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寂しさからの逃避
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*遼介*
沙織にひどく誤解させるような態度をとってしまったことに、罪悪感をおぼえる。
人間関係に不器用すぎる沙織があまりに不憫で、強く拒むことができなかった。
あの性格ではこれからもトラブル続出の人生を送るハメになるだろう。
いつも一人ぽっちで、少しも楽しくなさそうな沙織をみていると、なんとかしてあげたい気持ちになるけれど。
ーーそれだけではなかったかも知れない。
もう彩矢ちゃんのことを忘れたくて、いつまでも未練がましい自分が惨めで、沙織に逃げたい気持ちがあった。
だけど、付き合ってから結婚に至ることまで考えると、やはり同情だけでは無理がある。
不器用だけれど率直で嘘がない沙織は、愛おしく思えないこともないけれど。
この先、誰と付き合ってみたところで、彩矢ちゃんを想うような気持ちには、もうなれない気がする。
あの頃は俺も若かったからだろう。
もう、あんな風には誰も愛せない。
食堂で昼食をとった後、レントゲン室に戻り、いつものように橋本と世間話をしていたところに沙織が顔をだした。
「お邪魔しま~す!」
そっとドアを開け、窺うようないたずらっぽい目をして俺たちをみつめた。
そのお茶目ぶりを橋本がどう思ったかは知らないが、いい年をして未だにかわい子ぶってる沙織に不快感を覚えた。
もう28歳になるはずだ。
男の俺でもそう感じるということは、同性の女はもっとシビアに見るだろう。
「沙織さん! なんか、お久しぶりですっ!」
橋本の顔が嬉しそうにパッと輝いた。
「橋本く~ん、元気だった? 先月まで私、すご~く体調わるかったの」
「今は大丈夫なんですか? 沙織さん、ちっとも来てくれなくなっちゃったから寂しかったなぁ」
LINEの返信をしなかったことを怒っているのか、冷めた視線に気づいたからか、沙織はわざと俺を無視しているようにみえた。
「そんな嬉しいこと言ってくれるのって、この病院で橋本くんだけよ。みーんな私には意地悪で冷たいの」
沙織は嫌味ったらしく俺をにらんだ。
「冷たいって誰のことだよ。もしかして俺のことか?」
誕生祝いまでしてやったっていうのに。
沙織は率直だから、俺もあまり気を使わずに思ったことを口にする。
「自覚してるなら病棟の連中より少しはマシね。ねぇ、今日ってなんか用事あった? どこかでごはん食べて、ボーリングにでも行かない?」
「あ、それ、いいすっね!」
橋本が期待感を持って俺を見つめた。
「二人で行けよ。俺はこの間、沙織の誕生日を祝ってやったから、今日は遠慮しておく」
橋本に秘密を持ちたくなかった。
「そ、そうだっんですか。知らなかったな、沙織さんの誕生日。祝ってあげられなくてすみません」
正直にさりげなく伝えたつもりだったが、なんとなく不穏な空気が流れた。
「いいのよ、佐野さんは。私との賭けに負けたから仕方なく奢ってくれたの。お祝いをしてくれる気持ちなんて全然なかったの。橋本くん、二人で行きましょう。誕生日のやり直ししてよ~~! もう、最悪な誕生日だったんだから」
先日の不愉快なことを思い出したようで、顔をしかめた。
「えっ、いいですけど。で、でも、、いいんですか? 佐野さんが行かなくても」
「いいに決まってるじゃない。佐野さんなんて、いつだってお説教みたいな話しかしないんだもん。つまらないわ」
沙織は俺とは目も合わせずにそう言った。
この間は ” 忘れられるまで、いつまでも待ってる ” などと、言っていたくせに。
橋本が沙織と仲良くなってくれるなら、それが一番いいとは思っていた。
なのに沙織にあっさりと拒否されて、少し気分が悪くなった。
あいつの言ったことなど、本気にしていたわけでもないのに……。
「じゃあ、橋本く~ん、6時に駐車場で待ってるね!」
沙織はわざとらしく浮かれたようすで、レントゲン室を出て行った。
橋本は俺と沙織の間に微妙な何かがあったことに気づいたようだ。
「あ、あの、佐野さん、沙織さんとなんかあったんですか?」
「なにもないよ。誕生日を祝ってやっただけだよ。……ただ」
「ただ? 何かあったんですか?」
少し言葉に詰まる。橋本になら言ってもいいだろう。
