死にキャラに転生したけど、仲間たちに全力で守られて溺愛されています。

IFループの中であったかもしれない世界

18

ギルドの廊下を歩くカインの足音が響く。
胸元には、小さな剣のネックレスが揺れていた。
スフィアの遺品として手渡されたそれを、カインは首から外そうとしない。

（お前がこれを身につけていたのは、俺を信じてくれていたからだろう。）

カインはその重さをかみしめるように握りしめた。
だが、胸の内には守れなかった悔恨が残っている。

「……守ると決めたのに。」

彼は立ち止まり、目を閉じる。

（でも、俺はもう二度と手を離さない。お前がいなくなった世界を認めるわけにはいかない――。）

カインの思考は、まるで誓いを立てるように強いものへと変わっていった。

その頃、レオンは部屋の机に向かい、手元のリボンを見つめていた。
一つは、自分がスフィアに渡したものと同じ色合いのリボン。
もう一つは、スフィアがレオンのために選び、自分用にも同じものを用意したもの。

「……スフィアが、僕に。」

リボンの端を指先で撫でながら、レオンの瞳に涙が滲む。
彼はリボンを一つ髪に結び、もう一つを手の中で握りしめた。

「お揃いだね、スフィア。」

その言葉が、部屋の静けさに溶けて消える。

エリオットは静かに巾着袋を開いた。
その中には、自分がスフィアに渡した水晶が入っている。

「……返してくれたのか……。」

エリオットは震える手で水晶を取り出し、胸の前で握りしめた。
その透き通る輝きが、涙に濡れた手のひらを照らす。

（ずっと持っていてくれた。最後まで、これを……。）

彼の胸が軋むように痛む。
スフィアの最後の言葉が、耳元で何度も響く。

「ありがとう……約束守れなくてごめんね……幸せになってね。」

「幸せに……なんて……。」

エリオットは水晶を胸に押し当て、目を閉じた。

「君がいなくなったのに……幸せになんて、なれるわけがないだろ……。」

その呟きが、静かな部屋に響いた。

ユリウスは夜の街を歩いていた。
ポケットの中には、スフィアの遺品として手渡された花のペンダントがある。

「……精霊たち。」

彼が呟くと、精霊が静かに現れ、彼の周りを舞った。

「これが、彼女の大切にしていたものだ。」

彼はペンダントを取り出し、月明かりの下でそっと見つめた。
その花のモチーフが、スフィアの笑顔を思い出させる。

「……君は僕たちに、幸せになってねって言ったけれど。」

ユリウスはペンダントを胸にしまい、夜空を見上げた。

「君がいない世界で、どうやって幸せになれって言うんだ？」

その瞳に映るのは、深い哀しみと執着だった。

「……僕は、君の言葉に逆らい続けるよ。」

その言葉が、夜の静寂に消えていった。

誰もが、スフィアの言葉を胸に刻んでいた。
だが、その想いは彼らの心を歪ませ、深い執着へと変わっていく。