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「リーフィー様。本日の『求婚者リスト』の更新分です」
「……ありがとう、マリー。そこ(暖炉)に捨てておいて」
バーベナ侯爵邸、私の自室。
アラン殿下が門前払いを食らってから数日。
我が家の包囲網は、日に日に厚みを増していた。
ジェラルド団長とサイラス様が交互に(あるいは同時に)現れては、父と漫才のような攻防を繰り広げているおかげで、他の有象無象の求婚者たちは恐れをなして遠巻きに見ているだけになっていた。
だが、平和とは程遠い。
「はぁ……。静かに読書もできないわ」
私がティーカップを置いた、その時だった。
ドォォォォォン!!
屋敷が揺れた。
また爆発音だ。
「またサイラス様!? 今度は何の実験!?」
「いいえ、違います!」
マリーが窓の外を見て絶叫した。
「正面玄関のバリケードが……象に突破されました!」
「は?」
象?
この国に象などいないはずだ。
私が慌てて窓から身を乗り出すと、そこには信じられない光景が広がっていた。
巨大な戦象に乗った一団が、父が築いた土嚢の山を軽々と踏み越えて庭に侵入してくるところだった。
先頭を行く象の背には、煌びやかな輿(こし)が乗せられている。
掲げられている旗は、赤地に金の獅子。
「あれは……隣国、ガルガディア帝国の紋章!?」
武力と覇権主義で知られる軍事国家だ。
「なぜ帝国がうちに!?」
私が呆然としている間に、象は玄関ホールの目前で停止した。
輿のカーテンが乱暴に開けられ、一人の男が飛び降りた。
着地と同時に、地面がヒビ割れる。
燃えるような赤髪、野性的な褐色の肌、そして不敵な笑みを浮かべた唇。
全身から「俺様」オーラを垂れ流しているその男は、私のいる2階の窓を正確に見上げ、ニヤリと笑った。
「見つけたぞ! 噂の『光る女』!」
男の声は、拡声魔法も使っていないのに、ビリビリと空気を震わせた。
「お父様! 迎撃して!」
私が叫ぶと、庭の植え込みから父が飛び出した。
「何奴だ! 我が敷地に土足で……いや、土足の象で踏み込むとは!」
父がサーベルを構える。
しかし、男は父を一瞥しただけで鼻で笑った。
「退け、小物が。俺は女に用がある」
「なんと無礼な! 名を名乗れ!」
「俺か? 俺はレオナルド・ガルガディア。帝国の次期皇帝だ」
「なっ……!?」
父が硬直した。
レオナルド皇太子。
若くして数々の戦場を駆け抜け、「戦鬼」の異名を持つカリスマ皇太子。
現在、この国へは極秘視察に来ていると噂されていたが、まさか我が家の庭にいるとは。
「こ、皇太子殿下が何のご用で……」
「用? 決まっているだろう」
レオナルドは、2階にいる私を指差した。
「あの女を貰いに来た。俺の国へ連れて帰る」
「はあああ!?」
私と父の声が重なった。
「何を勝手なことを! 娘は物ではありません!」
「細かいことは気にするな。俺の第18側室にしてやる。光栄に思え」
「18番目!? お断りです!」
私が窓から叫ぶと、レオナルドは意外そうに目を丸くした。
「ほう? 断るのか? この俺の誘いを?」
彼は楽しそうに唇を舐めた。
「面白い。俺の国では、俺の言葉は法律だ。女たちが列をなして俺の寝所に這ってくるというのに」
「ここは貴方の国ではありません! お引き取りください!」
「気が強い女は嫌いじゃない。むしろ、征服欲をそそられる」
レオナルドは指をパチンと鳴らした。
すると、象の背に乗っていた従者たちが、巨大な箱を降ろし始めた。
中から出てきたのは、山のような金銀財宝と、見たこともない珍獣の剥製、そしてなぜか生きた虎。
「結納品だ。この屋敷ごと買い取ってやってもいいぞ?」
「いりません! 特に虎は!」
「ふん、遠慮するな。……おい、お前ら! その女を連れてこい!」
レオナルドが部下に命じる。
強引すぎる。
拉致だ。これは求婚ではなく拉致だ。
「させるかァァァ!!」
父が突撃しようとするが、レオナルドの護衛たちに阻まれる。
「くそっ、多勢に無勢か……!」
絶体絶命。
そう思った時だった。
「待て待て待てぇぇぇい!!」
「おやおや、野蛮な客人が来たものですね」
左右から、二つの影が飛び出してきた。
「ジェラルド様! サイラス様!」
いつものストーカー……じゃなくて、求婚者コンビだ。
ジェラルドは大剣を抜き放ち、レオナルドの前に立ちはだかった。
「帝国の皇太子殿下とお見受けする! だが、この国の淑女を力ずくで連れ去るとは、騎士道に反するぞ!」
サイラスは空中に浮遊し、杖を構えている。
