラン様……?」
ミナがショックを受けた顔をする。
泥沼だ。
見ていて痛々しいほどの泥沼劇だ。
私は頭痛をこらえるようにこめかみを押さえた。
「あの、ジェラルド様」
「なんだ! 式の日取りか!? 私はいつでも構わんぞ! 明日でもいい!」
「違います。少し落ち着いてください」
私は努めて冷静に言葉を紡ぐ。
「突然の求婚、光栄ではありますが……私は今、婚約破棄されたばかりの身です。そのようなスキャンダルの渦中にある女を妻にすれば、騎士団長としての立場に傷がつきます」
我ながら完璧な断り文句だ。
相手の立場を慮った、大人の対応。
これで引き下がってくれれば御の字だが。
しかし、ジェラルドはニカッと白い歯を見せて笑った。
「ハッハッハ! 何を言うかと思えば! 私の立場など、君の価値に比べれば埃のようなものだ!」
「……はい?」
「それに、スキャンダル? 上等だ! 『捨てられた悲劇の令嬢を救った英雄』として、むしろ株が上がるというもの! 何も問題はない!」
「ポジティブですね……」
「さあ、この手を取ってくれ! 君を一生大切にする! 毎朝、君と剣の稽古をするのが私の夢なんだ!」
「稽古はしません」
会話が噛み合わない。
この人、筋肉で思考しているのではないだろうか。
私が困惑していると、不意に会場の空気が変わった。
肌が粟立つような、魔力の奔流を感じる。
「おやおや、随分と賑やかですねぇ」
ねっとりとした、しかし耳心地の良い声が響いた。
ジェラルドがピクリと眉を動かし、視線を鋭くする。
「……チッ。面倒な奴が来たな」
群衆が割れ、一人の男が優雅に歩み寄ってくる。
銀色の長い髪を緩く束ね、片眼鏡(モノクル)をかけた知的な美青年。
宮廷魔導師筆頭、サイラスだ。
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サイラスは私の前で足を止めると、興味深そうに目を細めた。
「へぇ……。遠くから妙な魔力変動を感じて来てみれば。これはこれは」
彼は私の顔を覗き込み、そして足元に落ちている変色した指輪を拾い上げた。
「なるほど。『認識阻害』に『魅了反転』、さらには『思考誘導』まで組み込まれた複合呪装具ですか。こんなエゲつない代物を、よくもまあ長年身につけていられましたね」
サイラスは指輪を弄びながら、感心したように私を見た。
「普通なら精神が崩壊して廃人コースですよ。それを耐え抜いたばかりか、呪いが解けた瞬間に魔力を暴走させることもなく制御している」
「え、あの……」
「素晴らしい」
サイラスが、ジェラルドとは違う種類の熱を帯びた瞳で私を見る。
それは研究対象を見るマッドサイエンティストの目だ。
「リーフィー嬢、でしたか? 貴女、魔導師としての素質が異常に高いですよ。どうです? 脳筋の騎士団長より、知的な僕と一晩中『魔力のパス』を繋いでみませんか?」
「……は?」
「あ、誤解しないでくださいね。卑猥な意味ではなく、純粋な魔力の探求ですよ? まあ、結果的に気持ち良くなるかもしれませんが」
「貴様サイラス! リーフィー嬢に何を吹き込んでいる!」
ジェラルドが激昂する。
「おや、ジェラルド団長。独り占めはいけませんよ。これほどの逸材、国の財産として共有すべきだ」
「共有だと!? ふざけるな!」
「ふふ、怖い怖い」
騎士団長と宮廷魔導師。
国の二大巨頭が、私を挟んで睨み合う。
その後ろでは、まだアランが「俺のリーフィーだぞ!」と喚き、ミナが泣き叫んでいる。
周囲の貴族たちは、もはや面白がって事の成り行きを見守っている状態だ。
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