「食事中に沙織、隣のテーブルの女に水をぶっかけられたんだ。彼氏に色目を使ったって怒鳴られて……」
「ほ、本当ですか? 」
「その彼氏も沙織をジロジロとみていたから、沙織だけが悪いわけじゃないんだけど、必要以上に愛嬌を振りまいたりなんかするから、相手の女がとうとうキレてしまって」
「……沙織さんは悪気があってしてるわけじゃないんです。ただ、先のことまでは予測が出来ないっていうか、なんて言うのかな、、」
「だから、空気が読めないんだろ。一種の病気だな。かわいそうではあるけど、誰にも理解はしてもらえない。これからもトラブル続きの人生なのかと思うと、なんだかな……」
「佐野さんなら理解してあげられますよね、沙織さんのこと。もしかして、僕に遠慮してるんですか?」
少しムッとしたように橋本は言った。
「遠慮なんかしてないよ。俺とはケンカになることが多いから、橋本の方がいいと思うんだ。だけど、年下はどうのこうのって沙織が言うから……」
「年のことはこじつけですよ。本当の理由は佐野さんが好きだからでしょ。沙織さんには幸せになってもらいたいから、僕は大丈夫なんで、変に気を遣わないで欲しいんです」
少し落胆したように橋本は呟いた。
「気を遣ってるわけではないんだ。俺……離婚したばかりで言うのもなんだけど、もうずっと前から好きな女がいるんだ。片思いなんだけどな。だから……」
「意外ですね。佐野さんが片思いなんて。告白してみたらいいじゃないですか。断る女性なんていないでしょ」
「結婚している人なんだ。だから諦めないといけないことはわかってる。でも今は沙織とどうにかなりたいって気持ちにはなれない。いくらあいつが可哀想でも。この先、好きになれるかどうか自信もないんだ」
彩矢ちゃんのことを早く忘れたくても、こんな気持ちで誰かと付き合っても、楽しい気分にはなれないだろう。
「なんか上手くいきませんね、人生って。じゃあ、今日は沙織さんと二人で食事に行ってもかまいませんか?」
「当たり前じゃないか。俺たちは別に付き合ってるわけじゃないんだから。沙織のこと頼むよ」
少しも残念な気持ちがなかったと言えば嘘になる。でも、橋本と仲良くしてくれるならそれが一番いいと思った。
先月発寒のアパートから、今の職場に近い北区のアパートへ引っ越した。
近くにコンビニがあり、彩矢ちゃんの実家にも、歩いて行けそうなほど近い。
以前より更に狭い、1LDKのアパート。
それでも札幌の中心部に近いだけあって、家賃は以前のところよりは高く、月々の駐車料も発生する。
休日の日曜日。
なんの予定もなく、まだ片付けられていないダンボールを開ける。
自炊などほとんどしないから、鍋も食器も全部持っていっていいと言ったのに、 ” ちゃんとやったほうがいいよ ” と有紀は、申し訳なさそうにうつむいた。
そして、ひと通りの調理器具を置いていった。
使うのはせいぜいヤカンとフライパンくらいなのに。
ダンボールから片手鍋などを出して、シンクの下へ収めた。
ゴムベラや泡立て器、芋をつぶすマッシャーまである。こんなもの使わねぇーし。
ひとりぼっちの引っ越しの侘しさをしみじみと感じる。
有紀との引っ越しは希望に満ちあふれていた。部屋のレイアウトはほとんど有紀が決めていたけれど、なんと幸せな時間だったことか。
ダンボールの荷ほどきも、面倒な家具の組み立てさえも、楽しく感じられたほどだ。
今は急いで使わないものが入れられたダンボールが、未だに寝室の隅に積み重なっている。
何もやる気がおこらない。
彩矢ちゃんへの望みがなくなった今、無気力は更にひどくなったように感じる。
これからもずっと、こんな虚しい毎日を過ごしていかなければならないのか。
ダンボールを二つ片付けただけで、やる気がなくなり、どさりとベッドへ横になった。
本を読む気にさえならない。
動画を見ることも、ゲームさえもつまらなく感じて目を閉じる。
少しウトウトしていたのだろうか、インターホンの音で目がさめた。
目覚まし時計をみると午後5時を過ぎていた。
宅配かな? なにも買った覚えはないけれど。
インターホンの画面を覗くと、若い男女が映っていた。
よく見ると沙織と橋本だった。
いくら寂しくて暇でも、ちょっとウンザリした。また沙織がよけいな気遣いをして、俺を励まそうとでも思ったのか。
インターホンには出ずに、玄関のドアを開けた。
