運極ちゃんの珍道中!〜APの意味がわからなかったのでとりあえず運に極振りしました〜

斑鳩 鳰

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24 絶望と光

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「ゴンちゃん!!かぐや!!」

2人からの返事はない。慌ててHPを確認すると0にはなっていなかったが、両手で数えられる程しか残っていなかった。

「ヒール!ヒール!ヒール!」

必死にヒールを唱えても、回復は微々たるもので、2人は未だ動かない。

「ヒール!ヒール!ヒール!ヒール…」

無我夢中でスキルを叫ぶ。体のあちこちにあった傷は全て消えているけれども、安心はできなかった。2人を失うのが怖かった。

その時、ボスの一際大きな咆哮が響いた。
突風で砂埃が舞い、木々が揺れる。私は、ゴンちゃんとかぐやを抱いてその場に蹲った。

顔を上げて海の方を見ると、ボスは長い触手をうねらせながら街に向かってゆっくりと前進していた。その前方の海面に映る黒い影も鋭利な先端を街の方に向け進んでいる。

住人の恐怖の声が耳に届いた。

「あぁ…あ…」

私のせいだ。私がレイドボスなんか出現させてしまったから。
ゲームの知識もない、経験もない、それなのに自分の力を過信して無茶なんかしたから。

どうしよう、このままでは街の人達に多大な被害が及ぶ。

もし次ゴンちゃんとかぐやのHPが0になってしまったら…。

私1人でボスたちを倒せる?

無理だ。数が多すぎる。

それに2人を失いたくない。

どうしよう、どうしたら、なんとかしないと、でも、どうしよう…

考えが頭の中をグルグルと回る。
心臓を鷲掴みにされているような息苦しさを感じた。
自分の不甲斐なさに堪らなく泣きたくなった。

泣いたところで状況は変わらない。わかっている。わかっているけど。

「ぅ…カイ…レイちゃん……
たすけ……て…」

目元を拭っても拭っても手は濡れるばかりだった。
泣いちゃダメだ。私に泣く資格なんてない。
考えろ。自分が今何をすべきなのか。

「……フゥ」

目元に手を当てたまま気持ちを落ち着かせるために、ゆっくり息を吐く。
その時、足元で何かが動いた。
慌てて目を開けると、かぐやが険しい表情を浮かべながら顔を上げた。

「かぐや!!」

「不覚じゃった…。
おい、犬。いつまで寝ておるのじゃ。
お主、くたばったなどと戯言言うわけではなかろうな。」

かぐやの声に反応するように、ゴンちゃんものそりと立ち上がった。

「ゴンちゃん!!」

『そんなわけあるか。
すまない、主。心配かけたな。』

「ううん。2人が無事で良かった。」

2人が目を覚ましてくれたことに安心したら我慢していた涙がほろほろと流れてきた。

『主…。』

「ぅ…ふぅ…大丈夫、安心して気が緩んじゃったの。今はそんな場合じゃないよね。」

かぐやは安心させるように私の首元に抱きつき、ゴンちゃんは頬を伝った涙を優しく舐めてくれた。
良かった。2人が目を覚ましてくれて本当に良かった。

「ちぃと油断してしもうたのじゃ。大丈夫、ちゃんと妾も犬も無事ぞ。
のぅ、犬。そなたとは気が合わぬが、それ以上に妾はソラを悲しませた彼奴への憤りの気持ちでいっぱいなのじゃ。」

