悪役令嬢の破滅フラグ?転生者だらけの陰謀劇!勝者は誰だ

藤原遊

文字の大きさ
37 / 49

36

しおりを挟む
王宮内の調査に乗り出したレティシアとリシャールは、まず文書が不正に作られた可能性のある部署を中心に情報収集を進めていた。
二人は宮廷書記室を訪れ、書記官たちが忙しく働く中で、何気ない会話を交わしながらその動向を観察していた。

「随分とお忙しそうですね。最近、特に文書の取り扱いが増えたようですが?」

レティシアが柔らかく声をかけると、対応した書記官は少し慌てた様子で答えた。

「え、ええ。ここ数週間、各地からの報告書や命令書が急増しておりまして……」

「そうなのですか。それにしても、殿下のご指示が頻繁に出されるのは珍しいですね」

「……あ、あれはその、詳しいことは分かりませんが、殿下ご自身の指示とは限らないようです」

その一言に、リシャールの目が鋭く光った。

「殿下の指示ではないのですか?」

書記官は顔色を変え、慌てて言葉を続けた。

「いえ、そんなことは……ただ、他の部署から文書が持ち込まれることがあって、それをそのまま処理しているだけで……」

レティシアは書記官の焦りを見逃さなかった。

「ご安心ください、私たちもただの確認がしたいだけですの。これからも、どうか正確なお仕事をお願いね」

彼女の柔らかな微笑みに、書記官は少しほっとした様子で頭を下げた。

宮廷書記室を出た後、二人は廊下を歩きながら小声で会話を交わした。

「どうやら、書記官たちも完全には状況を把握していないようだな」

リシャールがそう言うと、レティシアは静かに頷いた。

「ええ。でも、他の部署から文書が持ち込まれているという話は興味深いわ。どの部署が関わっているのかを突き止める必要があるわね」

「それに加えて、その文書が実際にどのような経路で殿下の名を騙る形になったのかも調べるべきだ」

リシャールは視線を前方に向けながら呟いた。

「僕の方でも、別のルートから確認してみるよ。少し時間をくれ」

「分かったわ。私もお茶会や夜会を通じて、この件について話題を探ってみる」

二人は軽く頷き合い、それぞれの役割に取り掛かるべく分かれた。

その夜、リシャールは王宮の地下書庫に潜り込んでいた。書庫には、過去の命令書や関連資料が大量に保管されている。
彼は灯りを手に取り、一つ一つの文書を注意深く調べていく。

(ここに何か手がかりがあるはずだ……)

やがて彼は、一連の偽造文書に酷似した文書の下書きが紛れているのを見つけた。その筆跡には、ある特徴があった。

「これは……?」

彼は目を細め、さらに近くの棚を調べた。そこで、同じ筆跡が使われた古い文書をいくつも発見した。

「どうやら、書記室以外の者が絡んでいるのは確実だな」

その時、背後で物音がした。リシャールは咄嗟に手元の灯りを消し、静かに気配を探った。

(誰かが近づいてくる……ここで見つかるわけにはいかない)

彼は素早く影に隠れ、足音が遠ざかるのを待った。慎重に書庫を後にするリシャールの目には、決意が宿っていた。

一方、レティシアは夜会に出席していた。その夜会には、王宮内でも影響力を持つ貴族たちが顔を揃えていた。

「最近、王宮内でも色々と騒がしいと聞きますが、皆さまのところでは何か影響は?」

彼女がさりげなく切り出すと、数人の貴族が苦笑した。

「ええ、旧ハロルド派の話題が多くてね。とはいえ、我々のような身分には直接関係のないことだが」

「そうですね。それよりも、最近殿下のご決断が頻繁に取り沙汰されていますが……」

レティシアが話題を少しずつ方向付ける中、一人の夫人が言葉を漏らした。

「まあ、確かに。殿下の命令だと思われている文書が出回るたびに、私たちも少々迷惑を被っておりますわ」

その一言に、レティシアは注意深く目を細めた。

「迷惑を被っているとは?」

「だって、あれが本当に殿下のものだなんて、誰も信じておりませんもの。でも、それを信じる者たちが動き回ることで、私たちの社交界にも影響が出ているのです」

「それは困りますわね……」

レティシアはあくまで穏やかに話を続けたが、内心ではこの夫人が何かを知っている可能性が高いと感じていた。

(この人をさらに探る必要があるわね)

その夜、リシャールとレティシアは再び邸宅で合流し、それぞれの調査結果を共有した。

「偽造文書を作った者の筆跡が分かった。ただし、それが誰のものかまでは特定できていない」

リシャールが報告すると、レティシアも頷いた。

「夜会では、いくつか興味深い話を聞けたわ。一部の貴族たちは、文書の内容を利用して自分たちの利益を追求しているみたい」

二人はテーブルに並べた情報を見ながら、次の行動を考えていた。

「この情報をアルフォンス殿下に共有しよう。次は、さらに深く関係者を洗い出す必要がある」

「ええ。そのためには、もう少し大胆な手段を取る必要がありそうね」

レティシアとリシャールは静かに頷き合い、次なる一手を進める準備を整えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

入れ替わり令嬢奮闘記録

蒼黒せい
恋愛
公爵令嬢エリーゼは混乱の極地にあった。ある日、目覚めたらまったく別の令嬢シャルロットになっていたのだ。元に戻る術は無く、自身がエリーゼであることを信じてもらえる見込みも無く、すっぱり諦めたエリーゼはシャルロットとして生きていく。さしあたっては、この贅肉だらけの身体を元の身体に戻すために運動を始めるのであった… ※同名アカウントでなろう・カクヨムにも投稿しています *予約時間を間違えてしまい7話の公開がおくれてしまいました、すみません*

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

悪役令嬢として断罪? 残念、全員が私を庇うので処刑されませんでした

ゆっこ
恋愛
 豪奢な大広間の中心で、私はただひとり立たされていた。  玉座の上には婚約者である王太子・レオンハルト殿下。その隣には、涙を浮かべながら震えている聖女――いえ、平民出身の婚約者候補、ミリア嬢。  そして取り巻くように並ぶ廷臣や貴族たちの視線は、一斉に私へと向けられていた。  そう、これは断罪劇。 「アリシア・フォン・ヴァレンシュタイン! お前は聖女ミリアを虐げ、幾度も侮辱し、王宮の秩序を乱した。その罪により、婚約破棄を宣告し、さらには……」  殿下が声を張り上げた。 「――処刑とする!」  広間がざわめいた。  けれど私は、ただ静かに微笑んだ。 (あぁ……やっぱり、来たわね。この展開)

処理中です...