「どうしたんだよ? 急に」
かなり無愛想に二人を見つめた。
「プッ、なあに、その髪、寝てたの? ウハハハッ、」
沙織が吹きだして笑い転げた。
「すみません、突然来ちゃって。沙織さんがすき焼きが食べたいって。お店より家で食べた方が安あがりで楽しいから、佐野さんのアパートへ行こうかって話になっちゃって、、迷惑でしたか?」
スーパーの袋を両手にさげた橋本が、恐縮して言った。
「まぁ、とにかく入れよ。何もないけど」
有紀が置いていってくれた客用のスリッパを出す。
「お邪魔しまーす! わぁ~ きれいにしてるぅ!」
テレビとソファにテーブルの、殺風景なリビングを、沙織はご機嫌なようすで見まわしている。
「立ってないで座れよ。コーヒーでいいか?」
ソファを指さし、突っ立っている橋本に声をかけた。
「あ、すみません。じゃあ、遠慮なく」
橋本はレジ袋をキッチンの床に置いてソファに腰かけた。
「あ、私はブラックでいいわよ」
沙織はそう言って、隣の寝室まで無遠慮にのぞいている。
「ジロジロ見るなよ!」
寝室を隔てている引き戸をぴしゃりと閉めた。
「じゃあ、そろそろ作ろっかな。ザルとかボールってどこ?」
おもむろに不快感をしめしても、少しも気づいていないようにみえる沙織にムッとする。
アイスブルーのカットソーに、白いレースのマーメードスカートを身につけた沙織は、いつにも増して美しくみえた。
沙織はなにを着ても似合う。
「その辺を適当に開ければ入ってるよ。なにか手伝うことあるか?」
「ううん、お鍋ぐらいなら作れるわ。お野菜やお豆腐を切ればいいだけだから」
レジ袋から長ネギやしらたきなどを取りだして、意外と手際よく準備をはじめた。
馴れた手つきで白菜を切っている沙織をちょっと見なおす。
お料理は彩矢ちゃんより上手かも知れない。
それとも二児の母になった彩矢ちゃんは、料理の腕も上がっただろうか。
狭いキッチンに二人も立つスペースもないので、料理は沙織に任せた。
二十分ほどですき焼きの匂いがしてきた。
有紀がカセットコンロを置いていってくれたので、助かった。
橋本たちは、独身の男所帯には食器など揃えてないと判断したのか、使い捨てドンプリまで用意していた。
「よく気がついたな。皿しかないから助かったよ」
使い捨てどんぶりに卵を割り入れながら、沙織を見つめた。
「だって後かたづけが面倒じゃない。もう、お肉煮えてるよ、、早く食べよう」
フライパンで作ったすき焼きは、中々美味しかった。
「沙織さん、すごく美味しいです! お店で食べるより」
橋本は沙織の作った手料理に感激しているようだった。
「でしょう。うーん、最高! 私って天才かもね~!」
「すき焼きのタレを入れただけだろう。誰が作っても同じ味じゃないか」
ビールを飲みながら嫌味を言った。素直に褒めてあげられないのは何故なんだろう。
「ほらね、佐野さんってとっても意地悪なの。良いことをしてもちっとも褒めないくせに、少しのミスには目くじらを立てるのよね。病棟の連中と同じなんだから」
嫌なことを思い出したかのように、沙織は不快な顔をした。
「使い捨てどんぶりのことは褒めただろ。貶してばかりなんていないよ」
うまく逃げて、シメの茹でうどんを入れた。
「本質的に優しくないのよ、佐野さんは。橋本くんとは全然ちがう」
優しくないなどと言われたのは初めてだった。自分は誰に対してもそこそこ優しい人間だと思っていた。
沙織の指摘はあながち間違ってはいないような気もする。有紀が離れていったのも、結局は俺の心の狭さからだろう。
「だから、橋本みたいないい奴はいないって言ってるだろう。俺は普通の人間だからな。病棟の連中と同じで結構だよ」
少し不貞腐れてグラスのビールを飲み干した。
「あら? 怒ったの? 」
「別に怒ってないよ。おまえから優しい人なんて思われたら、いいように利用されて大変だからな、橋本みたいに」
「僕は別に利用されてるなんて思ってないです。今日だって暇だったけど、沙織さんが海が見たいって誘ってくれて、嬉しかったな」
少し照れたようにはにかんで橋本が言った。
橋本の率直な物言いに、沙織は少し戸惑っているように見えた。
優しいうえに素直なところまで俺とは違うな。
誰よりもいい男なのに。
沙織は俺のような欠点の多いものに、共感でもしているのだろうか。
同じ弱さを持つものにしか分かり合えない、寂しさや哀しみというものがあるのかも知れない。
