妹の彼が好き

なごみ

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幸せのリング

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「昨日、話し合って解消した」


「どうして?   どうして急にそんなことに?」


突然の告白に半信半疑で、まだ喜ぶような心境にはなれなかった。


ひどく落胆させられるような気がして。


「ずっとモヤモヤしていたものはあったんだ。こんなことまで親のいいなりでいていいのかなって。だけど相手も乗り気だし、今更母を悲しませることもないのかなと思ってた。でも、昨日の美姫ちゃんの話を聞いて許せなくなってしまって……」


「フィアンセの彼女には未練はないの?  もう好きではなくなったってこと?」


あんなに綺麗なひとなのに。


「好きなのかどうかもよくわからないんだ。物心ついた時から婚約者だって言われてたから。もちろん嫌いではないんだけど、でも恋愛感情を持ったことは一度もないんだ」


「婚約を解消した理由はわかったけど、でも、……どうしてわたしと?」


「う、うん、なんていうか、その、、早希ちゃんは泣くってイメージがあまりなかったから。昨日、ちょっと驚いてしまって……」


動機が弱すぎる。


お母様に反抗したいだけなんだ。それなのに、わたしを理由にして逃げようとしている。


「わたしが泣いたから同情したと?  そういうこと?」


同情とか憐れみとか、そんなのいらないし。


「いや、そうじゃないよ。そうじゃなくて、、なんかその、グッとくるものがあって、」


「婚約者さんだって泣いてるはずよ。彼女のほうはいいわけ?」


「彼女と母の涙にはもう飽きたんだ。うんざりなんだ。そんな風に泣いたり拗ねたりして、人をコントロールするのって間違ってるよ。これからもずっとそうやって支配されると思うとたまらないんだ」


遠くを見つめながら話す松岡くんは、寂しそうに目を伏せた。


「松岡くん……」


「もちろん早希ちゃんが嫌だったら仕方がないけど、、ダメかな?」


あまりにも現実感が持てなくて、どうすれば良いのかさっぱりわからない。


一度としてモテたことのない身としては当然のこと。


こんなときは、素直にお願いしますと言えばいいの?


半信半疑のまま、返答に悩む。


婚約を解消したということは、フリーになったということだ。


松岡くんにピッタリの、綺麗で聡明なライバルだってたくさん現れそう。


どうしても悪いほうにばかり考えが先走った。


失恋だって、しないよりはしたほうが良かったのではなかったか?


怖いけれど、この幸せを失うことを考えるだけで、とっても怖いけれど、いま逃げたら一生後悔する。



ブラウスの下に隠れていたネックレスのリングにふれた。


「こ、これ、松岡くんがくれたリング。美姫にはピッタリだったけど、わたしの指には入らなくて。でも、、でも、とっても嬉しかった」



「早希ちゃん」




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