12 / 20
12
しおりを挟む
翌朝、カトリナたちは村の外れにある森の調査に向かった。森の奥から漂う瘴気が、村人たちを不安にさせている。
「それにしても、瘴気が濃いですね……」
リリーが周囲を警戒しながらメイスを握りしめる。その後ろで、盗賊カインが飄々とした調子で答えた。
「まあ、こういうのは大抵、大したことないんだよ。案外、森の奥にでかい魔物が一匹いるだけだったりしてな」
「カインさん、それ、全然安心できないんですけど!」
リリーがツッコミを入れると、双子のセオが笑いながら肩をすくめた。
「でも、カインの言うことも一理あるよ。過去に何度もそういうパターンを見てきたし」
「そうそう。で、そういう時は大抵カトリナさんが一撃で片付けるんだよね」
双子妹のフィオがさらりと言うと、リリーが驚いた表情を浮かべた。
「えっ、一撃で?」
「うん。浄化の光を込めたハンマーで、『理不尽をぶっ壊す!』って感じでね」
フィオが手振りを交えながら説明すると、カトリナが微笑みながら言葉を挟んだ。
「フィオ、それは少し誇張があるわね。実際には何発か叩いてるわよ」
「いやいや、そこじゃないです!」
リリーが勢いよくツッコミを入れる。そんな彼女の姿を見て、エドガーが微笑んだ。
「いいぞ、リリー。そうやってツッコめるのも、このパーティでは重要な役割だからな」
やがて、森の奥へと足を進めると、空気が一変した。周囲の木々には黒い染みが浮かび、地面にはひび割れが広がっている。
「これは……ただの魔物じゃないですね」
リリーが不安そうに呟くと、カトリナがハンマーを構えながら頷いた。
「ええ、呪いが深く刻まれています。この先にいるものが瘴気の根源でしょう」
その時、茂みの向こうから低い唸り声が聞こえた。一瞬の静寂の後、巨大な獣のような魔物が姿を現す。体毛は黒く、目は赤く輝いていた。
「でたな。思ったより手強そうだな」
エドガーが剣を抜き、前に出る。
「カイン、周囲の罠を確認して!」
カトリナが指示を飛ばすと、カインが素早く動き出す。
「了解!任せとけ!」
セオとフィオは詠唱を始め、リリーはカトリナの後ろに控えながら祈りの準備をした。
魔物が咆哮を上げ、一気に突進してくる。その瞬間、カトリナがハンマーを振り上げた。
「これが私の役目よ!」
ハンマーが魔物の爪を弾き、轟音と共に地面に叩きつける。その間に、セオとフィオが放った炎の魔法が魔物の体を包んだ。
「リリー、回復の準備を!」
カトリナの声に応じて、リリーが祈りを捧げる。彼女の手から漏れる柔らかな光が、エドガーとカトリナを包み込んだ。
「疲労が少し楽になった……リリー、いいぞ!」
エドガーが感謝の言葉を投げると、リリーは少し顔を赤らめながらも笑みを浮かべた。
カインが魔物の急所を狙って短剣を放つと、魔物が一瞬怯む。その隙を逃さず、カトリナがハンマーを振り下ろした。
「聖なる光よ、この者に救済を与えたまえ!」
祈りと共に放たれた一撃が、魔物を浄化の光に包み込む。魔物が絶叫を上げながら崩れ落ち、瘴気が晴れていく。
「終わった……のか?」
リリーがほっとした表情を浮かべると、カトリナがハンマーを肩に担ぎながら呟いた。
「いいえ、これはまだ始まりよ。この森の奥に、もっと大きな理不尽が待ち受けているわ」
「それにしても、瘴気が濃いですね……」
リリーが周囲を警戒しながらメイスを握りしめる。その後ろで、盗賊カインが飄々とした調子で答えた。
「まあ、こういうのは大抵、大したことないんだよ。案外、森の奥にでかい魔物が一匹いるだけだったりしてな」
「カインさん、それ、全然安心できないんですけど!」
リリーがツッコミを入れると、双子のセオが笑いながら肩をすくめた。
「でも、カインの言うことも一理あるよ。過去に何度もそういうパターンを見てきたし」
「そうそう。で、そういう時は大抵カトリナさんが一撃で片付けるんだよね」
双子妹のフィオがさらりと言うと、リリーが驚いた表情を浮かべた。
「えっ、一撃で?」
「うん。浄化の光を込めたハンマーで、『理不尽をぶっ壊す!』って感じでね」
フィオが手振りを交えながら説明すると、カトリナが微笑みながら言葉を挟んだ。
「フィオ、それは少し誇張があるわね。実際には何発か叩いてるわよ」
「いやいや、そこじゃないです!」
リリーが勢いよくツッコミを入れる。そんな彼女の姿を見て、エドガーが微笑んだ。
「いいぞ、リリー。そうやってツッコめるのも、このパーティでは重要な役割だからな」