〆のうどんも美味しく食べ終わり、イカの珍味やナッツなどをかじりながら、沙織と二人でビールやチューハイをたらふく飲んだ。
橋本は車の運転があるからと、ノンアルコールのビールとチューハイを飲んでいた。
「悪いな、俺たちだけで飲んで」
「気にしないでください。僕は付き合いで飲むくらいで、普段から飲まないので平気なんです」
はじめは二人の訪問を鬱陶しく感じていたけれど、三人で楽しく食べたり飲んだりしているうちに、さっきまでのふさいだ気分が軽くなったような気がする。
今日は沙織のおせっかいに救われたんだな。橋本と楽しくふざけあっている沙織が、なんとも言えず、かわいらしく見えた。
「沙織さん、そろそろ帰りませんか?」
たった一人しらふの橋本が、ソファの肘掛けにもたれてウトウトしだした沙織に言った。
「まだ10時じゃないの。夜はこれからよ~! そうだったわね、橋本くんは飲んでなかったのね、、車なんて置いていきなさいよ。明日取りに来ればいいでしょ。朝まで飲むよう!」
沙織はうつろな目でそう叫ぶと、またチューハイのグラスに口をつけた。
「マジですか、、」
橋本は言葉をなくしてうなだれる。
沙織は威勢のいいことを言っておきながら、とろんと据わった目をしてソファに横たわった。
「沙織、寝るな! もう帰れよ」
酒癖の悪かったことを思い出し、慌てて沙織をゆり起こす。
「わかってる~、10分たったら起こして」
「ダメだって、寝るなよ、早く帰れ!」
強く揺さぶっても沙織は起きあがらない。
まったく世話のやける女だ。ため息が出る。
本当に寝ているのか?
「佐野さん、悪いんですけど僕は帰ってもいいですか? ちょっと朝までは付き合えなくて」
「はぁ? 俺のアパートへ置いていくって言うのか? それはマズいだろ、ちゃんと連れて帰ってくれよ。少し寝かせたら酔いも覚めるだろ」
少し気まずそうに橋本は言う。
「でも、ぐっすり寝てますし、起こすの可哀想だから……」
「だからって普通おいていかないだろう。好きな女を男のアパートに」
「……沙織さんは佐野さんのことで頭がいっぱいで、僕の入り込める余地なんてないです。二人っきりになりたいのかも知れないのに、僕がいつまでも居座ってるのって、ちょっと」
沙織に聞こえないように橋本はヒソヒソと言った。
「そんなことないって、連れてってくれよ……」
「どうするのかは二人で決めてください。僕のことは気にしないで」
少し未練をにじませながらも、迷いを振り切るように橋本は出ていった。
ソファで寝息をたてている沙織に呆れる。
いつもこんな風に飲み過ぎて、男のアパートなどに泊まっているのだろうか。
いくら美人でも、そんな節操のない女などごめんだ。
エビのように体を曲げて、横たわっている沙織に肌掛け布団をかけた。
可愛らしい寝顔に少し胸がときめいた。
思わぬ展開にすっかり酔いも覚めてしまった気分になり、パジャマに着替えて自分もさっさとベッドにもぐり込んだ。
すぐに眠りにつき、真夜中の2時過ぎにトイレに起きた。
沙織はまだソファで寝ていた。
トイレから戻ると沙織が起きて、髪を手ぐしで整えていた。
「沙織、大丈夫か? 」
「うん、ごめんなさい。わたし帰るわ」
うつろな目をして沙織がつぶやく。
「朝まで寝てていいぞ。今だと飲酒運転で捕まるからな。朝早く送ってやるよ」
「いいわ、大丈夫。タクシーで帰る」
沙織はそう言ってヨロヨロと立ちあがった。
「まだ、フラフラしてるじゃないか。朝まで寝てろって、俺はなにもしないから安心しろ」
「………やっぱり帰る」
沙織はハンガーから薄手のジャケットをはずした。
手に力が入らないのか、ジャケットの袖に腕を通せずにいる。
「危ないから泊まっていけって」
「大丈夫」
やっと袖を通して玄関へむかう。
「じゃあ、タクシー呼んでやるから、ちょっと待ってろよ」
「外で拾うからいい」
さっきまで酔いつぶれて寝てしまった沙織を疎ましく思っていたのに、なぜか引き止めたくなる。
「なに心配してんだよ。なにもしないって言ってるだろう」
「なにもしてくれないから帰るわよっ!」
「は? ……な、なに言ってるんだよ、おまえ」
ボロボロ泣きながら沙織は玄関のドアを開けた。
「沙織、待てって!」
沙織の腕をつかんで、強く抱きしめた。
「帰るなよ、頼むからいてくれよ」
「……佐野さん?」