『奇遇だな、私もだ。』

「お主、妾の足を引っ張らぬと約束できるか?」

『それはこっちのセリフだ。』

「はんっ。
まあ、良い。【メテオール】【ゼロ・グラビティ】」

二人の間で進んで行った会話が終わると、かぐやがスキルを唱え、空中にボスのところまで伸びる石の橋ができた。

「重さがかかると落ちるのじゃ。
くれぐれも石の上に留まるんじゃないぞ。」

『あぁ。』

「それじゃあ、共同戦線と行くのじゃ!!
ソラを泣かせた罪は重いぞ、デカブツ!!
ゆくぞ、ゴン!」

そう叫ぶとかぐやは空中を翔け、ゴンちゃんは石を踏み台に疾走しながらボスの方へ向かった。

本当に頼もしい仲間だ。

「よし!私もくよくよなんかしていられない。
街に被害が及ぶ前に何とかしないと。」

頬をバシッと叩いて、おばあちゃんに貰った回復薬を使いHPもMPも満タンにする。

がむしゃらに戦ってもMPが枯渇して終わりなだけだろう。
せめてあの槍イカ軍団だけでもどうにか出来ないだろうか。

思考を巡らせていると、ガサガサと後ろの茂みが音を立てた。
慌てて距離をとり木の棒を構える。が、


出てきたのは冒険者の装いをした同じプレーヤー達5人組だった。

「お、見つけたぞ!」

「えーっと…?」

「アンタがレイドボスの発見者か?」

「あ。す、すみません!
実力もなのにボスなんか召喚して街を危険に晒しちゃって!!」

「あー違う違う!
ほら、お前が怖い顔で睨むから怖がらせちまっただろ!!」

「るせぇ!この顔は元からだ!」

「喧しいぞ、お前ら。
俺らは別に責めてるわけじゃないんだ。」

「そうそう。
お嬢ちゃんにはお願いがあってな。」

「は、はい。なんでしょう?」

「今回のレイドボスは海の上だろ?だから闘うの難しくてなあ。船を出してもボスに破壊されて溺死して死に戻りだ。
どうやら、お嬢ちゃん飛べるみたいだし、他に空中戦できるプレーヤーが来るまでボスが街に近づかないように持ちこたえて欲しいんだ。」

「もちろんそのつもりです。
でも、私ひとりでボスと大量の槍イカを抑えるのはとてもじゃないけどできないです、すみません…。」

「すまんすまん。言い方が悪かった!
槍イカの集団の討伐は俺たちに任せてくれ!
既に砂浜にはプレーヤーが続々と集まっている。ボスの気を引いてもらえれば船を出して海上で奴らと戦うことも出来るしな。
お嬢ちゃんの荷が重いのは承知の上だ。どうか、頼まれてくれないか?」

「そんな!お願いされるまでもなく、召喚してしまったのは私なのでもちろん闘います!
それよりも、槍イカの方引き受けてくださってありがとうございます。
正直、私たちだけでは勝てる見込みがありませんでした。」

「いいってことよ!
レイドボス戦は協力必須だからな。
無理そうになったらすぐ言ってくれよ。いつでも浜辺で迎え討てる準備はしとくからな!
それじゃあ、頼んだぜ巫女のお嬢さん。」

プレーヤーさん達にガシガシと頭を撫でられる。
これは励ましてくれたんだろうか。

「はい!いってきます!【浮遊】」

地面を蹴って、2人が戦っている元へ全力で向かう。
その際、プレーヤー達が口をあんぐりと開け、「俺らが知っている【浮遊】のスキルじゃねぇ!!」と叫んでいたのを私は知る由もなかった。


「【羅刹化】
サンダースラァァァッシュ!!」

空中で薙刀に持ち替え、電気を溜め、特大の【サンダースラッシュ】を唱える。
武器を持ち替えたのは【サンダースラッシュ】の場合何となく木の棒より薙刀の方が見栄えが良いからだ。

スパンッと乾いた音がして、落ちるボスの足。しかし、直ぐに切り口から新しい足が再生しつつある。
どうやら再生速度も上がっているようだ。
さてどうしようか、と2人がボスの気を引いているうちに弱点を探っていると、先端付近に膜に透けて赤い石のようなものが見えた。

「【サンダーアロー】」

背後に回り、そこに狙いを定めて矢を打つがボスの足に遮られる。
グルン、と大きな目がこちらを向く。

Graaaaa!!!!

うわ、めっちゃ怒ってる…!
でもその反応はあの石が急所だと自分で言っているようなものだよ!!

「ゴンちゃん、かぐや!
ボスの先端の方に埋まっている赤い石を狙って!」

『了解。』

「任せるのじゃ!」

ボスの意識は完全に私の方に向いている。
気を引き締めて薙刀を強く握る。

…もう、油断はしない。

次々と伸びてくる足を避け、避けきれないものは薙刀や【サンダーボール】を撃って対抗する。
ゴンちゃんやかぐやも攻撃するが、ボスは急所への攻撃を遮るぐらいで2人に見向きもしない。
あくまでも、敵は私なのね。
その挑戦受けて立つよ!

ボスとの攻防戦を繰り広げること暫し。先に窮地に立ったのは私の方だった。

「ハァ…ハァ…。」

『大丈夫か、主!』

ゴンちゃんの声に手で応える。それほどまでに疲弊していた。度重なるスキルの唱和や目を駆使して避けていたせいだ。
HPはあるもののMPの回復が使用度に追いついておらず、残りわずかだ。

これは非常にまずい。

「うわぁっ!…あぐっ」

「ソラ!」

『主!』

息を整えている間に四方から同時に足が伸び、捕えられた。ボスは前回の攻撃から学んだのか、私から薙刀を奪い取り遠方に投げた。
しまった。これでは木の棒も取れない。

「う…ぐぅ……」

巫女服のおかげで痛くはないといえ、圧迫感はある。自分のHPがぐんぐん減っていくのがわかる。

ごめんなさい。
やっぱり私には無理でした。

他に空中戦ができるプレーヤーの人が直ぐに到着しますように。

どうか、ガロンさん、コランさん、街のみんなを護って…。


死に戻りを覚悟して目を閉じた、その時だった。


「汚い手でソラに触るなぁぁぁぁぁああああああああ!!」


徐々に近づく声に目を開けて上方を向く。


「カイ!!!!」


そこに居たのは大きく大剣を振りかぶった弟だった。
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