「外交問題になりますよ、殿下。それに、彼女は僕の研究対象(パートナー)候補だ。横取りは感心しませんね」
レオナルドは二人を見て、興味深そうに眉を上げた。
「ああん? 誰だテメェらは」
「王国騎士団長、ジェラルド・アイアンサイド!」
「宮廷魔導師筆頭、サイラス・ヴァーミリオンです」
「へぇ……。この国の『双璧』ってやつか」
レオナルドは嬉しそうに笑った。
その笑顔は、獲物を見つけた猛獣のそれだ。
「いいぜ。女一人を奪うのに、雑魚ばかりじゃ退屈だと思ってたところだ」
彼は腰に差していた湾刀(シミター)を抜いた。
「俺に勝てたら、諦めて帰ってやるよ。だが、俺が勝ったら女は俺のものだ」
「上等だ! 受けて立つ!」
ジェラルドが剣を構える。
「やれやれ、野蛮ですね。でも、売られた喧嘩は買いますよ」
サイラスの周囲に魔法陣が展開される。
「ちょ、ちょっと待って!!」
私は窓から身を乗り出して叫んだ。
「私の庭で戦争をしないでください! 花壇が! あと私の人権は!?」
「安心しろリーフィー! 君は俺が守る!」
「君を他国へはやらせませんよ。君の魔力データは国家機密ですからね」
「ガハハ! 喚くな女! 強いオスが勝つ、それが自然の摂理だ!」
誰も私の話を聞いていない。
三人の男たちが、一触即発の空気で睨み合う。
庭の空気は、バチバチと火花が散るほどに張り詰めていた。
(……どうしてこうなったの?)
アラン殿下という「お子様」がいなくなったと思ったら、今度は「筋肉(ジェラルド)」と「変態(サイラス)」と「野獣(レオナルド)」の三つ巴。
難易度が上がっている気がするのは私だけだろうか。
「いざ、尋常に……!」
「始め!」
誰かの掛け声とともに、三つの強大な力が衝突しようとした瞬間。
「そこまでになさい!!」
凛とした声が響き渡り、上空から白い光の矢が三人の間に突き刺さった。
ドォォォォン!!
三人が慌てて飛び退く。
「な、なんだ!?」
煙の向こうから現れたのは、優雅なドレスを身に纏い、扇子を手にした美しい女性。
アラン殿下の母、王妃陛下その人だった。
「……王妃様!?」
「げっ、陛下……」
「ババア、誰だ?」
レオナルドの失言に、王妃様のこめかみに青筋が浮かんだ。
「あら、帝国の皇太子殿下。他国の庭で『ごっこ遊び』とは、随分と余裕がおありですこと」
王妃様はニコリと笑ったが、目は笑っていなかった。
「ここは神聖な『求婚の場』です。暴力で解決しようなど、私の目の黒いうちは許しませんよ」
「チッ……。邪魔が入ったか」
レオナルドが舌打ちをして剣を収める。
ジェラルドとサイラスも、バツが悪そうに武器を下ろした。
王妃様は、2階の私を見上げてウィンクをした。
「リーフィーさん、お待たせしました。……さて、殿方。そんなに元気があり余っているなら、別の方法で決着をつけなさい」
「別の方法?」
三人が首を傾げる。
王妃様は高らかに宣言した。
「明日は祝日。リーフィーさんを連れて、街へ『デート』に行きなさい。三人同時にね」
「「「は?」」」
「そこで誰が一番彼女を楽しませ、守り、相応しい男かを示しなさい。判定はリーフィーさんに委ねます。それで文句はないわね?」
王妃様の提案に、私は絶句した。
「ちょ、王妃様!? 私、そんなこと承諾してませんけど!?」
「あら、いいじゃない。どうせ家にいても彼らがうるさいでしょう? いっそ外で発散させてあげなさい」
王妃様は楽しそうだ。
完全に、面白がっている。
「面白い!」
レオナルドがニカッと笑った。
「デートか。悪くない。俺の魅力でイチコロにしてやる」
「フン、望むところだ。エスコートなら任せろ」
ジェラルドも鼻息を荒くする。
「やれやれ。効率の悪い……。まあ、データ収集の一環として付き合いましょう」
サイラスも眼鏡を光らせて承諾した。
「決まりね!」
王妃様が手を叩く。
「ではリーフィーさん、明日は『地獄のトリプルデート』、頑張ってね!」
「……帰りたぁぁぁい!!」
私は自分の部屋にいながら、思わずそう叫んでいた。
安息の日は、まだ遠い。
「……ありがとう、マリー。そこ(暖炉)に捨てておいて」
バーベナ侯爵邸、私の自室。
アラン殿下が門前払いを食らってから数日。
我が家の包囲網は、日に日に厚みを増していた。
ジェラルド団長とサイラス様が交互に(あるいは同時に)現れては、父と漫才のような攻防を繰り広げているおかげで、他の有象無象の求婚者たちは恐れをなして遠巻きに見ているだけになっていた。
だが、平和とは程遠い。
「はぁ……。静かに読書もできないわ」
私がティーカップを置いた、その時だった。
ドォォォォォン!!