涙ぐんで俺をみつめる沙織が愛おしくなり、思わずキスをした。
「おまえが好きだよ、沙織」
沙織にひどく誤解させるような態度をとってしまったことに、罪悪感をおぼえる。
人間関係に不器用すぎる沙織があまりに不憫で、強く拒むことができなかった。
あの性格ではこれからもトラブル続出の人生を送るハメになるだろう。
いつも一人ぽっちで、少しも楽しくなさそうな沙織をみていると、なんとかしてあげたい気持ちになるけれど。
ーーそれだけではなかったかも知れない。
もう彩矢ちゃんのことを忘れたくて、いつまでも未練がましい自分が惨めで、沙織に逃げたい気持ちがあった。
だけど、付き合ってから結婚に至ることまで考えると、やはり同情だけでは無理がある。
不器用だけれど率直で嘘がない沙織は、愛おしく思えないこともないけれど。
この先、誰と付き合ってみたところで、彩矢ちゃんを想うような気持ちには、もうなれない気がする。
あの頃は俺も若かったからだろう。
もう、あんな風には誰も愛せない。
食堂で昼食をとった後、レントゲン室に戻り、いつものように橋本と世間話をしていたところに沙織が顔をだした。
「お邪魔しま~す!」
そっとドアを開け、窺うようないたずらっぽい目をして俺たちをみつめた。
そのお茶目ぶりを橋本がどう思ったかは知らないが、いい年をして未だにかわい子ぶってる沙織に不快感を覚えた。
もう28歳になるはずだ。
男の俺でもそう感じるということは、同性の女はもっとシビアに見るだろう。
「沙織さん! なんか、お久しぶりですっ!」
橋本の顔が嬉しそうにパッと輝いた。
「橋本く~ん、元気だった? 先月まで私、すご~く体調わるかったの」
「今は大丈夫なんですか? 沙織さん、ちっとも来てくれなくなっちゃったから寂しかったなぁ」
LINEの返信をしなかったことを怒っているのか、冷めた視線に気づいたからか、沙織はわざと俺を無視しているようにみえた。
「そんな嬉しいこと言ってくれるのって、この病院で橋本くんだけよ。みーんな私には意地悪で冷たいの」
沙織は嫌味ったらしく俺をにらんだ。
「冷たいって誰のことだよ。もしかして俺のことか?」
誕生祝いまでしてやったっていうのに。
沙織は率直だから、俺もあまり気を使わずに思ったことを口にする。
「自覚してるなら病棟の連中より少しはマシね。ねぇ、今日ってなんか用事あった? どこかでごはん食べて、ボーリングにでも行かない?」
「あ、それ、いいすっね!」
橋本が期待感を持って俺を見つめた。
「二人で行けよ。俺はこの間、沙織の誕生日を祝ってやったから、今日は遠慮しておく」
橋本に秘密を持ちたくなかった。
「そ、そうだっんですか。知らなかったな、沙織さんの誕生日。祝ってあげられなくてすみません」
正直にさりげなく伝えたつもりだったが、なんとなく不穏な空気が流れた。
「いいのよ、佐野さんは。私との賭けに負けたから仕方なく奢ってくれたの。お祝いをしてくれる気持ちなんて全然なかったの。橋本くん、二人で行きましょう。誕生日のやり直ししてよ~~! もう、最悪な誕生日だったんだから」
先日の不愉快なことを思い出したようで、顔をしかめた。
「えっ、いいですけど。で、でも、、いいんですか? 佐野さんが行かなくても」
「いいに決まってるじゃない。佐野さんなんて、いつだってお説教みたいな話しかしないんだもん。つまらないわ」
沙織は俺とは目も合わせずにそう言った。
この間は ” 忘れられるまで、いつまでも待ってる ” などと、言っていたくせに。
橋本が沙織と仲良くなってくれるなら、それが一番いいとは思っていた。
なのに沙織にあっさりと拒否されて、少し気分が悪くなった。
あいつの言ったことなど、本気にしていたわけでもないのに……。
「じゃあ、橋本く~ん、6時に駐車場で待ってるね!」
沙織はわざとらしく浮かれたようすで、レントゲン室を出て行った。
橋本は俺と沙織の間に微妙な何かがあったことに気づいたようだ。
「あ、あの、佐野さん、沙織さんとなんかあったんですか?」
「なにもないよ。誕生日を祝ってやっただけだよ。……ただ」
「ただ? 何かあったんですか?」
少し言葉に詰まる。橋本になら言ってもいいだろう。
「食事中に沙織、隣のテーブルの女に水をぶっかけられたんだ。彼氏に色目を使ったって怒鳴られて……」
「ほ、本当ですか? 」