やがて、森の奥へと足を進めると、空気が一変した。周囲の木々には黒い染みが浮かび、地面にはひび割れが広がっている。
「これは……ただの魔物じゃないですね」
リリーが不安そうに呟くと、カトリナがハンマーを構えながら頷いた。
「ええ、呪いが深く刻まれています。この先にいるものが瘴気の根源でしょう」
その時、茂みの向こうから低い唸り声が聞こえた。一瞬の静寂の後、巨大な獣のような魔物が姿を現す。体毛は黒く、目は赤く輝いていた。
「でたな。思ったより手強そうだな」
エドガーが剣を抜き、前に出る。
「カイン、周囲の罠を確認して!」
カトリナが指示を飛ばすと、カインが素早く動き出す。
「了解!任せとけ!」
セオとフィオは詠唱を始め、リリーはカトリナの後ろに控えながら祈りの準備をした。
魔物が咆哮を上げ、一気に突進してくる。その瞬間、カトリナがハンマーを振り上げた。
「これが私の役目よ!」
ハンマーが魔物の爪を弾き、轟音と共に地面に叩きつける。その間に、セオとフィオが放った炎の魔法が魔物の体を包んだ。
「リリー、回復の準備を!」
カトリナの声に応じて、リリーが祈りを捧げる。彼女の手から漏れる柔らかな光が、エドガーとカトリナを包み込んだ。
「疲労が少し楽になった……リリー、いいぞ!」
エドガーが感謝の言葉を投げると、リリーは少し顔を赤らめながらも笑みを浮かべた。
カインが魔物の急所を狙って短剣を放つと、魔物が一瞬怯む。その隙を逃さず、カトリナがハンマーを振り下ろした。
「聖なる光よ、この者に救済を与えたまえ!」
祈りと共に放たれた一撃が、魔物を浄化の光に包み込む。魔物が絶叫を上げながら崩れ落ち、瘴気が晴れていく。
「終わった……のか?」
リリーがほっとした表情を浮かべると、カトリナがハンマーを肩に担ぎながら呟いた。
「いいえ、これはまだ始まりよ。この森の奥に、もっと大きな理不尽が待ち受けているわ」
0
あなたにおすすめの小説
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さくら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
外れスキル【畑耕し】で辺境追放された俺、チート能力だったと判明し、スローライフを送っていたら、いつの間にか最強国家の食糧事情を掌握していた件
☆ほしい
ファンタジー
勇者パーティーで「役立たず」と蔑まれ、役立たずスキル【畑耕し】と共に辺境の地へ追放された農夫のアルス。
しかし、そのスキルは一度種をまけば無限に作物が収穫でき、しかも極上の品質になるという規格外のチート能力だった!
辺境でひっそりと自給自足のスローライフを始めたアルスだったが、彼の作る作物はあまりにも美味しく、栄養価も高いため、あっという間に噂が広まってしまう。
飢饉に苦しむ隣国、貴重な薬草を求める冒険者、そしてアルスを追放した勇者パーティーまでもが、彼の元を訪れるように。
「もう誰にも迷惑はかけない」と静かに暮らしたいアルスだったが、彼の作る作物は国家間のバランスをも揺るがし始め、いつしか世界情勢の中心に…!?
元・役立たず農夫の、無自覚な成り上がり譚、開幕!
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ
翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL
十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。
高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。
そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。
要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。
曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。
その額なんと、50億円。
あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。
だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。
だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる