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32 ココロ発見
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「さーてこれからどうしようか」
膝を抱え、ゆらりゆらりと揺れてみる。カラスたちは、私をぺいっと転がしてとっとと出ていった。ビックリするぐらい雑な扱い。嫌な初体験だ。今後どういう目でカラスを見ればいいのか。
一人ゆりかごから脱し、これからどうするべきか考える。
とりあえず動こう。森に入れば何とかなるでしょう。繋がってるし。それに、ゴンちゃんたちとの待ち合わせの時間も迫っている。よっこいせと立ち上がるが、目の前は真っ暗で何も見えない。そうだ!
「【サンダーボール】」
ブゥンと木の棒に雷の玉が宿る。おおっ、思ったよりも明るくなった。洞窟の中がよく見える。
「さっきから何か刺さってる気がしてたけど……」
床、壁にびっしりと木の枝が敷き詰められている。もしかして、ここカラスたちの巣?後ろを振り返れば、誰かが歩いたとわかるほどくっきり跡が残っている。バキバキ言っていたのはこれか。うん、私をここに連れてきたカラスたちも悪いと思うから、巣を壊してしまったことはお互い様ということで……。
微かに明るい、おそらく出入口であろう場所を目指して前へ進む。時々足元でキラリと輝くものに、そう言えばカラスは光るものを集める習性があると聞いたことあるようなとぼんやり考える。えっ。もしかして私キラキラ要員?羽衣絹だから艶々キラキラしてるもんなあ。ガラス、コイン、ネジ。おわっ、潰れた剣みたいなのもある。これを持っていた人は……いや、深くは考えまい。
あちこちに散らばるガラスを眺めて前を見ていなかったからだろう。一際大きい枝に躓いて転んでしまった。ビュンと飛んで行った電気玉。少し離れたところから聞こえたドーンッという爆発音。
バッと頭を下げ、私は何も見てませんよ知りませんよアピールを試みようとした時、視界の隅で何かが光った。
なんだろう?匍匐前進でずいずいと進む。
これは……なんだ?
歯車をぐちゃぐちゃと貼り付けたガラクタのように見えるけれど、頑張って見ればハートに見えなくもない。もっとよく見てみようと手を伸ばし、その物体を手のひらにおさめたその時だった。
ークエスト《錆色の追憶》clearー
「へ?」
無機質なアナウンスに目をぱちくりさせたのもつかの間。瞬きひとつの僅かな間で、森の中に移動していた。隣を見れば、状況がわからないのだろう固まったままのゴンちゃんとかぐや。え、何が起こったの?
「およ?妾は先程まで邪魔をする猿を躾ていたはずじゃが?」
「私も、新しい武器を使いこなすべく実践をしていたはずなのだが」
「ホントに何してるの、2人とも」
困った困った、じゃないよ!真面目に探してたの私だけだったんかい!
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」
ちょいと君たち!と文句のひとつでも言ってやろうかと思った矢先、後ろからすごい叫び声が聞こえた。え、何事!?某ニワトリおもちゃも裸足で逃げ出すレベルの声だったよ!?
振り返れば、そこにいたのはカタカタと震えるリーゼロッテさん。私の方を指さして、ハクハクと口を開閉している。
「それっ…それぇっ!」
「えっと、これですか?」
あまりの豹変ぶりに、申し訳ないが若干引いてしまう。もはや恐怖すら感じる。恐る恐る、手の中にあるツギハギ歯車を渡すと、リーゼロッテさんはそれはそれは嬉しそうな顔でぎゅっと胸に抱きしめた。
「ありがとう。本当にありがとう。ずっとずっと探していたんです」
ボロボロと涙を流しながら感謝の言葉を繰り返す彼女に、さっきすごく失礼なことを考えてしまったことが申し訳なくなる。
「探し物が見つかって良かったですね、リーゼロッテさん」
「はいっ!はやくあの子に渡さないと。私の帰りをずっと待っているはずだから。本当にありがとう!」
リーゼロッテさんは深く頭を下げた後、タタッと私たちに背を向け走り出す。そのままなんとなく目で追っていると、彼女はピタッと止まった。どうしたんだろう。
「あぁ……あぁ……ダメだわ。私じゃ、あの子に会えない。今更どんな顔であの子に会えばいいの」
さっきまで踊り出すんじゃないかと言うほどテンションがうなぎ登りだったのに、今はうろちょろと不安げに辺りを回っている。情緒がジェットコースターだ。
ひとしきりぐるぐる回ったあと、突としてこちらを振り返った。あらまあ、美人なお顔が涙でぐしょぐしょだ。リーゼロッテさんはツカツカとこちらに歩いて来ると、私の手に探し物を握らせた。なにゆえ!?
「これ、あなたに託してもいいかしら?」
「えっ!?でも、リーゼロッテさんの大切なものなんじゃあ」
「でも、私にはもう無理なのよ」
困ったように悲しそうにヘラリと笑ったリーゼロッテさんに、次の言葉を発することができなかった。
「大切だからこそあなたに託したいの。あなたなら、私を救ってくれたように、あの子のことも救ってくれる気がするのよ」
この短期間で、私はリーゼロッテさんの絶大な信頼を獲得したらしい。そもそもあの子って誰だ。それを問おうと手から彼女の顔に視線を移してぎょっとする。
リーゼロッテさんが透けていたのだ。
向こうの木が見えるくらい、薄くなっていく彼女に口から息だけが漏れる。言葉が出てこない。
「どう…か…あの…こを…よろしくね……」
「主!」
「ソラ!」
すっかり周りと同化したリーゼロッテさんを見送りながら、私の視界は反転する。
意識を失う前に見た空は、ひどく澄んで虹の橋がかかっていた。
膝を抱え、ゆらりゆらりと揺れてみる。カラスたちは、私をぺいっと転がしてとっとと出ていった。ビックリするぐらい雑な扱い。嫌な初体験だ。今後どういう目でカラスを見ればいいのか。
一人ゆりかごから脱し、これからどうするべきか考える。
とりあえず動こう。森に入れば何とかなるでしょう。繋がってるし。それに、ゴンちゃんたちとの待ち合わせの時間も迫っている。よっこいせと立ち上がるが、目の前は真っ暗で何も見えない。そうだ!
