信徒守護官カトリナの辺境ライフ〜魔王討伐後、救済はじめました〜

藤原遊

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翌朝、カトリナたちは村の外れにある森の調査に向かった。森の奥から漂う瘴気が、村人たちを不安にさせている。

「それにしても、瘴気が濃いですね……」

リリーが周囲を警戒しながらメイスを握りしめる。その後ろで、盗賊カインが飄々とした調子で答えた。

「まあ、こういうのは大抵、大したことないんだよ。案外、森の奥にでかい魔物が一匹いるだけだったりしてな」

「カインさん、それ、全然安心できないんですけど!」

リリーがツッコミを入れると、双子のセオが笑いながら肩をすくめた。

「でも、カインの言うことも一理あるよ。過去に何度もそういうパターンを見てきたし」

「そうそう。で、そういう時は大抵カトリナさんが一撃で片付けるんだよね」

双子妹のフィオがさらりと言うと、リリーが驚いた表情を浮かべた。

「えっ、一撃で?」

「うん。浄化の光を込めたハンマーで、『理不尽をぶっ壊す!』って感じでね」

フィオが手振りを交えながら説明すると、カトリナが微笑みながら言葉を挟んだ。

「フィオ、それは少し誇張があるわね。実際には何発か叩いてるわよ」

「いやいや、そこじゃないです!」

リリーが勢いよくツッコミを入れる。そんな彼女の姿を見て、エドガーが微笑んだ。

「いいぞ、リリー。そうやってツッコめるのも、このパーティでは重要な役割だからな」

やがて、森の奥へと足を進めると、空気が一変した。周囲の木々には黒い染みが浮かび、地面にはひび割れが広がっている。

「これは……ただの魔物じゃないですね」

リリーが不安そうに呟くと、カトリナがハンマーを構えながら頷いた。

「ええ、呪いが深く刻まれています。この先にいるものが瘴気の根源でしょう」

その時、茂みの向こうから低い唸り声が聞こえた。一瞬の静寂の後、巨大な獣のような魔物が姿を現す。体毛は黒く、目は赤く輝いていた。

「でたな。思ったより手強そうだな」

エドガーが剣を抜き、前に出る。

「カイン、周囲の罠を確認して!」

カトリナが指示を飛ばすと、カインが素早く動き出す。

「了解!任せとけ!」

セオとフィオは詠唱を始め、リリーはカトリナの後ろに控えながら祈りの準備をした。

魔物が咆哮を上げ、一気に突進してくる。その瞬間、カトリナがハンマーを振り上げた。

「これが私の役目よ!」

ハンマーが魔物の爪を弾き、轟音と共に地面に叩きつける。その間に、セオとフィオが放った炎の魔法が魔物の体を包んだ。

「リリー、回復の準備を!」

カトリナの声に応じて、リリーが祈りを捧げる。彼女の手から漏れる柔らかな光が、エドガーとカトリナを包み込んだ。

「疲労が少し楽になった……リリー、いいぞ!」

エドガーが感謝の言葉を投げると、リリーは少し顔を赤らめながらも笑みを浮かべた。

カインが魔物の急所を狙って短剣を放つと、魔物が一瞬怯む。その隙を逃さず、カトリナがハンマーを振り下ろした。

「聖なる光よ、この者に救済を与えたまえ!」

祈りと共に放たれた一撃が、魔物を浄化の光に包み込む。魔物が絶叫を上げながら崩れ落ち、瘴気が晴れていく。

「終わった……のか?」

リリーがほっとした表情を浮かべると、カトリナがハンマーを肩に担ぎながら呟いた。

「いいえ、これはまだ始まりよ。この森の奥に、もっと大きな理不尽が待ち受けているわ」
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