「その彼氏も沙織をジロジロとみていたから、沙織だけが悪いわけじゃないんだけど、必要以上に愛嬌を振りまいたりなんかするから、相手の女がとうとうキレてしまって」
「……沙織さんは悪気があってしてるわけじゃないんです。ただ、先のことまでは予測が出来ないっていうか、なんて言うのかな、、」
「だから、空気が読めないんだろ。一種の病気だな。かわいそうではあるけど、誰にも理解はしてもらえない。これからもトラブル続きの人生なのかと思うと、なんだかな……」
「佐野さんなら理解してあげられますよね、沙織さんのこと。もしかして、僕に遠慮してるんですか?」
少しムッとしたように橋本は言った。
「遠慮なんかしてないよ。俺とはケンカになることが多いから、橋本の方がいいと思うんだ。だけど、年下はどうのこうのって沙織が言うから……」
「年のことはこじつけですよ。本当の理由は佐野さんが好きだからでしょ。沙織さんには幸せになってもらいたいから、僕は大丈夫なんで、変に気を遣わないで欲しいんです」
少し落胆したように橋本は呟いた。
「気を遣ってるわけではないんだ。俺……離婚したばかりで言うのもなんだけど、もうずっと前から好きな女がいるんだ。片思いなんだけどな。だから……」
「意外ですね。佐野さんが片思いなんて。告白してみたらいいじゃないですか。断る女性なんていないでしょ」
「結婚している人なんだ。だから諦めないといけないことはわかってる。でも今は沙織とどうにかなりたいって気持ちにはなれない。いくらあいつが可哀想でも。この先、好きになれるかどうか自信もないんだ」
彩矢ちゃんのことを早く忘れたくても、こんな気持ちで誰かと付き合っても、楽しい気分にはなれないだろう。
「なんか上手くいきませんね、人生って。じゃあ、今日は沙織さんと二人で食事に行ってもかまいませんか?」
「当たり前じゃないか。俺たちは別に付き合ってるわけじゃないんだから。沙織のこと頼むよ」
少しも残念な気持ちがなかったと言えば嘘になる。でも、橋本と仲良くしてくれるならそれが一番いいと思った。
先月発寒のアパートから、今の職場に近い北区のアパートへ引っ越した。
近くにコンビニがあり、彩矢ちゃんの実家にも、歩いて行けそうなほど近い。
以前より更に狭い、1LDKのアパート。
それでも札幌の中心部に近いだけあって、家賃は以前のところよりは高く、月々の駐車料も発生する。
休日の日曜日。
なんの予定もなく、まだ片付けられていないダンボールを開ける。
自炊などほとんどしないから、鍋も食器も全部持っていっていいと言ったのに、 ” ちゃんとやったほうがいいよ ” と有紀は、申し訳なさそうにうつむいた。
そして、ひと通りの調理器具を置いていった。
使うのはせいぜいヤカンとフライパンくらいなのに。
ダンボールから片手鍋などを出して、シンクの下へ収めた。
ゴムベラや泡立て器、芋をつぶすマッシャーまである。こんなもの使わねぇーし。
ひとりぼっちの引っ越しの侘しさをしみじみと感じる。
有紀との引っ越しは希望に満ちあふれていた。部屋のレイアウトはほとんど有紀が決めていたけれど、なんと幸せな時間だったことか。
ダンボールの荷ほどきも、面倒な家具の組み立てさえも、楽しく感じられたほどだ。
今は急いで使わないものが入れられたダンボールが、未だに寝室の隅に積み重なっている。
何もやる気がおこらない。
彩矢ちゃんへの望みがなくなった今、無気力は更にひどくなったように感じる。
これからもずっと、こんな虚しい毎日を過ごしていかなければならないのか。
ダンボールを二つ片付けただけで、やる気がなくなり、どさりとベッドへ横になった。
本を読む気にさえならない。
動画を見ることも、ゲームさえもつまらなく感じて目を閉じる。
少しウトウトしていたのだろうか、インターホンの音で目がさめた。
目覚まし時計をみると午後5時を過ぎていた。
宅配かな? なにも買った覚えはないけれど。
インターホンの画面を覗くと、若い男女が映っていた。
よく見ると沙織と橋本だった。
いくら寂しくて暇でも、ちょっとウンザリした。また沙織がよけいな気遣いをして、俺を励まそうとでも思ったのか。
インターホンには出ずに、玄関のドアを開けた。
「どうしたんだよ? 急に」
かなり無愛想に二人を見つめた。
「プッ、なあに、その髪、寝てたの? ウハハハッ、」
沙織が吹きだして笑い転げた。