屋敷が揺れた。
また爆発音だ。
「またサイラス様!? 今度は何の実験!?」
「いいえ、違います!」
マリーが窓の外を見て絶叫した。
「正面玄関のバリケードが……象に突破されました!」
「は?」
象?
この国に象などいないはずだ。
私が慌てて窓から身を乗り出すと、そこには信じられない光景が広がっていた。
巨大な戦象に乗った一団が、父が築いた土嚢の山を軽々と踏み越えて庭に侵入してくるところだった。
先頭を行く象の背には、煌びやかな輿(こし)が乗せられている。
掲げられている旗は、赤地に金の獅子。
「あれは……隣国、ガルガディア帝国の紋章!?」
武力と覇権主義で知られる軍事国家だ。
「なぜ帝国がうちに!?」
私が呆然としている間に、象は玄関ホールの目前で停止した。
輿のカーテンが乱暴に開けられ、一人の男が飛び降りた。
着地と同時に、地面がヒビ割れる。
燃えるような赤髪、野性的な褐色の肌、そして不敵な笑みを浮かべた唇。
全身から「俺様」オーラを垂れ流しているその男は、私のいる2階の窓を正確に見上げ、ニヤリと笑った。
「見つけたぞ! 噂の『光る女』!」
男の声は、拡声魔法も使っていないのに、ビリビリと空気を震わせた。
「お父様! 迎撃して!」
私が叫ぶと、庭の植え込みから父が飛び出した。
「何奴だ! 我が敷地に土足で……いや、土足の象で踏み込むとは!」
父がサーベルを構える。
しかし、男は父を一瞥しただけで鼻で笑った。
「退け、小物が。俺は女に用がある」
「なんと無礼な! 名を名乗れ!」
「俺か? 俺はレオナルド・ガルガディア。帝国の次期皇帝だ」
「なっ……!?」
父が硬直した。
レオナルド皇太子。
若くして数々の戦場を駆け抜け、「戦鬼」の異名を持つカリスマ皇太子。
現在、この国へは極秘視察に来ていると噂されていたが、まさか我が家の庭にいるとは。
「こ、皇太子殿下が何のご用で……」
「用? 決まっているだろう」
レオナルドは、2階にいる私を指差した。
「あの女を貰いに来た。俺の国へ連れて帰る」
「はあああ!?」
私と父の声が重なった。
「何を勝手なことを! 娘は物ではありません!」
「細かいことは気にするな。俺の第18側室にしてやる。光栄に思え」
「18番目!? お断りです!」
私が窓から叫ぶと、レオナルドは意外そうに目を丸くした。
「ほう? 断るのか? この俺の誘いを?」
彼は楽しそうに唇を舐めた。
「面白い。俺の国では、俺の言葉は法律だ。女たちが列をなして俺の寝所に這ってくるというのに」
「ここは貴方の国ではありません! お引き取りください!」
「気が強い女は嫌いじゃない。むしろ、征服欲をそそられる」
レオナルドは指をパチンと鳴らした。
すると、象の背に乗っていた従者たちが、巨大な箱を降ろし始めた。
中から出てきたのは、山のような金銀財宝と、見たこともない珍獣の剥製、そしてなぜか生きた虎。
「結納品だ。この屋敷ごと買い取ってやってもいいぞ?」
「いりません! 特に虎は!」
「ふん、遠慮するな。……おい、お前ら! その女を連れてこい!」
レオナルドが部下に命じる。
強引すぎる。
拉致だ。これは求婚ではなく拉致だ。
「させるかァァァ!!」
父が突撃しようとするが、レオナルドの護衛たちに阻まれる。
「くそっ、多勢に無勢か……!」
絶体絶命。
そう思った時だった。
「待て待て待てぇぇぇい!!」
「おやおや、野蛮な客人が来たものですね」
左右から、二つの影が飛び出してきた。
「ジェラルド様! サイラス様!」
いつものストーカー……じゃなくて、求婚者コンビだ。
ジェラルドは大剣を抜き放ち、レオナルドの前に立ちはだかった。
「帝国の皇太子殿下とお見受けする! だが、この国の淑女を力ずくで連れ去るとは、騎士道に反するぞ!」
サイラスは空中に浮遊し、杖を構えている。
「外交問題になりますよ、殿下。それに、彼女は僕の研究対象(パートナー)候補だ。横取りは感心しませんね」
レオナルドは二人を見て、興味深そうに眉を上げた。
