悪役令嬢の破滅フラグ?転生者だらけの陰謀劇!勝者は誰だ

藤原遊

文字の大きさ
14 / 49

13

しおりを挟む
ディアナを追い詰めるための準備は整いつつあった。リシャールから渡された契約書とシナリオ介入の証拠。それらをどう活用するかが、次の大きな課題だった。

その日の昼休み、レティシアは学園の庭園でアルフォンスと会っていた。彼もまた、ディアナを追い詰めるための協力を惜しまない姿勢を見せていた。

「これがディアナの計画の証拠よ」

レティシアは書類をアルフォンスに渡した。彼はそれを受け取り、慎重に目を通す。

「なるほど。彼女が演劇に影響を与え、平民の支持を集めているという証拠だな」

「でも、これだけじゃまだ弱いわ。このまま彼女に公表されても、彼女は“私はただの支援者に過ぎません”と逃げるだけよ」

アルフォンスは書類を机に置き、腕を組んだ。

「確かに。その通りだ。もっと決定的な証拠が必要だな」

「ええ。そして、彼女を追い詰める場も……」

そのとき、アルフォンスが小さく笑みを浮かべた。

「だったら、僕が場を用意しよう」

「どういうこと?」

「今度、宮廷で大規模な舞踏会が開かれる。そこに彼女も招待されている。それに僕の権限で、劇団の関係者たちを呼ぶこともできる」

「つまり……彼女を公の場で追及する?」

「そうだ。彼女が計画を進めるために必要な支持者たちも、そこに揃うだろう。そこで彼女を追い詰める」

アルフォンスの提案に、レティシアは少し考え込んだが、やがて静かに頷いた。

「わかったわ。その舞台を利用させてもらう」

「ただし、気をつけろ。彼女も必ず対抗してくるはずだ。君の動きを見ていないはずがない」

「ええ、覚悟はできているわ」

舞踏会当日。煌びやかな装飾で彩られた宮廷の大広間には、王国中の貴族たちが集まっていた。美しいドレスやタキシードに身を包んだ男女が舞い踊り、優雅な音楽が響いている。

レティシアもまた、豪奢な深紅のドレスに身を包み、会場の片隅で静かに情勢を見守っていた。その目は、ただの社交の場を楽しむ貴族令嬢のそれではない。

(この場で、彼女を追い詰める。そして、私の名誉を取り戻す)

一方、会場の中心で注目を集めていたのは、ディアナ・ローレンスだった。淡いパステルブルーのドレスをまとい、可憐な笑みを浮かべる彼女は、まさに“完璧な貴族令嬢”を体現していた。

「ディアナ様、今日は本当にお美しいですね」

「ありがとうございます。こうして皆さまにお会いできて光栄ですわ」

その姿は、まるで舞台上のヒロインそのものだった。だが、レティシアはその微笑みの奥に潜む策略の影を見逃さない。

アルフォンスが舞踏会の主催者として挨拶を終えると、彼は静かにレティシアの元へと歩み寄った。

「準備はいいか?」

「ええ、問題ないわ」

彼女の目に揺るぎない意志を見て、アルフォンスは短く頷いた。そして、ディアナに近づき、彼女に声をかける。

「ディアナ、少し話がしたい」

「もちろんですわ、アルフォンス殿下」

ディアナは柔らかく微笑みながら、アルフォンスの横に立つ。周囲の目を引くように二人が進むと、自然と注目が集まった。

そのタイミングを見計らって、アルフォンスが声を上げる。

「皆さん、今日はこの場をお借りして、私たちの国について一つ重要なお話をしたいと思います」

会場が静まり返り、全員の視線がアルフォンスに集中する。ディアナもまた、少し警戒した様子で彼を見つめていた。

「近頃、この国の平民と貴族の間で、微妙な緊張が広がっているのを感じています。その中で、ある人物がそれを煽り、計画的に国を揺るがそうとしている可能性がある」

その言葉に会場がざわつく。ディアナの表情もわずかに引き締まった。

「私はその証拠を持っています」

そう言いながら、アルフォンスが舞台上に置かれた机の上に契約書とシナリオ改変の証拠を広げた。

「この証拠は、ある演劇が貴族社会を揺るがすために計画的に利用されていることを示しています。そして、その支援を行っていたのが――」

「待ってください!」

ディアナが突如声を上げ、会場の視線を一身に浴びた。その目にはわずかな焦りが見えたが、すぐにいつもの柔らかな笑みを浮かべる。

「殿下、私にも話をさせていただけますか?」

「どうぞ」

アルフォンスは静かに頷いた。ディアナは一歩前に出て、会場中に響くような声で話し始めた。

「このような証拠が出されたこと、とても驚いています。ですが、それが本当に私に関係するものであるなら、ぜひ精査させていただきたいと思います」

その言葉に、会場の空気が微妙に変わった。彼女の毅然とした態度に、周囲は一瞬彼女を擁護するような視線を送る。

(そうはさせない)

レティシアは一歩前に進み、声を上げた。

「では、その証拠について直接聞かせていただきます。ディアナ様――この契約書に記された署名は、あなたのものではありませんか?」

その言葉に、ディアナの微笑みがわずかに引きつった。

(ここからが本番ね……)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

入れ替わり令嬢奮闘記録

蒼黒せい
恋愛
公爵令嬢エリーゼは混乱の極地にあった。ある日、目覚めたらまったく別の令嬢シャルロットになっていたのだ。元に戻る術は無く、自身がエリーゼであることを信じてもらえる見込みも無く、すっぱり諦めたエリーゼはシャルロットとして生きていく。さしあたっては、この贅肉だらけの身体を元の身体に戻すために運動を始めるのであった… ※同名アカウントでなろう・カクヨムにも投稿しています *予約時間を間違えてしまい7話の公開がおくれてしまいました、すみません*

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

悪役令嬢として断罪? 残念、全員が私を庇うので処刑されませんでした

ゆっこ
恋愛
 豪奢な大広間の中心で、私はただひとり立たされていた。  玉座の上には婚約者である王太子・レオンハルト殿下。その隣には、涙を浮かべながら震えている聖女――いえ、平民出身の婚約者候補、ミリア嬢。  そして取り巻くように並ぶ廷臣や貴族たちの視線は、一斉に私へと向けられていた。  そう、これは断罪劇。 「アリシア・フォン・ヴァレンシュタイン! お前は聖女ミリアを虐げ、幾度も侮辱し、王宮の秩序を乱した。その罪により、婚約破棄を宣告し、さらには……」  殿下が声を張り上げた。 「――処刑とする!」  広間がざわめいた。  けれど私は、ただ静かに微笑んだ。 (あぁ……やっぱり、来たわね。この展開)

処理中です...