「すみません、突然来ちゃって。沙織さんがすき焼きが食べたいって。お店より家で食べた方が安あがりで楽しいから、佐野さんのアパートへ行こうかって話になっちゃって、、迷惑でしたか?」
スーパーの袋を両手にさげた橋本が、恐縮して言った。
「まぁ、とにかく入れよ。何もないけど」
有紀が置いていってくれた客用のスリッパを出す。
「お邪魔しまーす! わぁ~ きれいにしてるぅ!」
テレビとソファにテーブルの、殺風景なリビングを、沙織はご機嫌なようすで見まわしている。
「立ってないで座れよ。コーヒーでいいか?」
ソファを指さし、突っ立っている橋本に声をかけた。
「あ、すみません。じゃあ、遠慮なく」
橋本はレジ袋をキッチンの床に置いてソファに腰かけた。
「あ、私はブラックでいいわよ」
沙織はそう言って、隣の寝室まで無遠慮にのぞいている。
「ジロジロ見るなよ!」
寝室を隔てている引き戸をぴしゃりと閉めた。
「じゃあ、そろそろ作ろっかな。ザルとかボールってどこ?」
おもむろに不快感をしめしても、少しも気づいていないようにみえる沙織にムッとする。
アイスブルーのカットソーに、白いレースのマーメードスカートを身につけた沙織は、いつにも増して美しくみえた。
沙織はなにを着ても似合う。
「その辺を適当に開ければ入ってるよ。なにか手伝うことあるか?」
「ううん、お鍋ぐらいなら作れるわ。お野菜やお豆腐を切ればいいだけだから」
レジ袋から長ネギやしらたきなどを取りだして、意外と手際よく準備をはじめた。
馴れた手つきで白菜を切っている沙織をちょっと見なおす。
お料理は彩矢ちゃんより上手かも知れない。
それとも二児の母になった彩矢ちゃんは、料理の腕も上がっただろうか。
狭いキッチンに二人も立つスペースもないので、料理は沙織に任せた。
二十分ほどですき焼きの匂いがしてきた。
有紀がカセットコンロを置いていってくれたので、助かった。
橋本たちは、独身の男所帯には食器など揃えてないと判断したのか、使い捨てドンプリまで用意していた。
「よく気がついたな。皿しかないから助かったよ」
使い捨てどんぶりに卵を割り入れながら、沙織を見つめた。
「だって後かたづけが面倒じゃない。もう、お肉煮えてるよ、、早く食べよう」
フライパンで作ったすき焼きは、中々美味しかった。
「沙織さん、すごく美味しいです! お店で食べるより」
橋本は沙織の作った手料理に感激しているようだった。
「でしょう。うーん、最高! 私って天才かもね~!」
「すき焼きのタレを入れただけだろう。誰が作っても同じ味じゃないか」
ビールを飲みながら嫌味を言った。素直に褒めてあげられないのは何故なんだろう。
「ほらね、佐野さんってとっても意地悪なの。良いことをしてもちっとも褒めないくせに、少しのミスには目くじらを立てるのよね。病棟の連中と同じなんだから」
嫌なことを思い出したかのように、沙織は不快な顔をした。
「使い捨てどんぶりのことは褒めただろ。貶してばかりなんていないよ」
うまく逃げて、シメの茹でうどんを入れた。
「本質的に優しくないのよ、佐野さんは。橋本くんとは全然ちがう」
優しくないなどと言われたのは初めてだった。自分は誰に対してもそこそこ優しい人間だと思っていた。
沙織の指摘はあながち間違ってはいないような気もする。有紀が離れていったのも、結局は俺の心の狭さからだろう。
「だから、橋本みたいないい奴はいないって言ってるだろう。俺は普通の人間だからな。病棟の連中と同じで結構だよ」
少し不貞腐れてグラスのビールを飲み干した。
「あら? 怒ったの? 」
「別に怒ってないよ。おまえから優しい人なんて思われたら、いいように利用されて大変だからな、橋本みたいに」
「僕は別に利用されてるなんて思ってないです。今日だって暇だったけど、沙織さんが海が見たいって誘ってくれて、嬉しかったな」
少し照れたようにはにかんで橋本が言った。
橋本の率直な物言いに、沙織は少し戸惑っているように見えた。
優しいうえに素直なところまで俺とは違うな。
誰よりもいい男なのに。
沙織は俺のような欠点の多いものに、共感でもしているのだろうか。
同じ弱さを持つものにしか分かり合えない、寂しさや哀しみというものがあるのかも知れない。
〆のうどんも美味しく食べ終わり、イカの珍味やナッツなどをかじりながら、沙織と二人でビールやチューハイをたらふく飲んだ。
