悪役令嬢の破滅フラグ?転生者だらけの陰謀劇!勝者は誰だ

藤原遊

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王宮の廊下を駆け抜けるロラン・ハインリヒ。その足取りは焦りに満ちていた。
後ろから聞こえる足音は、確実に彼を追い詰めている。

「くそっ……」

ロランは息を切らしながら、薄暗い廊下を右へと曲がった。その先には、王宮の隠された通路が広がっている。この非常口は、知る者が極めて限られているはずだった。

「ここなら……」

だが、彼が通路に足を踏み入れるや否や、目の前に一人の男が現れた。

「ずいぶんとお急ぎのようだね、ロラン」

リシャールの落ち着いた声が響く。その背後からは、レティシアが現れた。

「あなたがこの道を使うことは、すでに分かっていました。ここはあなたにとって唯一の逃げ道でしょう?」

ロランの顔が一瞬引きつる。しかし、すぐに平静を装い、二人を見据えた。

「君たちは何も分かっていない。この国を腐敗から救うために、僕がどれだけの犠牲を払ったか……」

「救う? そのために、どれだけの人を利用してきたのですか?」

レティシアの声には怒りが込められていた。ロランはその言葉に動揺を見せながらも、強がるように笑った。

「利用される方が愚かだっただけだ。それがこの国の現実だ!」

「その現実を変えようともしないで、何が救うだ」

リシャールの冷静な声に、ロランは言葉を失い、ただ口を閉ざした。

その時、背後から新たな足音が響き渡る。アルフォンス殿下とマリア、そしてディアナとレオンが到着したのだ。

「ロラン、これ以上の逃走は無意味だ」

アルフォンス殿下の声が廊下に響き、ロランはゆっくりと振り返る。

「……殿下。あなたには、私の考えなど分からないだろう」

「確かに、君がどれほどの苦悩を抱えていたのか、全てを理解することはできない。しかし、君が選んだ道が間違っていることだけは明白だ」

殿下の言葉に、ロランは歯を食いしばった。だが、その目にはもはや迷いの色が見え始めていた。

「……僕のやり方が間違っていたとして、それでこの国は良くなるのですか?」

「君の行動が混乱を招くだけなら、何も変わらない。だが、僕たちはこの国を変えるために動き続ける。それが王族としての責務だ」

アルフォンス殿下の毅然とした言葉に、一同の視線が彼に集まる。ロランはその姿を見つめ、やがて苦笑を漏らした。

「……殿下、あなたは本当に理想家だ。だが、それがどこまで通じるか……僕には信じられない」

ロランはそう呟き、ゆっくりと膝をついた。

「……もう逃げません」

その瞬間、緊張していた空気が少しだけ和らいだ。

ロランの拘束が終わり、彼の計画に関わっていた貴族たちの調査も進められる中、一連の混乱はようやく終息に向かいつつあった。
王宮内では、アルフォンス殿下がリーダーシップを発揮し、事態の収拾に当たっていた。

「ディアナ、レオン。君たちの活躍がなければ、旧ハロルド派の暴動を止めることはできなかった。本当に感謝している」

殿下の言葉に、ディアナは微笑みを浮かべた。

「いえ、私たちはただ、彼らが本当に求めているものを見つける手助けをしただけです」

「その“手助け”が、大きな違いを生んだのだ」

殿下はそう言うと、リシャールとレティシアに目を向けた。

「そして君たちの情報収集のおかげで、貴族社会の裏で何が起きているのかを明らかにできた」

リシャールは軽く肩をすくめながら、レティシアに目を向ける。

「僕は大したことをしていないさ。すべて彼女の洞察力のおかげだ」

「そんなことはありませんわ。あなたがいなければ、私一人ではここまで辿り着けませんでした」

二人のやり取りを見ながら、マリアは静かに微笑んだ。

「殿下、これからどうされるのですか?」

マリアの問いに、殿下は真剣な表情で答えた。

「まずは、今回の混乱で明らかになった問題を一つずつ解決する。そして、ロランが望んでいたような変化を、正しい形で実現することが僕の責務だ」

その言葉に、マリアは深く頷いた。

「私もお手伝いさせてください」

「もちろんだ、マリア」

殿下の優しい声に、マリアの目には小さな光が宿っていた。

全員がそれぞれの役割を果たし、一連の事件は終わりを迎えようとしていた。
だが、この国の未来を築いていくための挑戦は、ここからが本当の始まりだった。
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