「ああん? 誰だテメェらは」
「王国騎士団長、ジェラルド・アイアンサイド!」
「宮廷魔導師筆頭、サイラス・ヴァーミリオンです」
「へぇ……。この国の『双璧』ってやつか」
レオナルドは嬉しそうに笑った。
その笑顔は、獲物を見つけた猛獣のそれだ。
「いいぜ。女一人を奪うのに、雑魚ばかりじゃ退屈だと思ってたところだ」
彼は腰に差していた湾刀(シミター)を抜いた。
「俺に勝てたら、諦めて帰ってやるよ。だが、俺が勝ったら女は俺のものだ」
「上等だ! 受けて立つ!」
ジェラルドが剣を構える。
「やれやれ、野蛮ですね。でも、売られた喧嘩は買いますよ」
サイラスの周囲に魔法陣が展開される。
「ちょ、ちょっと待って!!」
私は窓から身を乗り出して叫んだ。
「私の庭で戦争をしないでください! 花壇が! あと私の人権は!?」
「安心しろリーフィー! 君は俺が守る!」
「君を他国へはやらせませんよ。君の魔力データは国家機密ですからね」
「ガハハ! 喚くな女! 強いオスが勝つ、それが自然の摂理だ!」
誰も私の話を聞いていない。
三人の男たちが、一触即発の空気で睨み合う。
庭の空気は、バチバチと火花が散るほどに張り詰めていた。
(……どうしてこうなったの?)
アラン殿下という「お子様」がいなくなったと思ったら、今度は「筋肉(ジェラルド)」と「変態(サイラス)」と「野獣(レオナルド)」の三つ巴。
難易度が上がっている気がするのは私だけだろうか。
「いざ、尋常に……!」
「始め!」
誰かの掛け声とともに、三つの強大な力が衝突しようとした瞬間。
「そこまでになさい!!」
凛とした声が響き渡り、上空から白い光の矢が三人の間に突き刺さった。
ドォォォォン!!
三人が慌てて飛び退く。
「な、なんだ!?」
煙の向こうから現れたのは、優雅なドレスを身に纏い、扇子を手にした美しい女性。
アラン殿下の母、王妃陛下その人だった。
「……王妃様!?」
「げっ、陛下……」
「ババア、誰だ?」
レオナルドの失言に、王妃様のこめかみに青筋が浮かんだ。
「あら、帝国の皇太子殿下。他国の庭で『ごっこ遊び』とは、随分と余裕がおありですこと」
王妃様はニコリと笑ったが、目は笑っていなかった。
「ここは神聖な『求婚の場』です。暴力で解決しようなど、私の目の黒いうちは許しませんよ」
「チッ……。邪魔が入ったか」
レオナルドが舌打ちをして剣を収める。
ジェラルドとサイラスも、バツが悪そうに武器を下ろした。
王妃様は、2階の私を見上げてウィンクをした。
「リーフィーさん、お待たせしました。……さて、殿方。そんなに元気があり余っているなら、別の方法で決着をつけなさい」
「別の方法?」
三人が首を傾げる。
王妃様は高らかに宣言した。
「明日は祝日。リーフィーさんを連れて、街へ『デート』に行きなさい。三人同時にね」
「「「は?」」」
「そこで誰が一番彼女を楽しませ、守り、相応しい男かを示しなさい。判定はリーフィーさんに委ねます。それで文句はないわね?」
王妃様の提案に、私は絶句した。
「ちょ、王妃様!? 私、そんなこと承諾してませんけど!?」
「あら、いいじゃない。どうせ家にいても彼らがうるさいでしょう? いっそ外で発散させてあげなさい」
王妃様は楽しそうだ。
完全に、面白がっている。
「面白い!」
レオナルドがニカッと笑った。
「デートか。悪くない。俺の魅力でイチコロにしてやる」
「フン、望むところだ。エスコートなら任せろ」
ジェラルドも鼻息を荒くする。
「やれやれ。効率の悪い……。まあ、データ収集の一環として付き合いましょう」
サイラスも眼鏡を光らせて承諾した。
「決まりね!」
王妃様が手を叩く。
「ではリーフィーさん、明日は『地獄のトリプルデート』、頑張ってね!」
「……帰りたぁぁぁい!!」
私は自分の部屋にいながら、思わずそう叫んでいた。
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