橋本は車の運転があるからと、ノンアルコールのビールとチューハイを飲んでいた。
「悪いな、俺たちだけで飲んで」
「気にしないでください。僕は付き合いで飲むくらいで、普段から飲まないので平気なんです」
はじめは二人の訪問を鬱陶しく感じていたけれど、三人で楽しく食べたり飲んだりしているうちに、さっきまでのふさいだ気分が軽くなったような気がする。
今日は沙織のおせっかいに救われたんだな。橋本と楽しくふざけあっている沙織が、なんとも言えず、かわいらしく見えた。
「沙織さん、そろそろ帰りませんか?」
たった一人しらふの橋本が、ソファの肘掛けにもたれてウトウトしだした沙織に言った。
「まだ10時じゃないの。夜はこれからよ~! そうだったわね、橋本くんは飲んでなかったのね、、車なんて置いていきなさいよ。明日取りに来ればいいでしょ。朝まで飲むよう!」
沙織はうつろな目でそう叫ぶと、またチューハイのグラスに口をつけた。
「マジですか、、」
橋本は言葉をなくしてうなだれる。
沙織は威勢のいいことを言っておきながら、とろんと据わった目をしてソファに横たわった。
「沙織、寝るな! もう帰れよ」
酒癖の悪かったことを思い出し、慌てて沙織をゆり起こす。
「わかってる~、10分たったら起こして」
「ダメだって、寝るなよ、早く帰れ!」
強く揺さぶっても沙織は起きあがらない。
まったく世話のやける女だ。ため息が出る。
本当に寝ているのか?
「佐野さん、悪いんですけど僕は帰ってもいいですか? ちょっと朝までは付き合えなくて」
「はぁ? 俺のアパートへ置いていくって言うのか? それはマズいだろ、ちゃんと連れて帰ってくれよ。少し寝かせたら酔いも覚めるだろ」
少し気まずそうに橋本は言う。
「でも、ぐっすり寝てますし、起こすの可哀想だから……」
「だからって普通おいていかないだろう。好きな女を男のアパートに」
「……沙織さんは佐野さんのことで頭がいっぱいで、僕の入り込める余地なんてないです。二人っきりになりたいのかも知れないのに、僕がいつまでも居座ってるのって、ちょっと」
沙織に聞こえないように橋本はヒソヒソと言った。
「そんなことないって、連れてってくれよ……」
「どうするのかは二人で決めてください。僕のことは気にしないで」
少し未練をにじませながらも、迷いを振り切るように橋本は出ていった。
ソファで寝息をたてている沙織に呆れる。
いつもこんな風に飲み過ぎて、男のアパートなどに泊まっているのだろうか。
いくら美人でも、そんな節操のない女などごめんだ。
エビのように体を曲げて、横たわっている沙織に肌掛け布団をかけた。
可愛らしい寝顔に少し胸がときめいた。
思わぬ展開にすっかり酔いも覚めてしまった気分になり、パジャマに着替えて自分もさっさとベッドにもぐり込んだ。
すぐに眠りにつき、真夜中の2時過ぎにトイレに起きた。
沙織はまだソファで寝ていた。
トイレから戻ると沙織が起きて、髪を手ぐしで整えていた。
「沙織、大丈夫か? 」
「うん、ごめんなさい。わたし帰るわ」
うつろな目をして沙織がつぶやく。
「朝まで寝てていいぞ。今だと飲酒運転で捕まるからな。朝早く送ってやるよ」
「いいわ、大丈夫。タクシーで帰る」
沙織はそう言ってヨロヨロと立ちあがった。
「まだ、フラフラしてるじゃないか。朝まで寝てろって、俺はなにもしないから安心しろ」
「………やっぱり帰る」
沙織はハンガーから薄手のジャケットをはずした。
手に力が入らないのか、ジャケットの袖に腕を通せずにいる。
「危ないから泊まっていけって」
「大丈夫」
やっと袖を通して玄関へむかう。
「じゃあ、タクシー呼んでやるから、ちょっと待ってろよ」
「外で拾うからいい」
さっきまで酔いつぶれて寝てしまった沙織を疎ましく思っていたのに、なぜか引き止めたくなる。
「なに心配してんだよ。なにもしないって言ってるだろう」
「なにもしてくれないから帰るわよっ!」
「は? ……な、なに言ってるんだよ、おまえ」
ボロボロ泣きながら沙織は玄関のドアを開けた。
「沙織、待てって!」
沙織の腕をつかんで、強く抱きしめた。
「帰るなよ、頼むからいてくれよ」
「……佐野さん?」
涙ぐんで俺をみつめる沙織が愛おしくなり、思わずキスをした。
「おまえが好きだよ、沙織」
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