悪役令嬢の破滅フラグ？転生者だらけの陰謀劇！勝者は誰だ

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邸宅の応接室で、レティシアとアルフォンスは向かい合っていた。キャンドルの揺れる光が、二人の真剣な表情を浮かび上がらせている。

「それより、ディアナが“国を揺るがす”なんて、どういう意味なの？」

レティシアはカップに手を伸ばしながら、静かに問いかけた。その声は冷静さを保っていたが、胸の内では焦りが芽生えていた。

アルフォンスは短く息を吐き、鋭い目を彼女に向けた。

「ディアナ・ローレンス……彼女は平民の出身ではない」

「……何ですって？」

「正確には、彼女は平民と貴族の間に生まれた、いわゆる“庶子”だ。それを隠しながら、貴族社会に浸透している。だが彼女の本当の目的は、“平民革命”を起こすことにある」

「平民革命……」

その言葉の意味を理解するまでに、数秒の間が必要だった。だが、それを理解した瞬間、レティシアの胸には冷たい衝撃が走った。

「彼女が国を変えようとしているっていうの？」

アルフォンスは頷いた。その表情には苛立ちと警戒が入り混じっている。

「彼女は平民たちの支持を集め、貴族社会そのものを崩壊させようとしている。今流行している“誇り高きヒロイン”という演劇も、その計画の一部だ」

「演劇が……？」

「平民たちの間で広まっているあの物語は、単なる娯楽ではない。平民が貴族に立ち向かい、勝利するという物語を繰り返し見せることで、“貴族支配への反発”を煽る狙いがある」

レティシアはカップを置き、深く息を吐いた。

「……それがどうしてディアナの計画と結びつくの？」

「彼女は演劇を通じて、自らを“平民の味方”として印象づけている。そして、その一方で貴族社会では、自分を守るべき“被害者”としての立場を確立した」

「つまり、両方の支持を集めている……」

「その通りだ。そして、君を“悪役令嬢”に仕立て上げることで、彼女が平民と貴族の双方で正義の象徴になる筋書きが完成する」

アルフォンスの言葉は冷静だったが、その背後には怒りが感じられた。

「もし彼女の計画が成功すれば、貴族社会は分裂し、王国の支配構造が崩壊する。貴族と平民の間で争いが起き、王国全体が内乱に陥るだろう」

「内乱……」

その言葉に、レティシアは大きく息を吸い込んだ。

「それだけじゃない。彼女はこの混乱の中で、自らを新しい秩序の象徴として押し上げるつもりだ」

「つまり、彼女はこの国の頂点に立とうとしている……」

レティシアは椅子の背もたれに体を預けながら、呆然と呟いた。ディアナの計画がこれほど大規模なものだとは想像もしていなかった。

「でも、彼女の計画にはまだ穴がある」

アルフォンスは少しだけ声を低め、慎重に言葉を続けた。

「その計画を成し遂げるには、君を“悪役令嬢”として完全に貶める必要がある。君の存在が、彼女の計画の鍵になっている」

「……私が、鍵？」

「そうだ。君は彼女の“ヒロイン”像を引き立てるための対立軸であり、計画を成就させるための駒だ。だが、もし君が彼女の舞台を降りるか、逆に計画を暴く存在になれば――」

「彼女の計画は崩れる」

アルフォンスは頷き、その目に鋭い光を宿した。

「だからこそ、君には彼女を止める役割がある。そして、それを支えるのが僕の役目だ」

「……あなたが私を信じる理由は？」

レティシアは静かに問いかけた。アルフォンスは少しの間、黙り込んだ。

「お前が何を言おうと、僕はお前を見捨てるつもりはない。かつて婚約者だったからではない。王太子として、そしてこの国を守るために動いているだけだ」

その言葉に、レティシアの胸の中に僅かな希望が灯るのを感じた。

「わかったわ。協力する」

「ありがとう」

アルフォンスは短く答えると立ち上がった。

「この計画を止めるためには、もう少し調査が必要だ。まずはディアナが演劇関係者たちとどれほど深く関わっているのかを突き止める」

「私もできる限り協力する」

その言葉に、アルフォンスは一瞬だけ微笑み、邸宅を後にした。

応接室を後にして自室に戻る途中、レティシアは心の中で改めて決意を固めていた。

（私を駒にしようなんて、そう簡単にはいかない）

リシャールやアルフォンス、そしてマリア――それぞれの思惑が絡み合う中で、自分の役割を果たすことが彼女の生き残りの鍵となる。

月明かりが窓から差し込む中、レティシアの瞳には揺るぎない意志が宿っていた。

（私の人生は、私自身が決める。この国の未来も、彼女の計画には渡さない――）