「【サンダーボール】」
ブゥンと木の棒に雷の玉が宿る。おおっ、思ったよりも明るくなった。洞窟の中がよく見える。
「さっきから何か刺さってる気がしてたけど……」
床、壁にびっしりと木の枝が敷き詰められている。もしかして、ここカラスたちの巣?後ろを振り返れば、誰かが歩いたとわかるほどくっきり跡が残っている。バキバキ言っていたのはこれか。うん、私をここに連れてきたカラスたちも悪いと思うから、巣を壊してしまったことはお互い様ということで……。
微かに明るい、おそらく出入口であろう場所を目指して前へ進む。時々足元でキラリと輝くものに、そう言えばカラスは光るものを集める習性があると聞いたことあるようなとぼんやり考える。えっ。もしかして私キラキラ要員?羽衣絹だから艶々キラキラしてるもんなあ。ガラス、コイン、ネジ。おわっ、潰れた剣みたいなのもある。これを持っていた人は……いや、深くは考えまい。
あちこちに散らばるガラスを眺めて前を見ていなかったからだろう。一際大きい枝に躓いて転んでしまった。ビュンと飛んで行った電気玉。少し離れたところから聞こえたドーンッという爆発音。
バッと頭を下げ、私は何も見てませんよ知りませんよアピールを試みようとした時、視界の隅で何かが光った。
なんだろう?匍匐前進でずいずいと進む。
これは……なんだ?
歯車をぐちゃぐちゃと貼り付けたガラクタのように見えるけれど、頑張って見ればハートに見えなくもない。もっとよく見てみようと手を伸ばし、その物体を手のひらにおさめたその時だった。
ークエスト《錆色の追憶》clearー
「へ?」
無機質なアナウンスに目をぱちくりさせたのもつかの間。瞬きひとつの僅かな間で、森の中に移動していた。隣を見れば、状況がわからないのだろう固まったままのゴンちゃんとかぐや。え、何が起こったの?
「およ?妾は先程まで邪魔をする猿を躾ていたはずじゃが?」
「私も、新しい武器を使いこなすべく実践をしていたはずなのだが」
「ホントに何してるの、2人とも」
困った困った、じゃないよ!真面目に探してたの私だけだったんかい!
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」
ちょいと君たち!と文句のひとつでも言ってやろうかと思った矢先、後ろからすごい叫び声が聞こえた。え、何事!?某ニワトリおもちゃも裸足で逃げ出すレベルの声だったよ!?
振り返れば、そこにいたのはカタカタと震えるリーゼロッテさん。私の方を指さして、ハクハクと口を開閉している。
「それっ…それぇっ!」
「えっと、これですか?」
あまりの豹変ぶりに、申し訳ないが若干引いてしまう。もはや恐怖すら感じる。恐る恐る、手の中にあるツギハギ歯車を渡すと、リーゼロッテさんはそれはそれは嬉しそうな顔でぎゅっと胸に抱きしめた。
「ありがとう。本当にありがとう。ずっとずっと探していたんです」
ボロボロと涙を流しながら感謝の言葉を繰り返す彼女に、さっきすごく失礼なことを考えてしまったことが申し訳なくなる。
「探し物が見つかって良かったですね、リーゼロッテさん」
「はいっ!はやくあの子に渡さないと。私の帰りをずっと待っているはずだから。本当にありがとう!」
リーゼロッテさんは深く頭を下げた後、タタッと私たちに背を向け走り出す。そのままなんとなく目で追っていると、彼女はピタッと止まった。どうしたんだろう。
「あぁ……あぁ……ダメだわ。私じゃ、あの子に会えない。今更どんな顔であの子に会えばいいの」
さっきまで踊り出すんじゃないかと言うほどテンションがうなぎ登りだったのに、今はうろちょろと不安げに辺りを回っている。情緒がジェットコースターだ。
ひとしきりぐるぐる回ったあと、突としてこちらを振り返った。あらまあ、美人なお顔が涙でぐしょぐしょだ。リーゼロッテさんはツカツカとこちらに歩いて来ると、私の手に探し物を握らせた。なにゆえ!?
「これ、あなたに託してもいいかしら?」
「えっ!?でも、リーゼロッテさんの大切なものなんじゃあ」
「でも、私にはもう無理なのよ」
困ったように悲しそうにヘラリと笑ったリーゼロッテさんに、次の言葉を発することができなかった。
「大切だからこそあなたに託したいの。あなたなら、私を救ってくれたように、あの子のことも救ってくれる気がするのよ」
この短期間で、私はリーゼロッテさんの絶大な信頼を獲得したらしい。そもそもあの子って誰だ。それを問おうと手から彼女の顔に視線を移してぎょっとする。
リーゼロッテさんが透けていたのだ。
向こうの木が見えるくらい、薄くなっていく彼女に口から息だけが漏れる。言葉が出てこない。
「どう…か…あの…こを…よろしくね……」
「主!」
「ソラ!」
すっかり周りと同化したリーゼロッテさんを見送りながら、私の視界は反転する。
意識を失う前に見た空は、ひどく澄んで虹の橋がかかっていた。
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